第4話
『昨日は、結局、何も言わなかったよな』
予約していることを匂わせすらしませんでした。
それどころか、朝出かけるときに「今日は残業で遅くなります」とまで言って出た妻の、薄いブルーのワンピ姿が、まだ頭から離れません。
モヤモヤする気持ちを萩原さんに相談しようにも、本日休暇中。
永作さんに言わせると「下手の横好きで、写真でも撮りに行ってるんじゃないの。美大崩れで写真が趣味だって、ご本人が言ってるし、ま、萩原さんなら、ヌード専門でも不思議じゃないけどね」だとか。
とても、そんな高尚な趣味を持っているようには見えませんが、ともかく、不安というか、ジリジリする気持ちを聞いてもらえる相手もいないまま、退勤時間と同時に飛び出したのです。
ですから、院長に挨拶してからも、まだ私は頑なになった心を戻せないままでした。ただ、今さら「やめます」とも言うに言えず、気まずい時間に困惑していた絶妙のタイミングで、背後のドアがガチャリと開きました。
ドキッ。
とっさに隠れようかどうしようか迷った私の背中から、ハリのある、良く通る声。
「こんにちは〜 」
涼やかな声です。しかし妻ではありません。
「ん? 」
とっさに振り返ると、Tシャツ、デニム姿のショートヘアの女性が靴を脱いでいました。
おでこに汗をかいて、息を切らしています。
『他の患者さんが来るなんて聞いてませんけど? 』
とっさに院長の方を見てしまいます。
もちろん言葉にはしませんが、その不審は、恐らく伝わったはず。しかし、院長は、のんびりした口調で、入ってきた女性の肩をにこやかにポンと叩きました。
「おぉ、ちょうど、丁度だよ! うん。ジャストタイミング。えっと、こちらの方が、今日お手伝いいただく、たぬき彩美さんです」
「センセ、違います。わ た ぬ き です」
「あ〜 そうだっけ、そうだっけ。ごめ〜ん、あやみちゃん」
「もう、いっつも、ひどいんだからぁ。初めまして。綿貫彩美です。先生ったら、私が丸顔だから、いっつも、タヌキ、タヌキってひどいんですよぉ」
明るく笑いながら、彩美さんは、隣の市で小学校の教員をやっています、と自己紹介。
なるほど、いかにも先生という感じの真面目そうな顔立ちは、特別美人というほどでもありませんが、素直で平凡な、誰にでも好かれる女性の典型かもしれません。
顔かたちは、どっちかというと卵形で、決して丸顔でも無い感じです。
『それに、化粧っ気も、ないよな。マツゲも付けてないし。ウチの会社の女の子達スゴイもんなあ』
ウチの女子社員達に比べれば、化粧なんてしていないも同然でした。ほぼすっぴんの顔は、私と同じくらいの年に見えますが、どんなOLも、イマドキはしているマツゲ盛りも、シャドウもしていないのが逆に新鮮でした。
おそらく私の探るような視線に気がついたのでしょう。
「あ、ヤダ、お化粧してくれば良かったかしら、でも、学校終わって直行だったんですよ。ちょっと待っててくださいね、せめて汗を落としてきますから」
パッときびすを返すと、シャワーお借りします! と診察室の横のドアを開けて奥に入ってしまいます。
テキパキとした動きは、会社で見る女の子たちと全く違う生き方をしているんだなと、なんだか不思議な感じです。
それにしても、小学校の先生がいったいなぜ?
その瞬間妻が言っていた「ファンの中には小学校の先生もいる」という言葉が漠然と頭に浮かびます。
『じゃあ、この人が、そのファンの人? でも、いったい、なんでここに来るんだ? それにしても、デカかったな…… って、そんなの関係ないってのに』
ついさっき見た先生の胸が、Tシャツの上から一瞥しただけでわかるほど巨大であったのを思い返しながら、それでも、いったい何でという思いは消えません。
それを聞こうとする私を遮って、院長は奥を指さしました。
「大神田さんは、こちらでご用意ください。あのカーテンの影で、こちらにお着替えください。あ、これは、ウチの患者さんに着ていただく術衣と言いまして。奥様もこれを着ました」
いちいち、妻のことを出さなくても、と小さく反発しかける心はありますが、懸命にそれを抑えるしかありません。
なんと言っても、昨日、萩原さんからさんざん釘を刺されています。
「人生が変わる、何があっても我慢するんだ」
ご丁寧に、今朝、たった一通入っていたメールにも「我慢だよ」と一言。もちろん、すぐにメールを送り返しても返信はありませんでした。
『しかし、我慢って言ってもなあ』
とはいえ、あの萩原さんの重々しくも真剣な表情と声色を思い出すと、小さな苛立ちなら、どうにか押さえ込める程度にはなっていました。
「カーテンを閉めますので。お召し物を全部脱いで、着換え終わったら、お声をかけてください。あ、まだ大丈夫だとは思いますけど、そろそろいらっしゃってもおかしくないので、できるだけお早くお願いしますね」
時計は、五時三十五分を指しています。
「あ、携帯、一応、預からせてください、ご主人の手回り品や靴と一緒に二階にお持ちしておきますから。 施術台、いつもよりも、そっちよりにしておきますから、お楽しみにね」
