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その1



 月に二回、あえて「デート」と呼んで出かけています。
 東京に行くこともありますし、近くの温泉に日帰りもあります。
 場所も目的も、それぞれですが、非日常を味わえる「デート」を妻はとっても楽しみにしていました。だから、こんな時は、いつもよりも少しですが無理も利きます。
「この間のセーター、あれ、良かったじゃん。お気に入りのミニと、コーデでどう?」
 スリムなシルエットを醸し出す、緑を基調としたセーターは、ウエストがキュッと締まった隠れ巨乳の妻に良く似合っています。
 寒さ対策はコートですればいいだろうと、白い胸元を大胆に見せつけるように、大きく開いたタイプです。
 こんなに胸元が開く服だと、微乳の女性は屈めば完全に胸が見えてしまいます。しかしEカップの胸はグンとセーターを押し上げて、そのふっくらした「すそ野」しか見えないのは、残念なほどでした。
 もちろん、シンプルなフレアミニから覗く生足も、お気に入りなのです。
 そんな私のもくろみを、もちろん、妻は知っています。
 エクステを付けているのかと、人から言われることがあるほど長いパッチリしたマツゲの中で、黒目がちの大きな瞳が見開きました。
「もう〜 だって、あれ、短いんだもん。お気に入りって言っても、あなたのお気に入りでしょ? それに、あれって風が吹くと、けっこう、めくれちゃうんだからぁ」
 驚きから困惑、そして、羞恥の表情へと、三変化。
 シャープなラインを持つ小さめの顔は、表情を豊かに変化させながら、唇を小さく、ツンと突き出して、頬を小さく膨らませます。
「そうかな〜 あれ、すっごく似合ってて、僕の奥さんって最高に可愛いのが自慢なんだけど。けっこう、君も気に入っていると思ったんだけどなぁ」
 気落ちしたと言いたげに、声のトーンを落としてみせると、慌てて、取りなしてくる妻。
「ううん、私も気に入ってるわ。でも、ほら、こんなに風の強い日は、めくれちゃいそうなんだもん。ねぇ、ミニがいいなら、もうちょっとタイトなのとかならどう?」
 夫を立てることを気にかけてくれる、優しいい妻にとって「この程度のこと」で、夫が落ち込むのはゆゆしきことなのです。
「え〜 あれが可愛いんじゃん。頼むよ〜 君の脚、見ているの好きだって、知ってるじゃん」
「でもぉ。この間も風でめくれちゃったし。あの時、結構大勢に見られちゃった気がして…… 凄く恥ずかしかったんだもん」
 私が「頼む」のポーズで頭を下げていると、妻のトーンは勝手にドンドン落ちていきます。
「でも、あのぉ、どうしても、あなたが、あれが良いんなら、あのぉ、そのぉ、どうしてもかしら……」
 困った顔をしつつも、私の前から逃げないところを見ると、もはや、妻の心は決まっています。これなら大丈夫。
「お願いします」
「ね、あの…… じゃぁ、あの…… 下にストッキング穿くけど、それでもいい?」
 ツンツンとシャツの二の腕を引っ張ってみせる仕草は、紗奈なりの甘え方。でも、ここで許すわけがありません。
「だって、せっかく出かけるなら、紗奈の脚も直に触りたいなぁ。特に渋滞してるときに、太股のヒンヤリした感じがあると、最高に目が覚めるんだよね〜」
「あ〜ん、もう、そう言って、いっつも恥ずかしいカッコさせるんだもん」
「たまには、いいじゃん、ね、この通り!」
 拝んでみせる私に、困った顔になる妻。
 人の良い妻は、こうやって粘られると、私を悲しませたくない一心で、たいていのことは妥協してくれるのです。
「ダメッよ。絶対! ……だって、いっつもでしょ! もう〜 知らない!」
 そう言って、クルンと回って、ツカツカツカとリビングに向かう妻は、これ見よがしにストッキングを出しますが、チラッとこっちを気にしてから、結局、またもタンスに戻してしまうのは、前回と同じ。
