人妻・智美の体験本文へジャンプ  第1部 淫の治療

第1話

 豪雪地帯で有名なN県に住んでいます。
 元々東京の人間です。卒業の翌年、結婚しましたが、やはりフラグを立てると狙われるのが常というもの。
 入社三年でN県の支社に異動したのが去年のこと。
 ところが妻は東京で飛ぶ鳥を落とす勢いのベンチャーの正社員。それも、仕事が面白くて仕方ないと熱中していたのですから、夫婦仲は良くても単身赴任を選ぶのは仕方のないこと。
 まだ「新婚さん」の匂いが残ったまま、数ヶ月に一度しか会えなくなったのです。
 現在、二人とも二十五歳。
 出会いについては省略しますが、偶然が二人を取り持ってくれたとしか言い様がありません。
 何しろ、妻は本来、真面目で堅実、努力家の派手嫌い。
 しかし、元々目がぱっちりと大きく、おまけに、化粧が上手いのです。いえ、化粧のせいではありませんね。目鼻立ちがクッキリしている、誰が見ても美人顔。
 二人で歩けば、男達の視線が、妻に集中します。それ自体は誇らしいのですが、妻の次に私を見て、その視線に悪意とか、小馬鹿にしたものが含まれるのが酷く苦痛を感じてしまうのは玉に瑕。
 まあ、妻は公平に言っても、派手に見えてしまうのは確かですが、女子校育ちで、付き合った相手は私だけというほど男に免疫のない妻なのです
 大学時代の妻を知っていますが、この美貌で引く手あまただった「合コン」も興味がなく、ましてナンパなど相手にすることもなく、子ども相手のボランティアが唯一の趣味でした。
 男達の視線はうるさく感じはしても、それを誇る気持ちなど本人にはないのです。
 それなら化粧なんてしなくて良いんじゃん? と聞いたことがあります。
 妻の考えでは、美しく装うのと、男にどう見られるのかということは、全く別のことのようでした。
 ともあれ、出会った当時から、外見は派手、内実は清楚というアンバランスを体現した智美に、あっという間に夢中になったのです。
 でも、就職活動においては、その外見が幸い…… いえ、災いしたと言うべきでしょうか。
 ベンチャーの起業家社長にたいへん気に入られ、直接家にまで出向いてきた社長に口説き落とされるように就職しました。
 いろいろと大変なことはあったと思いますが、努力家の妻は、あらゆる仕事を覚え、果たします。
 マスコミには「美しすぎる社長秘書」として取り上げられるのは面映ゆく、妻のことを回りに喋ったことはありません。
 もちろん、よく聞くような浮気の心配など、妻には必要ありません。
 むしろ、スケジュール管理からマスコミ対応まで、あらゆる仕事を人一倍の努力でこなしている妻の体調が一番の心配でした。
 そして、妻の努力を嘲笑うように、会社は、三年目に潰れてしまったのです。
 新婚家庭の甘い暮らしなど夢のまた夢にして働いた妻ですから、その落ち込みぶりは相当なもの。すっかりふさぎ込み、医者に連れて行く必要を考えました。
 ただ、ひとたび、妻の会社がなくなってしまったなら、私が単身赴任をする必要も無いため、結局、N県に妻を呼び寄せることで、様子を見ることにしたのです。
 こちらの水は、日本一美味しいというのが県民の誇りです。
 そして、実際、水が合ったのか、それとも夫婦が一緒に暮らす「当たり前の幸せ」が妻を癒やしたのかは分かりませんが、間もなく、妻は元気を取り戻します。
 おっと、単身赴任中、滅多にできなかったエッチも、妻に元気を生み出せたのだと、ちょっと思いたい部分もあります。
 なにしろ、久しぶりに一緒に暮らせる嬉しさで、ついつい求めてしまう妻は、東京での短い生活の時よりも格段にエッチになりましたから。
 そして、やがて妻が笑顔を取り戻した頃、こちらでも仕事をしたいという希望が適うことになります。