「あ、はい、お願いします」
施術台を寄せると何が良いのか、ちっとも分かりませんが、もう、こうなったら小さなコトにいちいち反発するよりも、毒を食らわば皿までの心境と言うべきです。
素直に従う気持ちになろうとするしかありませんでした。
カーテンをサッと開けたところは、一畳よりは二回り狭いスペース。体重計があるということは、妻も、ここで着替えたに違いありません。
『いかん。余計な考えは捨てろ。オレが普通だってことを。妻がイタズラされて喜ぶ変態なんかじゃないってことを証明するんだろ? 』
それがいったい何をどうすることになるのか分かりませんが、ともかくも、相手の手に乗るようなことをしなければ良いはずです。
虚心坦懐。
『普通にいれば良いだけのことだ』
さっさと全部を脱ぎ捨てます。
正直、一瞬、下着を脱ぐ時は躊躇しましたが、むしろ、そんなことにためらうのは、心が狭い男のような気がして、一気に全てを脱いで、術衣を羽織ります。
「着換えました」
何も穿いてないと、イチモツがぶらついて、不安な感じですが、それをいったん我慢して、前を合わせて紐を結んでしまいます。
自分からカーテンを開けると、院長が、サッと近寄ってきました。
「さすが、男性は、お早いです。では、そちらの柱に寄りかかっていただけますか。はい、そうです、では、失礼して」
「え? こ、これは? 」
「すみません、ここからは黙って従っていただけますか? 決して悪いようにはいたしません。万が一、衝動的に動かれると、智美さんの心を傷つけかねませんので。すみません」
すみませんと言いながら、院長の手はテキパキと動いて私の身体をグルグルとロープで巻いていくのです。
あっという間に、柱に寄りかかる形で縛り付けられてしまったのです。動こうにも動けない状態です。
「これで、痛くありません? そうですか、よかった。あいにく、この後二時間ほど立ちっぱなしでいただきますが、それはよろしいですよね? はい、ありがとうございます」
結び目を、もう一度点検した後で、内側のベージュ色のカーテンを指さしました。
「ほら、これレースになってますでしょ? これ、ちょっと特別でして。ここの電気を消すと、暗くて、向こうからは、ほぼ見えないんです。ほら、ちょっとやってみますね」
カーテンの真上の電気を消して、シャッと白っぽいカーテンを引くと、 確かに、部屋の方はクッキリと見えていますが、果たして、向こうからこっちが見えないのかはわかりません。
それにしても、一体何が何なのか。
肝心の賭けというのが、全く見えてこないことに、いらだちと戸惑いが高まるばかりの私を、まるでワザと、焦らすかのように、院長は、平然と説明し続けました。
「目の前に来て、その気になって覗けば見えますけどね、智美さんがわざわざ見たりすることはないと思いますよ。安心しててください。ほら、施術台、こっちに寄せたの分かります? 」
なるほど、さっき、ほぼ中央にあった施術台は、カーテンのすぐ前に動かされています。
「じゃあ、まもなくいらっしゃると思うんで、カーテンを引いておきますね。おっと、じゃあ、彩美ちゃん、後よろしく〜 」
「え? 」
「は〜い。先生」
カーテンから抜ける院長と入れ違えるように、さっきの小学校の先生が、術衣姿で入ってきたのです。
「あ、こんにちは。改めまして」
ぺこりとお辞儀されて、お辞儀を変えそうとして、改めて動けないことが身にしみます。
ついさっきの、怒濤のような紹介を思い出しています。
『えっと、綿貫彩美先生、だったっけ? 』
さっきは、ろくに言葉も交わす暇もなかった女の先生は、シャワーを浴びに行ったという言葉通り、濡れた髪を拭きながら、この狭い空間に頬を少し赤く染めて入ってきたのです。
私と同じベージュの術衣姿。見たこともないほどに膨らんだ胸の膨らみに、ついつい目が行きそうになって、懸命に目をそらせました。
狭い空間です。
おそらく、本来は微かな薫りなのでしょうが、女性特有のシャンプーだか、コロンだかの匂いが、あっという間に充満して、私の「男」をくすぐります。
事態が全く飲み込めないうえに、見ず知らずの女性とこんな狭い空間にいることに、ひたすらドキドキです。
こんな狭い空間では、身体が触れない方がおかしいほどで、実際、彩美先生の巨大な胸は、私の胸の下の部分に触れています。
こんな時に、調子に乗ってもっと身体をくっつけようとする人間と、身を引いて、なんとか失礼にならぬようにしようとする人間がいます。
私は後者でした。
柔らかな感触を知った瞬間、後ずさりしようとして、身動きできぬことを思い出すと、後はもう、ひたすら、その柔らかな感触を意識しないようにするしかありません。
焦る私の視線には巨大なバストが、ありました。
その視線を辿った彩美先生は、私が何とか身体を引こうとしているのを見て「狭いので。すみません、触れてしまうのは勘弁してください」と言って、微笑んでくれます。
人の良さそうな笑みでした。
「あ、ど、どうも、すみません」
