|
|
| あなたのために |
日曜日の午後。
昨晩は家に帰らなかった。祥一のことが気になったが、でも家に帰る気分になれなかった。
英里子の幻影に惑わされていた。いや、英里子の全裸の身体の幻影に惑わされていた。
何年かぶりに風俗に行き、娼婦に「溜まってたの? 」と激しさを笑われた。
それから、馴染みのスナックで明け方まで過ごした。
目を覚ました時、そこがスナックのママの部屋であることに気づき、貪るように抱いた。「素敵な奥さんがいるのに…… 」ママはそう言いながらも私を受け入れた。ママとはその時が初めてだった。
まだ酔いが残っていて、ママを抱きながら、私は泣いた。「奥さんと何かあったの? 」聞かれながら、それには答えずに、ただただ泣き続けた。
すでに英里子はいないのではないか、と思いながら玄関のドアを開けた時、リビングルームから、祥一の笑い声が聞こえた。
「パパ、お帰り」祥一の元気な声。
英里子は、私と視線を合わさずに「お帰りなさい」と小さな声で言った。
見ると、祥一と英里子はテレビゲームをやっている。野球ゲームだ。
「ママに買ってもらったんだ」祥一が私に言った。
「僕のチームね、ママのチームに五十対0で勝ってるんだよ」
「そうか。よかったな」
私はそう言いながら、たばこに火を付けて、ゆっくりとソファに座った。英里子が何かを言い出すのを待った。
また点を入れられたのか、祥一の勝ち気な声と、英里子の笑い声がした。笑い声が、何故か空々しいように私には聞こえた
英里子は何も言い出す素振りを見せなかった。私は除け者にされたかのように、ぼんやりと座っていた。
三十分が過ぎても、その状況は変わらなかった。
ふと、女の匂いがまだ私に残っているような気がした。英里子を見ていて、そう思ったんだ。
私は、ゆっくりとソファから起きあがると、バスルームに向かい、着ている服を脱ぎ去ると、すべてのことを押し流すようにシャワーのノブをひねった。
私は、英里子がすでにいないことを予想した。しかし、英里子はいた。それから、英里子が私のことを激しく罵ることを予想した。しかし、英里子はそうしなかった。
ふと、私たち家族は、私も英里子も、それから祥一も、一週間前と何も変わっていないのではないか、と思った。そうであってくれれば、なんと幸せなことだろう。
でも、そうではないんだ。すべては壊れてしまっていたんだ。
私は、ぼんやりと浴槽の縁に腰掛けていた。
バスルームのドアが開く音がして、それから脱衣室と浴室を区切るガラス戸の向こうから「着替え、ここに置きますから…… 」と、英里子の声がした。
私は黙っていた。
でも、英里子は立ち去る素振りを見せなかった。私は「英里子…… ? 」まだいるのか、と声をかけた。
「…… …… 」
「英里子…… ? 」
「祥一には、パパはお友達のところに泊まった、って言ってありますから…… 」
「うん。判った」
「…… 。それからね、さっき相沢さんから電話があったわ」
「何だって…… ? 」
「…… …… 」
「詫びに来るのか? 」
ガラス戸が開いた。私はまだ浴槽の縁に腰掛けたままでいた。英里子の鋭い視線を感じたが、目を合わさずに下を向いていた。
「詫びに来る?何で、相沢さんが詫びに来るの? 」口調が刺々しかった。
「いやぁ…… 、知らないけどさ」
「お詫びするのはこっちじゃないの。わたしのケガのことで、さんざんお世話になって…… 。おまけに昨日のことは何よ? 」
上目遣いに見ると、英里子は目にいっぱいの涙を浮かべている。声も涙声だ。
「…… …… 」
「あの後、大変だったんだから…… 。公子さんや看護婦さんにすっかり後始末をしてもらって…… 。わたしに何の恨みがあるの?何が気に入らないの? 」
「公子さん、何て言ってた? 」
「知らないわ。ただ、黙って後始末してくれただけ…… 。でも、ちゃんと家まで送ってくれたわ」
「相沢がいなくて残念だったな」私の声は嫌みに満ちあふれていた。
「あなた! 」
「…… ? 」
