本文へジャンプ子どもじゃないモン!

その4 

 
 いつもの時間に、いつものように事務所に入ってきたクミちゃんは、いつもの人なつこい笑顔を浮かべています。
 でも、いつもの違っていたのは、私の顔を見た途端、真っ赤になってしまったこと。
 こんなクミちゃんは初めてです。
「あの〜 社長さん」
「ああ、おはよ。クミちゃん!」 
「あ…… お、おはようございます、社長さん」
 挨拶すら忘れてしまうほどということは、これは期待できそうです。
「どうやらエステ、良かったみたいだね。肌のつやがいつもにもまして良いじゃない」
 本当に、健康そうな頬は、まるで本物の小学生のようにピンク色に輝いています。
「でも、あの、ホントビックリしました。まさか、あんなことになるなんて」
「あんなこと? 」
「いえ、あ、ほら、あのマッサージとか、美容液とかだけだと思ってたのに」
「え? ああ、脱毛のことかな? イヤだった? 」
 あんっと小さな声を上げて目をつぶったのは、羞恥の体験を思い出したからかもしれません。
 なんと言っても、エステが初めてでは「全侵脱毛」なんて、想像もつかなかったはずです。
 一瞬泣きそうな眼をしたのは、あまりにも恥ずかしかったからかもしれませんが、黒目がちの瞳をクルクルとさせた後、慌てて、違うんです、と言い訳のように話し始めました。
「あ、いえ、そうじゃないんですけど。ただ、初めてだったから、ビックリしちゃって。でも、今のセレブって、みんなエステでするんですって言われて、あまり痛くなくて、良かったです」
 正直者のクミちゃんです。
 ちゃんと全身脱毛の感想を喋ってしまったのを自覚はしてないようです。あまつさえ、チラッと自分の股間を見てしまったのですから、よほど恥ずかしかったのでしょう。
『どうやら、本当に、ツルツルってコトか』
 言われるがままに脱毛されてしまったに違いありません。
「じゃ、よかった。丁寧にやってくれた? 」
「ええ! とっても丁寧でした。女性の社長さん自ら話しに来ていただいて。エステって、あ〜んなにお姫様扱いしてくれるんですね。それに…… 」
 ちょっと小首をかしげて、言葉を選ぶクミちゃんの視線は、どこかしら上気しています。
「私、子ども扱いされませんでしたし! 」
 実はそこには秘密があります。知り合いの女社長ですから、クミちゃんが出かけた後、もう一度電話して「小学生みたいな子が行くから」と頼んでおいたのです。
 もちろん、さりげなく「二十歳の記念ヌードで、新たな自分の魅力を見つける」という夢を勧めてもらえるようにも。
 昨日、クミちゃんがエステを終えた後、ちゃんと女社長は電話をくれたのは、さすがに商売上手。
「どうやら、うまくいったわ」と言っていましたから、期待はしていたのですが、これなら大丈夫そうです。
 もっとも「北澤さん、ロリコンだったなんてしらなかったわ、あれじゃ犯罪じゃないの」って冷やかされてしまったのには参りましたが。
「じゃ、スタジオに入ろうか」
 改めて意思の確認をるよりも、なし崩しにしてしまった方が、クミちゃんは、断れなくなる気がしたのです。
「あ、あの、で、でも…… あのぉ…… 」
「ハッキリ断る気持ちになれなかったでしょ? 」
「それは、そうなんですけど、あの…… 」
「じゃ、決まり、決まり! さ、とりあえず、スタジオに行ってみようよ」
 パッと入り口にカギを掛けてしまいます。
 クミちゃんは、一瞬、何かを言いかけて、黙ったのは、OKの印です。
『本日、臨時休業ね』
