美由紀の「み」本文へジャンプ  

その3


 失神してしまった妻をそのままにして妻が使っているPCを持ち出します。
 ダイニングテーブルに向かって座ると、PCが立ち上がるのももどかしく、妻の日記を開きます。
『パスは、うん、kigno…… えっと。この辺りからだな』
 読むべきか否か、つかの間、葛藤していたのも真実です。
 妻の真実を知ってしまう怖さがありました。しかし、どんなに怯えながらも、しょせん私には「読まない」という選択肢など初めからなかったのです。
 始めはおそるおそる、そして、いつの間にか、真剣に読み込んでいました。
『そうか。合宿の時に覚えたのか』
 合宿以来、ハートマークのスタンプが押されているところが出てきたのです。
 間に書いてある内容から推測して、これはオナニーと考えて間違いなさそうです。ほぼ毎日、スタンプが押されています。
「ちょうちん祭り」の、あの体験が高校時代の美由紀をオナニーに狂わせたのです。
 しかし、オナニーくらい、いささか数が多いにしても、それほど異常なことでもありません。先を急ぎました。
『ま、今度、目の前でさせてみようか』
 そんな思いが頭をかすめながらも、さらに意外な事実を発見しました。
 新体操の世界では、あそこの毛を全て剃り落としてしまうのが掟だというのです。
 あるいは、それは、妻の高校だけのことかもしれませんが、確かに、最初に見せられた写真を見直すと、脚を持っている先輩も、股間の陰りは全くありません。
 演技中に、万が一にも「はみ出す」ことがないように、とのことらしいのですが、考えてみれば、あれほど股間を広げて、それを狙う望遠レンズが大量にあるのです。
 激しい演技で動いているウチに、ちょっとズレたりしても「事故」は起きかねませんから、実は合理的な掟なのかもしれません。
 まあ、ヘアが見えることがなくなる代わりに、クロッチの部分をどれほど厚くしても、大開脚の股間で、はっきりと「土手」が見えてしまいます。
 しかし、それは仕方のないことのようです。
 気になって、ちょっと飛ばして先を見てみると、もちろん、大学に入っても、ヘアを剃るのは当たり前だったようですから、選手を辞めた大学二年生になるまで、妻は「ツルマン」の人生だったわけです。
 おっと、剃ると言っても、大学生ともなるとエステでやるらしく、友達と綺麗にしてきたというのもちょくちょく出てきます。
『そういえば、恥ずかしがって、なかなか裸を見せなかったよな』
 ツルツルの場所を見られることを恥ずかしがったのでしょう。付き合いだしてもなかなかエッチを許さなかったのを思い出します。
『あれは今にして思えば、生えそろうのを待っていたんだな、さては』
 ツルツルにしてきたことを黙っていたのも、恥ずかしがり屋の妻らしいと言えば、そうかもしれません。
 しかし、日記を読まれたと思い込んだ妻が、あれだけショックを受けたのは、ツルツルの件ではないはずです。
『この先に、何かが出てくるってコトだろ、ってことは、やっぱり黒田クンか? ん〜っとなると、高校三年生の秋あたりだよな』
 高校時代には、先輩とのレズ的な片思いや、後輩からの告白など、当時高校生だった妻の真剣な悩みは綴られていますが、そんなことに拘っていられません。
 せいぜい、三年の「ちょうちん祭り」で、イカせた後輩とのことくらいです。
 そこだけを読めば大興奮だったはずですが、黒田クンのことを確かめるのが先で、素通りします。
 斜め読みしていくと、ズバリでした。
 かねて「ファーストキスの相手」とだけ教えてくれていた黒田クン。
 三年の文化祭にやってきた彼と知り合い、猛烈なアタックを受けた妻は、ちょうど、高校と大学の狭間の時期。
 折しも、冬からは「男女交際禁止」の部規則も身体の関係さえなければ、暗黙の内に認められていたらしく、仲間達は次々に「彼」を作っていた時期でもあります。
 猛烈なアタックに負けたと言うカタチで、好奇心半分に彼とつきあい始めたのです。
 推薦入学も決まっている妻と、エスカレーターで大学に進む黒田クン。