 お嬢様育ちで、根っから素直な紗奈は、やっぱり、人に頼まれると嫌とは言えない、お人好しなのです。おまけに、夫の言うことには従わなくちゃという、何かの思い込みがあるらしく、たいていのことで「お願い」を聞いてくれる、得がたい妻です。
 本来、おしとやかで、落ち着いたファッションを好みます。だから、本来の妻の出で立ちは、いかに顔立ちとプロポーションが抜群でも、どこからどう見ても、地味で貞淑な人妻です。
 でも、結婚して三年。
 どんなには恥ずかしがっていても、最後には「夫の好み」を聞いてしまうせいで、けっこうエッチで大胆な服装もできるようになってきました。
 とはいえ、もとからして、エスカレーターのお嬢様女子校出身で、エッチな経験もほとんど無かったせいで、妻の「大胆」は、下着が見えてしまうファッション、止まりではありますが。
 手脚が長く、スラッとしている上に、十代の女の子を彷彿させるほどピチピチと張りつめていますから、助手席に収まった瞬間から、その脚を触らずにはいられません。
 その日は、車で一時間の港町まで行って海鮮丼をお腹いっぱい食べて帰るプラン。
 途中、途中で、休憩しながらのドライブデートでは、あっちで休み、こっちで写真。
 冬だというのに、ドキンとするほどに白い脚が、ニョキッと出ていれば、そこらにいる男達の目は、さりげなく、あるいはあからさまにこっちにばかり向いてしまいます。
 そして、ふわっとしたスカートは予想通り、空っ風に巻き上げられて、今日だけでも、何度白い下着を見せてしまったかわかりません。
 その度に、恥ずかしそうにして、私を恨めしげな上目遣いで見つめる表情は、確かに、私への愛で満ちあふれていたのです。
 いまだに子どもに恵まれませんが、幸せでした。
 みんな紗奈のおかげだと、言い切れます。
 見た目が美人と言うだけではなく、温和で優しく、そのくせ、しっかり者の妻は、私を助けつつも、必ず、立ててくれるのです。
 もっとも、これは、元からの妻の性格もそうですが「男を立てなさい」と躾けた、お母さんのおかげかも知れません。
 なにしろ、このあたりは田舎のせいか、まだまだ旧家が残っています。紗奈は、そんな家庭の一人娘として生まれ、昔ながらの躾けを受けてきたのです。
 だから、紗奈にとって、生まれて初めて付き合った男にバージンを捧げてしまえば、その男と結婚するのは当たり前のことでした。もちろん、そのオトコとは、私のことなのですが、逆を言えば、結婚する気持ちがあったからこそ、私に全てを捧げた、と言うべきなのでしょう。
 古い価値観を持つ妻にとって、結婚前にバージンを捧げるのは抵抗があったハズです。
 しかし、同時に「男を立てる」ように振る舞うことも、妻の第二の天性と言ってもいいほど、自然なこと。
 だから、私に強く求められれば、妻にとっては「夫となる人から求められた」という方が、大事なことになるのは当然でした。「結婚するまで操を守る」ことよりも、夫となる私の願いを優先してくれたのです。
 そして、これは後々分かったことですが、破瓜の苦痛を知っていたからこそ、純粋に「私のため」に我慢しようとしてくれたそうです。紗奈には、自分が何かをこらえて誰かが喜ぶなら、好んで自分を犠牲にするところがあるのです。
 だから、こうして夫婦のデートなら、どれほど恥ずかしがっても、私の強い「お願い」で、生足ミニまでは、できるようになってきました。
 美人で、頼み事を断れない、プロポーションの良い妻を持てば、後は、エッチなネット小説で読んでしまったシチュエーションを頼んでみたくなるのは人情というもの。
 しかも、生理前の数日間は、奇跡と言いたいほど、感じやすくなり、エッチなお願いも、普段以上にOKになる体質です。
 ここは「お願い」の連続攻撃に限ります。
 私はさらなるお願いのために、このところは、ベッドでこればかりを頼んでいます。
「ね? 一度で良いから! お願い!」
「んっ、だめよっ、そんな、あん、だめぇ、そんなの。ヘンだもん、ああん、ああ」