 それだけの価値があるはずです。
 さ、行くよっとばかりに、大げさな動きで、小さな背中に手を当てます。
「あ、え…… あの、え、あ…… は、はい」
 両手をグッと胸の前で組み合わせたのは、自分を勇気づけていたのかもしれません。
「よ〜し、さ、行こうか」
 クミちゃんを押している手は、柔らかで、しなやかな弾力を感じています。
 フワリとスズランの香りのするクミちゃんのスレンダーな背中が、意外なほど柔らかいのには驚いて、ますます、ワクワクが加速します。 
 スタジオに入ればもはや押す必要もありません。いえ、初めから押さなくたって良かったのです。
 ただ、これは「仕方なく」とクミちゃんが自分に言い訳をする儀式のようなものなのです。
 おそらくはそれをクミちゃんも分かっていたはず。だからこそ、黙ってしまったクミちゃんに、私ははしゃいでみせる必要があったのです。
「BGMは、クミちゃんが好きなやつで良いかな? 」
「え? 」
 返事も聞かずに、昨日買ったばかりのCDを流しました。
「あ! これ! 」
「うん、いっつも聞いてるって言ってたものね」
「覚えていてくださったんですか? 」
「そりゃ、美人さんの言うことは、なんでも覚えてるさ」
 三人組の女性ユニット。
 テクノ的な音楽と、ピンヒールを履いて踊る姿が印象的です。
 まさかこの年になって、CDを買うなんて恥ずかしかったのですが、クミちゃんをノセるためなら、そんなのへっちゃらでした。
「も〜 社長さんてばぁ。私、美人なんかじゃないですよぉ」
 照れながらも、嬉しそうです。
「OK。OK。美人のクミちゃん。じゃ、待ってるよ。用意しておいで」
 笑っていた顔が、途端にピキンと凍り付いたクミちゃんは、苦しそうな表情でモジモジと口を動かします。
「あ、あの…… やっぱり…… 」
 断りたいという最後の、最後のためらい。
 ワザと気付かないふりをして、カメラにシュッとブロアスプレーでほこりを飛ばします。
 そしてカメラを持ち上げながら、固まってしまったクミちゃんに、今気が付いたかのように振り向いてみせました。
「ん? トイレ? それなら、待ってるよ」
 その瞳には真剣な何かがあります。
 思わず、カメラを置いて、向き直りました。
「いえ、あ、あの…… な、なんでもないです。ただ、あの〜 」
「なあに? 」
「あの、絶対に、他の人に見せないって」
「うん。約束するよ」
「社長さんだけですよね? 」
「もちろんさ。絶対に秘密。約束だよ」
「はい」
 コクリと頷いて、大きく息を吸ったクミちゃん。
「えっと、あの、一つ、お願いがあるんですけど…… 」
「はいはい、なんでも聞くよ〜 」
 胸の前で手を組んだクミちゃんの表情は真剣でした。
 思わず、私も向き直ります。
「正直に言ってください。私って、男の人から見て魅力ありますか? 」
「そりゃ見ないと分からない、って言いたいところだけど、十分にあると思うね。なんて言っても、クミちゃんくらい綺麗な子なら、間違いなく魅力的さ」
「じゃあ、お願いします。私、脱ぎますから…… あのぉ、ぬ、脱ぎますから…… 」
 真っ赤な顔に鳴りながら、そのクリンと大きな瞳は真剣です。
「あの…… 社長さんも脱いでください! お願いします! 」
 ピョコンと頭を下げるクミちゃん。
「えええ? オレが脱ぐの? い、いったいどうして? 」
 さすがに仰天です。
 しかもクミちゃんが、いたって大まじめに言ってるのは明らかです。