 といっても、小さな会社の事務兼受付兼電話番兼秘書という、まあ要するに何でも屋さんのパートではありますが。
 順風満帆の田舎暮らしのハズが、ある日、元気を喪ってしまいます。プロジェクトに取りかかっていた私が気が付いたのは、おそらく、妻が落ち込んでからしばらくたってからのことでしょう。
遅まきながら、妻のことを心配した私は「どうしの? 」と聞かずに、妻との会話を増やして見守りますが、落ち込みはますます酷くなる一方。
 ハッキリとは言いませんでしたが、妻の憂鬱は会社に原因があるようでした。
 やはり妻の外見は、こういう田舎では目立ちすぎということかもしれません。あっちこっちから目をつけられるようになって、小さな会社の中で本気で口説きにかかる男達も現れる始末。
 始めのうちは半ば面白がる余裕もありましたが、重役達までが色目を使ってくるようになって、一気に悩みは深刻になっていったようです。それでも、気丈な妻は出勤の時は憂鬱さのカケラもみせずにパートを休みません。
 そして、無理して笑顔を作り続けていた結果、深刻な頭痛と肩こりに悩まされるようになったのです。
「医者に行っても、悪いところはないって言われてるもん」
「う〜ん。じゃあ、内科じゃなくて精神科に行ってみる? 」
 県内のちゃんとした医者を、実はとっくに調べてあります。
「ちょっとっ? 私の心がおかしくなったっていうの! 」
 こういうところ、妻は引きません。
「いや、そ、そうじゃなくて、さ…… 」
 その時は、それで終わったのですが、やはり辛そうな様子を見ていると何とかしてやりたいと思ってしまいます。かといって、ちょうど、次のプロジェクトが佳境にさしかかった私は、休日も満足に取れないあり様で、悩みを聞いてあげる余裕もありませんでした。
「ねぇ、あなた、整体に行っていいかしら? 」
「あ〜 整体ね、いいんじゃないの? 何でわざわざ断るの? 」
 普段から、妻のしたいことは基本的に自由にさせています。整体に行くくらい、なんの問題があるでしょうか。
「ううん。いいんならいいけど」
「どこか、心当たりあるの? 」
 妻のことだから、既に調べてあるはずです。用意周到なのは妻のクセでした。
「うん、ネットで調べてみたら、セラピーとか、オイルマッサージとか、何かいろいろとやってるところがあって、そこなら良さそうな感じ」
「へえ〜 君が少しでも良くなるなら、ぜひ行ってきなよ」
「うん、ネットで予約してみるね、ありがと」
「あ、えっと、で、なんてトコ? 」
「えっと、カーマ何とかってところ」
「ん? 」
 栄養士の資格を持ち、英会話を難なくこなす妻ですが、ヒーリング系は苦手のようです。
「後で調べてみて。この県の名前と 整体 マッサージ で検索したら上の方に出て来るから」
「あぁ、じゃあ、結構有名なところなんだ」
「うん。そうみたいよ。いろいろと口コミなんかも調べてみたけど、ここは女性が多くて、ヨガなんかも、別にやってるみたい」
「多角経営だね」
「ううん、ヨガの方とかは、整体とは別で、お金を取ってないんじゃないかしら? 」
「え? 無料? まさか」
「う〜ん。ヨガも興味あるのよね。で、そっちのファンには、やっぱり整体から入ったらしい人がけっこういて、投稿してる熱心なファンの中には小学校の先生なんかもいたわ」
「へぇ〜 学校の先生が? 」
「うん。多分、本物の先生だと思う。もちろん女性よ」
 妻は一度調べると、結構細かく見ていくタイプですから、詐欺的な所に騙されるとも思えません。それに、学校の先生だというのも、何かしら、証拠でもあるようです。
「そっか。今の学校って大変らしいものね。うん、わかった。了解。行っておいでよ」  
 たかだか整体です。
 ほんの少しばかり、妻の肩や背中を押す白衣を着た親父のイメージに、なにやらモヤモヤしたのは確かですが、その時はそこまで深く考えませんでした。