 私が上になると、小さな身体を目一杯広げて受け入れる姿になる妻です。今も、その両脚をカエルが解剖される姿にも見えるほど広げて、私のモノを深々と受け入れています。
 いつもなら、ここで、一気にフィニッシュに行くのですが、悪巧みをして、ヒョイッと抜いてしまいます。
「あん、んっ、あんっ、あぁあ」
 逝きかけた妻の口は落胆のため息が出てしまうのもやむを得ないところ。でも、恥ずかしくて「欲しい」と言えない妻は、懸命に我慢するしかないのです。
 しかし、身体は正直に反応しています。ヒクヒクと蠢いてしまう腰は、とどめの一撃を欲しいと叫んでいるのと同じです。
「ね? 頼むよ。どうせ芝居じゃん」
「ああん、だってぇ。申し訳ないんだもん」
「申し訳ない?」
「んっ、だ、だって、あんなにいい人なのにぃ。サナをイヤらしい目で見たりしないのにぃ、ああん、あん、あぁあ! う、うそ、また?」
 グチャグチャになった美肉に、一度深々と埋め込んであっさり抜いてしまうと、妻は悲鳴を上げるしかありません。
 イク直前の「オアズケ」は、特に生理前のこの時期には最強の威力なのです。
「ね、あ、あなたぁ」
「お願いを聞いてくれたら、一気に入れちゃうよぉ」
 先端をちょっとだけ埋め込んで、チュプッと抜き去り、ヒクンと腰が動いたところに、ホンのわずか入れて、すぐに引き抜く。
「ね? いいじゃん。お芝居だけだからさ」
「あぁ、だ、だめぇ」
 哀しげにも聞こえる妻の「ダメ」を楽しみにながら、立て続けに、三度繰り返すと、妻は、もはや陥落するしかありません。
「あああん、もう! お、お芝居だけだからね!」
 身体にこみ上げるオーガズムの要求に、妻が屈した瞬間でした。
 即座に、こっちも口調を作ります。
「よしっ、じゃ、サッちゃん。もっと足を開いて、オッパイを見せてごらん」
「……んっ、もう〜 ホントに? ああん、もう!」
 グッと脚を広げた妻に先端をくっつけると「ああ!」と、早くも上り詰めそうな声。
 しかし、そこでさらに、焦らしながら「オジさん、入れてと言ってごらん」と囁くと、もはや妻には、踏みとどまる理性は残っていませんでした。
「あああ、も〜 ひどいわっ、あなたってば。 ……お、オジさん、入れてください」
 顔を両手で覆いながら、心底恥ずかしげに言ってしまう妻。
「おお! サッちゃん、入れてほしいんだね? どこに入れるんだ?」
「ああん、もう! エッチなんだからぁ…… あなた、もう、お願い、げ、限界、あな…… ああん、もう! オジさん、入れて! サナのエッチなところにいれて! ああん!」 
 カリの部分まで埋め込んだだけですが、それだけでも、全身がヒクついてしまうあたり、何ともエッチな身体になったものだと、感心してしまいますが、あと一つ、追い込まなければなりません。
「ほら、エッチな所ってどこかな?」
「ああん、お、オジさんが、今、くっつけているところ! あ! いやあ! とっちゃいやあ! ああん、い、言います、言いますから、入れてぇ」
 両手で顔を追った妻は「オジさん、サナのオマンコに入れて!」と叫んだ瞬間、一気に奥まで突き入れます。
「あああ! いくう!」
 ビクン、ビクン
 白い身体を仰け反らせて、あっという間のオーガズム。限界まで焦らすと、最近は、こんな風になるのです。
「さ、ここからだよ、サッちゃん」
 私は、妻の耳元で、セリフを吹き込みます。
「ああ、あん、もう〜 いやああ」
 イヤイヤをしながらも、もはや、身体は我慢ができないのです。
「お、オジさん、サナの、サナのオマンコを楽しんで! いっぱいイカせてください! あああ! いくう! あっ、あっ、あっ、あっ、ああああ!」
 猛烈な締め付け。
 一ミリも隙間が無い上に、絶妙にカリの部分と根本を同時に締め付けて、オマケに、奥の方がキュッと包むように絡みつくのですから、こらえるのも大変です。
 慣れ親しんだ私でも、この三段の締め付けには、十分と耐えられません。夫でなければ、たいていの男は、五分ともたないのじゃないでしょうか? 
