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その4

  


 何度も精子を飛び散らしてしまったハンドル付近をティッシュでぬぐいます。
 音声を聞く勇気は生まれません。
 だから、そこから、イライラして待つこと、二時間。
 ようやくメールが入りました。

 <今、オジさん、帰ったよ ハート>
<どうだった? >
 <すっごく恥ずかしかった>
<どこまでしたの? 何回も出した? >
 <ナイショ> 
 絵文字のハートマークが、点滅していました。

飛ぶようにして帰った私を迎えてくれたのは、いつも通りの、いえ、いつも以上に可愛い妻。
「お帰りなさ〜い」
 しかし、こうして抱きついている妻は、私以外の男を知ってしまったのです。
 思わず知らずのウチに、妻の何かが変わっていないか、探している私です。
「さな〜」
「あなたぁ」
 ギュッと抱きしめると、いつもの優しい抱き心地。
 シャワーを入念に浴びたのでしょうか、いつもと同じ、シャンプーやボディーソープの匂いが私を包みます。
 ギュ
「あ〜な、たっ」
 抱きしめ返してきた、その手も、笑顔も、優しい声も、全ては変わっていません。
 スマホ越しに聞ていた、淫らそのものだった声は、まるで別人であったかのようです。
 無意識のうちに、部屋着にしているトレーナーに手を潜り込ませて胸をまさぐっていました。
 ノーブラのオッパイは、いつもの通りの弾力を指に伝えてきます。世話しなく、いきなり妻を求める姿に、妻は、驚いた様子です。
「あん、どうしたの? あん、だめぇ、あなた、こんな、急に、ね? ああん」
 その動作にテレはあっても拒否はありません。だから、妻の照れ隠しの言葉などにかまう余裕はないのです。
 妻をお姫様抱っこすると、夫婦のベッドに連れて行きます。その間、ずっと顔を私の胸に埋めていたのは、妻もまた、私を欲しているのだという気がします。
 一方で『あんなに感じた後、オレので感じてくれるのか?』と思いながらも、パッパと妻を脱がしていきます。
 妻の肌に、キスマークを探してしまう私。
 もちろん、鈴木さんがそんなぶしつけなことをするとも思えませんが、それとこれとは話が違うのです。
「ああん、あなた、すごい、せっかちぃ、あん、ダメぇ、見ないで」
 いつもの薄いピンクのパンティを脱がそうとした瞬間、クイッと腰を持ち上げて協力してくれます。
『ん? 匂った?』
 栗の花の匂いがした気がして、鼻をひくつかせましたが、そんな匂いはありません。
『気のせい…… だよな?』
 胸に顔を埋めながら、匂いを嗅いでも、いつもの妻の匂いしかしません。抱きしめた身体は、髪の毛一筋に至るまで、何の痕跡もないのです。
『匂いは残ってなくても、デカチンポにやられた快感を、覚えたんだよな? この身体は』
ヌルッ
「ああん、そんな、いきなりぃ」
 指を差しのばした秘裂は、前戯の必要などないほど、ヌルヌルです。
『紗奈は僕を待っていてくれたんだ』
 愛撫もしてないのに、ヌルヌルだったという事実が少しだけ安心させてくれたのは事実です。
「あああ、あなたぁ、来てぇ〜」
 スラッとした脚は、自らの意志で大きく広がります。明るいところで、こんなに大胆に脚を広げる妻など初めてでした。 
 目に飛び込んできた秘部を見て、衝撃を受けてしまいます。
『こんなに赤く腫れてるじゃん』
 最小限になってしまったヘアの下で、清楚なはずのその場所が、真っ赤に充血して、パックリと口を開けているのです。何度か見たことのあるその場所は、指一本も入らぬほど口を閉ざしていたはずが、はっきりと「受け入れる場所」を見せつけていました。たたずまいそのものが、変わってしまった、妻の美肉です。
『こんなになってるなんて…… デカチンポで、広げられてしまったのか?』
 一瞬「中までユルユルになってたらどうしよう」と危機を覚えながらも、もはや止まりません。一刻も早く一つになりたい、その思いに突き動かされて、一気にのしかかりました。
「ああああ、あなたぁあ!」
 いきなり奥まで貫いたときの反応は、今までにないほど激しいものでした。
 入り口が広がってしまっているのに、包み込んでくれる美肉は、いつものように、いえ、いつも以上の強さで締め付けてきます。
「あああ、あっ、あっ、あなたぁ」
 いきなり、深い快感を味わっているのか、白い裸身が、一瞬でヒクンと仰け反りました。
『だけど、これって、もっと奥が欲しいって言ってないか?』
 突き入れた瞬間、もどかしげに腰を突き上げたのは、届かない「奥」の感触を無意識に求めているのかもしれないと思うと、絶望と興奮が同時にどす黒い渦巻きを心に作るのです。
 そのどす黒い渦巻きに支配されるようにして、私は深いところまで入り込む律動をし始めました。
『え? この奥。ヌルヌルが出てきたよ、これ、これは、紗奈の…… ではない、よな?』
 妻自身は気付かなかったかもしれません。
 深々と突き入れるピストンをしているウチに、奥からヌルヌルした感触がにじみ出てきたのを知った瞬間、私は狂いました。
「紗奈ぁああ!」
「ああああ、どうした、の! あう! すごいの! すごい、すごいぃい! あああ、いく、いく、いくうう!」
 考えられないほど、たやすくイッた妻のナカで、私は動きを緩めません。いえ、緩めることができないのです。
 理由は、妻の奥からにじみ出してきたぬかるみでした。 
 この感触を知っていました。
 恋人時代、束の間の逢瀬でナカ出しし、若さに任せて、すぐにもう一度求めてしまうと、必ず味わった、あの感触です。
 しかし、あの時に味わったのは自分のものでした。
 今、先端を包み込むドロッとした感触は、妻が私以外の男を、胎内に受け止めてしまった現実なのです。
「あぁあ、すごいぃ、いぃい、あなた、ああう、っはうぅうう! またぁ、い、いくうう!」
 凶暴な動きで突き続ける私に、何も知らない妻は、再びの強烈なオーガズム。
 ウネウネと全身を蠢かしながら、見たこともないほど悶え、怒張を迎え入れるように突き上げてくる腰づかいをする妻です。
『ん? こんなに腰を突き上げてくるって? あ、まさか、もっと奥に欲しいって事か? 鈴木さんの怒張が入ってきたくらい奥を?』
 おそらくは、その動きはオンナの本能。
 最奥を突いてもらう覚えたての快楽を求めていたのです。
 無意識に突き上げてくる腰は、私のモノが届かぬ奥へと求める動きに他ならないのだと気が付いた瞬間、強制的に放出のスイッチが押されてしまいます。
「さなあぁあ!」
「あなたぁあああ、あう、またぁ、さな、壊れちゃう、ああ、またぁ、いくううう!」
 両手、両脚が私の身体に巻き付いて、全てを受け止める「大好きホールド」のフェニッシュのナカで、私は大量に放出してしまいます。
 妻もまた、激しくイッたのです。
 何度も何度も届かぬ奥へと放出し、妻は、これまでにないほど声を上げて、しがみついていました。
 そして紗奈の手脚からグッタリと力が抜けたとき、ヒクンと美肉が搾り取る動き。
 まるで「もっと奥に欲しい」と身体が告白した気がして、その思った次の瞬間、力が抜けかかった怒張は、瞬間的に、マックスになっています。
「え? ウソ? あああ、な、何、何? あああん、あなた、すごい、ああぁあ! どうしたの、ね? あなた、ああああん!」
再び可能になった私に、妻は驚きの笑顔を振り向けます。
「ああん、んっ、んっ、す、すごいわぁ、あなたぁ、あああん! あっ、あっ、あっ、い、イク、イク、イク、いくぅうう!」
 オーガズムに達したのを知っても、動きを緩めません。
『この笑顔を、快楽で歪ませるまで、やってやる! 畜生!』
 心の中で叫びながら、乱暴な動きを続けると、またもや「いくぅうう!」と、立て続けにイキ続ける妻なのです。
 そして何度目に挑んだときだったでしょうか。
「はううう、いくうう! いっ、いくぅう、あぁあ、あっ……」
 カクンと妻の手脚から力が抜けてしまいます。
「おい、紗奈? 紗奈?」
 とうとうオーガズムのあげく、意識を飛ばしてしまった紗奈です。
 それが快感のためなのか、それとも、今日一日で、二人がかりで、何度イッてしまったかわからない、オーガズムの疲れなのかはわかりません。
 ただ、グッタリと裸身を伸ばした、その表情には、限りない満足があった気がしたのです。
いつの間にか妻を抱きしめて深い、深い眠りについた私は、目覚めてみると、もう夕方。
 ハッとして、横を見ると、妻も寝たままでした。
 裸のままということは、妻も、ずっと寝覚めなかったようです。
「すげぇ、こんなに赤くなってるじゃん」
 ほとんど丸一日、二人の男に激しく吸われ続けたせいでしょう。一晩経っても、すっかり赤くなっている乳首は、元のピンクには戻れません。
「このオッパイを、吸われたんだよな」
 そう思った瞬間、イヤホンから聴いた、あの淫靡な声が頭を占領して、気が付いたら、まだ眠りの中にいる妻の秘部にむしゃぶりついてしまいます。
 昨夜の名残でガビガビでした。
 しかし、そんなことを気にする気持ちなど、一切浮かびません。ただひたすらに妻の美肉を舐めていました。
 そして、膣口に舌が中に入った瞬間、トロッと蜜が湧いてきたのです。
「ん…… んぅ、んっ? ……んんっ、あっ、んっ、あぁ、あん、ああぁ、あなた? あなた? あああ! いやぁあん! ああぁあ、イク! いくうう!」
 目覚めと同時に、イッてしまった紗奈。
『やっぱり、早くなってるよな?』
 昨日、なんとなくそんな気がしたのですが、もはや確実です。
『イクまでのタイミングが、ものすごく早くなってる』
 それは、私以外の男を知ったせいなのか、それとも、私が経験させて上げられないほどの快感を味わったせいなのか。はたまた、あの時、妻が思わずつぶやいた「倍くらい」もあるチ○ポに子宮を突き上げられたせいなのか。
 理由は定かではなくとも、これまでの妻とは明らかに違っています。あっという間に到達するオーガズムは、これまでとは比べものにならないほど深くなっていました。
「あああぁ、あな、たぁ、ああん、ああう、愛、してるぅ、ね、来てぇ」
 求めるように伸ばされた手に、引かれて、そのまま妻にのしかかります。
 少しばかり焦らそうかと入り口の当たりでツルンと滑らせると「あんん」と、辛そうに響く淫声を放って、すかさず、サッと手が伸びてきます。
『え? 自分で入れる?』
 長い脚を大きく広げながら、自らの手で先端を導いた妻は、次の瞬間、待ちきれずに、腰を大きく突き上げてきたのです。
「あああ!」
 半ばまで入ってしまえば、こんなに淫らな妻を相手にこれ以上ジッとしてられません。
 深々と腰を差し入れて、一気に、最奥へと突き入れます。
 プニッ
 なぜかいつもよりも浅く感じる妻の膣奥は、子宮口の感触にかろうじて届きます。亀頭の先端は、プニュッとした感触を味わっていました。
「あああ!」
 キュッと締め付ける美肉の中は、いくつもの輪っかができています。
 その感触に驚きながらも、猛烈な嫉妬心が燃え上がったのも事実。
「ああああん、あなた、す、すごい、すご、ふ、あふ、あああ、すごいぃいい!」
 他人の怒張を覚えてしまった紗奈のナカは、ミッチリとした肉癖が絡みつくように包み込んで、しかも、今までとは比べものにならないほど強く締め付けてきます。