 その三日後に、いつものように遅く帰った私を、妻の笑顔が迎えてくれたのをはっきりと憶えています。
 その笑顔は、何だか、ずいぶん見なかった種類の笑顔だった気がします。
 無理のない、自然で、妻本来の笑顔です。
「どうしたの? 」
「ほら、行ったのよ、整体」
「ああぁ、行くって言ってたね。どう? 」
 久しぶりに見た晴れやかな笑顔を見れば、聞くまでもありませんでしたが、一応聞くのは礼儀です。
「スゴイの! なんか、いっぺんにファンになっちゃった」
「そんなに? 」
「うん。でね、ホントはオイルマッサージなんかも頼もうと思ったんだけど、初回の人はダメなんですって」
「なんで?  」
「うん、お客さんの九割が女性だから、やっぱりデリケートな問題が起きたりしないように、初回は普通の整体で、先生のやり方に納得できた人だけ、次回から受け付けてくださるんですって」
「へぇ〜 最近の整体って、そんなに気を遣うんだ? 」
 私は、そんな風にデリケートにやってると言うことを聞いて逆に安心したのです。それに、何よりも妻の笑顔を見れば、効果があったのは一目瞭然でした。
「でね、来週も予約しちゃいたいんだけど、良いかしら? 」
「どうぞ、どうぞ」
「わーい、あなた、ありがとう」
 いきなり、妻が抱きついてきて、チュッとしてきたのには驚きました。
『あれ? 』
 めったにつけないコロンをつけています。
『あれ? そういえば、こんなネグリジェ持ってたっけ? 』
 改めて見てみると、着心地第一の妻にしては珍しく、さらさらとした薄手の生地。風呂上がりでは当然ですが、ノーブラの乳房は、Dカップを挑発するように押しつけてきます。
「ね? お疲れかしら? 」
「わ、わっ…… ど、どうしたの? 」
 妻がこんな目をできるんだという驚きが生まれるほど、二重の黒目がちの瞳は潤んでいました。もちろん、妻が何を求めているのか、夫婦の間のアウンの呼吸。
 普段も決して仲が悪いわけじゃありませんが、こんな風に妻から求めてくるなんて、おそらく初めてのこと。元気になった途端の積極性に、正直、戸惑います。
「ふふふ。あのね、先生のお勧めなの」
「え? 」
「夫婦なら、そういうのも、ストレス解消になるんですって」
 妻の目には、明らかに、いつもの違うというよりも、つきあい始めてから今に至るまで、初めて見る「淫欲」としか言いようのない光があったのです。
驚きとともに、その晩、妻を三ヶ月ぶりに抱きました。
 初めて見るイエローのショーツは、クロッチにシミができるほど濡れていました。
 それも愛撫する前からです。
 妻が、こんなに濡れるものかと驚くほど、愛撫する前からしどどに濡れていたことを素直に喜びましたが、妻をこんなにも変えた整体のすごさに、ちょっぴりヤキモチを焼いたのも事実です。
 私が、どんなに話し相手になり、励ましても、こんな風に元気な笑顔なんて見せてくれなかったのに、たった一度の施術でこんなにも、変わるモノなのでしょうか。
 翌朝、久しぶりに見た上機嫌な朝の顔を、整体と、そして、たっぷりとした濃厚なエッチのおかげだと思うことにして、仲良しのキス。
 行ってらっしゃいのキスだなんて、外国映画の中みたいです。
「いってらっしゃ〜い」
 というわけで、妻が元気になって、そして、夫婦の「夜」が復活しました。
 もちろん、プロジェクトが金曜日に一応の完了を見、ここから三ヶ月ほどは、その手直しをしつつ、英気を養うという期間に入ったと言う開放感のお陰だということもあります。
 早い話が、納入したシステムさえ順調なら、定時退社どころか、溜まっていた有休を使うことも自由自在、おまけに、昼間、顧客訪問と言い訳すれば、サボりも黙認されるというのが不文律の会社です。