「何で相沢さんなのよ。何を言ってるの? 」
「判ってるんだよ、全部。いまさら隠すことないさ」
「隠すって、何を? 」
「…… 。そうだな、公子さんに詫びなけりゃいかん。ふしだらな女房が、あなたの亭主をたらし込んだってな」
祥一が「ママ、もう一回やろう」と英里子のすぐ脇に来ていた。
「何、喧嘩してるの? 」
「何でもないのよ。あっち行ってらっしゃい」
英里子が祥一を外へ出すと、英里子自身も浴室の中に入ってガラス戸を閉めた。
私は立ち上がると、またシャワーを浴び始めた。シャワーのお湯が、英里子の服の上にも飛び散った。英里子は避けるでもない。
「ちゃんと話して…… 。どういうこと? 」
「そんなこと、俺の口から言わせるのか? 」
「何なのよ」
「お前の口から聞きたかったんだが…… 」
「だから、何なのよ」
「じゃぁ、言ってやろう。お前、毎日毎日、レントゲン室で相沢と何をしていやがったんだ…… 」
「レントゲン、室? 」
「しらばっくれるな。判ってるんだから…… 」
「あなた、レントゲン室ってなあに…… ? 」
「それを俺の口から言わせるのか」
「ええ。だって何を言ってるのか判らないんだもの」
私は深呼吸をした。それからゆっくりと言葉を発した。
「毎日毎日、お前、相沢のところで裸になって…… 」
「だって…… 、それは」
「それも自分から進んで裸になってたそうじゃないか。相沢のやつを相手に何をしていたんだ? 」
「相沢、さん? 」
「そうだ。相沢一人だけだったそうだな」
「…… …… 」
「こっちは判ってるんだから…… 」
私は話しながら、いつの間にか興奮していた。その情景が目に浮かんだ。英里子が相沢に辱められる淫靡な情景が、除けても除けても頭の中を走り巡っていた。私のものが勃起し始めている。私にはそれが判っていたが、どうしようもない。英里子の視線は、すでにそれに気づいているようだった。
「…… 、あなた、それ、誰に聞いたの? 」
「祥一に決まってるじゃないか。あいつ、ちゃんと見ていたんだぞ。ごまかしたってダメだ」
英里子はしばらくボンヤリしていた。シャワーのお湯が英里子に掛かって、すでに服はビショビショに濡れていた。
「はは〜ぁ…… 」
「なんだよ。お前」
「それで、どうしたの? 」
「え? 」
「それで、あなた嫉妬した? 」英里子がちょっと笑っている。私のものを見ているのだ。
「何を言ってやがる」
「だから、ああやって…… はは〜ぁ。なるほど…… それで判ったわ」
その時、英里子がちょっと変わったように私には思えた。
「あゝ、すっかりビショビショ!わたしも一緒に入っていい? 」
「勝手に入ればいいだろう。俺はもう出る」
「ダメよ。わたし、まだ怖いから、ちゃんと一緒に入って…… 」
「そんなこと知らん。一人で入って、またケガをしたらいいさ。そうすりゃぁ、また相沢のところに行けるぞ」
「そうね」
英里子はすでに服を脱ぎ始めている。
「あなた、チャック降ろして」英里子は私がガラス戸に向かわないように、たくみに出口を塞いだ。
「ブラジャーのホックも…… 」
英里子の着ていた服が、濡れ雑巾のように浴室の床に丸まった。
英里子は最後のパンティーを脱ぎ去ると、それらをひとまとめにして、ガラス戸を開けて脱衣室に放り投げようとした。
そこに祥一が心配そうに立っている。
「ママはね、これからパパと一緒にお風呂に入るからね。これ、洗濯機の中に入れてちょうだい。ゲームはお風呂から出たら、またやりましょう」
祥一はそれを受け取りながら「ママ、パパ、喧嘩しないで」と泣きそうな声でいった。
英里子がガラス戸を閉めてから、私は気がついた。私のものが勃起したままになっている。祥一にすっかり見られてしまった。
「祥一もすっかりおませになったわね。この前なんかね、あの四丁目の高校生の男の子いるでしょう?あの子の家でエッチなビデオ見て来たって言ってたわ。私たちも、うかうか出来ないわよ」
英里子がスポンジに石鹸を付けた。
「後ろを向いて。背中洗ってあげる」
