その2
もちろん覗き見なんてしませんが、耳を澄ませば、さっ、さっ、と衣擦れの音。ジッパーの音。そして、服の下に隠されていたクミちゃんのミルクっぽい甘い匂いが密かに広がります。
「あの〜 」
「なあに? 」
「この、半袖も着るんですか? 」
「もちろんだよ。せっかく届けて貰ったんだもの。高校時代に習ったとおりに着てね」
「え? 習ったとおりですか? あの…… どうしてもですか? 教わったとおりに? 」
「なんか、まずいことでもあるの? 」
「い、言え、なんでもありません。あの、本当に? 」
「うん。何だかヘンだな? よっぽど特殊だったの? まさか、裏返しに着たとか? 」
「まさかぁ」
「じゃあ、お願いします。やっぱりリアリティって、大切だからさ」
「リアリティ…… ですか? ……わかりました。ま、いいか。上、着るんだし」
最後の言葉は独り言のように聞こえますが、なにやら納得してくれたのなら、問題なしです。
「どう? サイズはぴったりのはずだけど? 」
一瞬の間があってから、急にトーンを上げた返事が返ってきます。
「ええ。スゴイです。よく分かりましたね、本当にピッタリ」
「そりゃ長年カメラマンやってりゃ、その程度は分かるさ。もともと、そういう服は、S、M、Lくらいしかないんだしね」
「でも、すごいです、ちゃんとピッタリだなんて。ふふふ、なんか、怖いみたい」
「おいおい、そう言うなよ、変な目で見たりしてないから」
「分かってます。でも、女の子としては、サイズが当てられちゃうのって怖いんですよぉ よしっと。 社長さん、着替え終わりました」
チィーッ
ジッパーの上がる音がして、ヒョイっと、イタズラな顔が覗きます。
「あの、ホントに、笑わないでくださいね? こんなの着るの久しぶりだもの」
「いやあ、きっと似合うと思うんだ」
「でも、何だか複雑ですよ、大人なのに、これが似合うって言われても」
唇を尖らせて「もぅ〜 」とすねた顔。
なんともはや「可愛い」というしかありません。何だか、子猫がじゃれついてくる姿を連想させるスネ方なのです。
「ハイ。これでいいですか? 」
ぴょんと跳びだしてきたクミちゃんは、頑張るぞ、のポーズ。
「おおお! 似合う! 可愛い! スゴイ、ステキだよ! 」
それは、心から出てしまった言葉。カメラマンとしての、いつものおだてではありません。
クミちゃんが着ているのは、地元の中学校の指定ジャージ。
全体は緑の生地で、バスト付近から学年カラーとも言うべき他の色の生地が、炎をモチーフにデザインされたいます。
まあ、見事に、膨らみかけのバストを隠すデザインなのですが、そのシンプルなデザインは、中学生を通り越して、見事にクミちゃんを小学生に引き戻しています。
あえて言うなら「お姉ちゃんの体操服を着て、中学校を夢見る六年生」って言うところでしょうか。
褒めちぎったせいで、恥ずかしくなったのでしょうか。
真っ赤な貌になった後、急に言葉少なになるクミちゃん。
しかし、こっちはそれどころではありません。
この、真っ赤になった顔が、なんともはや、思春期を迎えた花がほころぶ、微妙な色香を発揮しているのですから、パッと、カメラを掴んでいたのは、もはや本能です。
まさか、ここまでにアウトは思わなかった私は、照明を本格的に稼働させてなかったことを悔いながらも、もはや連射は止まりません。
「いいね。よし、そのまま目線を左上に向けて、そう! いいよ。さ、一歩前に出て」
次々にポーズの指示を送るのは、素人モデルに対する独特のやり方です。指示されている動きに目一杯になるウチに、撮られているのを忘れさせる効果を狙っています。
狙い通りに、十五分もシャッター音の嵐を浴び続けて、次第に、表情にゆとりが生まれてきます。
「よし、じゃ、上着を脱いで、半袖になろうか」
「え? これ、本当に脱ぐんですか? 」
「もちろんだよ。え? まさか、着てないとか? 」
「やだっ、ちゃ、ちゃんと着てますっ、当たり前です。ちゃんと着てますから」
「じゃ、良いでしょ。ほら、さ、半袖姿だ。生き生きした表情をちょうだいね〜 」
ファインダーの中のクミちゃんは、一瞬、泣きそうな顔をした後、ギュッと目をつぶった後、モゾモゾと、脱ぎ始めます。
そっと腕を抜いて、胸のジッパーを下ろしてから頭を抜くという、女の子独特の脱ぎ方。
『クミちゃん、普段、こうやって服を脱いでるんだよな』
不覚にも、そんな想像をしてしまう私は、カメラマン失格です。
でも、そんな想像をさせたのも、クミちゃんの表情が、単に「ジャージの上を脱ぐ」だけとは思えないほどの羞恥を浮かべていたからです。
上を脱いだだけで、頬が赤く染まり、イキがハアハアと荒くなっているのです。
むしろ、何事かと、そっちが気になります。
「よし、じゃ、ここから、ラジオ体操、行こうか! 」
「え? ウソッ、そんなぁ」
「あれ? できない? 」
「で、できますけどぉ」