(いや、今時、良い会社なんですよ、ホント。これで給料が人並みに出るなら天国なんですけどね)
 というわけで、タイムカードを通すと「さしあたってやるコトが見当たらない」という、戸惑いとウキウキが同居してしまう仲間達と一緒に、居酒屋で珈琲を飲みながらのダベりで半日を過ごしました。
(こちらでは、ファミレスや喫茶店がそばにない代わりに居酒屋が昼間営業してラーメン屋と喫茶店を兼ねていたりします)
「ね、きゅうちゃん、例の美人の奥さんとは週何回なのよ? 」
 地元出身の係長の質問は常に単刀直入です。
 五人の中で唯一の「非地元、二十代」ということで、妻の写真をみんなに見せてからは、こういう「直球」は、ちょくちょく浴びせかけられます。
 最初は戸惑いましたが、次第に、そういうものなのかと最近ではだいぶ慣れてきました。
「え〜 プロジェクトの間なんて、なかなか性欲までは、ちょっとですねぇ」
 頭をかいて見せますが、昨日も、妻とやっちゃったとは、さすがに言えません。
「それよりも、永作さんはいかがなんですか? お若い奥さんだと大変でしょ? 」
「うん。ボクの年だと、週一が限度なんだけどさ。これから、少しは、奥さん孝行できるかな〜 」
 今年の始めに、私の妻と同い年の奥さんを、つまりは十歳以上も離れた年下妻をもらった永作さんは、嬉しそうに目を細めます。
 悪い人ではありませんが、今年三十後半に入った永作さんは、仕事はできても、奥さんに頭が上がらないともっぱらの評判でした。
「で、大神田くんは、どうなのよ? 」
 係長と同い年で、今年四十になったばかりの浜田さんが、せっかく矛先を変えたはずの話を振り返してきます。
「え〜っと、永作さんを見習わないとかなあ。とても、週一なんて…… 」
 頭の中に、土日、立て続けにしてしまった妻の裸身が浮かんでしまうと自然と顔が赤くなってしまうのを、珈琲をグッと飲んでごまかしました。
「何だ、この土日ヤリまくりか。さすが、若いな大神田君は」
 危うく珈琲を噴き出すところでした。
「ん、んぐっ、な、なんで、また 」
「ほら、赤くなった。大神田君は正直だからね、嘘をつけない〜 で、すぐ顔に出る」
「うん、だね。だから麻雀も弱いし。ま、萩原さんなら、一発でお見通しってワケだ」
「萩原さ〜ん、カンベンしてくださいよ〜 」
「ま、良いことなんだから、恥ずかしがるなよ。あんな美人の奥さんなら、若いんだし、当たり前だよ。何なら、今日も早く帰って、可愛がって上げたら? 」
「いや、妻も働いていますし、平日はちょっと」
「二人とも若いんだから大丈夫だよ。一日三発までは翌日には響かないモンさ。それに、早く子どもを作っちまうのもいいモンだぞ。こっちは水も米もうまいし、子育てにも良いぞ〜 」
「また始まった、萩原さんにかかると、二十代は全員、毎日ヤリまくれってことになるからな」
 萩原さんは、既に六十を越えて再雇用の身。
 しかし「特別な能力を見せる切れ者」でもないのに、会社は手放す気が全くないのは、この種の洞察力や社員同士を取り持つ力が抜群だからです。
 若いときは、別の会社で働いていたらしいのですが、仲間割れすると命取りになりかねない長期のPJには、必ずメンバーに名を連ねている、我が社の重要な存在でした。
 普段は、昼行灯のような「お爺ちゃん」って感じなのですが、接待の宴会ともなるとこの人が場を取り持って、なんども危機を回収しているのを見て以来、私も信頼しています。
 私のテレを見抜いてくれたのか、そこからひとしきり、会社の女の子の「萩原流」の鑑定話になって、そこから、さらに横道にそれていきます。
「でね、浮気をすると、それまで身持ちが堅い女ほど、さ、積極的になることが多いんだよ」
「へぇ、なんでですがね? オレも聡子の浮気心配しなきゃかな」
「いや、係長の奥様なら大丈夫ですよ」