「あん、あぁあ、あん、あっ、あん」
 甲高く、短い淫声を放つ度に、キュンキュンと締め付け、蠢く膣肉。
 突き入れたときに当たる子宮口のプニッとした感触。
「ああん、あふぅううう」
 それは、私の知っている「妻の美肉」ではなく、別人となってしまった「それ」でした。
 密着してくるヌルヌルの中で、リズミカルに突き入れると、油断するとあっという間に暴発してしまいそうな不安が浮かぶほど。
「あああ、いくうううう! あああん! あな、たあああ! いくっ!」
 懸命に奥に突き入れ、大きく動くと、たちまち何度もケイレンして、オーガズムの頂へと、駆け抜けてしまいます。
 その上、その頂は、富士山のように孤高の高みではありません。いくつもの頂が、高く低く連ねる連峰の稜線でした。
 一つのオーガズムは、次の頂へとつながって、わずかな上下をしながら、いくつもの高みを極めるオーガズムの世界でした。
「ああぁああ! あなたぁ、愛してる、ぁいしてるぅううふううう!」
 スマホの向こうで聞こえた、あのろれつの回らない淫声が再現されます。
『こんな声、出したことなかったのに。ここまで、イヤらしいサナになってしまった……』
 昨日までとは違う妻なのだと打ちのめされて、そのくせ、怒張は膨れ上がります。
『まだだ、もっと、もっとイカせてやるからな』
 頭の中にある鈴木さんとの競争心は、もはや消せない燎原の炎となって燃えさかっています。
 深く、深く突き入れて、大きなストロークをしながら力一杯抱きしめれば、愛情一杯で抱き返してくる紗奈は、やっぱり元の紗奈です。
「紗奈、イクぞ!」
「はああ、きてぇ、あなた、あなた! きてぇ、あああ、うぅう、いっくううう!」
 全身で私を抱え込む「大好きホールド」が、ガッチリと怒張を深く、深くくわえこんだナカで、ドクドクドクと子宮に注ぎ込みます。
「あああ、あなたぁあ」
 セックスの終わりを告げる射精。
 全身を震えさせたしなやかな裸身は、背中を仰け反らせて、束の間、停止します。
「はぁあああ」
 満足げに、大きく息を吐き出すと、そこから、ゆっくりと、オーガズムの残滓に身を任せ、絡みつかせた四肢から力が抜けていきます。
 しかし、射精の快感は、私を満足させてはくれなかったのです。
『まだだ。まだ。もっと妻を。もっと妻の中を!』
 目一杯の射精をした後も、妻を求める心は、満足していませんでした。
 ドクドクと大量の精子を注ぎ込んだばかりだというのに、深々と突き刺さったままの怒張は、力を失う気配すらありません。
「え? ウソッ、あなた、あうっ、い、今、イッたの、イッちゃったの! ねぇ、ぁなた、ああん、す、あうう、すごいぃい! ああぁあ、すごい、ああん、い、いくうう!」
射精を受け止め、終わりだと思っていた妻は、再び、律動を始めた私に驚きながらも、降りかけた絶頂へと強制的に、押し戻されたのです。 
 どうしようもないほど感じてしまう体を打ち震えさせ、抱きしめてきます。
 いつの間にか両脚は、大きく広がって、身体の最奥へと受け入れようとしています。
 ハシタナイほどに広げられた股間に腰を打ち付けて、一番奥へと突き入れると「もっと奥にください」と、物欲しげに腰を突き上げてくるのは、私の知らない女の動きでした。
「ああん、あう! あっ! あっ! あっ! あぁあああ!」
 律動を再開してから、妻が何度上り詰めたのか、もはや分かりません。
 上に乗っている私を跳ね上げんばかりに腰を突き上げて、オーガズムを繰り返す妻の細い身体には、うっすらと汗が浮かんでいました。
「紗奈、さな。サナ、さなぁあ!」
「ああああ!」 
 妻の口からは意味のある言葉はもはや出てきません。もはや何が何だか、考えることもできずに、ひたすら、妻を抱き合しめ、イカせるだけ。
 飛び出した乳首を吸い、張りのあるオッパイをグニュグニュと揉みながら、ただひたすらに、妻を求めている私。
 自分自身も背中を射精の電流が、何度も駆け抜けた感覚はありますが、男の本能が、妻のオーガズムを求め続けさせたのです。
 無意識のうちに、他人によって妻に与えられたオーガズムから、取り戻そうとしていたのかも知れません。
 何度イカせても、スマホから聞こえてきた狂乱の淫声を越したくて、そして、越せない自分に焦りながら……
 最後には、本当に、自分がイッたのかどうかも分からなくなっても、妻を抱きしめる手を離せません。
『どうしちまったんだ? オレ。こんなのムチャクチャだ。でも…… でも、止まらない』
 こんなこと、どうかしてると思いながらも、妻に打ち付けるように動く腰を止めることができませんでした。
「ああぁ、イク、また、イクのッ、ああん、あぁあ! いっ、いくうう!」
 妻が何度イッたのか分かりません。
 自分自身も、そこからさらに二度、射精しましたが、さすがに最後は、何かがでている気がしないほど。
 しかし、勃起は止まらず、妻をむさぼろうとするオスの本能は暴走を続けたのです。
「あふぁ、も、も、う、だ、めぇ、あなた、あ、あううう! ああん!またぁ! イクッ! ああああ! あなたぁ! もう、か、ん、にん、し、てぇええあううう! いくうう!」
「さなぁあ!」
 二人の絶叫が交錯した瞬間、肉体が限界を超えたのを知りました。
 煙も出ない射精をしている間も、妻の華奢な手はシーツを握りしめ、両脚は大きく広がり虚空に突き上げられていたのです。
 全てがいつもと違うフィニッシュ。
 ピクピクと全身を引きつらせながら、オーガズムの間、停止している、しなやかな手脚。
 何も放出できなくても、妻の肉体は、射精を感じたのでしょう。
 手脚をパタンとシーツに伸ばして、ハアハアと洗い息の妻。
 ゆっくりと力を失っていく怒張に、穏やかな疼痛が残ります。
 まさにそれは「本日終了」のお知らせなのかもしれません。
 さすがに、もはや、私も動く気力がなくなって、妻を腕枕しながら見上げる天井。
 そこからどれだけ時間が経ったでしょうか。短くまどろんだのかも知れません。
 たゆたう時間の中で意識に入ってくるのは、顔を私の肩に載せて「あなた。すごかったわぁ」と囁く妻の息づかい。
「あなた」
 愛情が目一杯こもった、優しい声。
その声には、一切の偽りを感じません。
 朦朧とした二人の意識が浮かび上がってくるまでにどれほど時間が経ったでしょうか。
 優しく、愛情のこもったキスを私の頬に繰り返し始める妻。
 柔らかい身体を抱きしめて、キスを返す私。
 見つめる瞳に愛情が
 しかし、かつてないほど激しいセックスに対して「どうして」とは聞いてきません。そこに触れるのを、お互いが恐れていることだけは、以心伝心なのです。
 その怯えのような雰囲気を感じると、思わず「オジさんのセックスは、もっとすごかったんだろ?」と尋ねたくなる気持ちがムラムラと沸き起こりますが、辛うじて口をつぐみます。
 そんなことを知ってか知らずか、愛情一杯の目で見つめている紗奈です。
「愛してるっ、あなたぁ」
 その瞳は、私への愛が真実だと告げています。
「キモチ良かった?」
「ああん、そんなぁ、そんなこと聞いちゃ、いやぁ」
 甘える声で拒否しながら、次の瞬間、唇を耳に当ててきました。
「感じちゃいました」
 そう言って、私の頬にチュッとキスすると、顔だけ起こして黒い瞳で見つめてきます。
「ああん、恥ずかしい〜 もう〜 すごすぎよぉ、あなたってばぁ」
 言葉の最後にハートマークでも付けてしまいそうに甘やかに囁く声。恥ずかしさと言うよりも、嬉しさいっぱいの表情には、深い満足があるように感じます。
「愛してるっ」
 キュッと抱きついてくる可愛い妻。
『でも、オジさんのエッチより気持ちよかった? って聞いたら、こんな風に僕の目を見て答えられるのかい?』
 一番言いたいそのセリフを、果たして出せるのか、自分の心に問いかけていました。
『無理だよなぁ』
「あっ、なっ、た」
 黒目がちの瞳は、真っ直ぐに私を見上げます。
「どうしたの?」
「ううん。大好きよ。あなた」
 軽いキスと「愛してる」に「大好き」
 繰り返されるその言葉が、まるで、自分自身に確認しているように聞こえてくるのは、果たして、本当に気のせいなのか。
『鈴木さんとのエッチと比べてるのか? オレへの同情? いや、そんなことはなくてだな…… しかし、あれほど感じた後のオレとだぞ? うぅ、聞いてみたい。けど、聞いたら、なんて答える?』
 しかし、それを言葉にするよりも、妻のオッパイに溺れることを選んだ私は、繰り返し、乳首を吸い上げ、胸を揉み、時に、胸元へキスマークを付けるバカップルを演じてしまいます。
 いつもなら、人から見られる位置にキスマークが付くのを嫌がるのに、私の唇が首筋を辿ると「くすったいわ」と、クスクス笑いながら、首を差し出しています。
「ほら、また、弄っちゃうぞぉ」 
 ヌルヌルのその場所を、指で辿れば、クリトリスがピョコンと自己主張をしています。
「あんっ」
「ほら、ほら、ほらぁ、エッチな奥さん、ほら、また感じる?」
「ああん、いやん、もう、だめぇ、ああん、ああっ、あっ、あっ」
 早くもオーガズムへ登り始めたところを、パッと切り替えて、胸元にキスマーク。
「ああん、もう〜 あなたがエッチなのよぉ」
「だって、また、こんなに感じてるよ」
「あん!」
 乳首を吸い上げれば、ピクンと反応してしまう敏感な身体。
「ほら、エッチな身体に、エッチなシルシをいっぱい付けちゃうぞ〜」
 そう言って、今度は胸の谷間に、キスマーク。
「ああん、そんなに付けたら、あなたのシルシだらけになっちゃうぅう」
 そう言いながら嬉しそうに、私の頭を抱えるのです。
 今時、高校生でもしないような、まるっきりのバカップルです。 
 イチャイチャしながら陽が沈むのに任せます。
 その間も、時に妻の乳首を吸い、オッパイの感触を楽しんでは、濡れていることを確かめて、短い淫声をあげさせては、イカせる直前に、パッと止めてしまう。
 さすがに、止めた直後は、ちょっと恨みがましい目で見上げてきますが、相変わらず愛情に満ちた瞳で見つめています。
 そんなイタズラの合間に、恋人時代の思い出を語り、他愛のない話を繰り返す私たち。
 イキそうになってもイカせない愛撫と、甘いイチャラブの睦言を延々と繰り返すうちに、いつか、街灯の明かりがぼんやりと部屋の窓を照らし始めます。
 その間にも、全身を撫で、あらゆる所にキスマークを付けまくっていました。
 まるで「オレのモノだ」と刻印するかのように。
 そして、何回、寸止めしたか、数もわからなくなったほど繰り返した頃「ねぇ」と言いづらそうな雰囲気の妻。
 暗くて、お互いの表情は見えません。
 しかし、胸にもたれかかるようにして私の顔を見つめているのを十分に意識しながら、次の言葉に備えます。
「ね? 聞かないの? 何をしたか」
 私の機嫌を恐れるかのように、こわごわとしたしゃべり方。こんな妻は初めてです。
 イキそうになるまで愛撫されて、けれども、決して、イカせてもらえぬまま、散々に焦らされた妻は「イカせて」と言う代わりに、質問してきたのです。
 女性の本能すら抑えるほどに、妻はおびえていたのかも知れません。その時の妻にとっては、私の機嫌こそが、世界の全てだったのです。
「聞かないよ」
 自分でも驚くほど、ごく普通の声で答える私。
「なんで?」