「えっと、あの、男の人って、魅力的な女の人の裸を見たら、あの、その…… 反応しちゃうんですよね? もし、私に魅力がないなら、社長さん、きっと反応しないから…… 」
 さすがに、唖然とした私は声が出ません。
「ヘンなこと言ってごめんなさい。私、あれから、いろいろ考えてみて。社長さんの仰るとおり、挑戦するチャンスだと思ったんです。でも、社長さん優しいから」
 その表情からは、さっきまでの恥じらいは消えて、必死さが浮かんでいました。
「きっと、私なんて魅力なくても、絶対褒めてくれちゃうと思ったんです。それじゃダメなんです、自信がつかないから。だから、社長さんも脱いでください! お願いします! 」
「脱げって…… だって、くみちゃんの魅力的なヌードを見ちゃったら、オトコがどうなるか、知ってるの? 」
「知ってます。まだ、本当には見たことないけど。でも、私が本当に魅力的なら、社長さんがきっと勃起してくれるって思ってます。勃起してくれるのを見たいんです」
 真面目なクミちゃんのことだけに、真面目に「勃起」と言っているのはよく分かるのですが、きっと端から聞いたら笑い出してしまうかもしれません。
 しかし、クミちゃんの熱気には、私に愛想笑いすらさせる余裕を与えません。
「お願いします! そうしたら、自身になるんです。私が魅力的な女性かどうか。お願いします! 社長さんが本当に、私を魅力的だと思ったら、勃起してください! お願いします!」
 美少女が、勃起、勃起と、連呼するのは、まさに異様な世界です。
 しかし、幼い顔つきのクミちゃんの目は、真剣である以上、そこをいやらしい意味に受け止めたり、まして、混ぜっかえすわけにもいきません。
「わ、わかった、じゃ、オレもこっちで脱いで待ってる。クミちゃんを見て勃起するよ。それでいいね? 」
 いったいオレは何を言っているんだ、と思いながらも、モデルさんの必死の頼みを聞くために、こっちも必死になって、とんでもない事を言っていたのです。
「すみません、とんでもないことをお願いしてしまって。でも、そのかわり」
「ん? 」
「なんでも言ってください。どんなポーズでもしますから、ううん。なんでも仰ってください。なんでも社長さんの仰るとおりにいたしますから」
 目にうっすら涙が浮かんでいるのは、恐らく一晩中、いろいろと考えての決心だからなのでしょう。
「私、新しい自分になるために、社長さんの言うことなんでもしますから。だから、魅力ある女に撮ってください! お願いします! 」
 次の瞬間、クミちゃんが飛び込んできます。
 ギュッ。
 胸に顔を押しつけたクミちゃんが小さな声で何かを言いました。
「え? 何? 」
「いいの」
「え? 」  
「撮るだけじゃなくても良いの。なんでも…… してください」
 小さな声で、確かに、そういった気がします。
『まるで、抱いてくれっていっているみたいじゃないか。ま、まさかだよな? 』
 しかし、それを確かめるには、あまりにクミちゃんの雰囲気が必死すぎたのです。ギュッと抱きついているクミちゃんから、スズランの空気が立ち上って、これではヌードを目にする前に男の欲望で目がくらみそうです。
 この後に控えている「撮影」という、写真を生業とする者の本能がなかったら、私はその場でクミちゃんを押し倒していたはずでした。
 ようやく、クミちゃんの背中を何度も撫で下ろしてから、薄い肩をギュッと掴みます。
「わかった。オレも、勃起してビンビンにするから。きっと、クミちゃんの魅力を全部引き出せるように頑張るよ! 」
「ありがとうございます。社長さん」