「うん、オレもそう思うよ。あいつは、オレにぞっこんだからさ。でもなぁ」
 全員がにっこりしながらハイと頷き、それを見回しながらニヤニヤと笑う係長の恐妻ぶりは有名でした。残業するときも、廊下の隅でしきりに頭を下げながら電話する係長のことはメンバー全員の公認の事実です。
 と言っても「聡子」さんを見たことのある社員によると、まさに、これほど「恐れて」いるのが分かるような、女子プロレスラーまがいの、すさまじい体格だったそうです。
「で、萩原流、浮気の見破り方は? 」
 さりげない聞き方でしたが、永作さんの言葉には、他のメンバーにはない、本気の心配の色がちょっとだけ混ざっています。
「だいたいさ、はじめっから浮気性の奥さんってのも、いることはいるけどね、たいていの浮気妻は、それまで真面目なんだぜ」
 カチッとたばこに火をつけた萩原さんは、吐き出した煙にちょっとだけ遠い目をしてから続けます。
「真面目な奥さんが変わると、最初に、はっきり出るのは、下着かなあ」
 くゆらす煙に、何かを思うのでしょうか。誰に喋るでもなく、萩原さんの言葉は空中に消えていきます。
「下着? 」
 永作さんが、早くと目顔で先を促します。
「それまで見たことのない下着を、ある日、突然穿いてたり」
 ん?
「それと、あるとき、突然サービスが良くなったりするかな」
 ん?
「サービス? 」
「そ、永作君、ないかい? 突然、自分から求めてきたりとか、エッチの前から濡れてることとか」
 その瞬間、私の背中を、冷たい汗がひやりと流れ落ちていますが、表情には出しません。代わりに、目の前の永作さんが真剣に考え込むのを、興味深げに覗き込む演技です。
「ん〜 どうだったろ? 」
「あ、ダメダメ、ジュンちゃん、年中、求めてくるってこの間、ぼやいてたもんね、わかるわけないじゃん」
「そうなんですよ〜 ジュンがおねだりしてくる三回に一回しか応じられなくて あ、でも、ちゃんとオレが触ってから濡れるかなあ」
 ちょっと安心した顔で、永作さんは、とっくに冷めた珈琲を飲み干します。
「特に危ないのは…… 」
 私は、本当にさりげなく、聞き耳を立てていました。
「今まで、使わなかった用事を言い始めて外出したりすることかな。それと、外出した日から数日は、とっても、優しくなって、普段なかなかしないような料理とか、部屋の片付けとか、妙に家庭的な『良き妻』になったりするんだよねぇ〜 」
 ポーカーフェイスに努めてはいましたが、私はどういう顔色をしていたのでしょうか。
 昨日の夕食の光景が浮かんでいました。 
 N県に来てからロシア人の料理教室で習ったというボルシチ風のシチューが、いつになく花など飾り付けられたテーブルに出てきたのです。
 妻の笑顔は、いつもと変わりなく、いえ、いつも以上に可愛らしく微笑んでいたのを思い出しながら、私の胃はキュッと締め付けられています。
「テーブルなんて、普段飾らないような花とかが置いてあったりね。たぶん、あれだね、旦那に対する申し訳なさみたいなのが、そういう形で出るんだろうね」
 萩原さんは、うんうんと腕組みしてから、永作さんの肩をぽんと叩きます。
「ま、永作君のところは大丈夫! 根拠は無いけどさ ガハハ! 」
 豪快に笑うと一同も釣られて笑います。
「ただし、あれだよ、今の若い人で、仲良し夫婦なら、その程度なら、まだ浮気の予備段階かもなぁ」
「予備段階? 」
「そう。浮気とまでは、行ってないけどって、ま、要するに、まだヤッちゃってないってことで、ね」
 永作さんは、笑った口を開けたまま、萩原さんの次のことを待っています。
「普段真面目な奥さんだと、なかなか、一気に浮気ってまでいかないんだ。でも、徐々に外堀が埋められていくんだわ、これが」
「ほう、外堀ねぇ〜 」