「最初に、メールで聞いたら、ナイショって言われたからね。聞いちゃいけないのかと思ってさ」
「怒ってる?」
 一瞬で、強い緊張感を持った張り詰めた声になる妻。
「怒っているわけないじゃん。だって、オレがやってあげなよって言い始めたことだよ?」
「そうだけどぉ」
「ただ、さ、聞いても良いかな?」
「あっ、は、はい」
「じゃあ、聞いちゃおうかなぁ」
「はい」
 私の胸に顔をつけたままの姿ですが、緊張しているのが伝わってきます。
「じゃ、聞くね。紗奈は、オジさんに何をして上げたの?」
 ためらいは、一瞬でしたが、その分だけ、私の腕に捕まる手には、グッと力が入っています。
「初めはね、手だけでしてあげたの。すご〜く硬くなってたわ。オジさん、喜んでくれたのね。でも、ホラ、私、そういうのしたことないから、なかなか出なかったのよ」
「うん。それで、どうしたの? 責任感の強い君だもん、途中で放り出すようなことはしないだろ?」
「えぇ。だって、すごく辛そうだったの。それで、オジさんが、あの、あの〜」
「セックスさせてって?」
「正直に言います。そういう感じのことを言われたの。あ、でも、怒らないでください、オジさんがいけないわけじゃなくて、私が上手くできないのがいけないんだから」
「大丈夫、男の気持ちは分かるからね。そのくらい頼んで当たり前さ。うん、それで紗奈はどうしたの?」
 暗くて表情まで見えませんが、明らかにホッとした様子です。
「でも、あの、ホントにしちゃうのは、あなたに悪いと思って」
「うん」
「それで、困ってたんだけど、くっつけるだけって言われて」
「えええ! 紗奈のオマンコに直接くっつけた? 入れたの?」
「くっつけるだけって言われたんだもん」
 暗くてよく見えなくても、唇をツンと尖らせたのは甘ているようにも見えます。
「直接だろ? 紗奈の濡れたオマンコに、ヌルヌルってくっつけたの?」
 ワザと下品な言い方をしたのに、妻は、コクリと頷くのです。
「へえ〜 紗奈もヌルヌルになって、そこにくっつけて出したんだ?」
 またしても、コクッと首が動いただけ。
「その時、紗奈は、パンツだけ脱いだの? それとも全部?」
「あぁあ、言わなきゃ、ダメ…… ですよね?」
 しばし、沈黙した後「全部脱いじゃいました。胸も触られました。ゴメンなさい」と腕にしがみつく手にギュッと力が入ります。
「わぁあ、すごい。頑張ったね、紗奈」
「怒らない?」
「怒るわけがないじゃん」
「だって」
「鈴木さんのために、紗奈は頑張ったんだもの。オジさん喜んだろ?」
「うん。喜んでくれたけど。あの、あなた。ごめんなさい。あなたが、怒らないでくれて良かった。ホントに、ごめんなさい」
「怒るわけないって。元々、僕が言い始めたんだからさ」
「でも、私、奥さんなのに」
「い〜から、い〜から。乳首をいっぱい吸われたんだろ? この胸も揉まれて。どう、オジさんのテク。いっぱい感じた?」
「あ、それは、その、あの、でも、ちょっとだけ。そう、ちょっとだけよ? あの、ほら、オジさんもかなり遠慮してたし」
「それはウソでしょ。紗奈のオッパイだよ? 一度触ったら手を離せないに決まってる。それに乳首もいっぱい吸われたんでしょ? 感じた?」
「す、少しだけです。ほんとに、ちょっとだけ」 
「でも、感じたんだろ? オッパイも、オマンコもたっぷり触られて」
「あの、ちょっとだけでしたから。ホントに、少しだけ、です」
 妙にこだわって「少しだけ]を繰り返す妻に、なんだかムッとして「じゃあ、何回くらいイッたの?」とダイレクトに尋ねます。
「え? そんな、私は、そんな、あのぉ」
「言っておくけど、後でオジさんに聞くからね、紗奈が何回イッたか」
「そんな!」
「当然だろ? 紗奈が何回イッても怒らないけど、なんか、隠してるみたいじゃん? ウソをつくのはダメだったね? 言っとくけど、ウソをついてたら、本気で怒るからね」
「そんなこと、オジさんに聞かないで! お願いよ」
「だって、君が誤魔化そうとするからだろ? 全部話す約束だよ。ちゃんと、本当のことを聞きたいのは当然じゃん」
「だけど、そんなの、恥ずかしぃし、あの、ほんのちょっとだったし、でも、あの……」
 どんどん声が小さくなっていったのは、妻が追い詰められていった証しでした。
声だけではなく、身体自体を縮こまらせてしまう反応が、なんだかとても可愛くて、もっともっといじめたくなる気持ちと、懸命に「夫以上に感じてしまった事実」をなんと隠そうとする妻を健気に感じる気持ちが、同居していました。
『ああ、こんなに紗奈が可愛いなんて、でも、これって、紗奈は、オレのコトを傷つけないようにしようとしてるんだよな?』
 そんな風に考えてしまうと、なんとも、男として「負けた」感覚が、私を襲ってきます。
『鈴木さんが、オレよりもすごい。紗奈は、それを知ってしまった……』
 ふと我に返ると、窓の外から街灯が薄ぼんやりと二人を照らしています。 
 表情までは見えませんが、刺すように真剣な視線を感じていました。
 真剣で、熱い視線。
 見えない妻の瞳を正面から見つめ返すと、今度は妻の視線は下がり、その視線を辿って、ついでに、柔らかな膨らみなどを見ていると、いつの間にか、視線が突き刺さってきます。
 腕枕をしている妻とは、お互いの息が飲み込めそうな近さ。
 柔らかな乳房が私にくっついています。 
 もちろん、夫婦の間で、オッパイがくっつくなんて、気にするわけもありません。
 むしろ、反対の手で、プニプニと揉むと、緊張している紗奈の方も、なんだか嬉しそうです。
 ピトッとくっついて、ラブラブに見える二人は、言うに言えず、聞くに聞けず、私を見つめる視線が突き刺さっては逃げていく、というくり返し。
「何回イッたのか」という単純な質問に、応えられないまま、妻と私の視線は鬼ごっこを続けています。
 何度目の視線の鬼ごっこをした時でしょうか。とうとう、私の方が音を上げて、言葉を吐き出します。
「ねぇ、紗奈。今回のボランティアだけど、さ」
「ボランティア…… あっ、はい」
「いいね? ウソをつくのは夫に対する不貞だよ。だって、ボランティアを頑張ったのは褒めるけど、ウソは悪いことだから。どんなに恥ずかしくても、夫に秘密を作ってはダメだろ?」
「ごめんなさい。はいっ」
 いきなり「ごめんなさい」と言ってしまうほど、妻の心は、私に対する申し訳なさでいっぱいのようです。申し訳ないと言う、その気持ちの源が「夫との時よりも快感を得てしまったこと」でないことを祈るばかりです。
「謝らなくて良いから。ボランティアしただけだもん。オジさん、喜んでくれたんだろ? それは、すばらしいボランティアをしたってことさ」
「うん。ボランティアを、オジさん喜んでくれたと思うわ」
 ボランティアという言葉にすがって、妻の言葉と、そして心が軽くなった気がします。
「じゃあ、正直に言ってよ。ボランティアしてるとき、イッちゃったのは、一回や二回じゃないね? それとも夫にウソをつくつもり?」
「だって、そんなの、覚えてないモノ」
「なんだ、数え切れないほどイカされたんだ」
 ワザと驚いてみせると「だって、緊張してて、あんまり覚えてないの」と小さな声。
「数え切れないほど、たくさんイカされたのは、ホントなんだね?」
 しばしの沈黙の後「ゴメンなさい、あなた」と本気で泣き出しそうな声。
「謝ることはないよ。紗奈がイクことも含めて、ボランティアだと思うよ。だって、オジさん、言ってなかった? 紗奈がキモチ良くならないと出せないとか、なんとか」
「あ……  うん、たぶん、言ってた、と思う」
 即答した所を見ると、インパクトのある体験の中で、一つずつの会話そのものも、思った以上に、覚えているのでしょう。
「だろ? 男にとって、相手の女性が感じることは、とても大切なんだよ」
「そうなの?」
「うん。だから」
「あああん、いやん、ああん、こんなぁ、なに、ああん、これぇ、なにぃ、ああ!」
 いきなり甘やかな声を上げる妻。
 私の指は、太股の間に割り込み、ヌルヌルのその場所に、あっさりと到達してしまいます。
 ヌルッとしている秘裂を滑り込み、慣れ親しんだクリトリスをピンポイントでヒット。
「あああん、あなたぁ」
「おぉ、ヌルヌルだね」
 さっきから、イキそうになる度に止めてきた甲斐あって、その場所はヌルヌルです。
 秘液が溢れるほど湧き出している秘裂の中で、クリトリスを、最大速度で左右にクリクリいじめると、焦らしに焦らされた身体は、ピーンと反り返ってしまうのです。
「ああん、ダメぇ、あん、あなたぁ、お話、あうう、するんじゃ、ないのぉ、ああん、だめぇえ、あぁあ、ダメ、あなた、ダメぇ」
 そう言いながらも、仰向けになった両脚は、私の手を邪魔しないように広がってしまうのが、快感を覚えてしまった人妻の身体なのです。
「イカせて上げるよ」
「あぁ、恥ずかしぃわ、あなたぁ」
 恥ずかしいと言いながら、オーガズムに全身が期待していました。
 私の左手に掴まるようにしながら、両膝を浮かせて、大きく脚を広げています。ピョコンと飛び出た感じのクリトリスを、猛烈な速度で攻め続けました。
「あああ、あっ、あっ、あっ、だめぇ、あなたぁ、私、もう!」
 ビクン、ビクン、ビクン
 両脚が何度もひくつくのは、オーガズム直前の反応です。
「よし、イケ、イッていいよ、ほら、イケ!」
「あああ、いい! ああん、イク、イク、イクッ、イクぅう!」
 さんざんに焦らされた身体だけに、ピークは小さくとも、あっさりとイッてしまいます。
 はふぅ〜 ハア、ハア、ハア
 大きく息を吐き出した妻は、オーガズムの残滓の中で荒い呼吸。全身がヒクヒクと震えているのは、満足の証拠でした。
 妻をイカせて、ホッとしているのが、我ながらなんとも奇妙です。
「こんなこと、あたりまえなのにな。だけど、こうしないと、落ち着けないってのも事実だし」
 見事に、派手なイキ方をした妻に、そっと唇を重ねます。
 大歓迎とばかりに迎えてくれる舌は、自ら絡みついてきます。ねっとりとしたキスの間、唾液までも嬉しそうに飲み干して、もっとと蠢くのです。
 たっぷりと舌を絡め合いながら、いっそう濡れてしまったその場所を、ゆっくりと撫で上げていました。
「ああぁん、もう〜 どうしたの、急に」
「ふふふ。ちょっとヤキモチを焼いちゃってね」
「ヤキモチ?」
「そ。だから、イカせたくなった」
「あなた?」
 その声には緊張が走ります。私の機嫌を心配したに決まっています。
「ううん、違う違う、ぜんぜん嫌な気持ちじゃないんだ。むしろ、人様のために、身体を張ってボランティアをした君を誇るよ。ただ、それと、ヤキモチは別」
 私は妻を優しく抱きしめながら、何度も、軽く唇を重ねます。
 六度目のキスをした後、ようやく、でも、まだ恐る恐るといった風情で「そうなの?」と声を上げた紗奈。
「うん。ヤキモチは焼くけど、それは全然不快なモノじゃないんだ。むしろ、嬉しいかな」
「えええ? そうなの?」
「だって、分かってるだろ、僕の趣味。いっつも、エッチの時、君にどんなこと言わせてたっけ?」
「あっ……」
 ずっと前から「オジさんに抱かれるシーン」を想像させてきたのを、妻は今思いだしたようです。
 しかし、今この瞬間まで忘れていたのが、現実のオジさんとのセックスが、あまりにもすごすぎたからだったからではないか、というのは考えすぎでしょうか?