「それよりも、あの、先生が、奥さん来る前に、しておかなきゃって、仰ったんです」
「え? しておかなきゃ? 」
「私も、えっと、あの、あんまり得意じゃないんで、もし、注文があるときは言ってくださいね。……って、まず、私が脱ぎますね」
『脱ぐ? 』
我が耳を疑った次の瞬間、目の前で、術衣の紐がスルッとハズされ、フワリと術衣がはだけた瞬間、白く巨大なオッパイが目の前に出現します。
Dカップの妻とは比較にならない、小ぶりのメロンほどもある巨大なオッパイには、特有の大きめの乳輪と小さな乳首がポッチリと立っています。
声も出ぬ驚きが身体に満ちるよりも前に、さすがのテキパキとした動きで、妻よりは遙かにボリュームのある肉体が、目の前でヌードになっていたのです。
胸の周りの肌は真っ白で、首と半袖型の「焼け残り」からすると、あまり色っぽくない水着を想像していました。そんな日焼けをするのも、プールで子ども達を教える小学校の先生ならではか、とも頭に浮かんでいます。
「あんまり見ないでくださいね…… って言っても無理ですよね」
優しく微笑んでくる彩美先生ですが、私の目は胸に吸い寄せられてしまいます。
「恥ずかしいけど、どうぞ…… ご覧になって良いんですよ」
真面目そうな彩美先生の頬は、真っ赤に染まっています。
その羞恥の表情と、そのすごいボディとを、私の目は意地汚く往復していました。
さっきのTシャツ姿では分からないプロポーションの良さです。腰はグッとくびれ、胸は一昔前に流行ったグラビアアイドルなんて真っ青。腰に続く尻まわりはくびれた細いウエストから一気に張り出しています。
おまけに、頭半分小さい私と、脚の長さは同じほど。いくら私の足が短くても、これはむしろ彩美先生の脚の長さが、それだけスゴイということです。
『こりゃ、なんて身体だよ。こんな先生がプールに入ったら、小学生でも勃起するだろ』
何のことはない。
見てはいけない、という良心の声もものかは、すぐ目の前のすばらしい体型のヌードを、キッチリと全て見ていたのです。といっても、巨大なバストに視界を遮られ、かろうじてヘアは見えませんでしたが。
「あ、あの…… 」
ハッと気付けば、彩美先生は、自身にまとわりついた私の視線をしっかりと捕まえていました。しかし、たっぷりと時間を与えてくれたのは、優しさだとしか思えません。
「えっと、いろいろとお聞きになりたいでしょうけど、今は、ちょっと我慢なさってくださいね」
口の前に指を立てて、静かに、と言う仕草。
ただでさえくっついている距離で、ボリュームある胸がぷるんぷるんしながらの仕草には、圧倒的な迫力があって、私は黙らざるを得ません。
「さっきも言いましたけど、私、あんまり経験ないし、こういうの得意じゃないんです。でも、ご主人のこと、頼まれてますから」
ニッコリ笑って、頬にチュッとキスされるのは、色気よりも、なんだか子ども扱いされている感覚に近い気がします。
「安心してください。今日は、ご主人の味方ですから。後で、お辛くなった時は、思うまま合図してくださいね。何回でも、お付き合いしますよ」
意味の分からない言葉であっても、ボリュームあるヌードを隠しもせずに、真顔で、きっぱりと言ってくれる彩美先生の言葉は、親切心からなのだということだけは伝わってきます。
とはいえ、そんな言葉を聞いている間にも、彩美先生のテキパキと動く手は休んでいません。術衣の紐は解かれて、縛られた後ろ手の部分まで、優しい手に、はだけられてしまいます。
「わ、すごい。大きいっ」
標準サイズに毛の生えた程度の私のモノを、真実みのある言葉で褒めてもらえるのは、確かに嬉しいことです。しかし、あまりの展開の早さと目の前のヌードがあまりにもすばらしすぎたのに怖じ気づいてしまっているのが、現実です。
クエスチョンマークだらけの頭では、半ば萎えたままの怒張に力が入る気配はありません。
おまけに、今日一日、怠け仕事とはいえ、シャワーも浴びずに、そのままの身体です。たった今シャワーをしてきた、爽やかな匂いの彩美先生の前で、情けないほどのムワっとした臭気を放ってしまうのは、恥ずかしさもありました。
しかし、そんなことはちっとも気にする様子を見せず、柔らかな身体をピタリと私にくっつけ、目を閉じて唇を差し出してくるのです。
「ビックリなさっていますよね。えっと、あの、これで、信じていただけませんか? 」
身長差があるせいで、恐らくつま先立ちしながらでも、ふっくらした彩美先生の甘い香りのする唇は、やや下になります。
頭の中で、何かがチリチリと焼け焦げる匂いがしながらも、男として、その誘惑に耐えられるわけがありませんでした。
つい数時間前には、子ども達に語りかけていたその唇に、私は、自分の唇を重ねてしまったのです。
『うぅう、こんなに柔らかいのか。なんて、ねっとりしたキスなんだ…… 』
一度でも唇が合わされば、そこからは歯止めが効きません。
動けない私の頭を下から抱え込んで、彩美先生の舌がヌルリと差し出されれば、もはや、そこには男と女のキスに、怒濤のようにもつれ込むしかありませんでした。