「ええ、係長。あるんですよぉ。他に、よくあるのは、化粧が少しだけ変わったり、」
「あ、派手になるんでしょ? 」
「いえ、逆に地味になることの方が多いと思いますが、むしろ、見えないところに変化が出やすいかな…… 」
「見えないところというと」
「服に隠れて見えない部分のお肌の手入れとかね。ほら、冬はどうせ見せないからって、むだ毛の手入れとかスキンケアとか、適当になる女は多いらしいけど、それが、コロッと変わる」
「へぇ〜 」
 係長は真剣な顔で、頷いています。
「それに、さっき言った下着の色とか、あ、あとムダ毛ってか、ヘアですかね。ヘアの形を整えたりし始めたら、もう、秒読みってことでしょ」
「わ〜 さっそく、聡子のヘアの形、帰ったら調べてみるよ! 」
 係長の奥様は硬そうだから大丈夫ですよ、と周りに諫められても、係長は早速携帯を取りだしながら、離れていきます。
 何となくそれでお開きになってから、私は、妻の様子を聞きたい、いえ、聞かねばなるまいと思って、誰にも見られない近所の公園に寄り道してメールしました。
 この時間なら、幸い妻も昼休みになっているはずです。
『今日は早く帰るけど、君はいつもどおりかな? 』
 そこから十五分ほどして、返事が来ました。
『ごめんなさい。ちょっと寄り道して帰ります。予約できたからエステに行ってくるね、ふふふ。ビックリさせてあげる』
『ん? エステは良いけど、一体何をするの? 』
『ナイショ(ハート) でも、きっとあなたも喜んでくれると思うわ。期待しててね』
 そこからはどんな風に尋ねても、妻ははぐらかすばかりだったのですが、家に帰った後も、それは続きます。
 いたずらな光を浮かべて笑うばかりで、なかなか言おうとしません。
「ね、そろそろ教えてよ」
「きっと、後で分かるモン、ちょっと恥ずかしいし」
 食後の片付けをしてくれる妻は、キャキャっと、女子高生が上げる笑い声のような声を上げてキッチンに逃げ出します。
 私も、残りの皿を流しに持っていきながら、極めてさりげなく、しかし、真剣に妻の表情を盗み見ながら、半ばの恐れを隠して聞いてみました。
「ひょっとしてさ、ヘアを脱毛とかしちゃったりして? 」
「わ? すごい! きゅう君、なんで分かったの? 」
 私の名前は「弓一郎(ゆみいちろう)」なのですが、学生時代から、誰が呼ぶのも「キュウ」でした。しまいには、開き直って「Q」と自分から書いてしまうようになりましたから、結婚してから妻が「キュウ」と呼ぶのもある意味、あきらめの境地で受け入れるしかありません。
 未だに、少しだけの後悔はあっても、Qと呼ぶ妻に対しての愛おしさは、ちゃんとあります。
 そんな想いを込める私の前には、黒目がちの瞳を丸くしながら、赤い顔で驚いている妻。
 そこに「浮気」と言う文字が立ち上っている気がしたのを、目をこすって、かき消しながら、私は、妻に近寄ります。
 私の雰囲気が違うことに気付いたのでしょうか。 
「ダメ、ダメ、ダメ、ダメぇ〜」
 妻が、軽やかなステップで、しかし、誘うようにも見える動きで逃げ出します。
 そういえば、いつもなら家に帰ってくるなりパンツスタイルになる妻は、なぜか、ミニスカートのまま。
 ふわっとした水玉のミニから、細い足が覗いています。
 まるで「この下はノーパンなのに変質者にめくられちゃいそう」とでも言うような勢いで裾をギュッと押さえながら、寝室へと逃げ出したのです。
 もちろん、真剣に襲うワケではありませんが、なんだか妙な胸のざわめきの中で、狭い我が家の中を夢中になって追いかけています。
「いや〜ん、だめぇ、ね、ね? お風呂が先。お風呂に入ってからぁ」
「いいじゃん、ちょっと見せてよ」
「あ〜ん、だめえ〜 エッチぃ〜 あれ〜 いや〜ん 」