 私は、そんな考えを振り払うために、軽く頭を振ってから、妻のオッパイに手を伸ばします。
 その手を邪魔しないように慌てて、自分の手をどかして、差し出してくれる今日の紗奈は、やっぱりひと味違っています。
「いっておくけど、それだけじゃないんだよ? 実際、君はオジさんのために、一生懸命、頑張ったんだから」
 またもやキスで誤魔化しながら「僕はそれが誇らしいんだ」と、嬉しそうな声を作ります。
「なんか、変な感じよ、それ。だって、私、あなたの奥さんなのに」
「うん。僕だけの奥さんなのに、オジさんに、たくさんイカされちゃった」
「いやん、そんな風に、言わないで。ごめんなさい、あなた」
「こうやって恥じらう君って、最高だよ」
「もう〜 それって、ヘンな趣味だと思うけど」
「い〜の、い〜の。オジさんにイカされた回数分くらいは、僕も、イカせてみたいってだけだからさ」
「そんな、なんか子どもみたいよ」
 微苦笑した妻は、チュッとキスしてから「あなたには、いつも、う〜んと、素敵に、してもらってます」と、真剣な表情でいったのです。
 妙に「あなたには」という一言が気になったのは、あの狂乱のセックスを聞いてしまったからでしょうか? しかし、頭でそう考えるよりも先に、私の口は、反射的に「オジさんよりも?」と聞いてしまっていましたす。
 その瞬間、全くためらいを見せずに、コクリと頷いて「もちろんよ」と言えるのですから、女性とはすごい生き物だと思います。
 事実をこの耳で聞いてなければ、まさに、そのまま信じてしまいたくなる、そんな誠実さに溢れた返答をする妻。しかし、真実は、私が聞いてしまった、あの狂乱ぶりです。私には、とうてい与えられないような快感を、紗奈は、たっぷりと身体に刻まれてしまったのです。
『それも、二度もだもんな。紗奈は、二度目を拒否しなかった、いや、けっこう積極的だったよな?』
 真実が同アレ、夫のプライドを守るためになら、綺麗にウソをつけるのですからオンナはすごいと言うべきでしょうか。そのくせ、一切のためらいを見せずにウソをつけるくせに、まるで慰めるみたいに、全身でギュッと抱きついてきたのですから、案外、正直なのだと言うべきかも知れません。
 抱きついてきた妻のオッパイをキュッと掴んだまま。手に余るほどのEカップは、どこまでも指がのめり込んでいきそうです。
 優しい弾力のオッパイをムニュムニュしていると、少しだけ救われる気がして、離せなくなります。
 愛撫にもならず、ただその柔らかさに逃げている私を、嬉しそうに見つめている紗奈。その視線を十分に感じながら、私は「そうそう」と話を続けました。
「君がイク話だったね」
 その瞬間、身体がピクンと反応したのは、たっぷりと覚えさせられた快感を思い出したからでしょうか? それとも、さらに話すことで、私を傷つけることを恐れたからでしょうか。
 気が付けば、掌の中心で、腫れぼったくなった乳首が尖っていました。
「オジさんも、君をたくさんイカせて、喜んでいただろ?」
「えぇ…… たぶん」
「そうだよ。男というのはそういうモノなんだ。だから、君が、たくさん、何回もイッたなら、それは何よりのボランティアをしたことになるんだ」
「そういうものなの?」
 納得できている声ではありません。しかし、実際にオジさんのデカイチンポを受け入れて、身体の奥深くに、注ぎ込まれてしまった妻としては、信じるしかないのです。
 どれほど信じられないことであっても、夫の言葉にすがりつけば、救われることを、本能が告げているはず。
 いわば「夫の言葉を信じることだけが、許される方法」である以上、信じられるかどうかではなく、信じるしかないのです。
 実際、妻の瞳は、私の言葉を信じようとしています。あとは、妻にとっての「見たい現実」を与えるのが私の役目でした。
「で、でもぉ」
「でもじゃなくて、信じてよ。夫である僕が言うんだからね。それとも夫が信じられないの?」
「ううん、信じますけど」
「信じるんだよ。ね?」
「えぇ。信じます」
「うん。ありがとう。じゃあさ、ハッキリと教えて欲しいんだ。オジさんに、たくさん、すっごくキモチ良〜く、イカされたよね?」
 一瞬、息をのんだ妻は、今度は「はい」と答えてから、私の胸に顔を埋めて「ごめんなさい」と、小さな声を出すのです。
「謝らなくていいんだってば。うん。良く答えてくれたね。君は今日いっぱいイカされた。その時、全部、脱いでたんだったね」
 さすがに、恥ずかしいのでしょう。声を出さずに、ただコクリと頷く紗奈。
 妻の表情には、私への愛情が溢れているのが、私の背中を押しています。その白い背中を撫でながら、敏感な耳に息を吹き込むようにして囁きました。
「でも、それで、わかったよ」
「え? 何、何が分かるの? 私、何か変わっちゃったの?」
 いきなり顔を上げた妻の語調は、驚くほど強いもの。何かが変わったなんて一言も言ってないのに「変わってしまった」コトを気にした妻なのです。
 それが、むしろ私を驚かせました。
『ひょっとして、紗奈は、自分の何かが変わった自覚があるのか?』
 さすがに、それは聞けません。
 だから、焦る妻の頭をポンポンと優しく叩いて、チュッとキス。
 ゆっくりと喋り始めます。
「うん、変わっちゃったよ。このオッパイも、このオマンコも、ぜ〜んぶ、見られて、自由にされて」
 オッパイも、オマンコもと言いながら、愛撫の手つきで触っているのに、妻の目は見開いたまま。
「い〜っぱい、イカされちゃった半日だったろ?」
見開いた目は、泣きそうなまでに悲しみの光を浮かべています。
「この半日で、君は、すっごく……」
 息をするのも忘れて見つめる視線が、突き刺さっています。それを十分に意識しながら、一呼吸置いて、妻を抱きしめながら、笑顔を作りました。
 えっと驚いた顔になる。
「すごく、綺麗になった! 紗奈。綺麗になったよ!」
「もう〜 そんな冗談、止めてください。私が、恥ずかしいことになってしまったのは、何度でもお詫びしますから。ね、あなた。許して」
 腕の中でイヤイヤをする妻の背中を撫でながら「綺麗だよ、紗奈」と繰り返してから、素直なストレートヘアの頭をゆっくりと撫で下ろします。
「ごめんなさい、あなた」
「だから、怒ってないってば。謝らなくて良いんだ」
「だって! 私ったら、あなたじゃないのに……」
「い〜の、い〜の。ボランティアだったんだからさ。許す許さないじゃないんだ。こういうボランティアをしたんだから、ある程度は仕方のないことさ。謝る必要なんてないんだ」
「だって、そんなの! あれは仕方のないことなんかじゃ!」
「じゃあ、紗奈は、鈴木さんと、エッチな気持ちになって、したくて、エッチをしたのかい?」
「そんなつもりはホントにありませんでした。信じて! あなた、そんなことはないの!」
「ウン。もちろん信じてるよ、だから言ってるじゃん、ボランティアだろ? って」
「でもぉ」
「あのさ、エッチして上げなって言ったの、元々はオレだよ? なんで、頑張ってボランティアした妻を怒ると思うの? そんな小さな男かい、君の夫は」 
「そんなことを言っても、私、あなたを裏切っちゃったのに」
「裏切ってなんてないよ。君は、僕に勧められたボランティアを頑張っただけだろ?」
「でもっ」
「いいんだってば!」
 妻の言葉を断ち切るように言葉を重ねました。
「ね? いいんだから。ボランティアをしたんだから仕方ないの。その代わり、夫になんでも正直に話すのが、妻の務めだよ。夫婦で秘密を持つのは裏切りだからね?」
 妻は困った表情のまま、黙り込んでから、しばらくしてポツリといました。
「何を話せば良いんですか?」
 納得したのかどうかはともかくとして、これでつまり「全部話すのが、妻としてするべきこと」ってくらいには、なったはず。
 私は、声のトーンを明るくして「そうだなあ」と妻の顔に近づきます。
「何から聞こうか? そうだ! オジさんのチンポ、僕のよりデカかった?」
 一瞬身体を硬くした妻は「たぶん、少しだけ」と、優しいウソ。
 しかし、これは責める気持ちになりません。
「オジさんとのエッチ、キモチ良かった?」
 今度は、声も出せません。しかし「ノー]といわない形で、妻は答えたのです。
 その瞬間、私は、勃起していました。
「え? 何? あなた? んっ、んぐっ」
 キスを仕掛けながら、アウンの呼吸で、長い脚を広げる柔らかな身体にのしかかりました。
 膝を軽く持ち上げて、私が侵入しやすいカタチを、自然と作ってくれる妻のそこは、濡れていました。
 ヌルッ
「んっ」
 カチカチの怒張は、そのまま、あっさりと美肉に包まれるます。
 ゆっくりと奥へ、奥へと入れていくと、ひっつめた息のようなモノを漏らしましたが、その黒目がちの目は大きく見開かれてジッと見上げています。
 私は、視線を合わせたまま、グッ、グッ、グッと大きく腰を使います。
「どう?」
 そのセリフには「オジさんと比べてどうか」という意味が込められていることに、妻が気付かないわけありません。
 黒目がちの瞳をパッチリ見開いていた妻は、ちょっとだけ困った貌になった後「いいわ」と答えたのです。
 再び、深く、深く、深く。
「あんっ」 
 私の届く一番奥まで、ゆっくりと到達します。
「んふぅう」
 子宮口のプニッとした感触にギリギリ届いた瞬間、見開いた目をギュッとつぶって、艶めかし声を微かに漏らす紗奈。
 デカチンポの洗礼を受けたのに、少しも緩くなってないのは人体の奇跡と言うべきか。いえ、むしろ、普段よりもキツイ感じがします。
 深々と差し込んだまま、上半身だけを離して、お互いに見つめ合うと「感じるか?」と再び問えば「はい」と控えめに応える妻。
 何を言わせたいのか。
 何を言えないのか。
 私たちは、身体をつなぎながら「言え」「言えない」の無言のせめぎ合いをしていました。
『オジさんのチンポで、オレの時よりも感じたんだな?』
『ダメ。それは言えません。言ってしまったら、あなたが傷つくから』
 頭の中で、そんな会話が聞こえていました。
「紗奈。素直に、言っていいんだよ」
「あぁあ、あなた、ああ、感じます。あなたぁ」
 欲望のままに、それを言わせようとする私と、それが分かっているからこそ、本当のことが言えない紗奈。
 パッチリと見開かれた黒い瞳は、うっすらとにじむ涙で潤んでいました。
 ゆっくりと律動を始めます。
 ヌル、グニュ、ヌル、グニュ、ヌル、ヌル、グニュ
 湿った音さえ響きそうなほどに濡れている美肉のナカを、肉に包まれて律動し続けました。
 抜き出していく時は、動きを邪魔するように、怒張の根本をガッチリと強く締め付け、反転して挿入していくと、奥の方のヒダヒダが、大歓迎して包み込んできます。
 つまり、ピストンのどちらの動きであっても、ヒダの一枚に至るまで、最高に気持ちの良い、オマンコになっていたのです。
『すごいぞ、これ。こんな風に締め付けてくるなんて。こんなこと、今までに、あったか?』
 かつてない密着感と、ヒダの当たる気持ちの良いオマンコなのです。
 そして、そのオマンコを差し出すように、すらっとした脚は、いつのまにか大きく広がっています。
 ただ広げているのではなく、膝ごと大きく持ち上げたこの形では、尻の穴まで見えてしまうほど、丸出しになっています。ちょうど、男の手によって、このカッコウにしたなら「マングリ返し」とでも言うのでしょうか。その一歩手前のところまで、妻は自らの意志で、脚を持ち上げているのです。
 私のモノが、最も奥深く入る、このカタチを、オンナの本能が選び取っているのなら、それは何よりの「答え」なのかも知れません。
「紗奈」
「あなたっ」
 お互いを見つめ合いながら、恐らく、お互いの頭には別の人物が浮かんでいるセックス。
 つながっているのに、つながってない。いや、その人物を通して、つながっていると言うべきでしょうか。
 次第に律動を早めていくと、ついに、妻の瞳は閉じられ、整った唇から微かな声が漏れ始めます。
「あぁ、んっ、あっ」
 甘やかに響く声は、作り上げた淫声ではありませんが、決してそれが快楽の嗚咽ではないのを、私は知っています。
 そして、背中に手を伸ばし、かき抱いてくる妻は、今の快感がウソではなくても、もっと奥をえぐられる快感に、決して夫のものでは届かないことを知っているのです。
「あなたぁ」
「紗奈」
「愛してるの! 愛してるの! 愛してる! あなただけ!」
 私を懸命に求め、訴えかける声。
 私の身体をかき寄せる細い腕。
 私をできる限り受け入れようと広がった、しなやかな脚。 
 全ては私を求めていて、その全身全霊で、私だけを「愛している」のだと訴えていました。
 妻への愛おしさが募ります。
 その時、ふと、抜き出す動きをするのが惜しくなったのです。
 深々と差し入れた怒張を、ずっと、妻に包んでいて欲しい。そんな思いが、私の動きを変えました。深々と入れたまま、さらに奥へとズン、ズン、ズンと突く動き。
 ヌルヌルの美肉に包まれたまま、先端が子宮口をわずかにノックします。ゆっくりとしたテンポで、しかし確実に。
 一番奥まで入れた怒張を、さらに押しつけて、ズン、ズン、ズン。最初、ただ黙って突かれるままの紗奈の顔が、突然紅潮したのです。
「あああ! あなた! いい!」
 腰がウネウネと動き始めました。
 思いつきで始めたことですが、一体何が良かったのでしょうか。
 妻に体重がかからぬように支えている両腕を、妻はガッチリと掴んできたのです。まるで、大風に吹き飛ばされまいと木に掴まっている少女のように、必死の形相です。
「ああん、いい、あぁあ、あなたぁ、いい、いいのぉ、これぇ」
 根本の部分が妻の肉と当たっています。
 押しつける度に、痛いほど圧迫することになりますが、それすらも快感になっているのでしょうか? 