 ギュッと抱きついたクミちゃんを抱き返してしまったら、きっともう戻れません、ようやく、鉄の意志を発揮して「じゃあ、用意しておいで」と言ったのです。
「はい」
 大きく呼吸を一つして、クミちゃんは、顔を見せないようにして衝立の向こうに消えます。
 撮影者まで脱ぐという前代未聞の撮影は、こうして開始されたのです。
 妙なモノで、この業界は、いくら年頃だろうが、美女だろうが、相手がモデルだと思った瞬間から「脱げ」と命令するのは平気だし、裸を見ても、欲情したりしなくなります。
 カメラマンにとって「モデルの裸」というモノは、性欲の対象ではなくなるのです。
 時には何十人のモデルが裸でうろちょろしている現場もありますが、そんな中でも、撮影以外の事は滅多に考えません。
 でも、自分が脱いでしまうと、その瞬間から、不思議な緊張感がスタジオを満たすのです。
『よく考えてみたら、誰も来ない地下のスタジオで、裸の男と二人っきりになるんだぞ? クミちゃん、それ分かってるのかな? 』
 チラ、チラッとさっき胸の中で囁いてきた「撮るだけじゃなくてもいいの」が、頭の中でリフレイン。
『バカ、オレみたいな年の離れた男に、クミちゃんみたいな可愛い子が、抱かれたいだなんて思う分けないだろ! バカバカしい。色ぼけだぞ、オレ』
 とは言え、抱かれる覚悟をしてないとしたら、このシチュエーションは考え物です。
 信頼されていると思えば、それはそれで光栄ですが、若い女の子に「安全パイ」と思われているのも、男としては微妙な感じです。
『まあ、信じられてるんだろうなあ。でも、どうするつもりだろ、オレが襲いかかったら』
 ふっと、小学生のようなクミちゃんに襲いかかる自分を想像してみますが、なるほど、ちっともピンときません。
『やっぱり、安全パイってことかい、オレはさあ』
 苦笑いをしているところに、カーテンの向こうからクミちゃんのソプラノの声。
「あの〜 準備できましたぁ」
「お、待ってたよ」
 オドオドとカーテンから出てくるクミちゃん。
 こっちを見ません。
『さすがに、緊張、マックスだよね』
 プロのモデルでもヌードの初仕事は、いきなり脱がすと、かえって緊張が抜けなくなるものです。
 白のバスローブは、今日のために用意したもの。
 ふわっとした布地から覗く細い脚も、スラッとした首回りも、ドキッとするほどの刺激を感じてしまいます。
「えっと、あの…… 」
 モデル経験もないクミちゃんは、バスローブ姿でも、動きはぎこちなくなります。白い頬を桜色に染めて、視線を上に上げられません。
『可愛いなあ、脚が震えてるじゃん。ん? でも、これはいけるかもよ』
プロのモデルなら、ヌードを撮る時は緊張します。しかし、カメラを前に羞恥の表情を見せることなどあり得ませんから、この反応はあまりにも新鮮でした。
 股間に熱い力が、早くも集まりかけています。
「すっごく可愛いよ、クミちゃん。こんな美人を撮れるだなんて。なんか、これだけでも、男として嬉しくなっちゃうよ」
「やだぁ、社長さんてば。お上手すぎます」
 襟元から覗く白い肌から、柔らかで、ミルクの香りが漂うような、ほんわかした色気。
『これは、なんとも』
 いくら大人っぽい服を着ても小学生にしか見えないクミちゃんなのに、バスローブ一枚になった姿では、その素直な顔に、ちゃんと大人の羞恥が浮かぶのは不思議な気がしました。
 処女特有の、ミルクのような甘い匂いは、たった一枚の布地では押し包めず、身体全体からフワリと立ち上って、スタジオ全体に広がっています。