 いささか芝居がかって見せる妻の様子に、ついついスケベ心が動かされてしまった私は、とうとうベッドに細い身体を押し倒してしまいました。
 さすがに大学時代よりは、女らしい脂が載ったとは言え、妻の身体は一五六センチ、四十五キロで一定しています。
 そのくせ、尻と胸は人並み以上に発達しているのですから、ウエストがどれほど締まっているのか想像していただくのは簡単かも知れません。
「あ〜ん、動けないぃ」
 イヤイヤと左右に振る顔を見ながら左手に身体を載せて、頭の下を通した右手で妻の右手をつかんでしまえば、細身の女性が身動きする術はありません。
「じゃ〜ん」
 とはいえ、それをいよいよ目の当たりにしようとする瞬間は、こっちにも決意が必要でしたから、むしろ私自身のために、いささか喜劇めいた演出で、ふわっとしたミニをめくり上げます。
 白いショーツの上側はレースになっていますが、白い肌が透けているだけ。おまけに、クロッチの部分にも黒い陰りなどどこにも見当たりません。
「あ〜ん、いやぁ、見ないでぇ」
 鼻にかかった声は、既にエッチモードに入っているのだと言っているようなもの。
「これっ? ね! ぬ、脱いで! 」
「だ、だめぇ、あんっ、お願いっ、いやぁん」
 とっさの攻防も、結局、隠すことなど考えていなかったようで、いやぁと悲鳴を上げているくせに、左手が尻に回り込んでしまうと尻を浮かせて協力してくれます。
 手慣れた夫婦の行為です。下着を脱がすのはあっという間でした。
「わ〜 いったい何で、こんな風にしちゃったの? 」
「だめぇ〜 」
 そこには一本の毛も存在しないのです。
「あ〜ん、だって、見えちゃうから、恥ずかしいんですもの」
「見えちゃう? 逆だろ? 毛がなかったら丸見えじゃん」
「あん、いやん、そ、そんなことないのぉ、だって紙パンツがあるから。でも、薄いから黒い毛は透けちゃうのよ。はみ出すかもしれないし。見えちゃったら恥ずかしいでしょ? 」
 初めて見たツルツルの秘部は、幼女のそことは違い、十分に外側は発達しています。足を閉じたままでは、中のビラビラは見えません。
 秘裂にそって覗く、くすんだ赤い色付きが、妙な色気を醸し出していました。
「透けちゃうって、どういうことなんだよ? 」
「いやん、見ちゃ、いやぁ、ね? ともかくしまってぇ〜 ねぇ、お願い、しまってください。見えちゃぅ。もう、スカートを下ろしてぇ〜 」
 視線から逃れようとバタバタするのを押さえているウチに何かの拍子にパッと広がってしまった足を、瞬間的に、広がった形で押さえ込んでいました。
「ああん、いやあ。許してぇ」
 顔を振りきるようにして恥ずかしがる妻の足は、裏返しになったカエルのようにグッと広がってしまいます。
「いやああ、だめぇえ 」
「トモ、なんだこれは! 」 
 驚きのあまり、恋人時代以来忘れていた呼び方で妻の名を呼んでいました。
 妻の智美の名を、こうやって呼んだのはいつのことだったのか思い出せないほどです。
 無毛の股間には透明な液体が見ただけでそれと分かるほど、湧き出していました。
「ああん、ダメェ、見ないでぇ、キュウく〜ん、あああ、あうう! 」
 考える前に私の指は、亀裂のぬかるみを探ってしまったのです。
 強烈な快感に襲われたように、妻の背中がピーンと仰け反ります。
 たったの一撃、しかも、ビショビショの秘部を探るだけの一撫でだけで、細い身体にオーガズムが貫いたのがはっきりと分かります。
 ヒクヒクと無毛の秘裂がケイレンするのが丸見えでした。
 こうなると、私だって冷静でいられるわけもありません。
 前戯なんて考えもしないまま、あっという間に下半身だけ脱ぎ捨てると、猛り狂った怒張をずぶりと突き立てました。
「あああん! 」
 甲高い声が寝室に反響します。
 私が知っているそこよりも、はるかに熱を帯びた美肉は、圧倒的な締め付けで私を包み込んでいました。