女という生き物は不思議です。
いえ「女という生き物に弱い男のサガが不思議だ」と言うべきかもしれません。
チュパっと湿った音をさせて、舌と舌を絡め、飲み込むキスが終わったときには、既に、私はこの事態を受け入れていました。
つまりは、股間のモノが目一杯硬く、天を突く勢いでそそり立っていたのです。
ようやく唇が離れます。
「あの、これって、いったい」
絡ませあった舌の絶妙な快感を意地汚く反芻しながらも、私は何かを言おうとしていました。その言葉を止めたのは、プニュリと押しつけられた、柔らかで、圧倒的な存在感の胸。
「ふふ、ちゃんと大きくなりましたね。良かったぁ、少しは魅力を感じてもらえるのかしら? 」
ニッコリと笑うその表情は、ついさっき、平凡な顔立ちだと思ったことなど忘れさせるほどの魅力を放ち、ねっとりと潤む瞳は、さっきの真面目さの裏側に潜む、溢れるほどの淫靡さを感じさせてきます。
つまりは、真面目な小学校の先生は、その平凡な外見の中に、途方もなく男をそそらせる淫靡な魔女を飼っていたと言うことでしょうか。
私は魅入られたように、妖しく動く唇も、押しつけられる巨大な乳房も、何もかも、目を離せなくなっています。
「ふふふ。すごい、大きいですね、形もスゴイし。女性泣かせだわ、こんなの」
男を喜ばせる言葉を独り言しながら、瞳は爛々と妖しく輝いています。
彩美先生の手は、優しい手つきに見えても、指先がしっかりとカリのすぐ下にある、射精につながってしまう場所を刺激し続けてきます。
出会ったばかりの、真面目そうな小学校の先生の手が、いきり立った怒張をあやすように、しかし、きちんと目的を持って動き続けているのです。
『これじゃ、出てしまう』
優しい手の中の動きで放出してしまうというのは、予感でもなんでもなく、この後すぐに起きてしまう現実なのだと、思ってしまいます。
なんと言っても、彩美先生は自分では「得意じゃない」と言っていましたが、それは謙遜すぎるほどに謙遜だったと言うことを、我が身で思い知っていました。
ただ扱くだけじゃなく、男が射精してしまうポイントをちゃんと押さえて、指先は、頻りにその場所を刺激し続けていました。
カリのすぐ下にある、のど元は、ピアノを叩く指先ならではの、優しくも力強い動きで、コリコリと撫でられているのです。
「今日は奥様がオイルマッサージなんですよね? それを見学しちゃうなんて。ふふふ。ご主人もお好きですね」
下への視界は、巨大なオッパイが全てを塞いでいます。
指先の動きをそのままに、いったいどうすればできるのか分かりませんが、掌全体で、こすり上げる動きが、クイクイッと加速してきます。
「いや、好きで見るわけじゃ…… 」
好きで来ているわけじゃないと言いかけて気付きました。じゃあ、何で、妻のオイルマッサージを見るためにこんな所に来ているのだと。
「あのぉ」
「はい? 」
「先生の言葉をそのまま言いますね」
裸で身体をくっつけているのに、それすら忘れるような恥ずかしそうな表情の彩美先生。
「えっとぉ、あくまでも先生の言葉ですからね? 」
耳たぶに唇をくっつけてくると、巨大な胸が、ギュッと押しつけられて、そっちに意識が行ってしまいます。
「彩美ちゃんのオッパイでも立たなくなるくらい出してもらって。何回でも出すんだよ」
声色を作って、そう囁くと、さっきまでの密やかな声に戻ってさらに続けます。
「いっぱい出して上げなさいって言うのが先生のご指示です、だから、どんどん出してくださいね。そのためなら、ご主人は、どんな注文をなさっても大丈夫です」
「あの…… あや…… わ、綿貫先生は、なんでそんな指示を受け入れて、こんなことまでしてくれるんですか? 」
「え? 」
一瞬キョトンとした後、
「あぁ、えっとここでは、あやみって呼んでください。そうしないと、何だかヘンだし。それに、ここで先生っていうのは、院長先生だけのことなんですから」
そこで、イタズラっぽい目で私の目を覗き込んでから、一度チュッとキスをすると、内緒話をするように、囁いてきます。
「私は先生のフアンで、弟子なんです」
いきなり、手の動きが加速してきます。堪えることを忘れてしまえば、瞬時に追い上げられてしまいそうな動きです。
「弟子? 」
「ええ。元々、私もここで先生に施術していただいて。それ以来ファンになってしまったから弟子入りしたんです」
「弟子って言うのは、こんなことも? うぅ」
その瞬間、私は限界を突破しそうになってしまいます。それを先刻ご承知なのか、目を閉じた瞬間、柔らかな手の動きが、キュッ、キュッと、仕上げの動きに変化しました。
しかし、一気に背中を電気が駆け上りかけたのは、彩美先生のせいのせいだけではありません。「先生の弟子」が、そんなことをするのなら、もし妻がこのまま院長のファンになってしまったらというのが、とっさに頭に浮かんでしまったせいなのです。
「あ、今、なんか考えちゃいました? ふふっ、奥さんのこととか? 」
真面目そうな顔の中に、イタズラッ子の笑みを浮かべると、今度は、わざと手の動きをゆっくりに変化させてきます。