さっき思いついて、ユーチューブから流す用意はしてあります。BGMをとっさに流すなんて朝飯前ですから、スタジオには、たちまち、あの聞き慣れた、昔懐かしい音楽が流れたのです。
「はい。さ、さん、はい! 」
「もう〜 そんなあ」
真っ赤になりながらも、昔、ちゃんと教わったのでしょう。
腕を前に上げて、ゆっくりと横に下ろします。
パシャ、パシャ、パシャ
「ダメ、顔を横に向けないで、視線、こっちだよ」
「で、でも、あの」
「ほら、こっちをむいて、とってもかわいいから、ほら、そうだよ、こっち 」
腕をクロスさせて横に振る動きをしているクミちゃんの目線を、懸命にこっちに呼びます。
さっきと違って、なぜか、真っ赤になったまま、こっちをなかなか向かず、ようやく、前を向いたのは、大きく両手を開いて、上を向く動きになったとき。
その瞬間、私は、信じられないモノを見ていました。
『ウソだろ? ノーブラ? 』
大きく仰け反る動きは、胸のカタチをハッキリさせます。オマケに、クッキリとした膨らみの先端には、ポッチが見えている気がしたのです。
とっさに、ズームを付けた方に持ち替えて、さらに一歩前。
ポートレート用に多用する七十ミリは、大きく仰け反る胸のカタチを、布地一枚越しに、ハッキリと捉えていたのです。
『間違いない。ノーブラだ。いったい、なんで? 』
まさか、ノーブラの趣味があるとも思えません。しかも、さっきにの腕が味わった、肉の詰まった膨らみは、こうしてみると、白い半袖の胸をグッと押し上げています。
そのカタチは、見るだけでもクッキリと姿を見せてくれますし、動きに合わせて微妙に動くのは、多分処女の膨らみの硬さというモノでしょう。
何百枚を写したか分かりません。
理由は分からないにしても、クミちゃんが真っ赤になっているのは、ノーブラ姿で体操をしているから、ということだとしたら、もはやたっぷりと楽しむしかありません。
しかも、クミちゃんは真面目です。
紅潮した頬を、ますます、赤くしながらも、体操の動きはキチンとしようとしています。
腕を上げて、身体ごと横に倒れていく動きでは、ちょっぴり見えてしまうお腹の肉も、私の「男」を刺激してきます。
気が付くと、クミちゃんの表情が、次第、次第に、変わってきたのです。
何とも言えない、潤んだ瞳と、トモすると、呼吸が荒くなりがちで、時折、あちこちの起因肉がピクンと反応する様子。
『え? マズイ。なんで、こんなことに』
少しずつ上げておいたライトの光を反射して、全てはつぶさに、映し取っていますが、わけも分からぬうちに、激しく勃起してしまったのです。
自分が欲情してしまったことを受け入れてみると、その原因は、目の前のクミちゃんだと思い当たるのに時間はかかりません。
『感じてるんじゃないか? 』
そうとしか思えない表情です。
幼い顔をしながら、浮かべているのは、感じている「オンナ」の欲情。
その時、グリン、グリンと上半身を腰を中心にして回す運動に変わったクミちゃんは、身体を後ろに反らした瞬間、確かに、身体を小さく揺すったのです。
プロカメラマンとしての目は、確かに、その瞬間、尖りきった乳首が体育着の下で揺れたのを目撃していました。
『あっ、胸がこすれるのか? 』
そうです。
体育着のサラサラした生地は、ノーブラの乳首を、こすり続けていたいに違いありません。
いくら小学生の外見でも、中身は大人なのです。
撫で回されるみたいに、サラサラした体操服の柔らかい生地にこすり続けられた乳首は、ラジオ体操自体を、愛撫に変えてしまっていたに違いありません。
最後の深呼吸を終えたクミちゃんは、ふ〜 と赤い顔をして、床に座り込んでしまいます。
ハアハアと荒い息は、知らぬ者が見れば、激しい運動をしたばかりの姿にも見えるはず。
「クミちゃん」
「は、はぁい」
どこかしら、虚ろになってしまった返事は、冷めやらぬ強制された愛撫の興奮に、まだ取り込まれている性に違いありません。
「はぁ〜 」
「クミちゃん、そのまま、体育座りだよ! 」
「あっ、は、はい」
重たげな身体を動かして、カシッとした体育座りになった瞬間、私の背中を、ガシャンというシャッター音が落ちていました。
もちろん、それは、イメージに過ぎません。
しかしカメラマンを生業にする者にとって、ごく希に起きるその瞬間というのは、決まって、大切な写真が撮れているものなのです。
『行った〜 これは、スゴイのが撮れたはず』
カメラマンとしての興奮が「お疲れ様! 」と声を出させていました。
最高の写真が撮れた実感です。
「あ…… もう…… 終わり? 」
「うん。おかげで、スゴイのが撮れたみたいだよ。ありがとう、クミちゃん」
「ああん、恥ずかしいぃい」
真っ赤な顔を両手で覆ってから、急に「あっ」と声を上げると、すみません、ちょっと失礼しますと、スタジオから走り出ていくクミちゃん。
『トイレ? 』
普段、見ないほど、切羽詰まって駆け込んだのは、そんなに我慢させてしまったからでしょうか?