 それほど強烈なオマンコだけに、こうやって焦らして一気に追い上げる方法を学んできたのが夫婦の歩みなのかも知れません。
『そろそろか? もう、出しても?』
 急速に上ってくる射精感。懸命にブレーキをかけますが、イキそうになっている妻を見て仕舞うとブレーキがかかりません。
「だ、だすよ、サッちゃん」
「ああん、彼以外はダメなのぉ、ナカはダメなのぉ」
 拒否の声を出しながらも、お芝居の相手は私ですから、妻の手はギュッと抱きしめて、私を逃がそうとしません。
 やはり、心の中に「セックスは赤ちゃんを授かるためのもの」という気持ちが、心の底にあるせいか、夫にナカで出されるのが好きなのです。
 多分、その意識がさせるのでしょう。少しずつ本格的なオーガズムを覚えたころから、私が出す瞬間、妻の細い脚がグッと私の脚に絡みついて、深く受け止めようと、くっついてくるようになったのです。
 正常位で、カエルの解剖さながらに、大きく開げた足は、いつの間にか、ガッチリと私を抱え込んでいました。
 それは、オンナの本能の姿。
 胎内に放出される精子を全て飲み込もうとしている姿でした。
「あああ、お願い、もう、イキそうなのっ! イッちゃうから!」
 生理前の女体が、精子を求めて締め付けてきます。
 決して、そうは言わないのですが、私が奥深くでドクドクと出すと、その瞬間に、また深くイクようになっています。
『これで出しちゃっても、今なら、子どもは無理だけどな』
 妻のリズムは恐ろしく正確ですが、子どもを望む二人にとって、排卵日にたっぷりとナカに出せるのは結婚した者同士の特権のようなもの。
 しかし、実は、排卵日よりも、生理前の「安全日」は、決まって妻の性欲も高まります。しかも、セックスの味を覚えるに従って、それが強くなってきたらしく、今では排卵日よりも、生理前のセックスの方が多くなっていたかも知れません。
 妻の強烈な締め付けに耐えながら、ぐ、ぐ、ぐ、と突き入れ、大きく、早く動き続けます。
 長い脚は、私の腰を抱え込むように広がっていますから、一番奥に届きます。
 先端がプニッとした感触に当たるのは、子宮でしょうか? 
 そこまで届くストロークを続けると、もはや、最高のオーガズムまで、あと一息。
「ああ! またっ、いく、いくう、お、オジさん、す、すごい、さな、またイッちゃうよぉ、あああ、いく、いく、いくうう!」
「出すぞ、出すぞ、サッちゃん」
「あああん、出して、出して、さなの奥に、だしてぇ、ああああ! いくうう!」
 ドクン ドクン ドクン
 長い手脚でガッチリとしがみついて、男を逃がさないと言わんばかりの姿。
 この姿こそが、まさに、本能なのでしょう。
 おまけに、子宮口めがけて放たれた精子の影響なのか、出している間も、膣壁が蠕動運動のようにウネウネと動きながら、根本から絞り上げてくるのです。
 最高の身体でした。
 性格も良くて、顔も、プロポーションも良い。オマケに、美肉は、男を気持ちよくさせる最高の動きをするのですから、この身体を味わってしまえば、浮気なんて馬鹿らしいマネは、する気にもなれません。
 でも、だからこそ「妻が他の男に感じさせられるところを見てみたい」という欲望が、私の頭に取り憑いていたのです。
 無理やり頼み込んでの芝居でしたが、思った以上の興奮をもたらした気がします。しかも、妻まで、いつもよりも感じていたのは確実です。
『ひょっとしたら、ちょっとMッ気があるのかもなあ』
 浮気願望があるとは思えませんから、「夫以外の男にナカに出される」というシチュエーションが、妻を興奮させたとしか思えません。
 最高でした。
「はふ〜」
 気が付けば、お互いに汗ばんでいます。 
 ヌルッとするお互いの肌が、何とも心地よさを感じさせます。射精直後の気だるい身体を、妻にのしかからせる至福の時間です。
 妻のEカップに、顔をくっつけながら、グッタリと力を抜きました。
 ケイレンから戻ってきた妻の優しい手が、私の頭をゆっくりと撫でてきます。
「もう〜 エッチなんだからぁ」
「良かったでしょ? すっごく感じてたじゃん」
「だけどぉ! 今度、オジさんの顔、見られないわよ、これじゃ」
「まあ、今度のご招待は、しばらく先だし」
「間隔が開けば良いってモンじゃないわ。こんなコトしちゃったら、もう、顔を見たら」
「やりたくなっちゃう?」
「莫迦ぁ! そんなことあるはずないでしょ! 申し訳ないの!」
「いやあ、この胸だって、触らせて上げれば喜ぶと思うけどなぁ」