 その、普段の幼さとのギャップと、服を着ている時にはさして感じなかった柔らかな甘い匂いに、カメラマンとしての本能を忘れてしまいそうです。
 自分がロリコンだ、などと思ったことはなかったのです。
 事実、巨乳好きだし、小学生の裸など見ても何にも感じるとは思いません。
 ですけど、いくらロリ顔と言っても、クミちゃんは、大人。それもすこぶる付きの美少女…… いえいえ、たとえ見た目がどうあれ「美女」というべきかもしれませんが。
 これは、もう、ダメです。
 大人と子どもの魅力を合わせ持っている上に、プロのモデルが出せない羞恥の表情が、絶妙に男をくすぐるのです。
 ファインダーを覗いた時には、完全に勃起していました。
 いくら「勃起してください」と言われているとは言え、あまりにもガツガツした男に思われないか、さすがにためらいが生まれます。
『落ち着け、オレ。プロとして、集中するんだ。幸い、まだ、こっちを見る余裕もないみたいだし。撮影に集中すれば、きっと収まるからな』
 声が震えるんじゃないかと思うほどの興奮の中で、私は努めてのんびりした声を出しました。
「いいね。とっても、可愛いよ」
「は、はい」
「じゃあ、そっちの、正面、そう、いつもの位置に立ってみてくれる? 」
「はい…… 」
 もう、撮影の補助はお手のものだけに、どこに立てば良いのかよく分かっているクミちゃんは、こっちをチラリとも見ずに、バックスクリーンの前にゆったりと立ちます。
「そう、いいね、じゃ、そのまま」
 バスローブ姿でこっちを見つめます。緊張に震える瞳には、いたずらっぽい光と羞恥とが交錯しています。
「いいね〜 あ、こっちに、風船あるの、わかるかな〜 それとも、UFO、見たいかな?」
 くすりと笑ってから、ハ〜イと返事をしてから「もう〜 子どもじゃありません! 」と、バラ色の頬を膨らませて見せるクミちゃん。
 パシャ、パシャ、パシャ
 私は、夢中でシャッターを押していました。
 プロとして失格かもしれませんが、目の前の、クミちゃんが持っている「咲きほころびかけた花の羞恥」は、私を、信じられないほど高揚させいていたのです。
 シャッターを落とす音が雨のように降り注ぐと、一瞬顔を引きつらせるクミちゃんですが、努めて無視しようとしています。
「はい。クミちゃん、その表情、良いね、もっと怒ってみて! 」
「あぁん、もう。社長さん、ヘンですよ、怒った顔を撮りたいだなんて」
 ちょっと口を尖らせながらの、困った顔。
「良いね、その顔いただき。はい、オモチャ見るかな〜 」
 立て続けに言葉を出しながら、カメラも連写モードに入ります。
 このスタジオには仕掛けがあります。いくら少ないとは言え、街のスタジオの収入源は、圧倒的に、小学校に入る前の子どもです。
 だから子どもを撮影する時に視線を向けるため、あっちこっちに、秘密アイテムが吊してあるのです。泣いている子には、陰から紐を引いて、UFOでも、ぬいぐるみでも、いろいろと出して見せて、気を引ければこっちのモノという仕掛け。
 最近では、クミちゃんの方が子どもの笑顔を出すのが上手になっています。さすがに将来の幼稚園の先生でした。
「社長さんてば〜 もう〜 」
 まさか自分に使われるとは思わなかったのでしょう。着替えてから、初めて、笑顔を見せてくれた瞬間でした。
「さ、クミちゃん、風船どこかなぁ」
「社長さんてば〜 私、小さい子じゃないです」
「知ってるよ〜 もう、小学校、入ったんだよね? 」
「あ〜 もう! ひどい! 」