大丈夫かと声を掛けるわけにも行かず、それでも心配になった私は、スタジオの出口までフラフラと歩いてしまいます。
その時、ふと、着替えたカーテンが目の前にあったのです。
後から思い出しても、その時の動きは、衝動的過ぎました。しかし、とっさにトイレの気配を伺って、次にやったのは、カーテンの中を覗いたこと。
見事にキチンと畳んだ服。
そっとしゃがみ込む私は、震える手で、ブラウスとスカートをそっと持ち上げてみます。
『あ! そうか。これを着てたから! 高校時代、ひょっとして、禁止されていた? 』
そこにあったのは、ブラと一体になったタイプのスリップです。
女性達の中でも「ブラ透け」を気にする人は、これだと大丈夫と言うことで愛用する人がいるようです。
クミちゃんも、まさに、それを気にするタイプだったに違いありません。
『それに、あれだけ硬いと、サポートタイプじゃなくても、大丈夫だろうしな』
大きさは結構合ったかもしれませんが、実が詰まってしっかりした弾力性を持ったオッパイなら、支えなんていらないのかもしれません。
可愛らしい飾りが少しついただけのベージュの下着。
辛うじて匂いを嗅ぎたい衝動を抑えつつ、カーテンから出ました。
『コイツだと、高校時代は、ダメだったってコトか』
その下着は、おそらく高校時代に許されてなかったのでしょう。
そして、知らぬコトとは言え、私が頼んだのは「高校時代の通り」でしたから、真面目な性格故に、とっさに、言われたとおりに全てを脱いだに違いありません。
クミちゃんの計算では、上着を着ているから、大丈夫のはずってことかもしれませんが、私が命じたのは、その他のみの綱を剥がしてしまう「羞恥の体操」だったわけです。
『いくらなんでも、下着無しで、撮らせてくれるとは…… 』
クミちゃんが、真面目過ぎるほどに真面目だった上に、男性の目を意識しないからこそできたことかもしれません。
『でも、途中から、あの顔、感じてるみたいだったよな』
みたい、どころではありません。
あの表情を見て、勃起しない男なんているはずがない、と思えるほどの色気でした。
「ってコトは、今、トイレに駆け込んだのは…… 」
柱の陰になっているトイレのドアを意識してしまいます。
「あの中でクミちゃんが、何を」
ドアに耳をつけて、様子をうかがいたいという衝動は、決して小さくないものでした。
いえ、正直に言えば、このままクミちゃんを襲ってしまいたいという欲望を意識しています。
それだけに「トイレの中で何をしているのか、考えるじゃない」という理性が、それを抑え込めたのかもしれません。
そして何よりも、さっきの一枚を確認したいという欲求は、男の本能に打ち勝つ強力な援軍です。
「すげぇえ! 」
モニタに映し出された「さっきの一枚」は、様々な奇跡のタイミングが重なったとしか言い様がありません。
少女の匂い立つような、ほころびかけた美。潔癖な処女の爽やかな美、そのくせ、漏れ出してくる色気。
それらがほぼ完璧に具現した写真は、頬に、数本ほつれた黒髪すら、美を醸し出す小道具となってしまっているのです。
そして、見知らぬ者には、小学生にしか見えない幼い美しさ……
素直に伸びた細い腕が、ノーブラの乳首を完璧に隠していますから、もはや言うべき言葉はありません。
自分で撮った写真とは言え「聖少女の一枚」として、これ以上の一枚は、もはや存在しない様な気にすらなります。
「やだっ、これ、私…… 」
気が付けば、後ろにクミちゃんが立っていました。
ジャージのチャックをしっかり首元まで上げています。
「クミちゃん! ありがとう! これ、すごいよ!すごいよ! 」
思わず、細い身体をギュッと抱き締めながら、興奮して「スゴイ」を連発してしまったのは、本当に他意はありません。