 ギュッと怒張を押しつけられたまま、しなやかなカーブを描いた細い腰が、勝手にクネクネと動き始めます。
 包み込む美肉は、怒張を包み込んだまま、微妙にこすれ、締め付け方が変化します。 
「あああ、いい、あなた、すごい、どうしたのぉ、ね、これぇ、あぁあ、ああああ」
 おそらく、外側から見ている人がいたなら、私たちはただつながっているだけに見えたはず。確かに、本当にわずかな動きを、静かに繰り返しているだけ。
 それなのに、頬を紅潮させた顔は激しく振られ、全身をヒクつかせて反応している妻。
「良いぞ。そのまま、感じて。続けるからね」
「あああああ、あなたっ、あなたぁあ、あぁあん、すごい、何か、来ちゃう、来ちゃいます」
 妻の声を、どこか遠くで聞きながら、ゆっくりと、同じリズムで、私は子宮口をズン、ズンと突き続けたのです。
「あぁあ、ね、ね、あなた、イク、イクッ、わたしぃ、イクぅう!」
 あっという間のオーガズムに、私の方が拍子抜けするほど。
 挿入してから、ものの五分とかかっていません。
 太股がヒクンヒクンとケイレンして、白い背中はブリッジを作り出す、完璧なオーガズム。
 ハァ、ハァ、ハァ
 圧倒的に満足したのか、グッタリした身体からは力が抜けてしまいます。
 荒い呼吸が治まっていないのに、そのしなやかなラインを持った腰は、意志とは無関係に、ウネウネと動き続けていました。
 ふぅ〜
 息を吐き出した妻は、恥ずかしそうに「イッちゃいました」と顔を横に向けます。
「なんで、こんなに、早く?」
 そんなことを聞いても、きっと「分かりません」と答えるだろうなとおもったのですが、聞かずにはいられなかったのです。
 少しだけ首を振った後、目を合わせないまま「あの、ほら、感じるところが」と小さな声。
「クリトリスのこと?」
 小さく唇を尖らせて「だって、ギュッて押されちゃうと、電気が流れるみたいなんだもん」と、小さな子がいじけてしまった時の口調の妻、チラッとこっちを見上げます。
「あなた、キスして」
 つながったまま、身体を重ねて求めに応じると、両手を首に回して、下からむさぼってきます。私を捕まえながらの激しいキス。
 ピチャ、ピチャ、んっ、ぐっ、ピチャ、じゅるっ、ピチャ
 絡みつく舌。
 タラタラと流れ込む唾液を、妻は嬉しそうに飲み下し、もっとと言わんばかりに舌を絡みつかせてきます。
 その間、怒張を包み込む美肉が、信じられないほどの収縮と、奥へ、奥へとヒダヒダが一斉に蠢くのには、ビックリしてしまいます。
「あなたっ」
「ん?」
「すご〜く、キモチ良かった。感じちゃいました」
 自分から、こんな風に感想を言うのは珍しいこと。しかも、その声には、羞恥よりも、嬉しさが濃厚なのです。
 ゆっくりと頭を撫でます。
 ストレートヘアの流れに沿って、撫でると、官能的なまでに滑る手触りは最高です。
 無言のままの求めに応じて、もう一度そっとキス。
 その瞬間、怒張を包み込む美肉がキューッと縮まったのがなぜなのか。恐らく妻自身も分からないかも知れません。
 子宮口にくっつく先端を求めるように、ウネウネと腰を振り続けています。
 それでも、時々、切なげに眉を寄せながら、腰がグッと持ち上がるのは、ひょっとして、本能が、その奥までを求めているのかと思うと、私の心は平常心ではいられません。
『オジさんのチンポの味を、覚えてしまったのか? もっと欲しいのか?』
 決して、本当のことを言わないはずの「質問」は、頭の中で無限ループで鳴り響いています。
『だけど、聞かなきゃ、いや、言わせなきゃいけない』
 ヒクンヒクン、収縮する美肉を味わいながら、頭の中では、紗奈の口から「オジさんの方がすごく感じた」と言う瞬間を思い描いてしまいます。
 でも、もしも他の誰かが私の思考を知って「お前は、本当に、それを言って欲しいのか」と問われたとしたら、答えが出なかったかも知れません。
「ああん、あん、あん、ああぁ、あなたっ、あなたぁあああううう!」
 私は、答えを出す代わりに、再び、グン、グン、グンと、妻の膣奥をノックしています。
「あああぁ、あなたぁあ」
 粘り着くような淫声が、たちまち漏れ出して、妻は、再び、オーガズムへと登り始めたのです。
 一度登り始めれば、ついさっき味わったばかりの頂点までは、急角度。
「あああ、イクっ!」
 短い声を上げ、ビクンと身体を引きつらせ、ギュッと下から抱きついてくるオーガズム。
『おぉ、すごい、こんなに締まる。だが、まだ、出さない、出せないぞ』
 キュン、キュンと精子を搾り取る動きの膣に辛うじて耐えながら、妻が「戻って」来るのをゆっくりと待ちました。
 はふぅ〜
 大きく息を吐き出しながら、力を失う身体。白い裸身は、私の下で、ゆったりとベッドに伸びてしまいました。
『なんだか寝ちゃったみたいだな』
 全てを忘れた穏やかな表情で目を閉じていました。
 ハア、ハア、ハア
 まだ、オーガズムの甘い名残から回復しきってない顔を上から覗き込みます。
 窓からこぼれてくる街灯の明かりに照らされた顔には、ほつれ毛が汗で張り付き、ホワッとした表情。もちろん、射精してない私は、まだ力を残したまま。妻の脚は、大きく広がって、私を受け入れています。
『そろそろだな』
 たゆたうような時間で包まれている妻に、できる限り優しい声を出しました。
「で、さ」
 オーガズムの残滓で気だるい顔は、ゆっくりと目を開けます。
「このオッパイも、オマンコも、ぜ〜んぶ見られて、自由にされちゃったんだろ?」
 穏やかだった表情が一変して、息を飲んで返事に詰まる妻。眉を中央に寄せて、驚きと困惑のない交ぜになった表情のまま目を見開いて、こちらを見つめました。
「どう? 自由にされちゃったね?」
 キュ〜と、言葉の代わりに、強烈な収縮をしてくる美肉。それこそは、肉体を使った返事に相違ありません。私は「はい」と返事をした美肉に、二度、三度と腰を使います
「んっ、あっ、あああん! ダメぇ、今、イッたばかりだからぁ」
 切ない声を上げながら、ビクン、ビクンと仰け反るのは、ビンカンになりすぎている身体を、さらに掘り起こされる甘美な苦痛なのかも知れません。
「お返事は?」
 ヌルヌルの美肉がケイレンしながら包み込むのを押し広げるように、さらに腰を使いながら、紗奈? と名前を呼びます。
「あぁあ」
 答えようとしたのでしょうか、それとも、快感に逃げ込みたかったのか。うめくような淫声を漏らしして、顔を振る紗奈。
「ちゃんと教えて」
 深々と挿入したまま、動きを止めて、顔を覗き込みました。
「はい」
 哀しげな表情のまま開いた瞳は澄み渡り、小さな声の返事は、切々とした妻の思い載せた優しい声でした。
「ちゃんと話してくれるね?」
「はい」
「うん。それでいいよ。オッパイ、たくさん吸われた?」
「すこ…… はい。たくさん吸われました」
 ヒクヒクヒク
 下の口が、勝手に「快感を思い出しました」と告白しているみたいです。
 素直になってきました。
「オッパイも、オマンコも、裸になって、オジさんの自由にされて、たくさんイッちゃったんだよね?」
 今度は、言葉ではなく、コクッと頷くだけ。
「だめ。ちゃんと答えて」
 静かな動きで、圧迫するように奥を、グッと突きつけると、クッと喉の奥で、微かな音をさせてから「いっぱい、イッちゃいました」と恥ずかしそうに言って、私に抱きついてきます。
「キモチ良かったんだよね。い〜っぱい、エッチな声を出したかい?」
「たぶん。あの…… 良く覚えてませんけど、出ちゃったと思います」
「いっぱい濡れた?」
「濡れてる、って言われました」
 慎重に言葉を選びながらも、ウソは言っていません。
「オジさんは、紗奈のオマンコにくっつけて出したって言ってたよね?」
「えぇ」
「ヌルヌルの場所に、くっつけられて、何度もイカされたんだよね?」
「あああ! いやぁ、恥ずかしぃ。あなた」
「答えて」
「は、はい」
「ハイじゃ分からない」
「あああん、イジワル…… オカシクなっちゃいました。何回もです」
 声が震えています。
「違うよ、オジさんのチンポで、イカされたのか、って聞いたんだけど」
「ああん、それぇ…… いうんですかぁ」
 暗闇の中でも、妻の目が恨めしげに、しかし、淫靡に潤んでいるのをハッキリとわかります。喋らねばならないと義務づけられた今、そこに残るのは羞恥だけ。
 その羞恥によって、妻は欲情しているのです。
「オジさんので…… ああん、もう! オジさんのチンポで、紗奈はたくさんイカされました! ごめんなさい! ああ、もう、恥ずかしいのに! こんなこと言わせて!」
 ひどいと言いながら、愛情を込めた顔がピタッと私の胸にくっついているのが、何よりの答えです。
 しかし、ここまで来れば、次にするべき「質問」は決まっています。既に、半ば認めてはいますが「それ」を、直接の言葉で聞かれることを、最も恐れているはずでした。
「じゃあ、さ、本当はさ」
 妻の緊張が高まります。
 恐らく「ホントはセックスしたんだろ」の言葉を予期しているに違いありません。他人と節句下と、妻の口で言わせる。
 半ば認め、それが前提となってはいても「セックスしました」を言葉にするのは、確かに一つの線を越えたことになります。
 その緊張が、私の腕を、痛いほどに掴ませていて、本人もそれに気付いていないはず。
 一瞬の間を開けたのは、その緊張を極限まで高めたかったから。
 私は、ここで目先を変えて「ナカに出されたんだろ」というつもりだったのです。しかし、次の言葉は、私自身ですら、なんで、そんなことを言ってしまうのか、分かりませんでした。
 今度こそ「セックスしたか?」の問いに答えねば、と覚悟して震える妻に向かって、私は、できる限りの演技力を発揮して、さりげない言葉で聞いていました。
「オジさん、またしてくださいって言わなかった?」
 一瞬で、フワッと手の力が抜けたのは、極限まで緊張していた反動でしょう。
「え、ええ。またさせてって言われたわ」
 ホット気を抜いた妻の言葉にウソはありません。
「じゃあ、また、させて上げる?」
「そんな! だって、あんなこと。も、もう、ダメよ」
 いきなり顔を上げたのは、本気で、驚いているからです。
「あれ? ひどいことされたの? 嫌なコトされた? キモチ良くしてもらったんじゃなかったの?」
「嫌なことは、されてないけど……」
「じゃあ、良いじゃん。オジさんも、一回だけじゃ、辛いだろうし」
「そんな。あんなのを、また、だなんて」
 一瞬、妻の口をついて出たのは、恐らく私への言葉ではなく、独り言のようなもの。
 そして、ノロノロと私の胸に顔を付けた妻は「ね、だけど…… あなたは、いいの?」と、哀しげに聞いてきたのです。
「う〜ん。そりゃ、君が他人に抱かれるんだから、良くはないけど」
「だったら!」
 なんでそんなことを言うのかと、私の二の腕をギュッと捕まえる手。
「でも、なぁ。オジさんの気持ちを考えるとさ」
「オジさんの気持ち?」
「うん。きっとさ、紗奈のおかげで、女性の素晴らしさを思い出したと思うんだ。すごく喜んでたんだろ? オジさん」
「ええ。多分、喜んでくれたと思うけど」
「だろ? そして、またさせてくれって、恥を忍んで、君に頼んだわけだ」
 恥を忍んでと言うのが正しいかどうかはさておき、妻にとっては「そういうこと」にしておかざるを得ないはず。
「それは、その…… 確かに、またお願いっていわれたけど、でもぉ」
「もう一回だなんて頼むのは、オジさんとしても、すっごく恥ずかしかったのは分かって上げるだろ?」
 それを否定してしまえば、オジさんが妻をイカせまくって、自信満々で「もう一度やらせろ」とでも言ったことになりかねません。
 鈴木さんを悪者にさせかねないだけに、妻は言葉に窮したのです。
「オジさんが頼んだのは、君が、あまりにもすばらしかったからだ。それなのに、もう、生涯、二度とダメです、なんて言われたら、どう思う? きっと、もっと辛くなると思うんだよ」
「だって、それじゃ、ずっとになっちゃう」
「うん。ずっとはダメだよね、僕の奥さんなんだから」
「そうよ。私、奥さんだもん。あなただけなんだから」
 すがりつくように顔を、私の胸にこすりつけていました。
「だけど、今回、できたのは、オジさんからすると、まさかのラッキーだったんだろ? 君だって初めは、手だけでって言ってたわけだし」
「そうだけど、それが?」
「初めからそのつもりでいたのと、偶然とでは、やっぱり受け止め方が違うと思うんだ」
「受け止め方?」
「うん。たぶん、全身全霊で紗奈のことを味わいたいって思ってるはずだよ。だから、あと一回だけ、ちゃんとした機会をあげたらどうかな?」
「あと一回……」
 言葉を反芻しているのでしょうか。
 その一瞬だけ、視線を泳がせたのを感じ取ります。
 しかし、そこには「絶対的な拒否」が浮かんでいないのをハッキリと感じます。浮かんでいるのは、むしろ怯えと困惑のようなもの。
『鈴木さんのセックスが、そんなにすごかったのかよ、また、あれをしてもらえるって?』
 音声だけでしかありませんが、すさまじく反応していた妻を思いだしてしまうと、ついつい疑いたくもなります。
 しかし、その気持ちとは裏腹に、知らん顔をして続けていました。
「気持ちの問題だけどさ、すばらしい紗奈のことを味わうなら、やっぱり最初から、そのつもりでしたいってのは、男として分かるんだよ。何しろ、君は最初ダメって言ってたんだから」
「それは、その、あの、だって、まさか、あんなことになるなんて」
「だろ? 君自身ですら、わからなかったんだ。ましてオジさんからしたら、中途半端だったと思うよ。だけど、もう一度チャンスをもらえば、今度は最初っから、そのつもりでって、思えるわけじゃん」
 もう、半ば理屈にもなっていないのを知っています。しかし、オジさんとのセックスに乱れたことを隠したい一心の妻は、心に負い目があるせいで、頷かざるを得ないのです。
 十分に、妻の心に「もう一度」を刻み込めば、後は、妻の心を見たいと言う気持ちにもなります。 
 私は、ワザと、ふうっと大きなため息をつきました。
「オジさんをかえって辛い目に合わせるのは、可哀想だよなぁ」
「辛い? オジさん、辛いくなっちゃうのかな?」
 私は、それに答えず、切り口を変えます。
「それにさ、まあ、あの年だし、そんなに激しくもないだろ? 紗奈のオマンコは、すっごく気持ちいいから、きっと、あっという間に出しちゃうんじゃない?」
「それは、あの、うん、そうかもだけどぉ」
 セックスしたのを前提に話を進めていることに気付いていないようです。気付いたとしても、私の言葉を言い直して、否定するだけの余裕は、ないはずです。
 どれほど「正直に言わないと」と思って見ても、夫以外の男との「セックス」は人妻にとって重いのです。しかも、狂うほどイカされただなんて、言えるわけがありません。 
「まあ、さ、今日みたいな事もあるし、帰ってきたら、どれほど疲れても一晩中しようよ? そう約束してくれないかな?」
「それは、だって、私、奥さんだもの、あなたの好きなようになさっていいに決まってるわ」
 その顔に浮かぶ嬉しさは、妻として求められているからでしょうか?