 アルバイトに来るようになってから、このネタも、定番のいじりネタです。いつものように、プクッと頬を膨らませて「もう二十歳です」と答えるのもお約束。
 いつものクセの通り、前髪を右手の小指で少しかき上げたのは、ようやく、最初の緊張がほぐれてきた証拠です。
 ここからは、有無を言わせず、シャッター音をシャワーのように浴びせて麻痺させてしまうのが、一番効果的なのです。
「はい、いいよ、じゃ、顔、こっち向けて、そう! 上手だよ! そのまま。 クミちゃん、一番楽しかった思い出は何かな? 」
 バシャ、バシャ、バシャ
 いつもの三脚ではなく、フットワークを軽くするために手持ち撮影で通します。そのため、プロ用だけではなく三十五ミリのイオスも何台か用意してあります。
 その分だけ、撮影の重苦しさを感じさせないはずでした。
「えっと、修学旅行かな〜 」
「お、その目線良いよ。もっと、上を見て。そう、いいね」
 ちょっと上目遣いになる表情には不思議なコケティッシュさが現れます。話しかけながら連続してシャッターを切り続けています。
「へぇ〜 どこに行ったの? お! その表情いただき。なんて綺麗な横顔だろう 凄く綺麗だよ、クミちゃん。うん、その目、良いぞ、とってもシャイな光が入ってる。綺麗だよ」
「広島とか、関西でした」
 やはり女の子。正面から、褒められれば、クミちゃんのような美少女でも、おっと「美女」でも、嬉しいモノなのです。
「お〜 うん、改めてみると、綺麗な手だね。いいね。そう。綺麗だよ。うん。あ、確か、このユニットも広島出身でしょ? 」
 クミちゃんは、次第に、雨のように降り注ぐシャッター音と「綺麗だ」の声に、全身を染められ始めます。
「わ! 社長さんよくご存じですね」
「常識でしょ。そう、その綺麗な手をゆっくり伸ばして、朝、一番に伸びをする感じ」
「こ、こうですか? 」
 育ちの良さを感じさせる、君と伸びた背筋。クッと胸を張るポーズにも抵抗がなくなってきたようです。
「いいね、いいね〜 綺麗だよ。すご〜く綺麗だ。ははは、昨日、調べてみたよ、いろいろ、クミちゃんと話したくて」
「え〜 わざわざ調べてくださったんですか? 」
 目を輝かせて、振り向く表情には、天使の瞬間が込められています。私はそれを写し取るのに夢中でした。
 最初は、バスローブがはだけることばかりを気にしていましたが、撮影に馴染んでくると、次第、次第に、緊張がほどけてきます。
 朝一番の伸びをするポーズ、といって両手を伸ばせば、当然、前ははだけますが、それを一瞬気にしかけた瞬間に「一歩前に出て」と次の指示。
 はだけたバスローブの陰には、白い胸の谷間が覗いています。
「良いね、さ、その伸ばした手は、頭の後ろで組んでみよう」
「こう、ですか? 」
「そ! いいね! 」
 当然、ローブはさらにはだけて、ドキッとするほど白い胸元が覗きます。
『わっ、ヤバい』
 上に気を取られたせいでしょうか。はだけかけたバスローブの裾はパッと乱れて、ツルツルになった秘部が覗いているのを見てしまいます。
 自分が何を見ているのか認識する前に、指は、シャッターを連射し続けているのはカメラマンの本能です。
 まさに、童女のようなその秘部は、やや上から俯瞰しただけだと、ツルンとした土手が見えるだけ。
 そのワクワクするような美しい秘丘を写し取り、目に焼き付けながらも、それを気取られないように、声をかけ続けます。
「OK。 さ、そのまま、両手を後ろに伸ばして。そう、肩甲骨をぐ〜んと、縮めちゃうポーズだよ」