「そうよぉ。先生のファンになったら、お言いつけ次第で、奥様も他の男の方に、喜んで、こんなコトしちゃうのよぉ」
「えっ…… 」
「あん、ふふふ、また硬くなりましたよっ」
嬉しそうに、一度私のモノを見てから、イタズラな目でまた見上げてきます。
「もう、限界ですよね、出しちゃいましょうか」
私の返事も聞かずに跪くと、あ〜んと口を開ける姿を見せつけるようにしながら、私をゆっくりと呑み込んでいきます。
「ぅっ」
思わず呻いた私を見上げて、目だけでクスリと笑うと、ジュボ、ジュボ、ジュボと舌を絡ませながら一気に追い上げるフェラを始めます。
「そ、それは、う、だめだ…… 出ますっ」
辛うじて、このまま出して良いのかというためらいで、出すという予告をしたのですが、逆に、彩美先生のフェラはさらに深いものへとなってしまいます。
「うっ」
ドクン、ドクン
立て続けに発射してしまった白い液体は、塊のようになって飛び出すと。彩美先生の喉の奥へと吸い込まれていったのです。
『うぅう、すごい、吸い取られる』
こんなフェラ初めてでした。
腰がとろけそうになりながら、トロトロと出し続けている間も、舌先がカリをレロレロとなめ回し、唇は、ゆっくりと扱き続けてくれています。
それは、フェラが苦手な妻の、おざなりのものとは比べものにならないほどの快感をもたらします。思わず「もっと」と思いながら最後の一滴まで絞り出していました。
私が出した物を、真面目そうな先生は、いやな顔一つせずに飲み下しています。いえ、むしろ恍惚とした表情を浮かべていました。
「わあ、いっぱい出しましたねぇ。でも、これじゃ足りませんよね? もう一回でも二回でも。ううん、何回でも」
にっこりと微笑む笑顔は教室で子どもたちに向けるかのような優しさに満ちあふれながら、しかも、目元には妖しい大人の雰囲気を、たっぷりと蓄えています。
「今日は、いっぱい出してくださいね。 先生からも、そういうご指示ですし」
院長の指示のままに、ついさっき初めて出会った男の精子を飲み込む、真面目そうな小学校の先生というのにも驚きますが、当たり前のように、それを指示している院長に、何よりも驚きます。
いったい、ここの院長は何を考えているのか。
『智美は、院長が、こんなことを命じるヤツだってことを知らないで信じてるんだ…… 』
ついさっき、先生の声がねっとりと囁いた言葉が、頭にリフレインしています。
『このまま、行けば智美もこんなことを…… 』
「あ、効いてる、効いてるぅ 」
「え? 」
「奥さんが、こんなことしちゃいますって言われて、ご主人も、興奮なさっていらっしゃるんですよね? 」
「そんなことは」
「だって、ちっとも小さくなさらないんですもの。それとも、少しは、私にも感じてくださっているのかしら? 」
「え? 」
「私だって、やっぱり、初めて会う人に見せるのって恥ずかしいんですよぉ。それに」
一度言葉を切ってから、耳元に唇を寄せると「嫌なタイプの男性だったら、やっぱりここまでできないと思います」
そう言って熱い視線を送られてしまえば、初めて会った私のことをスキになったのか、などという、とんでもない誤解をしてしまいそうです。
そして、恥ずかしいと言いつつも、彩美先生は一糸まとわぬ姿を隠しません。
その乳房は、白くて柔らかで、そして巨大でした。小ぶりのメロンほどもあろうかという大きさだけではなく、男の手を吸い寄せるような柔らかさを見せつけていました。
おまけに、バストの大きさだけではなく、そのスタイル全体がすごい。
ウエストから腰に掛けての急カーブは、圧倒的でした。
ウエストの細さだけなら妻と同じくらいかもしれませんが、全体的にスリムな妻と比べると、圧倒的に張り出した尻の丸みは圧倒的なのです。
「どうかしら? 」
無理やり、距離を取って、私よりも頭半分小さい先生は、一糸まとわぬ姿を見せつけます。
いかにも、小学校の先生っぽい雰囲気を見せている髪型、表情、立ち姿。それなのに、神聖な学校にはふさわしくない巨大なオッパイは、ロケットの先端のように尖って、大きめの乳輪の真ん中の乳首は、ポッチリと屹立しています。
そして……
「あ、これですか? 最近は、ここ、綺麗にしちゃう人多いんですよ、奥様も、きっと、そうなさっているでしょ? 」
ヘアの陰りは全くなく、ふっくらした白い丘は、わずかに色の変わった筋の上端を見せつけています。
こんなヌードを目の前にすれば、男なら誰だって欲情するに決まっています。
「あの、こんなことしてると、淫乱だと思われちゃうかもしれませんけど、私、普段はエッチなんてしませんからね。それは信じてくださいね」
あまりのことに、口の中はカラカラですが、我ながらオカシイほどに、ぎこちなくカクカクと頷きます。
「信じてもらえないかもしれませんけど、去年まで、処女でしたし」
「いったい何を? 去年まで処女って…… 」
もちろん今では処女ではないのでしょうが、となると、処女を院長に捧げたと言うことでしょうか。ということは、トモも院長とヤッてしまうことに?