そう言って、私の腰を押さえるようにすると有無を言わせず私を後ろ向きにさせた。
「そうよ」英里子のスポンジが私の背中をなぞっている。
「毎日、レントゲン室で相沢さんと二人っきり…… 。最初は嫌だったんだけど、でも、相沢さん、リードがうまくって」
「どういう風にやられたんだ? 」
「あら?こんなとこにおできが出来てるわ」
「そんなこといいから…… 。それからどうしたんだ? 」
「今度は前を向いて」私は向き直った。英里子が今度は私の胸を洗っている。
「どうって…… 。わたし、診察台の上に寝て、相沢さん、わたしの打撲の跡を見てくれてたんだけど、ほら、ここに触られたときにね」英里子は太股の付け根に触れている。
「あなたも触って…… 」
私はその通りにした。
「相沢さんの指が私のここに触れて…… 」
英里子は私の手を導くようにしながら、秘部に導いた。クリトリスに指が当たっている。
「それで、動かしたものだから…… 」
「こうか? 」
「そう。いえ、もっと激しく…… 」
「こうか? 」
「そう、そうなの。それから、もう片方の腕がわたしの胸を揉んで…… 」
「こうか? 」
「そう、そう」
いつのまにか、英里子の両腕が私の首に巻き付いている。
私は悔しくって悔しくって…… 、でもその作業を続けた。英里子の身体がピクンとした。甘いため息が漏れている。
「ふざけるな! 」私は英里子を追いやった。
「はい。じゃぁ石鹸流しましょうね」
英里子の手がシャワーのノズルを掴んで、私の身体から石鹸の泡を落とした。英里子のもう片方の手が私の胸をなぞる。
「そのうち、私、気持ちよくなっちゃって…… 。あなた、やってくれないの? 」
私は、もう一度英里子の秘部に触れた。
「そうそう。そんな感じ…… 。もっと。もっとよ」
英里子はすでに愛液を溢れさせていた。
「そうしたらね、ちょっと油断した隙に、相沢さんのこれが…… 」
英里子は私の勃起したものを掴んだ。すでに硬度を増している。
「これをね、私の中に…… 。あなた、ちょっと腰を落として…… 。身長が違うんだから」
私のものは、英里子のへその位置にある。だから私は腰を落とした。英里子はそれにまたがるようにして、自分の秘部の中に導いた。
私の背中は、浴室の壁にもたれている。英里子の両手が私の首に巻き付いて、シャワーのノズルが、カランと床に落ちた。
「そしたら、相沢さんが激しく腰を動かして…… 」
私は突き上げるように腰を動かしていた。でも、英里子の方が激しかった。
「それでどうしたんだ? 」
「…… 、それで…… 」
英里子が声にならぬ声を漏らした。私には判る。軽く、一度目の絶頂を迎えているんだ。
私はグッタリした英里子の身体を離すと、湯船の縁に座らせた。その脚元に屈むようにして、その先を促した。
「それからどうしたんだ? 」
「でも、ほら、わたし、身体あんまり動かせないから…… 」
「充分、動いてたよ」
「それは今だからよ。あの時はダメだったわ。だから、相沢さんの好きなようにされたの」
私はシャワーのノズルをもう一度握った。それから、英里子の身体にかけた。
「あの風呂の時はどうだったんだ? 」
「あゝ、介護用のお風呂の時ね。だって、ほら、セックスで手一杯だったもの。身体を軽く拭いてくれただけなの」
「どうやってやったんだ? 」
「あなたと同じようによ。それ以外のやり方ってある? 」
「…… …… 」
「ただね、相沢さんは口でやってくれたわ」
「どうやって? 」
英里子は私の頭を自分の腰に引き寄せるようにした。自然、私は英里子の秘部を口に含んでいた。
「そうそう。そうやって…… 」
「こうやってか? 」私は英里子にひざまずく下僕のようになっていた。
「そう…… 。ちょっと待って。ここじゃぁやりにくいわね」
そう言うと、浴室の床の上に寝そべった。
「もう一回やって…… 」
私は英里子の腰にしゃがみ込むと、もう一度、英里子の秘部に口をはわせた。
「…… 、そう。…… 、そうなの」言葉がいつの間にか喘ぎ声に変わっている。