「ホント? なら、僕は、ボランティアに行っておいでって、笑顔で言って上げられるよ。もちろん、う〜んとヤキモチを焼きながら待ってるからね。帰ってきたら、たっぷりしちゃうゾ」
 私は悪人でした。
 物わかりの良い夫を演じつつ、妻を追い込んでいるのですから。
 笑顔の私を、しばし見つめていた妻は、ひとつ、大きなため息をついて目を伏せたのです。
『よし、落ちた』
 それは、妻が、再び他人に抱かれることを飲み込んだ、諦めのようなモノだと知っています。『だけど、今はオジさんのデカチンポのことは考えてないだろ? 本気で、僕に説得されただけ。オジさんが辛くないように、ってね』
 そんな健気なサクリファイスを持ち合わせている妻が愛おしくて仕方ありません。
「あ、嫌なら、無理にしなくていいんだよ? 激しすぎて身が持たないとか、それとも小さすぎて、感じなくなっちゃうとかだったら、良くないからね」
 もちろん前者はオジさんのことで、後者はオジさんと比較した私。
 その隠喩が通じたのかどうかは分かりません。しかし、天井を向いた私の顔をじっと見つめたいることだけは感じます。 
 後は、妻が納得するための儀式のようなモノでした。私は妻の言葉を待ちます。
「ねぇ?」
「ん?」
「オジさん、一回だけだと、ホントに辛いのかなぁ」
 それはもはや疑問文ではありません。しかし、それに答えるのは私の役目です。
「そりゃ、手だけでしたのと違って、紗奈のオッパイもオマンコも覚えちゃったからね。男なら、余計に辛くなると思うよ。今は出したばかりでいいけど、ちょっと経ったら、さ」
「そうなんだ…… 紗奈のせいで、もっと辛くなっちゃったかな」
 またもや、さりげなく、紗奈のオマンコの味を知っていると言っても、そのまま「流して」いる紗奈。それが天然なのか、それとも意図的なのか。
 ただ一つ言えるのは、本当にセックスしたかどうかを追及される怯えよりも、今の紗奈の心は「オジさんが辛くなっちゃう」ことに占領されていると言うこと。
 いえ、少なくとも、そう思い込もうといているのは事実です。
 こうなってくると、路線を完全に変更です。
 今、オジさんと本当にセックスしたのかどうか告白させれば、それなりに興奮するかも知れませんが、むしろ、私の頭にあったのは「次」なるステージのことでした。
「紗奈のせいかどうかは知らないけど、何年ぶり、何十年ぶりで、セックスの良さを味わっちゃったんだよ? 精子がたまってきたら、オジさんも、今よりも、もっともっと、辛いだろうね」
「そうなんだ」
 表情は見えなくても、言葉を探していることはわかります。もはや、妻の中で答えは出ているのです。
『うん。君は、引き受けるつもりだよね。また、オジさんとセックスするボランティアを』
 妻の出す「答え」は、デカいチンポでよがり狂わされた、あのすごい快感を思い出してのことではない ……はずです。
 しかし、今の紗奈は、昨日までの紗奈ではありません。
 声がかすれるほど淫声を上げ続け、狂乱するほどの快感を味わってしまった紗奈なのです。
 あげく、フィニッシュの瞬間「大しゅきホールド」をしてしまい、子宮の中にたっぷりと、オジさんの精子を注ぎ込まれてしまった紗奈なのです。
「どうせ、もう、オジさんを全部、受け入れちゃってるんだろ!」
 そんな言葉が、可愛い妻の頭の中に響いているのが聞こえるような気がします。
 いえ、そんな言葉ではないかも知れません。
「デカいチンポで死ぬほど気持ちよかっただろ? あの快感を、また味わうチャンスだぞ」
 そんなひどい声を、勝手に心で反芻してしまう私です。
 しかし、どっちの声を聞いているにしても、今の妻に「もう一度」を断る理由を探すのは難しいというのが現実でした。
 一度してしまったこと。
 しかも、そのせいで、かえって辛くさせてしまうのなら……
 もはや答えは決まっているのです。
『ああ、オレは、なんで、また、妻を抱かせようとしているんだ』
 私ではできないほどによがり狂わされ、声がかすれるほど啼かされる妻を思うと、胃の後ろに短剣を突きつけられたような痛みを伴っています。
 それなのに、なんで、再び、そんな思いをしようとしているのか、自分でも分かりません。
「あなた。私…… で、でも、あの……」
 答えは、とっくに出ているのが分かっています。ただ、ためらっているのは、ひたすら、私を慮ってのことに過ぎないのだと気付いた瞬間、妻にチュッとしていました。
「ま、今すぐ決めることはないさ。でも、真面目に、ボランティアの件、考えて上げたらどう? オレの方は、さっきの条件でOKだからさ」
「う、うん。帰って来たら、今日みたいに、ね。うん。約束よ」
 もう、この時点で答えているようなモノですが、妻は「あなたが嫌じゃなかったら、考えてみるね」と付け足してみせるのは、私への優しさかも知れません。
 それから、一つ、大きく息をして「お腹減ったでしょ? 今、晩ご飯作りますね」と立ち上がります。
 その顔は暗くて見えませんが「決意」は既に決まっているのだと、はっきりとわかりました。そして、紗奈の決意さえ決まれば、後は私が話すだけ。とは言え、さすがに、昨日の今日というのでは、話すのも気が引けてしまいます。先走ろうとする気持ちを懸命にこらえて一週間。さらに、そこから妻の生理が始まったのもあって、一週間、待ちました。
 生理の間、我慢していたのはワケがあります。もしも、この話を鈴木さんとしてしまったら、たとえ生理中だって、妻を抱かず、我慢するなんてできそうになかったからです。
 だから、ようやく鈴木さんと話せたのは、木曜日の夜。つまり、あれから三週間近く経ってからでした。
 鈴木さんは、私の申し出を予測していたようです。
「実は、もう一度」
 と切り出しただけで、ウンウンと頷きながら「よかったよ。きっとそう言ってくれると思ってた」と大喜びで応じてくれたのです。
「ただ、その時に、お願いがあるんですけど」
「ほう? なんだい? オレにできることなら喜んで協力するよ。と言っても、だいたいの予想は付くけどさ」
「そうなんですか?」
「ああ、言ってごらんよ。できる限り、叶えて上げるよ」
「実は……」
 ただでさえ恥ずかしいのに、こんなお願いをしてしまう自分にあきれ果ててしまいます。しかし、どんなに恥ずかしくても、この「お願い」をせずにはいられなかった私です。
「ああ、それは、わかるよ」
 いつもの優しい笑顔で受け止めた鈴木さんには少しも驚いた様子がありません。ただ、深い眼差しでこちらを見つめ返すと、一つ、うんと強く頷いて答えたのです。
「ちょっと照れるけども、気持ちは分かるし、以前お世話したご夫婦の時も、そんなことを頼まれたからね。その程度のこと、お安いものさ」 
「え? 以前、お世話した?」
「あぁ、ま、ちょっとのことさ。あくまでも、夫婦の愛情を高めるためのスパイスだからね。スパイスは効きすぎると、中毒になるといけない」
 心拍数が急に上がったのを感じました。
 中毒……
 この間のサナの狂乱した様子を思い出したのです。私の二倍もあるというチンポに魅了され、鈴木さんとのセックスが忘れられなくなったらどうするのか。
 そんな心配をしながらも、実は、私こそが、サナの乱れる様子に「中毒」しているかも知れないとも思ってしまいます。
 チラッと見れば、鈴木さんは、深い光を湛えた瞳でワタシを見守っていました。
 目の前にいる何の変哲も無いただのオジさんです。
 このオジさんに、妻が全てを忘れるほど乱れ、私とではあり得ないほどの快楽にヨガる姿を見せてしまったという事実に、チリチリするほどの焦燥感を覚えてしまう私がいました。
 そのくせ、あの時の声が一瞬で蘇ってくると、見もしてない光景がありありと脳裏に浮かび、どうしようもないほどの興奮をしている私がいました。
 そんな私を、柔らかな眼差しで見つめていました。
 人には言えない「妻を抱かせて喜ぶ」という、私の暗い性癖を知っても、ゆったりとした表情で頷く顔に、侮りも、奇異なモノを見る驚きもまったくありませんでした。
 むしろ、私の心を積極的に聞かせてくれようとしている優しさがあるように思えました。
 もちろん、その背後には、今後も、紗奈との関係を続けようという打算もあったはずですが、それが、単なるオンナへの欲望だけではないと思わせる余裕があるのです。
 その柔らかい眼差しのおかげでしょう。あの時の嫉妬の炎に焼き尽くされるような焦燥感と目のくらむような興奮を反芻していました。
 私の「お願い」は、真面目な顔の「やってみよう」であっさりと受け入れられます。深く頷いた後、上げた顔にはイタズラな表情が浮かんでいます。
「その代わりね、ちょっと頼みがあるんだけど」
「なんですか?」
「あのさ、今日から、サッちゃんを、ウエさせてくれないかな」
「へ? ウエさせる、ですか?」
「うん。そうなんだよ。今日から当日まで、サッちゃんが、エッチで満足しないようにして欲しいんだ。そうしてもらった方が、結局は、もっと喜んでもらえると思ってね。うん、もちろん、二人にとってだよ?」 
 ゴクリ、とつばを飲み込んでいました。
 飢えさせる。
 それはすなわち、性的な欲求不満にしてしまえ、と言うこと。
「うぅう、でも、今日からセックス無しですか……」
 鈴木さんに再びサナを抱かせる約束をしてしまった今、私の怒張は妻を求めてガチガチです。もしも、グッと扱いてしまったら、あっという間に暴発してしまいそうな不安に囚われるほどです。
 それなのに、来週までサナを抱けないなんて…… 果たして耐えられるのか? 