そして、クミちゃんも、それをちゃんと分かってくれたのか、写真には照れながらも、私が騒ぐまま、じっと抱かれてくれていたのです。
「ありがとう、クミちゃん、こんな傑作が撮れるなんて」
ギュッと抱き締めていました。
「しゃ、社長さん」
「ん?」
「あの…… ちょっと、苦しいかもです」
「あっ、ごめん」
慌てて手を離します。
ふうっと、息を下ろしたのは、本当に苦しかったのでしょう。
そんなに夢中で抱き締めていたのかと反省もしながら、離した一瞬、手の中のクミちゃんの感触を反芻してしまう私は、本当にスケベ男なのかもしれません。
「本当に、ありがとう。こんなにスゴイ写真、クミちゃんのおかげだよ。クミちゃんが可愛いから」
「そ、そんなことないです。社長さんの腕が良いからですよ」
「あっ、そ、そうだ。そういえば、頼みって何? もう、なんでも頼んで! 」
「え? あ…… 」
一瞬棒立ちになったくみちゃんの全身を、無意識に舐めるような目で見てしまったようです。
それは職業的な視線であって、決して、イヤらしい目的ではありませんでしたが、その瞬間、「ジャージの下はノーブラなんだ」ということを突然思い出したのです。
「す、すみません、ちょっと着替えてきます! 」
真っ赤になってカーテンに駆け込んだのは、私の目が、まさにノーブラの胸を見て仕舞ったのに気が付いたからに違いありませんでした。
やがて、カーテンから出てきたクミちゃんは、キチンと畳んだジャージを、胸にしっかりと抱えています。
まるで、オッパイを、私の視線からジャージで隠そうとしているみたいに、ヒシと抱き締めていました。
「お疲れ様でした。クミちゃん、どう、疲れたろ? 」
「いえ、大丈夫です。 ……あの、社長さん」
「はい? 」
「お願い、決めました」
「うん、良いよ、何でもいって」
「こ、このジャージ」
「? 」
「このジャージ、私にください! 」
内股になった脚をフルフルと震えさせながら、必死の思いがこもっています。
もちろん、使い終わった衣装、しかも、中学校のジャージなんて、用はないのですから、プレゼントするなんて安いもの。でも、この必死さが気になります。
「お願いします。これ、ください」
「う、うん。いいよ。もちろんだよ。記念にプレゼントするね」
「ありがとうございます。あの、今日は、今日はこれで失礼して良いでしょうか? 」
あまりに唐突な申し出。
もちろん、OKしましたが、私が、その意味に気付いたのは、夜中に、写真を整理していたときでした。
『あああ! これか! 』
撮っていたときは、胸に気を取られていたのですが、あの、上半身をグルグルと回す運動の時、しっかりと開いた足の間が、その正体でした。
「濡れてるんだよな、これ」
拡大した、その部分は、ホンのわずかですが、緑色の生地に黒いシミが見えます。
「汗ってことじゃ、もちろんない」
これは、クミちゃんが乳首がこすれるウチに、濡らしてしまった証拠だったのです。だからこそ、クミちゃんは、体操着を持って帰ろうとしたのでしょう。
『小学生みたいでも、やっぱり中身は大人の女の子か。しかも、結構感じやすいのかも…… 』
そりゃ、濡れてしまった証拠を男に見せるわけにはいきませんから。
『あ〜 それにしても、オレのカンチガイだったか』
実は「お願い」ということで食事にでも連れて行ってくれと行ってくれるのかと、淡い期待をしている自分がいたのです。
私の方も、あわよくば「今回のご褒美」を口実に、食事に誘えたらと思ってはいたのです。
しかし、そんなことを口に出す隙も与えずに、クミちゃんは飛んで帰ってしまいました。
『やっぱり、あんな可愛い子、無理だよなあ』
うと、一瞬でも年の差を忘れて夢を見た自分を反省しつつ、さて、この写真をどうしようかと考えているプロの自分がいたのです。
目次へ 前へ 次へ
|
|