「だからね、私も相沢さんのものを口に含んであげたの。…… 、あなた、それじゃぁ遠いわ。逆向きになって」
私は英里子の秘部を口に含みながら、身体を半回転させると、英里子と逆方向に顔をまたぐようにした。英里子の手が私の腰を引くようにして、それから私のものを自分の口に引き寄せると、貪るように口に含んだ。
フェラチオの快感が、私のクリニングスをさらに激しくした。私のクリニングスが、英里子のフェラチオをさらに激しくした。
英里子の愛液はすでに溢れんばかりになっている。私のものもすでに限界に近づいていた。
「…… 、そうしたらね、相沢さんのものが私の中に入って来て…… 」
英里子はそう言いながら、寝たまま身体を半回転させると、私の首を寄せ付けて首筋にキッスした。私はしばらくそうさせた後、英里子の唇を探して、深く強くキッスで応えた。そのまま、英里子は秘部を私のものの位置に接近させる。私はそうならなければならないもののように、一気に挿入した。
英里子から、喘ぎ声とも泣き声ともつかぬ声が漏れた。
そのまま、激しく腰を動かした。
「そうよ…… 。そういう風に…… 。もっと激しく…… 」
「…… 、相沢は…… 、中に入れたのか? 」
「入れな…… かったわ。でも…… 、あなたは中に入れて…… 」
私はすでに限界を迎えていた。
英里子の不倫のすべてを聞くことが出来た。それは何にもまして、隠微な感覚だった。その感覚が、私の限界をさらに早くしていた。
それは英里子も同じだったろう。英里子が激しく絶頂を迎えるのと、私の発射は、ほぼ同時に訪れた。
昨晩の風俗の娼婦と、スナックのママとのセックスが信じられないほど、私はたっぷりと英里子の中に放出していた。悔しかったが、やっぱり英里子はいい女だ。
「お前のこと、愛してたのに…… 」
私は英里子の身体から離れると、英里子を見下ろすようにして言った。
「お前のこと、好きだったのに…… 」
英里子がグッタリと、目をつむっている。
「もう終わりだな」
私はそう言うと、シャワーで精液の後始末をしてから、浴室を出た。
風呂から出て、私はリビングルームでたばこをふかしていた。
「パパ。ママと仲直りした? 」
「うん?いや、別に喧嘩なんかしてないよ」
「そう?それだったらいいけど…… 」
しばらくして、バスルームから、
「あなた。何か着替えを持って来て…… 」という声が聞こえた。
私には判っていた。浴室には何もない。私が使ったバスタオルは、頭を拭くために私の手元にある。それ以外、新しいバスタオルはまだ庭先に干してある。英里子が着ていた服も洗濯機の中だ。
「あなた〜ぁ…… 」英里子の問いかけを私は無視した。
「祥一〜ィ。バスタオル、物干し竿から取って来て〜え」
祥一が、取りに行こうとした。
「行かなくていい」私は祥一に言った。
「だって、ママが…… 」
「行かなくっていい。ほっぽっとけ」
祥一が不安そうな眼で私を見た。
しばらくして、バスルームの戸が開く音がして、それから、ピタピタと足音がした。リビングルームの戸が半分だけ開いた。
「あなた。祥一。聞こえなかったの。あの、干してあるバスタオル取って来て」
私は祥一の手を掴んで動けないようにしていた。祥一が顔だけ英里子の方を振り返っている。
「中に入ったらいいだろう」私は残酷に言った。
「だって、何も着るものないもの」
「いいから…… 。中に入れよ。そこじゃぁ寒いだろう」
英里子はしばらく迷っていたようだが、そのうち、足音が中に入って、戸が閉まる音がした。
私は静かに立ち上がると、英里子を見た。英里子がうっすらと笑っている。
私は英里子の正面に立つと、それから思い切って、本当に結婚して以来初めて、頬を思いっきり、いやだいぶ手加減して、ぶった。
「パパ! 」祥一が驚いたように叫んだ。
「痛い! 」英里子が思わず後ろに下がった。でも、英里子のやつ、まだ笑みを浮かべたままだ。
「勝手にしろ! 」私は怒鳴るように言った。