「あ〜 今、奥さんのこと考えたでしょ? 」
イタズラな笑み。
「私の処女は院長先生が相手じゃないかと想像して、それで、今度は、奥さんと先生がしちゃったらって考えたのね? 」
今や妖しき女に変身した彩美先生は、まるでテレパシーでも使えるかのように、正確に私の思考を読み取っています。
無言のまま、それを否定できない私の目を見て、イタズラな笑みを浮かべると、股間をギュッと握ってきました。
「そうよぉ。ご想像の通り。私、お願いして、先生に経験させてもらったの」
大きな膨らみがギュッと胸に押し当てられます。
「どうしますか? 奥さんが先生とエッチしたいって言い始めたら。あら、ふふふ、旦那さん、正直すぎですよぉ」
「いや、そんなことはないんだ」
何時間か前には、チョークを握っていたその手の中で、ついさっき放出したことなど微塵も感じさせないほどの勢いで、強烈な硬直をしていました。
「もう一度、出しておいた方が良いわね」
ニッコリ笑った表情には、少しのてらいもなさそうです。
ごく当たり前だという表情で再び跪くと、大きな口を開けて、当たり前のようにくわえ込みます。
ジュボっと、密やかな音を立ててひとしきり唇で扱くと、いったん抜き出して、上目遣いで見上げます。
「もうすぐ、奥さんがいらっしゃるんでしょ? 」
話しかけてくる間も、右手が、扱き続けてきます。ついさっき放出したおかげで、すぐにという感じでもありませんが、このままでは二度目の放出も遠くありません。
「次は、奥様がここに入っていらっしゃるときに、出しましょうか」
看護師さんが患者に言い聞かせたり、先生が子どもに言い聞かせるような、優しくも、決めつけるときの響きを持っています。
「そんなことは」
「あら、できませんか? それとも、我慢できると思っていらっしゃいます? 」
強烈な一言でした。あまりにも平然とした顔をしたまま、男の射精などいくらでも操れるのだと言っているのでしょうか?
「妻が来た時に、そんな、出したりなんてするわけが」
「じゃ、先生に渡された魔法が必要かしら」
「魔法? 」
「ええ、魔法の写真。ね、これ、ご覧になります? 」
「それは、この間の? 」
「ふふふ。気になりますよね。この中の写真」
無邪気な笑顔の中には妖女の巧みさが潜んでいるのかもしれません。強烈なフェロモンに誘引されたように、私はファイルから目を離せなくなります。
「ね、この写真、ご覧になりたいですか? 」
「いや、いい…… ダメだ…… ダメだ…… 」
ファイルからちっとも目が離せないまま、唇は、うわごとのように「ダメだ、ダメだ」と唱え続けます。
人前で、この写真を見たくない、本気で思います。しかし、その何倍ものエネルギーで「見たい! 」という声が頭の中で響き渡っています。
「お声を低く」
思わず声が大きくなってしまった私を、ニッコリ笑って諫める表情は、小学校の先生そのものです。
「どうかしら、この写真をご覧になって、こっちはどうなるかしら? 」
「いや、どうもなるわけがない。やめてくれ、お願いだ、やめてくれ ……やめて、ください」
哀願する口調になってしまう私を見上げながら、扱く手を休めることなく、片手で器用に写真を取り出します。
「ほら、どうかしら? 」
一瞬目を背けた私ですが、目の前にかざされてしまえば、もはや拒否するエネルギーは残っていません。
目は写真に吸い寄せられるように視線が固まります。
「あれ? 」
圧倒的に大きな胸は、こうやってまっすぐ立つと重そうに見えていました。思わず漏らした声は、ガッカリという響きを持ってしまいましたが、とっさに止められません。
「ふふふ。奥様の写真だと思いました? あ〜ん、そんなにロコツにガッカリしなくても」
微苦笑を浮かべた彩美先生は、クイクイクイと怒張を扱きながら「私、そんなに魅力ないかしら? 」と囁きます。
そこに映っていたのは、彩美先生でした。
「ね、これ、撮ったとき、私も処女だったんですよ。ね? 初めてオトコの人に、胸も見られちゃって。でも、なんとなく、こうしちゃったんですよねぇ」
つい先日の妻と、全く同じポーズで映っているのは、目の前の先生です。A5サイズのその写真を、裏に何か付いているのか、そのまま目の前のカーテンに貼ってしまいました。
「ねぇ、よくご覧になって。滅多にないはずよ。処女のヌードと」
キュッと握った怒張を妖しく扱く彩美先生は、目の前のカーテンにチラリと目をやってから耳たぶを甘噛みしながら囁きかけてきます。
「どう? この時と、今の私、どっちの方が美味しそうかしら? 」
手の動きが加速します。
「と言っても、あなたには、百万人のヌードより、こっちかしら? 」
「ん? あっ! 」
不意打ちでした。
先生の写真の横に、ペタリと貼られたのは、妻の、この間の写真です。いえ、その表情は、あの写真よりもさらに妖しい光を浮かべ、その上……
『また、全部脱いでる! いや、施術の間、ずっと脱いでたのか? 』
