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| 妻の絶頂 |
この地方では雪なんてちっとも珍しくないが、今日は朝からドッサリと大雪が降って、そしてやけに冷えた。
祖父が、久し振りで風呂に入りたいと言う。
僕と圭子は、部屋でテレビを見ながら蜜柑を食べていたが、父が部屋の入り口まで来て、すまなそうに僕等に頼んだ。
「じいちゃんがな、圭子さんに風呂に入れて欲しいって言うんだ」
「おふくろは?」僕は父に聞いた。
妻の圭子が思い出したように言う。
「あゝ、そうそう、お母さん腰が痛いって言ってらしたわ」
「まあ、そういうことでな、圭子さんすまんが何とかお願いできないだろうか・・・。別にいいだろう。もう八十なんだから」
確かに異性を風呂に入れるってことになるんだろうが、まあ、八十歳の老人ではどうってことないだろう。
「えゝ、いいですよ」圭子が応える。すでに立ち上がっている。
僕も、圭子がいいならってことで了承した。
祖父は寝たきりで、ほとんど風呂に入ることが出来ない。頭はしっかりしているんだが、下半身がまったくダメだ。だから、いつもは巡回して来る介護専用の風呂に入れてもらうのがやっとだった。でも、稀に身体の調子がいい時、家族のものが協力して家の風呂に入れてやることがあった。
その役目はいつもは母がやるのだが、持病の腰痛が出たっていうんだったら、まあ、しょうがない。
僕は高校を卒業後、東京の大学へ進んで、そして地元の企業に就職した。俗に言うリターン組ってやつだ。
妻の圭子は高校の時の同級生で、僕等はこの春結婚したばかり。
僕の兄が離婚をしたのを契機に勤めを止め、母と一緒にこの家の家事を取り仕切っている。
圭子は頭のいい女だ。兄嫁とは上手くいかなかった母も、圭子とは本当の母子のように自然に振る舞うことが出来る。まあ、高校の頃からチョクチョク家に来ていたから、顔なじみでもあったが・・・。
僕と圭子が風呂場に行くと、母が壁に寄りかかるように立っている。
「ゴメンなさいね、圭子さん。お願いしちゃって・・・」
「それよりもお母さん、腰、大丈夫ですか?」
「これは持病だからしょうがないんだけど、こんな時によりによってねえ・・・」
「どうぞ、休んでらっしゃって下さい」
「ええ、でも心配で・・・」
「で、どうすりゃいいんだ。ただ入れりゃいいんだろう?」僕が母に聞く。
「そうなんだけど・・・。でもね、一緒にお風呂に入らないとダメなのよ。足が全然ダメでしょう?だからね、圭子さんが先に入ってて、迎えるようにして上げないとダメなの」
「入るって、裸になってですか?」
「そう。普通にお風呂に入るみたいに・・・。あとで、お父さんとお兄ちゃんが担いで来るから・・・」
「でも・・・」圭子はちょっと困った顔をする。
そりゃそうだよな。父や兄が担いで来て、それを圭子が受け取る。その時、圭子は全裸になっている。いくら家族の一員になったといっても、まだ新妻だ。抵抗はあるよな。
「水着か何んかに着替えたらどうだ?」と僕が圭子に言う。
「そんなこと・・・。いいですよ、バスタオルか何か身体に巻いてるから」
「私、ここにちゃんとついているからね、大丈夫よ」これは母。
「そうですね。ご高齢のことだし、間違いがあったらいけないから、お母さんにいてもらいましょうか。あなた、椅子か何か持って来て上げて・・・」
風呂の戸は大きく開けられている。身体のでかい祖父を入れるためにはそうせざるを得ないだろう。
その開け放たれた戸が閉まってしまうのを阻止するように、母は椅子をおいて座っている。その位置からは脱衣室から浴槽まですっかり見渡せる。
僕もその脇に立っていた。
「じゃあ、私、入りますから・・・」圭子はそう言って、戸を閉めようとしたが、もちろん閉めることは出来ない。
「じゃあ、失礼します」後ろ向きに服を脱ぎ始めた。
母や僕は、まるでかぶりつきで、圭子が服を脱いで裸になるのを見物しているようだ。
圭子の今日の服装は、セーターにジーンズ。セーターをサッと頭から抜くと、ジーンズのジッパーを下げた。
「あんまりジロジロ見ないで下さい。恥かしいから・・・」そう言いながら、ジーンズを足から抜き取る。
ベージュ色のブラジャーとパンティーのまま、髪の毛を後ろに持ち上げて、輪ゴムで結わえる。それから、バスタオルを器用に身体に巻いて、その中から、巧みにブラジャーとパンティーを抜き取った。
そして、そのまま浴槽の戸を開けて中に入ると、バスタオルを身体から外して、脱衣室のすぐ脇に引っ掛けた。
圭子の全裸の身体が湯気の中にボンヤリと見える。でも、その湯気は脱衣室からさらにその外に一気に広まって、そして、圭子の身体がまるで霧が晴れるみたいにハッキリと現われた。
母はボンヤリとその一連の作業を見ていたが、
「戸はそのまま開けておいた方がいいわ。あまり温度が違ってもいけないから・・・。それからお湯はちょっとぬるめにして上げてね」
「はい。じゃあ、そうします。・・・。ちょっと熱いわね」
圭子はお湯を身体に掛けながら、水道の蛇口を捻った。圭子の声が浴室の中で反響するように響いた。
「さっき、一度お風呂に入ったから・・・。もういいですよ。どうぞ連れて来て下さい」
「若いっていいわねえ」母がため息を吐くように僕に言う。
「結構、スタイルいいだろう?」
「そりゃあもちろん。ダメよ、大事にして上げなくちゃ・・・」
圭子に聞こえたのだろうか?
「何、お母さんに言ってるの?」浴槽から頭だけを出して、圭子が聞く。
「お前のこと誉めてたのさ」
母が小さな声で僕に言う。
「圭子さん、大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ。おふくろがそこにいて、ちゃんと指図してくれれば・・・」
「ええ、それはそうだけど。おじいちゃんてね。お前も聞いてるだろうけど、ずいぶん女遊びをした人なの。死んだおばあちゃんは、あれでずいぶん泣かされてたわ」
「うん。それは聞いたことあるよ」
「もちろん今は下半身はまったくダメだから変なことはないと思うけど・・・」
「当たり前じゃないか。ただ風呂に入りたいだけなんだろう?」
「そうなんだけど・・・。でもね、両手は達者だし・・・。お前ね、私も注意してるけど、圭子さんがもし変な風になったらすぐ助けて上げるのよ」
「何言ってるんだ。圭子じゃなくて、心配なのはおじいちゃんの方だろう?」
その時、僕は母が何を言いたいのか、さっぱり判らなかった。
廊下の方で、ドタドタと足音がした。父と兄が祖父を担いで来たに違いない。
僕が、来たことを圭子に告げると、圭子は浴槽からサッと出て、あわててバスタオルを身体に巻いた。
ちゃんと巻けているかな?僕は少し気になった。
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