「あなた、痛い…… 。あなた、結婚する時、わたしに絶対暴力は振るわないって言ったじゃない。約束違反よ」
英里子は、苦情を言うように言ったが、でもまだ笑っている。その視線は私を軽蔑している眼ではなくて、何て言ったらいいだろうか、私を愛おしんでいるような眼だったんだ。
「何がそんなにおかしいんだ。私はな、私はお前のことをずっと信じてきたし、お前のことを本当に愛してきたし…… 、ずっとお前と一緒に暮らしたいと思ってたんだ。それが何だ。裏切りじゃないか! 」
「わたしもよ」
「え? 」
「わたしもあなたのこと、愛してるわ。あなたのこと、好きよ、本当に…… 」
「ふざけるな! 」何が愛している、だ。
「でも…… 、あなたずいぶん苦しんだのね」
「え? 」
「ごめんね。本当に、あなた、苦しんだのね。でも…… 、わたし、嬉しい! 」
「何を言ってるんだ、お前! 」
私はもう一度ぶん殴ってやろうかと思った。思わず一歩前へ出る。英里子はまたぶたれたらかなわない、というように一歩下がった。それから、両手で私を制止させると、
「ちょっと待ってね」
笑みを浮かべたまま、ゆっくりと私の背後に視線を走らせた。
そこには、祥一がいた。
心配そうに、私と英里子の会話の成り行きを見守っていたようだが、英里子の視線に気がついて、あたふたと逃げるように自分の部屋に戻ろうとしている。
「コラッ! 」英里子が言った。まさに恐怖のママの一撃。
「祥一!待ちなさい」祥一が階段の前で、金縛りにあったように立ち止まった。
「あなた、パパに何て言ったの?本当にしょうがないんだから…… 。だめよ、パパをからかっちゃ。あなた、だって、いつも遊びに行っちゃったじゃないの。最初の日だって、いやいやで、文句言いながら、やっとついて来てくれたんじゃない…… 。二日目からは、あなた遊びに行っちゃってたし、ママ、一人で行ったのよ。そうでしょう?そのこと、パパには黙っててあげたのに…… 」
「だって、パパが嬉しそうな顔をするんだもん。パパのために言ってあげたんだ」
その時、電話がなった。相沢からだった。
「もしもし。あゝ、昨日はテーブルクロスなんかもらっちゃって、ありがとう。でも、よかったな、大事にならなくって。いや何ね、俺は初診の時診察しただけで、あとは公子や看護婦に任せっきりだったから、あんなことしてもらっちゃぁかえって申し訳ないよ。ちゃんと診察代もらってるのに…… 。それから、介護用の風呂の件も、実験台になってくれたんだって?俺、全然タッチしてないんだ。ああいうのは医者の仕事じゃないしな。全部、公子と看護婦に任せっきりさ。本当にありがとう。今、暇なんだろう?この前のキャンプの写真もできてるし、これから公子と一緒にお邪魔しようって思ってたんだ。何だか公子に聞くと夫婦喧嘩してるようだし…… 。仲裁してやるよ。まぁ、仲がよすぎるのも玉にキズだな。まあいいや。詳しくは行ってから聞く。じゃぁ、な」
私は呆然としていた。
「誰から? 」英里子が聞いた。
「相沢たち。これから来るって…… 」
「あらあら。何か冷蔵庫にあったかしら」
英里子は全裸のままキッチンに入ると、冷蔵庫を開けた。
「まぁ、いいか。何か出来そうだわ。それに、いつも相沢さんたち、何かおつまみを買って来てくれるから…… 」
英里子はそう言って、私に振り返った。
「それで…… ? 」
私は慌てた。だって、英里子はまだ全裸のままなのだ。
「あなた、どうするの?わたし、このままでお出迎えする? 」英里子が聞いた。
「…… 。馬鹿、何を言ってるんだ。早く服を着てこないか」
私は怒るように英里子に言った。
でも…… 。
じゃぁ…… 、じゃぁ、お前がさっきバスルームで言ったことは何だったんだ。
英里子は溢れるような笑みをこぼすと、それから、私の耳元でささやくように言った。
「それはね、…… 」
「…… ? 」
英里子の裸の腰が、ズボンの上から私のものに軽く触れている。
「それはね。あなたの…… 、あなたのために言ったことよ」
|
fin
|
|
|