 だけど、そうしないと願いが……
 その瞬間、私は泣きそうな顔をしていたはずでした。
「あぁ、違う、違う、我慢しなくて良いんだよ。毎日、抱いて上げて」
「いいんですか?」
 自分の妻を抱くのに「いいんですか」もヘンですが、今の私にとっては、それが自然だったのです。
「もちろんさ。まあ、来週の木曜日からは、本当に禁欲してもらうけど、そこまではジャンジャン出していいんだよ」
「あ、そ、そうなんですか? ありがとうございます」
 自分の妻を抱く許可をもらって、お礼を言ってしまう自分の卑屈さがチラリと頭をかすめながら、でも、それでは飢えさせることにならないのでは、と首を捻ります。
「ああ、それはね、抱いても良いけど、絶対に、イカせちゃだめってことなんだ。前戯をなるべくしないで、濡れたら、すぐに入れる。いきなり激しく動いて、サッサと出す」
 あ、それだと、私だけが一方的に終わってしまうから、サナはイケなくなる。つまり、それがウエさせると言うこと?。
「わかるよね?」
「なんとなく」
「サッちゃん、感じやすくなってると思うから、一度入れたら、出すことだけに、集中してね。なるべく早く出すんだよ。なあに、週末のことを想像したら、すぐ出すなんてのは、簡単だろ?」
 盛り上がってしまった私の股間をチラッと見つめてから、鈴木さんは、私の目を静かに見つめてきたのです。
「奥さんのオマンコに入れたらすぐ出てしまう。それでいいんだからね。だって、奥さんのオマンコは、気持ち良いんだから、当たり前だろ? すぐに出して良いんだ」
 その声が、頭の深い所に響きます。
 深い光を湛えた、その視線が、なぜか私の心を縛り付けてしまったのだと、頭のどこかで、思ってしまいました。この光が心にある限り、私は、妻の中で耐えることなどできそうもない、そんな気がしたのです。
 その光が私を変えたのでしょうか。あるいは「妻を再び差し出す」と決めた事実が、そうさせてしまったのでしょうか。
 その後、鈴木さんとどんな話をして、どんな風に別れたのか、なぜか思い出せませんでした。
 気が付いたら、夫婦の寝室でサナに挿入して、三回往復しただけで、子宮の奥へと途方もなく気持ち良い放出をした私がいたのです。
「あ、ご、ゴメン」
 あっという間の放出に、むしろ、あっけにとられたのでしょうか。まだ、微妙にヒクついている妻は、セックスが終わったことすら分からない風情でした。
「あん」
 ズルッと抜け出る瞬間、小さく声を上げながら、ギュッと抱きついてきた妻は、ようやく、それを悟ったでしょう。小さな声で尋ねます。
「気持ちよかった?」
 その問いは、妻としては珍しいことでした。いえ、結婚以来初めての質問です。私の心臓は、急速に早く鼓動を打ち始めました。
「うん」
「良かった。あなたが喜んでくれて嬉しいわ。ふふふ。ありがとう」
 あっという間の放出で、紗奈はイッてないはず。それどころか、これから本格的に良くなる所で告げられた途中終了ですから、子宮に膨れ上がった、満たされぬ思いは、それなりに酷かったはず。しかし、健気にも、不満をおくびにも出しませんでした。それどころか、いつも以上の優しさで私を抱きしめて、二人、抱き合って眠りに落ちたのです。
 柔らかなサナの胸に顔を埋めるようにして、あまりにも甘美な射精の余韻に浸りながら、私はあっという間に眠りに落ちたのです。
 そして、夜の私は、その日から変わりました。
 木、金、土、日…… 
 毎晩、はち切れんばかりに勃起してしまうくせに、サナの中にひとたび入ってしまうと、一分と持ちこたえられなくなったのです。いくら感じやすくなったとはいっても、サナだって、それではイケるはずもありません。むしろ、感じ始めた所で終わってしまうのですから、たまったものではないはずです。
 しかし、あっという間に、大爆発してしまう私に、一切の不満を見せない妻。それどころか「あなたが、すごく気持ちよさそうで嬉しい」と、心からの笑顔すら見せてくれたのです。
 その笑顔を見てしまうと、チクリと胸が痛みますが、そんな妻の内面に、変化が起きているのは確かです。
 少しずつ、しかし確実に……。
 密かに進行してきた変化が、決定的なカタチで、目に見える形として現れたのは、月曜日の夜のこと。
 帰宅した私は、無意識のうちにカレンダーをチェックしていて、見つけたのです。
 キッチンに掛けてある、お気に入りのカレンダー。妻は、どんな予定も、ここに書いておく習慣があります。そのカレンダーの土曜日の所に、綺麗な文字で「ボランティアの日」と小さく小さく、書き込まれていました。
「この日って、あれだよな?」
 鈴木さんとの約束の日でした。
 私は「その日」を一切、告げていなかったのに、妻自身の手で書き込まれた予定。
 いくら私がソソのかしたとは言っても、これこそ、妻自身の決断でした。
 その文字を見た瞬間、体中の血が沸騰したような気がしましたが、努めて平静を装います。キッチンに立つ妻は、こちらを振り向きませんが、全身で、私の言葉を待っています。
 正直に言えば、妻の背中は「やめろ」と言って欲しがっていたのだと思います。
 そう思いたい私です。
しかし、何も言えませんでした。ただ、カレンダーの文字を、人差し指で、さっと撫でてから、そのまま風呂へと向かったのです。
『鈴木さんの話。やっぱりホントなんだよな。すごいな。あの紗奈がメールで…… それに、電話もしてるって……』
 妻と鈴木さんは、元々、お互いにアドレスは知っていましたし、メールをやりとりしたこともなかったわけではありません。しかし、このところ、明らかに、妻がメールを見たり、打ったりしている姿が増えました。そして、最初はメールであったのに、いつの間にかアプリを入れて、チャットのように会話するようになっていたのです。
 紗奈は、そんな姿を隠そうとはしていませんが、さりとて、わざわざ「オジさんと話してる」とも言いません。まして、その中身を話すこともなかったのです。
 夫としてのヤキモチでしょうか。文字だけと言え、他人と「会話」している妻の姿には、嬉しさを感じているのに、それを押し殺そうとする心の動きが見えているような気がするのです。
 そこには、身体の深い所を結び合ってしまった相手への…… それも、あれほどの性の悦びを与えてくれた相手への親近感もあったでしょうし、一方で、貞淑な妻としての計算もあったでしょう。もちろん、夫の目の前で、あれほど感じさせられた男と「つながる」ことに、微かな後ろめたさもあったのかも知れません。
 ともかく妻としては、オジさんとのやりとりは「秘密ではないけれども、聞かれない限り何も言わない」というスタイルが一番落ち着くものであったのでしょう。
 ただ、妻が計算外だったのは、鈴木さんから、話の中身を報告されていたことでした。
 もちろん、つゆほども、妻には気取られないようにしていますが、鈴木さんから聞かされることを聞くと、その話術は、まさに魔術のようでした。
 ひたすら恐れ入るしかありません。
 私しか知らなかった貞淑な妻の心に、少しずつ、少しずつ鈴木さんの黒いモノが染み通ってくるように感じてしまったのです。
 なんとなく思い浮かべてしまうのは、蜘蛛が、獲物にジリジリと近寄り、いつの間にか、蜘蛛の糸で呪縛する姿。
 それは、心からの恐怖と、切ないまでものドキドキと興奮を呼び覚ましてしまって、私にはただ見ていることしかできませんでした。
 いつもと変わらぬ、清楚なレモンイエローのワンピースの部屋着姿。小さく何かを口ずさみながら、リズミカルに肩を小さく揺らしながら、手早く洗い物をしている動き。
 フワッとし薫る匂いも、スッと伸びた背中も、その背中で、さらされと揺れ動く髪の毛も、何一つ、変わっていません。
 しかし、私は知ってしまいました。鈴木さんに喋ってしまった妻の、ささやか「過去」を。
 それぞれは、どこにでもある話。しかし、私では決して聞き出せなかった、ささやかな「妻の秘密」の数々。
 初めて男の子とデートした高校時代。
 それは、半ば騙されるようにして親友に紹介されての初めてのデート。
 初対面のイケメン君。
 実はかなり遊んでいる男の子で、慣れた手順を積み上げられて、いつのまにか奪われたファーストキス。おまけに、唖然としているウチに、胸も尻も撫で回されたこと。
 その手が下着の中をうかがってきた瞬間、恥ずかしさにハッとなって慌てて逃げ出したのだけれど、秘部を触られる恥ずかしさよりも、濡れてしまったのを知られるのが恥ずかしかったからでした。
 処女である女の子が初めて受けた愛撫。知ってしまった快感が、その日、初めてオナニーをさせてしまったこと。それ以来、月に一度か二度、どうしてもモヤモヤしたときに、秘めやかに指を使っていることも。そして、決して自分の指では満足できなかったことも……
 全て、鈴木さんから教えてもらった話です。
 そうです。驚くべきことに、鈴木さんは、そんなことまでも話せる相手になっていたのです。
 話せるだけではありません。私は知ってしまいました。
 今夜、私が帰ってくる前に、今着ているワンピではなく、わざわざお気に入りの、白いワンピに着替えて自撮りした写真を送ったこと。
 そして、私は知っています。
 最近、パート先の店長に何度も言い寄られては、撥ね付けていることを。
 そして私は、聞かされました。
 目の前の丸いヒップは、ことあるごとに、店長にスリスリと触られるようになって「急に色っぽくなったね」と言われていることを。
 最初は本気で怒っていた妻は鈴木さんから「男を引きつける魅力ができたんだよ」となだめられただけではありませんでした。
 巧みな誘導で、今では「ゾクゾクッと感じてしまって、昨日は声を出しそうになった」と告白しています。
 そして、鈴木さんは、まだ教えてくれてない「何か」を、ほのめかしてもいました。
 ただ、もう、ここまでくると妻と鈴木さんの関係は、ある意味「不思議」としか言えません。
 なんでも喋れて、相談できて、聞かれればどんな恥ずかしいコトでも告白してしまうけれども、心から頼っているとしか言えない気がするのです。
もちろん、今目の前で、ソプラノの声が、小さく何かを歌いながら片付けをする後ろ姿には、「浮気」をしているような気配は全くありません。
 いつもの通りの、爽やかで貞淑な、夫の私を愛して止まない妻の姿そのものです。
 しかし、私は、これも知っています。
 いつの間にか深刻な悩みとなっている「夫の早期爆発」を鈴木さんに相談したことを。
 身体の奥まで確かめ合った「信頼できる男性」には、私に相談できないあらゆることを打ち明け、頼るようになっていったのです。
 今や、鈴木さんの言葉は、重く、重くなっていく一方で、鈴木さんに頼まれると、簡単には断れなくなっていたのです。
 そして、今週に入って、オナニーをした回数まで報告するようになっていました。
 その話を聞いたとき、始めは信じられませんでした。しかし、恥という顔文字で囲まれたコピペが転送されてきて、そこには「2回」とだけあったのが昨日のこと。
 妻は、私がいない昼間、一人、オナニーにふけっていただけではなく、それを鈴木さんに告白しているのです。
 そして、今日の夕方も「オナニーをしたのか」という文字と「一回だけ」と書かれたコピペが転送されてきました。
 サナが、オナニーをしているという事実もそうですが、それを問われるがままに告白していることに、私は切ない嫉妬と猛烈な興奮を覚えてしまう私がいるのです。
 清楚な後ろ姿を見ていると、このまま襲いかかりたくなってしまった気持ちを抑えるために、慌てて風呂に向かわなければなりませんでした。
 ところが熱いシャワーで、なんとか気分を変えた私にメールが一通。とっさに、妻を伺い、気が付かれないようにして中身を確かめます。
『いったいなんだ?』
 焦る心を顔に出さないようにしながら開いたのは、スマホの画面一杯に表示された添付写真。
『オレが風呂に入っている、こんな短い間に? ホントに? え? おい! まさか、これって!』
 短いメールを瞬時に読み終えた私は、頭の中が真っ白になっています。
 中身を読み終わって、硬直している所に、妻が、ヒョイッと顔を出しました。
「私も、お風呂、入ってきまぁす。あれ? どうかしたの?」
 いつもの笑顔で、コクッと小首をかしげている妻の顔は、なんの屈託もなく微笑んでいます。
 心臓が鷲掴みされているような圧迫感を押し隠して、私は努めて務めて曖昧な表情を浮かべたはずですが、よほど私の顔色が変わっていたのでしょう。妻の顔には「心配」が浮かびます。
「あ、うん、ゆっくり入ってきてね。オレ、ちょっと仕事の連絡が入ったから、近所まで書類を渡しに行ってこなきゃだから」
「え? 帰ってきたばかりなのに? ね、あなた、何かあったの?」
 恐らく顔色が変わっている私の表情と仕事が結びついたのか、妻も心配顔。
「うん、いや、それほどじゃないんけど、課長が、急ぎで資料が欲しいって言うから。近所まで来てもらって、ちょっと打ち合わせしてくる」
「今から?」
 こんなこと結婚以来ですから、不思議に思うのも当然でした。
「たいへんなことでもあったの?」
 我ながら下手なウソをついていましたが、私のことを信じ切っているから、不思議には思っても、不審には思いません。
「大丈夫、大丈夫。ただ、帰りは、課長をJRの駅までは送らなきゃだから、一時間ちょっとは帰れないと思う」
「たいへんね」
 その瞬間、妻が何を考えたのかは分かりませんが、表情に浮かんでいるのは、ねぎらいと心配です。
「うん。じゃ、行ってくるね。帰る前に、またメールするよ」
 家と車のカギが付いたキーケースをブランと振って見せたのは、カギを掛けて出るよという無言のお約束。
「行ってらっしゃい。早く帰ってきてね」
 夫のことを心配する、優しい妻の声が、送り出してくれます。
 しかし、私のその受け答えこそ、指示されたモノでした。
 玄関まで見送ってくれた妻に「行ってきます」をした私は、そのままドアの外。少し、首をかしげながら見送ってくれる表情には、何一つ曇りはありません。
 女というものは、海のように、全てを飲み込んでしまう存在なのかも知れません。
『本当に、するのか? だけど、鈴木さんは自信があるらしいし……』
 理性は、半信半疑。
 気持ちは、泣き出したいほど興奮している私は、通りに出て我が家を見上げると、確かにバスルームの灯りがついているのを目にします。
 これでいいんだよな?