「もう〜 また、それ? オジさんは、私のことを、そんな目で見たりしません〜だ。エッチなのは、あなただけだもん」
 妻が「オジさん」と呼ぶのは鈴木さん。
 外見は、あんまりパッとしない中年オヤジです。しかし、人柄がとても良く、妻も、いろいろなことでお世話になっている頼りがいのある人でした。
「ま、確かに、紗奈のことを、真面目に面倒見てくれてるよね」
「そうよ。オジさんがいなかったら、会の方だって、あっという間に上手くいかなくなるわ」
「だからといって、紗奈の身体に興味が」
「ストップ」
 妻の手が優しく、私の口を覆いました。
「もう、お終い。その話。さっきだって、すっごく恥ずかしかったんだからぁ」
「はいはい。さて、寝ようか」
「はい。ああん、ね、ちょっとだけ待って、あなたが」 
「出てきちゃった?」
「お願いします。見ないで」 
 女性は、誰でもそうなんでしょうか。
 奥深く出したはずの精液を、妻の膣はあっという間に絞り出すのです。
「あぁ、もう。あなたってば、スゴイ、元気、なんか、今日、いつもよりもたくさん出てる」
「そりゃ、紗奈が、鈴木さんに出してぇ、なんて言うからだよ」
 バンっ
 背中を叩く手。
 もちろん愛情の込められた叩き方ですが、その表情には、怒りではなく羞恥で満たされて、そして、ホンのちょっとだけ興奮のフレーバーが薫っているのを、私は見抜きました。
『やっぱり、紗奈って、恥ずかしいコトをさせると、感じるんだよなぁ』
 そして、ガサゴソと背を向けてティッシュを当てている妻の姿は、本来は不格好な姿のはずなのに、何とも、可愛らしく感じるのが不思議です。
『それにしても、鈴木さんか』 
 どうみても、さえない中年にしか見えない鈴木さんのことをぼんやりと考えてしまいます。
『不思議な縁だよなあ、この人と出会ったのもさ』
実は、紗奈には妹がいます。いえ「いました」と言うべきかも知れません。
 紗奈の妹は、生まれた時、致命的な病を抱えていました。そして両親と過ごすために許された時間は、ホンの数年だけだったのです。
 もちろん、幼い頃のことで、ハッキリとは覚えていないようですが、両親は、移植でしか救えない娘を救うために「親の会」に参加し、姉である妻も、いつの間にか参加していました。
 それが今もつながっていて、昨年、久しぶりに参加した妻は、鈴木さんと知り合ったのです。
 初めは、あまりにも明るい表情から、単なるボランティアスタッフだと思ったそうです。
 ところが、違っていました。その明るさは、全てを乗り越えたところにあったのです。
 鈴木さんが結婚したのは四十過ぎ。
 相手は「自分の年齢の半分」しかない、若くて、綺麗な人だったそうです。五十になろうとする頃に、やっとお子さんを授かって、夫婦の悦びは、大変なものでした。
 ところが、生まれる時、難産の末に奥さんは亡くなります。そして生まれたお子さんの身体には病が宿っていたのです。
 その息子さんがとうとう亡くなったのが去年のこと。
 ひとりぼっちになってしまった鈴木さんは、子どもが亡くなった後も、この「会」の運営に協力することで、辛うじて人として生きていくことができたのだ、と言いいます。
 しかし、鈴木さんは、そんな話をサラリと、しかも下手をすれば笑いさえ取って語ったのですから、その人柄の柔らかさは、見たことのないレベルです。
 人は、悲しみを乗り越えて生まれた優しさこそが、本当の人間性なんだと言いますが、その言葉は鈴木さんのためにあるようなものだと本気で思います。
 まあ、見てくれは、どこにでもいそうな、単なるショボくれたオヤジなのですが、遙かな年下の美人の奥様が惚れ込んだわけも分かる気がします。
 ともあれ、鈴木さんの人柄に、我々夫婦も惹かれて、そこから交流が始まりました。
 月に一度、家に招くようになり、宅飲みの気安さと、普段の真面目な雰囲気もどこへやら。
 エッチネタも飄々と話せる鈴木さんの話術のおかげで、いたって真面目な妻を交えているのに下ネタすらありになってきました。
 とはいえ下ネタであっても、品を喪わないというのは、本当に人柄だと思います。
 だから、その時、なんのためらいもなく、ついつい聞いてしまったのです。
「でもさ、鈴木さんも、まだ若いでしょ? どうなんです。そろそろ彼女でも作らないと、身が持たないんじゃないですか?」
 男の下半身に理解を示す、その言葉は、妻にしては大胆と言うべきでしょうか。