オンナというのは、何という生き物でしょうか。
『あれほど、全部、喋らせたつもりだったのに』
全てを脱いだ妻の写真は、まるでセックスの後の時のように、ポーッと頬を染めて、虚脱状態。
しかも、きちんと両脚を揃えて立っている股間を良く見ると、微妙に、光っている気がします。
『濡れてる? こんな所まで? まさか、もうヤッちまった後? これ、ナカ出しされたとか』
私の視線をチェックしていたのでしょう。彩美先生が「違いますよ」と囁きます。
「え? 」
「奥様、絶対に、先生とエッチしてません。でも、あの施術を受けたら、そりゃ、そのくらい濡れちゃいますよ。ご安心なさって。絶対に、先生はしてません」
そうやって私を安心させる言葉を囁いた後、一拍おいて「この間は、ですけどね」と妖艶な表情で私を見上げるのです。
「この写真、施術の後、効果を確かめるために、先生と一緒になって見るんですけど、ね」
シャドウも塗ってないのに、クリンと大きく見える、黒目がちの瞳をまっすぐに私に向けて、先生が微笑みます。
「その時がけっこう恥ずかしいんですよぉ。だって、自分の身体を男の人と一緒に見て、しかも、この時って、すっごく感じちゃってるじゃないですかぁ。奥様なら、何回もイッちゃったかも」
引きつった表情の私の頭の中で「何回もイッちゃったかも」という言葉だけが、ものすごい早さでリフレインしています。
「それを見ながら、先生、あれこれいうんだもの。ううん、話自体は、真面目なのよ。でも、先生の指が、写真の胸なんかをツッとなぞったりするでしょ? そうしたら、何だかゾクゾクしちゃったりするの」
『智美が、院長にイカされたかもしれない? 何回も? そんな、ウソだ。そんなはずが…… 』
「あ、言っておきますけど、先生は無理やりしたりしません。奥さんが、懇願したら、きっとイカせてくれたはずよ。そう。エッチなおねだりしちゃったかも、だって、その表情、ですものね、きっと、すっごく良かったのかな」
その声は、私の頭の中を真っ白に焦がしてくるくせに、彩美先生の手の中で、怒張がふくれあがってしまいます。
急速に上ってくる甘い電流。
「さ、出しちゃいましょうか」
そこには巫女の託宣の響きがありました。
神に仕える巫女の動きそのものの優雅さで、跪いた彩美先生の唇は、大きく広げられ、私を飲み込みます。
湿った感触に包まれてしまった瞬間、止めることのできない射精の電流は、一気に、暴発してしまうのです。
『うぅうっ』
身体の奥の方につながっている何かがあって、止めどなく続く射精は、腰全体が蕩け、マグマとなって噴き上げています。
チュッっと吸い上げる動きをしてから、軟体動物のような彩美先生の舌は、まだ小さくならない私の先端をペロリとなめ上げます。
名残に、もう一度吸い上げてから、スッと立ち上がる彩美先生の唇は、私の精子の匂いをほのかにさせながら、囁きを再開したのです。
「ね、そうやって、一緒に写真を見て、ゾクゾクとしちゃったらどうなると思います? 」
カリッと甘噛みされる耳たぶから、こんなところがこれほど感じるなんてと思わせる快感が、ピリッと走りました。
「もう、そうなっちゃったら、その場で、ふふふ、ね? 」
そこで言葉を切った彩美先生の目を、怖々と見つめてしまいます。
ついさっきまで真面目そうだった平凡な顔立ちは、妖しく光る瞳の中に、妖女の香りが確かに立ち上っています。
「女だったら、誰だって、そうなっちゃいます。処女の私だってそうだったんですもの。エッチを知ってる人妻さんだったら、きっと言っちゃうでしょうね」
『言わないでくれ! 』
もちろん、その言葉を百も承知なのでしょう。ゆっくりと三つほど数える間を開けて、耳の中に、悪魔の囁きが注ぎ込まれるのです。
「先生、このまま犯して」
その声は、妻の声に完全に重なってしまいます。
勝手に妄想した妻の声であっても、いったん頭に響いてしまうと、その影響は絶大でした。今、射精したばかりだというのに、今にも果てそうになるほど怒張が膨らんで、危うく、そのまま臨界を越えるところでした。
しかし、一瞬早く、危機を察知した彩美先生の手に、根本をギュッと押さえられてしまいます。その衝撃に、辛うじて、射精を堪えながらも、強ばった表情をどうにもできません。
何かを言わなくちゃ、と思った瞬間でした。
ピンポロンとチャイムが鳴ります。
「は〜い」
カーテンの向こうで先生が迎えに出ていく気配。
眉をちょっと上に動かした後、彩美先生は、小さな小さな声で、囁いてきます。
「オイルマッサージって、たいてい最後は先生にお願いしちゃうの。もちろん、私もお願いしちゃった」
「? 」
「ふふふ。分かってるでしょ? 奥さんが最後にどうなるか…… 」
は妖しい光が宿るその目は、自分の言葉が私の反応を操れることを十分に知り尽くしていました。
目を見つめたまま、グッと再び握りしめられた怒張は、さっきと同じように射精に追い立てるように動かされています。
『やめろ、やめろ、やめろ』