 悪いことをしているわけでもないのに、私は、周りを確かめてから、鈴木さんに電話しました。
「あ、もしもし」
「おう。早速、ありがとう、無事出られたね」
「ええ。あの、それで、本当にするんですか?」
「そうだよ。今から、サッちゃんに本気のオナニーをさせるから時間を潰してきてね」
「でも、紗奈のヤツが、本当に、そんなことをするんでしょうか?」
「ああ。もちろんだとも。それに、実は今日、写真のお礼に私のモノを写真で送ってみたんだよ。反応は悪くなかった。見ながらオナニーするように言ってあるからね」
「紗奈が見たいと言ったのですか?」
「そんなことをサッちゃんが言えるはずがないだろう? だが、ちゃんと飢えさせてくれてるんだね。それが効いてきたみたいで、今日はスケベ話も嫌がらなくなってきたし、さっきの写真を見ただろ? それに、実は、オナニーする声を聞かせてくれたら、オレもオナニーするかもって言ってあるのがミソでね」
「ミソ?」
「いや、ね。話は簡単で、オレがオナニーして出しておかないと、また、サッちゃんのいやらしいオマンコの中に、たっぷりと出すことになっちゃうよって言ったんだよ」
「え〜 なんなんですか、それ」
 恐らく私の語気は荒くなっていたはずですが、電話の向こうの調子は変わりません。
「サッちゃんが、たくさん中出しして欲しいなら、今、オレにオナニーさせないよね? たっぷり溜めておかなきゃだもんなって言ったんだよ」
「どういうことです?」
「サッちゃんは、さ、オレがオナニーするように協力しなかったら、たっぷりと中出しして欲しがってることになるじゃん?」
「それって、ちょっと強引じゃありませんか?」
 そんな見え透いた挑発に乗る女なんているんでしょうか? しかも、既に、ナカに出しは前提のようになっていて、それを紗奈も受け入れていてしまっていることになります。
「いいんだよ。強引で。サッちゃんは、どんなことをしてでも、オレにオナニーさせないと、たくさんオレに中出ししてくださいって言ってるのと同じだよって言い聞かせたんだからね」
 話を聞いているウチに、自分の招いたことだとは言え、何とも、リクツを超えた怒りがこみ上げてきます。
「そんなことって。だって、そんなのリクツに、ならないのに」
 半ば本気で腹を立てていた私の声に被せるように「それでいいんだよ」と、諭す声が包み込んできます。
「女はね、うん、特に、サッちゃんのようにマゾッ気があるコは、リクツが正しいかどうかよりも、自分に言い訳できれば良いのさ。心の中に眠っている欲望を解放させるためのね」
「サナの心の中に眠っている? マゾッ気?」
「そうだよ。だから、サッちゃんは、それならオレにオナニーさせないと、君に悪いからってことを認めたんだからね。ま、同じマゾでも、サッちゃんのは明らかに羞恥系優先型だ。余計に、止まらないんじゃないのかな」
「そんなことがホントに? だって、あんなに恥ずかしがり屋なのに」
「うん。だからこそ、心の奥底にあった快感を引っ張り出して上げたオレを、無条件で信頼してくれるんじゃないかなぁ」
 その声には、私を嘲笑う色も、からかう色も、まったくありません。今まで通りの、信頼できる年長者の安心感を持った声です。その声に包まれながら、今さらリクツが正しいかどうかなんて関係ないのだと思い出していました。目の前にある現実は、鈴木さんに言われるがままに、淫らな色に染まっていく妻の「今」なのです。
『紗奈は、鈴木さんに言われるがままに変わっていってしまう』
 それは一種の「洗脳」と言ってもいいかもしれません。
私の手は自然に、さっき転送されてきた、衝撃の写真を表示させていました。
 シャワーした直後の私の顔色を変えさせた一枚です。
 私が風呂に入っている短い時間に、紗奈は、わざわざ、あの清楚なワンピを脱いで、バストショットの自撮りを送っていたのです。
『乳首は映ってないけど……』
 左手一本で先端を隠した胸には、本来なら映るべきブラがカケラも映っていません。
 貞淑な妻の、いや、貞淑な妻 だ っ た はずのサナは、夫が風呂に入ったわずかの時間に、その目をかいくぐって、下着すら付けないバストショットを男に送りつけていたのです。
「で、さ、今から、オレの前でオナニーしてくれるってわけだな」
「電話でですか?」
「そうだよ。今から電話が来るはずだから、一時間ほど、どこかで時間を潰しておいてくれ。決して、オレが良いって言うまで家に戻らないでくれよ」
「それは、まあ、わかりますけど……」
「じゃ、後でね」
一方的に切れた電話をじっと見つめてから、私はトボトボと歩き始めました。
 どこをどう歩いたのか、わかりません。気が付いたら近所の公園で、小さなブランコに乗っていた私。胸ポケットのスマホが小さく振動します。
《お待たせしました。もう帰っても大丈夫。こんな感じだったよ。》
 心臓の音が高鳴る中で、指先は意識を離れてスクロールします。
 洗面台の鏡に映る、愛おしい妻の写真。
 その美しい胸が全て見えています。恥ずかしそうな表情で、その華奢な片手で膨らみを隠したげに持ち上げながら、でも隠せない写真。
 その顔に浮かんでいるのは、恥ずかしそうではあっても、限りなく美しい微笑みでした。
 二枚目
 鏡に映した腰までの姿。
 やや俯いていながらも、全身が、男の視線を意識しているのがハッキリと分かる姿。
 ややピンク色になった頬は、紗奈自身の興奮を表しています。
 三枚目。
 息を詰めて目を閉じた妻の表情は、天に捧げられる供物の乙女を思わせる表情です。
 しかし、スマホを持った右手も、腰の辺りで後ろに回された左手も、ピンと立った乳首をかくしたりはできません。
 そして軽く広げた太股には、ハッキリと粘液が垂れていました。
 鈴木さんへヌードを見せてしまうことに、興奮してしまったのでしょうか? それとも、この後のオナニーへの期待でしょうか? 
 どっちにしても、これから、すぐにセックスを始めるかのように、裸の全身を紅潮させていたのは確かです。
 そして、そこに、さらにメール。
 震える指を押さえつけるようにして開くと、本文無しで、二枚の写真と添付ファイル。
 ベッドの足下にある、いつもの姿見。
 そこに映った紗奈は、これ以上無いほどに、しどけなく脚を開いて、片手に持ったスマホのレンズは、自らの股間を狙っています。
 ドキンとするほど赤く見える股間には、左手があてがわれていました。その薬指には指輪を付けたまま。
 器用な指は、赤く腫れぼったくなった秘唇を見せつけるように、自らを広げていました。
 ヌラヌラと反射する秘蜜は、尻の方にまで垂れ流れています。
 二枚目は、姿見に向けて腰を持ち上げている写真。
 クリトリスを激しくこすっているせいか、写真自体は、微妙にブレています。
 しかし、その華奢な白い裸身は、全力でオーガズムに向かって進んでいるのだとハッキリと分かります。
 大きく広げているオマンコは、まるで姿見に全てを捧げ…… いえ、姿見に、ではありません。大きくクパァと広げたオマンコを、鈴木さんに捧げているように見えたのです。
「サナ……」
 自分の妻の、こんな淫らな姿を初めて見ました。そして、この写真は、愛する夫にではなく、遙かな年上の「他人」に送られてしまったモノなのだと思うと、そこには息苦しいまでの嫉妬が身体を圧倒していたのです。
 私の中に渦巻いているのは、切ないまでの苦しさです。
 しかし、その写真を見つめる手をワナワナと震わせながら、同時に、これ以上無いほど硬く勃起していたのです。
 そしてもう一つ。付けられていたのは音声ファイル。
 一体それが何かを考える前に、指が勝手にクリックしていました。
「はあっ、んっ、んっ、あ、ダメ、そんなこと、言えません」
 いきなり聞こえる妻の声は、甘く濡れていました。
「言わないと出さないよ? 良いのかい?」
「ああん、ダメです。そんなダメぇ。サナはそのために、こんなエッチなコトしちゃってるのにぃ。んっ、あっ、あふっ」
「じゃあ、言うんだ。言わないと出さないからね? ほら、もっとサネをクリクリして。さ、」
「もう〜 お、お芝居ですからね? ホントに、そんなことなんてなかったんですからぁ」
「そうだよ。お芝居だ。だが、痴漢に遭ったことはホントだよね? その時に、感じたのもホントだった。だから、安心して、喋ってごらん」
 何かの葛藤でしょうか? 一瞬の間が開きます。
『ん? チカン? え? 紗奈が痴漢に遭って感じただと?』
「ホ、ホントですよ? ちゃんと出してくださいね?」
「さて、告白してもらおうかね」
「あぁああ、だって〜」
 こんな風に甘えたしゃべり方を初めて聞きました。しかし、そんなことよりも、初めて聞く告白に、私の心は震えてしまったのです。
「ほら、痴漢されたんだろ? しつこく、しつこく、触られた。大学時代だったね?」
「あぁ、そ、そうです。大学四年のゼミの帰りだったからぁ、んっ、あの時は、お酒も入ってたしぃ、ああん」
「ミニスカートに手が入ってきて?」
「あっという間に手が入ってきちゃってぇ」
「なんですぐに、痴漢ですって言えなかったんだっけ?」
「だって、そこまで、スカートの上から、ずっとお尻も触れたからぁ」
「濡れちゃったんだよね? 濡れてるのがバレちゃったから、ジッと我慢するしかなかった」
「だって、もしも、他のひとに知られちゃったら」
「痴漢の手で感じる、エッチな女の子だと思われるから。だから、ジッとオマンコを触られて我慢してたんだね?」
「あぁあん、だってぇ」
「感じたんだろ?」
「ああ、だってぇ、感じる所を、いきなり、触られちゃったから」
「違うんだろ? 痴漢されて、恥ずかしくて、余計に感じたんだ」
「あああ、そんなことぉ」
「痴漢されて感じたんだ。サナは、とってもエッチで、マゾだから、電車の中で痴漢されて、恥ずかしくって、いつもよりも感じた」
「あああ、いやあ、言っちゃイヤぁ」
「そうだね? 痴漢されて、恥ずかしくなって、無理やり感じさせられて、感じたんだ。ほら、ちゃんと認めろ、サナ!」
 鈴木さんの普段からは考えられないほどの、乱暴な命令口調。
「あああん、イッちゃいました! 紗奈は、痴漢されて電車の中でイッちゃったんです!」
 それは絶叫でした。
 オナニーをしているだけだとは思えないほどの、激しくも、淫靡なソプラノが響きます。
「ああん、い、い、イッちゃう、イク、イク、イクぅう!」
 ハアハアハア
 微かに聞こえているのは荒い呼吸だけ。
 気が付けば、音声ファイルは止まっていました。
 ドクンドクンドクン
 自分の心臓が、信じられないほど激しく動いているのを感じます。
 そして、まるで私が聞き終わるのを待っていたかのように、妻のメールが転送されてきました。
《サナで出してくれるなら、また、お手伝いします》
 そんな文字を見てしまえば、息をするのを忘れてしまいますが、そこに、不自然な空白を感じて、さらにスクロール。
 ちょうど、ひと画面分の空白を置いた後でした。
《すごく気持ちよかったです。オジさんとした時を思い出しました。でも、サナは、マゾなんかじゃないです》
 顔文字は、怒った顔。
 しかしそこの後ろに突いているハートマークが踊っています。
 次の瞬間、背中を白い電流が駆け抜けて、ドクドクと射精してしまったのです。





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