「あ、ダメです、肩から落ちちゃう」
 バスローブを気にします。
「良いの、良いの、その落ちるところが良いんだから」
「でもぉ」
「はい、モデルさん、指示を聞いて。さ、そのまま、グッと手を伸ばす」
 一瞬のためらいの後、後ろに組んだ手を、そのまま後ろに突き出します。思いっきり胸を突き出すポーズを取りながら、クミちゃんは瞳を閉じて、天井を向いていきます。
 それは覚悟の表情でした。
 ササッ
 微かな衣連れの音を立てて、白いバスローブが肌から滑り落ちました。
 分かっていたはずなのに、その想像を超えるほど白い肌が、スタジオの中心で強烈な光を放ちます。
 細身のヌードが、彫像のように、そこにいたのです。
 シャッターを押し続けていたのは、職業的な反射としか言えません。その瞬間、私は言葉を忘れて、その美しい立ち姿を見つめていたのですから。
「あぁ」
 クミちゃんの小さな唇から、小さな声が漏れたのは、とうとう全てを見せてしまった乙女の羞恥が、後悔と衝撃で全身を貫いていたからでしょう。
 見ている私にも、その衝撃が感染しています。
 その瞬間、見つめる私は、カメラマンではなく、一人の「男」であったのは確実です。
 細い肩。
 初めて見る、柔らか膨らみ。
 それこそ「膨らみかけの蕾」という感じの、ほんわりした乳房。いえ「乳房」と言うのはためらわれるほどに、ささやかな膨らみです。
 しかし、子どもっぽい身体が細すぎるせいで、小さな胸でも意外に大きく感じてしまうのも事実でした。
 掌に収まるほどの大きさであっても、細い身体からは、クッキリと膨らんでCカップにはなるはず。
 一歩前に出て、と言った瞬間、偶然かワザとかは分かりませんが、クミちゃんの身体は左足が出たまま、右方向にねじれています。
 つまりは、さっき覗いていたツルツルの秘部は見事にしなやかに細い脚に隠れています。
『わ〜 ピンクの乳首じゃん、しかも、これ、オレの手にピッタリサイズだし』
 ゴクリと唾を飲み込みながら、ようやく、衝撃を無理やり押さえ込んで、カメラマンに戻らなければなりません。
 白い肌に似つかわしい、ミルクの香りが匂い立つようなヌードを堪能する前に、次のポーズ、次の褒め言葉を考えるのです。
「良いね、それで、こっちを向いて〜 」
 あのツルツルの秘部を見てみたくてたまりませんでした。
「あ、あの…… 社長さん」
 私の指示通りに動く代わりに、困惑した顔でこっちに視線を向けてきます。
「ん? どうしたの? さ、こっちを向いて〜 」
 どうやら、クミちゃんの羞恥のボタンを押してしまったようです。順調に来たのに、急に股間を押さえて、身体を硬くします。
 中腰になってしまったのは、モデルではなく、一人の乙女の羞恥心が溢れすぎているせいです。
「あの…… 実は…… あの、昨日、脱毛もあって、ですね…… あの…… 」
 今にもしゃがみ込んでしまいそうです。
 ここは、先取りして上げるしかありません。
「あぁ、ひょっとして、昨日のエステで全身脱毛したこと、気にしてるの? 」
「え? 社長さん、何でそれを」
「だって、オプション全部載せって言ったでしょ? モデルさんはみんな、そうするんだよ」
 いかにも当たり前、と言う表情をしてみせると、なぜかホッとした表情に変化しました。
「あ、やっぱりそうなんですか? エステでも、そう言われて、断れなかったんですけど」
「大丈夫だよ。ま、クミちゃんの自然なヘアは、今度見せてもらうとしようか」
「あ…… はい。恥ずかしいですけど」
 ん?