 私は思わず、妻の顔を見てしまいますが、恐らく、自分の発言の大胆さに気付いてないようです。
「いやあ。ま、身が持たないというか、まあ、息子が逝っていらい、息子も役立たずでね」
 亡き子どもをネタにした下ネタですが、男手一つで愛情を注いできた鈴木さんのことを知っているだけに、妻も、そして私も、それを不謹慎だなんて思いません。
 むしろ、鈴木さんの下ネタに慣らされてきた紗奈の方が、先に反応しました。
「え? もう、何年もエッチ、なさってないんですか? 辛くないんですか?」
「おやおや。紗奈ちゃんに、そうダイレクトに切り込まれるとなぁ」
 カラリとした笑いを照れた表情に浮かべます。
「あっ!」
 ようやく、自分が大胆な発言をしてしまったことに、ハッと気付く妻です。
「まあ、風俗は嫌いだし。一人でしても、空しくなるからね」
「ご、ごめんなさい、つい」
「いや、ははは、気にしてくれるんだもん、サンキュッていっておくよ」
「あん、やん」
 顔を真っ赤にしてしまうのは、どこまで想像したのか、気になるほど。これは後で聞いてみなくてはなりません。
「ま、気にしないでね。もう、そんな年でもないからさ。オレくらいの年になると出さなくても平気になるものなんだよ」
 勝手に話を振って、勝手に自爆している妻をさておいて、私は、疑問を口にします。
「そういうものなんですか? 年を取ると平気になるものでしょうか?」
 私も三十年後にそうなるのか、と考えてみますが、ちょっと想像も付きません。
「ま、人それぞれだね。サッちゃんみたいに可愛い奥さんがいれば、そうならないかもよ。むしろ、毎日、サッちゃんに搾り取られてたりして」
「そんなっ! 私達、毎日なんてしてません。今だって、月に何回かなのに」
「お、おい」
「へ〜 なんか、足りないって言ってる? オイ、もう少し頑張ってあげないとダメみたいだよ」 後半は、私に対するチャチャです。
「あっ! やん!」
 私に向けられた言葉など聞いているどころではなく、またもや自爆の失言をしてしまった恥ずかしさに、顔を覆ってしまう妻です。
「おお、もっと欲しいっていうんじゃ…… もっと頑張らないとだね、本条さんも。こんな可愛いお嫁さんなんだからさ」
「いやあ、お恥ずかしいです」
 照れ隠しにビールをグビッと飲み干して、またまた口を滑らせてしまった妻を見ると、目が泳いでいました。しかし、話を打ち切ろうという雰囲気ではないことは確かです。
『ひょっとして、こういうエッチネタも、案外好きなのかもなぁ』
 本来は頭も良いのに、鈴木さんと飲むと、最近、こういうネタに口を滑らせることが多くなっています。これも、妻が心を開いた証拠なのかも知れません。
「でもねぇ、紗奈ちゃんみたいに真面目で、ちょっとエッチな女性と会えたら、きっと出してもらいたくなるだろうなあ」
「やっぱり出したくなるんじゃないですか」
 私が突っ込むと、チラッと妻を見ました。
 妻は、恥ずかしそうに、素知らぬ顔をしていますが、実は興味津々といった目をしています。
「いやあ、でも、紗奈ちゃんクラスの女の子なんて、そうそういないからね。無理無理。このまま枯れていくだけさ」
「お辛くはないんですか?」
「ま、辛い時なんてないよ、とは言わないけどさ。仕方ないんだよ。紗奈ちゃんみたいな人って、なかなかいないって言うか、短い残りの人生には、絶対に、現れないだろうからね」
 そう笑いながらグラスを干す鈴木さん。
「へぇ〜 鈴木さん、紗奈がお気に入りなんですね」
「いやあ、紗奈ちゃんくらいの女性は、なかなかいないよ。美人で気立てが良くて、しかもエッチそうだし」
「あん、オジさん、褒めてくれても、何にも出ませんよ」
 わざとなのか何なのか「エッチそうだ」と言われても、そこを無視して「褒められた」と受け止めてみせる妻は、横に回ってビールを注ぎ足します。
 しかし、そうやって、鈴木さんをチラチラ見る瞳に、確かに「お気の毒」という気持ちが読み取れました。
『やれやれ、紗奈は、こういう所、お人好しだからなあ』
 他人が辛いと、自分まで辛くなってしまうのが常なのです。
 しかも、中年男が「もう長く出してない」という下ネタなどは「こないだ、こんなにモテた」と同レベルで、飲み会の定番中の定番です。
 けれども「真面目」に育ってきた妻は、男と下ネタを話すなんてしたことなんてない分だけ、それを本気で受け止めて、本心から「お気の毒」と思ってしまったのでしょう。
 ふと、イタズラ心を出した私は、妻をからかおうとしました。いえ、半ばは、いつもの黒い欲望が、それを言わせたのかも知れません。