「ああ、あなたぁ」
「さあ、教えて。いったいどういうことなのか」
「ああん、だめぇ、あう、い、いいっ」
 強く締め付けてくる美肉に、目一杯興奮してしまっている私ですが、妻の話を確かめずにはいられません。
 グッ、グッ、グッと大きな動きで四、五回、突いた後で、今度は入り口付近まで抜き取る勢いで腰を引きます。
「あぁあん、だめぇ。抜いちゃダメェ」
「ちゃんと話してくれないと、抜いちゃうよ」
 実は、早漏気味の私が苦肉の策として使うのが「途中まで抜いて焦らす作戦」です。
 新婚時代はともかくとして、こっちに来て、実は萩原さんに教わった作戦ですが、普段はお堅い妻も、一端感じ始めると、これにめっぽう弱いのです。
 さすが萩原さん、と思いつつも、これを使っていることは、恥ずかしくてご本人に報告できません。
 心の中で感謝をしつつ、今日も使う焦らし作戦。
 絡みつくような妻の秘所は気持ちよすぎて、十分と持ちません。ですから、十分に感じた頃を見計らってから、途中まで引き抜き、焦らしては深く入れ、深く動いたと思うと、また引っこ抜いてしまうのがいつものやり方でした。
 そして、これをやりながら、Mっ気のある妻を言葉責めすると、あっと言う間にオーガズムを引き出すことができると言うのが、いつものやり方でした。
 その意味では、全くいつも通りだったのですが、ただ一つ違うのは、今回は焦らすのが目的ではなく、焦らして全てを聞き出してやろうというのが目的になったことです。
「あああん、く、苦しいのぉ、お願い、ください、あなたぁ」
「さ、ちゃんと話して。いったい、整体で何があったの? 」
「あああぁ、お願い、な、何も、あぁん! は、話すから、話しますから、お願ぃ! 」
「ほら、ちゃんと話して」
 入れては抜き、抜いてはまた入れをくり返しながら、少しずつ聞き出していきました。
「あ、あのね、あん。あふっ、あぁ、と、とっても、親切に話を聞いてくれて…… 」
「うん、それで? 」
「あぁ、あなた、ね、入れて。苦しいの」
「だぁめ。ちゃんと話したらね」
「ああん、あ、あのね、前回…… 最初の時なんだけど、ね、最初に紙の下着を渡されて、上に、薄い、ん〜 なんていうのかなあ。なんかほら、病院なんかできる検査着みたいなやつ」
「ん? 着物みたいになってて、前を合わせてヒモで結ぶヤツ? 」
「そ〜 そ〜 そうなの。そういうヤツを渡されてね、着替えたの、あん、いやん、入れてぇ、あん、あふっ」
「ブラは? 」
「え〜 あんっ、い、言うのぉ? 」
「そうだよ。ちゃんと教えて」
「ちょっと恥ずかしいし、考えちゃったんだけどぉ、先生に、上も全部ですかって言ったら、皆さんそうしてます、って言うから あん、だめっ、あう、話せなくなっちゃう、あん! 」
そこからは、感じさせたり、話を聞いたり、隠そうとするたびに、快感責めにして白状を促したり、と大忙しだったのですが、妻が受けた施術は、おおざっぱに言っても、愛撫と全く変わりないものだと言うことだけは分かりました
 もちろん、今、私が貫いている秘部だけは触れられてはいないと言っていましたが、それを信じるにしても、逆を言えば、このピンク色の乳首を載せたDカップは、先生の手を受け止めたと言うことになります。
「あああ、あなたあ! あううぅ」
 深々と柔肉の奥まで突き上げながら、私好みの柔らかな膨らみを、ギュッと握りしめます。
 掌に余る、柔らかな感触。
 しかし、その時、私の頭の中に浮かんでいたのは、思ってもみないイメージです。
 鮮烈な光にあふれる色彩の中で、私だけのモノのはずの、この胸に、見たこともない先生の手が伸びている姿でした。




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