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| 妻の絶頂 |
圭子は、身体を傾けるようにして浴槽のヘリに身体を預けている。目をつむった顔が、湯船すれすれになるくらいに下を向いている。髪の毛が濡れていた。
でも、けなげにも、祖父の胸に回した手は、しっかりと組まれていた。どうなっても、自分がどんな風になっても絶対に離すまい、そんな圭子の気持ちがいじらしかった。
祖父が僕に向かって、一言、
「いい女だな」と言った。
祖父の手は、いや祖父の指は…… 、おそらく圭子を絶頂に導いたに違いない祖父の指は、すでに圭子には触れていない。
「圭子に何したんだ?」僕は祖父に聞いた。
「何って、かわいがってあげてたんだ」
「誰もそんなこと頼んじゃいない。何でそんなことした?」
「でも、ずいぶん悦んでたぞ」
いつの間にか浴室の中に入ってきた父と兄が、言っても無駄だ、という顔をして、
「ともかく、じいちゃんを出そう。のぼせてしまう」そう言いながら、祖父を抱え上げようとしたが、圭子がしっかり手を組んでいる。
僕は、優しく圭子の手をほどこうとした。でもギュッと握った手はかたくなで、なかなかほどけなかった。
僕は圭子の顔を優しく叩いた。
「おい、大丈夫か?もういいから…… 。手をほどいていいから…… 」
圭子は気づいた。ぼんやりして、そして、だるそうに手をほどいた。
父と兄が祖父を持ち上げると、祖父のものが僕の目の前にあった。それは形をなさないくらい小さく縮こまんでいる。お湯が僕の身体に掛かった。でも、僕は圭子の肩を抱いて、そのままでいた。
「私…… 」
「いいから。いいから、何も言うな」
僕は圭子がいじらしかった。
手で、圭子の顔を洗ってやった。手で髪の毛を梳いてやった。
圭子は呆然とされるままになっている。
「もう出よう」
「うん。…… 。ゴメン。立てない」
祖父は洗い場に座って、父にまた身体を洗ってもらっている。兄が脇から支えている。
僕は、ズボンのまま浴槽の中に入って、圭子を抱き上げた。早くここから圭子を去らせたい、その一心だった。
そのまま、浴室を出て、廊下を足早に歩く。圭子の全裸の身体から、水がポタポタと落ちた。
母が途中から、バスタオルを圭子の身体に掛けてくれた。そして、圭子の裸の肩をトントンと軽く叩いた。圭子が軽く頷いた。
「あとはこっちで何とかやるから…… 。ともかく圭子さんを休ませて…… 」
僕は黙っていた。圭子が、僕の首に手を回して、顔を僕の胸に押し付けるようにしていた。
でも、不思議だった。
あの圭子が、どうして祖父のたった二本の手だけで、いや十本の指だけで、いとも簡単に絶頂を迎えることが出来たのか?
僕が蒲団を敷いている間、圭子はボンヤリと横座りに座って、気だるそうに身体を拭いていた。
「敷き終わったぞ。もう寝ろ」僕が言うと、圭子はそのまま崩れるように布団の上に寝転んだ。
明るい蛍光灯の下に、圭子は何を隠すでもなく、身体をちょっと横向きにして全裸のまま寝ている。いつもは僕に身体を見せるのも恥かしがるのに、今は何も隠そうとしない。
圭子が着るかな?と思って箪笥の引出しから出したパジャマも、圭子は見えているだろうに着ようとする素振りも見せなかった。
僕は、立ったまま、そんな圭子の全てを見ていた。
今、僕は圭子に何をしてあげたらいいのだろう?セックス?圭子は待っているんだろうか?
でも…… 。ゴメン、圭子。僕には自信がないんだよ。
いや、きみを抱いてセックスするくらいのことは今すぐ出来るさ。僕だってまだ若いんだ。
でも、きみをさっきみたいにいかせる自信がないんだ…… 。
窓の外を見ると、あんなに大降りだった雪が、だいぶ小降りになっている。もうすぐ止むことだろう。
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