「じゃあ、さ、紗奈が出して上げたら? せっかく、こんなに褒めてくれてるんだもの。そのくらいしてあげたら?」
「え? 私が? オジさんのを? 出して上げるって……」
 一瞬、目を丸くして鈴木さんと私の顔を交互に見つめますが、その表情は、私にとっては意外なものでした。
『あれ? 考えてるよ。そんなに嫌じゃないわけ?』
 反射的な拒否の色がないのと見て取ると、私は一気に興奮して、まくし立ててしまいます。
「そうだよ。紗奈なら出したいって言ってるんだし、してあげたら? せっかくの機会だよ? オジさんが辛いのはサナだって辛いだろ?」
「そんなぁ。私なんてダメよぉ。だって、そう言うの、上手くないしぃ」
 いたって真面目な顔で「私なんて」というのです。
 驚きでした。
 パンと撥ね付けるとか、はたまた、恥ずかしがって「ヤだぁ」とでも言うのかと思ったのに、その答えと表情は、私の「提案」を真面目に考えているとしか思えません。
『紗奈のやつ、鈴木さんとすることを、真面目に考えている?』
 その瞬間、私の心の中にどす黒い雲が湧き出してきたのです。
 理性の塊に神鳴りが、ドーン、ドーンと落ちてきて、割れた塊の中には、妻が他人とセックスすることへの、強烈な嫉妬と好奇心、そして、間違いなく「興奮」がありました。
 一瞬、私と目が合った鈴木さんは、ニュートラルな表情で私を伺います。
 コクッと小さく頷いた瞬間、鈴木さんの目が光り、その一瞬で、二人は無言の一致ができたのです。
『憶えてくれたんだ、あの話』
 実は、男二人で飲むことはけっこうあり、以前、私の「願望」をチラッと話したことがあります。そのネタは、たった一度、話しただけですが、驚かれると思ったのに「それはネトラレと言ってね」と、淡々と受け止めてもらえたのは、さすが人生経験が豊富だ、と思ったものでした。
 この瞬間、鈴木さんは「あの件だね? 本気かい?」と目顔で尋ね、私はイエスの返事をしたことになります。
 脳が強烈な炎に炙られているような感じになりながら、口は勝手に言葉を出しています。
「いや、紗奈はけっこう上手だと思うし、鈴木さんは紗奈が良いんだってさ」
 クリンとした目がウルウルとするのは、一体どんな心なのでしょうか。サナは子ウサギが「困った」と言っているような表情で、私を見つめています。
「それって、大事なことだと思うよ、うん。それって、大事だよね なんていっても、鈴木さんが辛いのを、サナは救って上げられるんだし」
「え、あ、私が? あっ、で、でもぉ」
 大きな瞳は見開かれ、私と鈴木さんを高速で往復しています。
「どうする? 紗奈だったら、鈴木さんが辛いのを、慰めて上げられるんだよ。それに、君が最初に言い出したことだろ?」
「え?」
「あっちはどうしているのかって話だよ。紗奈が最初に聞いたことだよね」
「そ、そうだけどぉ」
 視線がチラッと横の鈴木さんを見てから、宙を泳ぎます。驚いたことに、そこにあるのは、拒否の顔ではなく「迷い」でした。
『鈴木さんを受け入れてしまうかも知れない!』
 長い間の妄想が現実のこととして目の前にチラついてしまうと、もう後先を考えることなんてできずに、止まりませんでした。
「で、鈴木さんが正直に話してくれて、紗奈が良いっていうのも話してくれたんだ。そんなことを話すの、いくらなんでも、本当は恥ずかしかったですよね? 鈴木さん」
「まあ、真面目に聞かれたんだから、真面目に答えないとだよね、他ならぬ紗奈ちゃんに聞かれた以上、恥を忍んで答えたよ
 いつもの飄々とした顔を引っ込めて、いたって重々しい顔をしながらの援護射撃。こうなると「酒の席の冗談」ではすむわけがありません。さすが、分かっています。
「だってぇ。あ、あの、ゴメンなさい」
 ぺこんと頭を下げる紗奈を見つめながら、左の頬だけに、寂しそうに微かな笑みを浮かべる表情には、ちゃんと計算が込められていました。
 人の良い紗奈には、それが演技だと見抜けるわけもなく、鈴木さんの計算通りに「私が傷つけちゃったんだ」と受け止めてしまったのです。
 自分が人を傷つけることを極端に恐れ、そして、他人を辛さから救うためなら好んで自分を捨てるのが常であるのが、妻でした。
 そして、鈴木さんは、それをちゃんと心得ているのです。
「知らなかったなら仕方ないけど、知っちゃったんだし。元はと言えば、君が聞いちゃったんだよ? 鈴木さんが恥を忍んで、とまで言っている以上、これで知らんぷりもできないでしょ」