「私、処女を捧げたの、オイルマッサージの時だったわ。我慢できなくなっちゃったのよ。今日は、奥さん、我慢できるかしら? 」
その瞬間、施術台の上に裸で横たわる妻が、先生に懇願している姿が浮かんでいます。
もちろん、そのまま先生が、ゆっくりとのしかかるシーンまでもが見えてしまうのです。
『だめだ、わぁあ、これは、う、我慢しないと…… うぅ、こ、これは…… 』
加速した動きをそのままに、またもや、跪いた彩美先生は、怒張の先端に唇を密着させていました。
そこに今朝聞いたばかりなのに、ひどく懐かしい感じをさせる声。
「失礼しま〜す」
「いらっしゃい」
目の前には、胸元を紐で止めた薄いブルーのミニワンピの妻。よそ行きに、半トーン高くした声を聞いた瞬間、私の背中を一気に白い物が突き抜けていました。
『あぁあ、ダメだ、我慢できない、うっ』
ドクン、ドクン、ドクン
「んぐっ」
密やかな音を立てて、白い喉が嚥下します。立て続けに飛び出した、塊のような精液を先生が、そのまま飲み下しています。
妻ではない女性に深々と咥えられたまま、三度目の射精とは思えぬほど、大量に出し続けています。その私の目の前には、いつもの笑顔でハンドバッグを抱える、いつもの妻の笑顔があったのです。
狭い区画の中には、彩美先生から立ち上るシャワーの名残の香りと、女の匂い。そして、口の奥深くに出したはずの精子の匂いが微かに混ざっています。
果たして、それが室内に漏れ出しているのか否かはわかりませんが、笑顔を浮かべつつも、明らかに緊張気味の妻には、気付く余裕がないようです。
なんと言っても、夫でもない男の前で、あられもない姿になって、肌に手を許すのです。身体と心の回復のため、自ら望んで来ているとは言え、笑顔が硬くなるのも当然でした。
一方で、そんな妻の姿を隠れ覗いている私は、根本の方からギュッと動く唇に、快感の残滓を絞り出されています。
たった一枚のカーテンの中と外で、喜劇にもならないような夫婦の姿でしたが、それを知るのは一人私だけ。
……いいえ違います。
知らぬは妻のみ、なのです。
そして、院長はあくまでも飄々と、しかし誠意溢れる姿に見えるように振る舞っていました。
「すみません。今日は、事情で、カーテンが開かないので、こちらで着替えていただいて良いですか? 本当にすみません。私は、向こうに行ってますから」
「いえ、大丈夫です。この間と同じで良いんですよね? 」
「あ、大丈夫ですか? さすが! 智美さん、一度の施術で、そこまで信頼していただいてありがとうございます。そうですね、慣れてきた方はたいてい、お気になさらないようですから、そっちの方が早く施術に取りかかれますし」
「えっ…… 」
一瞬のやりとりは、横で見ている私の方が、はっきりとわかります。明らかに、わざとでした。短い言葉を誤解したフリをしたのです。これでは「先生がここにいたまま着替えます」と納得したようにしたような形になってしまいます。
おまけに、それを「信頼してくれた証」だとして感謝まで口にされれば、妻の性格から言って、それを「誤解です」とは言い直せないはず。
案の定「困ったな」と顔に書いてありますが、そのくせ、目は、自分が着替えるべき場所を探しています。
「あ、お召し物は、こちらのカゴに、お入れください」
親切ごかしに、ポンと施術台の上に置かれたカゴは、そのまま着替えるべき場所を決められたと言うこと。
つまりは、私のすぐ目の前で着替えることになります。一瞬の躊躇を乗り越えて、施術台のこちら側に回り込んできます。
顔を動かさないようにして、一瞬、院長の方を見てから、小さく、顎が左右に震えます。
『いいの、気にしない』
そう自分に言い聞かせているようにも思えます。
羞恥心が、院長に背を向けさせます。
つまりは、カーテンの影に潜む私の真正面の、手を伸ばせば届きそうな位置で、ライトブルーのワンピの胸元で結んだ紐を解く顔から表情は消えていました。
院長は、そんな妻の後ろ姿をしっかりと見守りながら、尋ねます。
「そういえば、智美さんは、今回、オイルマッサージをご希望でしたね」
「えぇ、お願いします」
ボタンを上から外す手つきはためらいがありません。
ひとつ、また一つ。
ボタンが外れる度に、妻の白い肌が、広がっていました。
その瞬間、私は「紙のショーツとかいのを穿くんじゃないのか? 」と心の中でつぶやいていますが、妻の目は、そんなモノを探していません。
つまりは、初めから全裸になることを、妻は知っていたということ。
果たして、それが前回言われていたのか、電話で言われたのか、私には分かりません。
せめて、ここに来る前に電話で言われたのだと思い込みたい私がいました。
しかし、頭に浮かぶイメージは「次回の施術は全部、脱いで、裸でしましょうね」と言われて、素直に頷く、潤んだ瞳の妻だったのです。
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