 今度見せてもらう、と言うセリフをクミちゃんは、どう受け止めたのでしょうか。根拠はありませんが、頭の良い子だけに、そのセリフが意味することを、ちゃんと受け止めているはず。
『ハイってことは、モデル、またやってくれるってこと? それとも…… 』
 私は自分の想像を慌ててかき消さなくてはなりません。この身体を、自由にできる関係医鳴るなんて、そんなことがあるわけないのです。
 こんな美少女が、私を受け入れるなんてカンチガイをすれば、モデルになってくれたクミちゃんを傷つけるに決まっています。
「さ、今日は、エステで磨き抜かれたボディを自慢してよ」
「はい。あの、でも、あぁ」
 股間を押さえた手を外すタイミングに困っているようです。一度浮かんでしまった羞恥は、消すのが難しいのです。
「はい。大丈夫だよ。モデルさんのそういう姿はいつも見てるからね」
「そうなんですか? 」
「そうだよ、見慣れたものさ。だけど、今日はちょっと違うかな」
「え? 何か? やっぱり、ダメなんですか? 私なんかじゃ……」
「逆! 」
 唇を半ば開けたクミちゃんは、屈み込んだまま、顔だけをこっちに上げました。 
「違うのは、クミちゃんが、今まで撮った中で抜群に美しいモデルさんだってだけさ」
「そんなぁ、社長さん、またぁ」
「本気だよ。すっごく綺麗だから。ほら、オレの目を見てごらん」
 カメラを下ろしてじっとクミちゃんの目を見つめると、真剣な眼差しが見つめ返して、ホンの数秒の沈黙の後、泣きそうな眼がコクリと頷いたのです。
「信じて。綺麗だよ、クミ」
 コクリ
「さ、撮影再開だ。さ、一歩前に出ようか」
「あぁあ、は、はい」
 支持された動きを優先すれば、羞恥に固まっていた身体も再び動きます。クミちゃんは再び「モデル」に戻ったのです。
「じゃ、とりあえず、こっちをまっすぐ向こうか、おっと、両手は後ろで軽く組んで。うん、視線は足下3メートル先に落として」
「こ、こうですか? 」
 見事なヌードです。
 目の前に、少女の美しさを全て形作るとこうなるという、見事な裸身。
 微妙なカーブを持ったウエストは、幼児体型を抜けきっていないのにくびれをしっかりと持っています。これからの成長を感じさせるヒップの膨らみは、まだ生硬な質感を保ちつつも、しっかりとした大人の腰つきを見せています。
 そして、細くて幼い体つきに似合わぬほどの、見事な膨らみ。
 先端の小さなピンク色の蕾は、恥ずかしげな風情を店ながらも、しっかりと存在を誇示して硬く尖っていました。
 手も足も、意外なほどの長さで、スラリとしたイメージを作っているせいでしょうか、裸になってみると、その小さな身体を感じさせません。
 そのくせ、羞恥に染める桜色の頬は、まだ思春期も迎えてないような「聖少女」のまま。
「綺麗だよ、クミちゃん」
 それはモデルさんを乗せるためのセリフではありませんでした。
 心の底から、クミちゃんの無垢の美しさに、思わず漏らしてしまった言葉です。
「そのまま後ろを向いて。クルン! 」 
「こ、こうですか? 」
 しなやかな髪の毛をフワリと浮かせながら、後ろを向きます。
 クリンと丸いヒップは、幼児体型をギリギリ越えて、丸みの中心をキュッと引き上げた少女のお尻。
 柔らかそうなのに、弾力がたっぷりと乗っていることがファインダー越しでもハッキリと分かります。 
「そのまま、じっとして! 」
 シャッターを切りながら、パッと近づくと、そこは、手を伸ばせば届く距離。
 しゃがみ込んだ私は、上向きのカタチでレンズを向けていました。
 細い脚の間は、見事にキュッと伸びていますが、軽くとじ合わせて立っているだけだと、ちゃんと細い太股の間の美丘が見えるのです。
『え? これ、濡れてるだろ! 』
 わずかにしか見えないその場所が濡れているのを知った瞬間、私のモノは、もはや隠しようもないほどに、見事に反り返って勃起してしまったのです。
 それも、ちょっと覚えのないほど力強く。
「あぁ、社長さん、お願い、下から撮ったら…… 」
 向こうを向いたままのクミちゃんは、両手で顔を押さえています。
 嫌という言葉を呑み込んだのが、逆に、クミちゃん自身が、濡れていることを知っているんだと感じさせています。
 二人の間の時間が止まっている間も、パシャ、パシャ、パシャとシャッター音だけが鳴り続けていました。
 ハッと気付いたのは、何秒後でしょうか。実際には、数秒もなかったのかもしれませんが、ほとんど色づいていない、真っ白な大陰唇の後ろ側が、濡れていた姿は、私の脳裏に確実に焼き付いていたのです。

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