「私が、オジさんと……」
 狼狽える顔を覗き込みながら、鈴木さんが、スッと身体の向きを変えました。
「いやあ、そりゃ無理な願いだとは思うけれど、他ならぬ紗奈ちゃんのご主人がこう言ってくださっているんだ。お願いします。助けてください」
 手を床に付けて頭を下げながら、その額の部分はちょうど、ミニスカートの膝に乗るか乗らないかといった所。
 え? え? え? とリアクションをどうすべきなのか狼狽える紗奈。
 しかし、額を膝に付けられているために、そこから身体を引く動きはできません。心憎いまでに計算された動きでした。
「お、オジさん、とにかく、頭を上げてください、お願い! ね? オジさんってばぁ」
 両肩に手を入れて、無理やりに引き起こせば、それは抱き合うほどに近づいている二人の位置です。 
 頬が付かんばかりの距離でくっついている二人の姿を見ただけで、もう、私は痛いほどに勃起していました。
 頭が考えるより先に、口が動きます。
「ほら、紗奈、鈴木さんが、こんなに頼んでるんだよ? それに知ってるだろ? ボクの願望。この間のお芝居が、ちょっと、ホントになるだけだよ」
 その瞬間、妻は「あっ」と、小さく口を開けて、クルクルと良く動く瞳が、落ち着いてから、ようやく、ふぅ〜 と大きく息を吐き出します。
「もう〜 みんなで、からかうんだからぁ」
 真っ赤になった顔を手でパタパタと扇ぐ姿は「鈴木さんとエッチしちゃってる」お芝居をしながらのセックスを思い出している証拠でした。
『これ、案外だったけど、イケるぞ、たぶん……』
 よほど恥ずかしかったのでしょうか、それとも、リアクションを考えあぐねた結果でしょうか。恐らく無意識の動きでしょう。白い手が、あろうことか鈴木さんの膝をスリスリと撫でたのです。
 私の目は、その動きに吸い寄せられ、妻は、私の視線を追って、自分の手が鈴木さんのヒザを撫でさすっているのを発見しました。
「やん。あの、ち、ちがいます、あの、これは、あの、そのぉ」
 慌てて手を引っ込める妻が、しどろもどろになった瞬間、鈴木さんは、改めて正座しました。
「お願いします」
 芝居がかった調子で、深々と土下座します。今度は床に頭をこすりつけながら。
「紗奈ちゃん、数年間眠っていたオレのを、優しく起こしてヤッてください」
「え〜 オジさん、ちょっと、わたし、あの、その、ね、オジさん、頭を上げてください。オジさんってばぁ」
 男は立てるものだ、と言うのが妻の受けてきた躾です。それなのに、こうやって、自分が男に土下座されるシーンなんて、考えられないほどの衝撃を受けているはず。
 しかも「妻を亡くして以来、ずっと女性と無縁だった、男の人」という前提が、妻をさらに追い詰めます。
「お願いします。紗奈さん、どうか、お願いします。この苦しさを助けてください」
 さすが鈴木さん、お人好しの妻の弱点をちゃんと突いています。
「あ、あの、ほら、えっと、私、人妻だし…… そう、そうよ。彼がなんて言うか」
「え! じゃあ、本条さんが許してくれたら、してくれるんですか?」
 ガバッと顔を上げる鈴木さん。芝居がかった動きですが、見上げる視線は十分に計算されています。逆に、その視線を受けてしまえば、妻は狼狽えるしかありません。
「だ、だけど…… ほら…… あの、か、彼が、え、えぇ。そうよ。彼が許すはずが」
 しどろもどろとはこのことでしょう。
「良いじゃん、して上げなよ」
「え!」
 目を見開いて私を見つめる妻。
「だって、してあげなって言い出したのはボクなんだから。それに何度でも言うけど、こないだの、お、し、ば、い。 ね? わかるでしょ?」
 ニヤニヤした私の目を、見開いた目が見つめています。 
「あなた、なんてことを、だって、そんなっ。あ、だって、あ、そんなことをしたら、あ、で、でも……」
「やった! 本条さん。ありがとう。本当にありがとう。これで、長い間忘れてた、男が蘇るよ! 本当にありがとう」
 溢れんばかりの喜びを全身で表現しながら、私に感謝してみせる姿は、妻に「既成事実」という首枷をはめたのと同じです。
「ね、待って、待って、ね、あの、えっと、あなた、本気なの?」
 その声は、結婚以来初めて聞くほど強い調子でしたが、そこに「怒り」の匂いが全くないことに気が付きいてしまったのです。




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