『え? こいつ、あそこかよ』
 なんとあの超有名大学の幼稚舎から内部進学組した、生粋のお坊ちゃまというわけです。
 まあ、私も何不自由ない生活をさせてくれる家に生まれましたが、さすがに、中学受験から苦労した口です。
『どうやら、相当のイケメンだったのかもな』
 お坊ちゃまのイケメンが妻のファーストキスを奪っていたのだと考えると、この先を読み進めるのが怖くなります。
 二人は受験勉強をしない分だけ、時間があります。
 彼の家に行くのも時間の問題かと思ったら、年が明けてすぐに、その記述がありました。
 部屋でのファーストキスは、話の通り。
 その時に、やはり妻は生まれて初めて秘所を男に見られ、そして男を「見た」のです。
 日記には、それ以上細かい部分は書いてませんが、親が外出中の彼の自宅で二人っきりで裸になるのなら、キスだけで止まるわけがありません。
 半ば想像ですが、キスの後、当然のように脱がされ、あのしなやかなヌードを生まれて初めて男の目にさらしたに違いありません。
『ツルツルのオ○○コも見られたんだろ? いや、絶対に、見るだけじゃないはずだ。たっぷりと弄られて、何度もイカされて、やらせろと迫られたに決まってる』
 妻は、生真面目だし、ハキハキした性格と物言い、そして整いすぎるほどにクッキリした美貌のおかげで、強気系に見られているのですが、実は「押し」にひどく弱いのです。
 断れるわけがありません。
 おそらくは二人とも裸で、しかも何度もイカされたのですから、そこで迫られれば、普通なら、最後まで行ってしまってもおかしくないはず。
 ですが、処女だけは守ったらしいのです。
 なぜ、それが分かるかと言えば、後の方の日記で頻りに「卒部式」の夜の部のことを意識していることが書いてありました。
 そこでは三年生が、卒業まで処女だったと証明しなくてはならなかったのです。
 辛うじて、妻が処女を守れたのは「男女交際禁止」の部規則のおかげかもしれません。
 ともかく、どんな行為をされたのかハッキリとは書いていないながら「見られてしまった」というセリフと、ハートマークがキッチリ三つ書いてあるということは、三回イカされたということでしょう。
『アイツを初めてイカせた男はオレじゃななった……』
 結構な衝撃でした。
 高校時代の「ちょうちん祭り」で、先輩にイカされたことの、比ではない衝撃が私を貫きます。
 そのくせ、股間が猛り狂っているのを、自覚してしまうのですから、まさに、ネトラレの本性が開花してしまっているのだと、苦笑してしまいます。
 破裂しそうなほどに脈打つ怒張を扱きたい欲求を「その先を読まずに出せない」というネトラレの本能が押さえ込みます。
 けれども苦しさのあまり、無我夢中で下半身を脱ぎ捨てていました。
 端から見たら、異常な光景でしょう。
 深夜のダイニングテーブルに向かって、下半身すっぽんぽんで向かう私は、痛いほどに勃起した先端から、タラーっと先走りを垂らているのです。
 PCから血走った目を離せなくなっている自分……
 しかし、そんなことをかまっていられる余裕などあるはずもなく、読み進めると、すぐ次のところに書いてありました。
「男の人のって不思議な匂い。でも、嫌いじゃないかも」
 その一文を見た瞬間、頭の奥に痺れるような、強烈な電流が流れます。同時に、股間は、暴発寸前の信号を送ってきます。
 もはや風が当たっても暴発しそうです。
『黒田クンの性処理をしたってことだよな? ってことは、フェラまでしたのか? 』
 もちろん、女の子の日記に、そんな具体的なことが書いてあるはずもなく、もどかしい気持ちで、文字の裏側にあった「行動」を読み取ろうとしていました。
そして、デートの時に撮ったという黒田クンの姿を見て、もう一度衝撃。
『なんだよ? こいつが? こんな奴がか? 馬鹿な! 』
 イケメンとは正反対。
 どう見てもヲタク系というのでしょうか。
 背は高いようですが、ちょっと小太りのメガネ。チェックの服は、かつての秋葉原を歩いている標準体のようです。
『こんなやつに、美由紀の初めてが…… 』
 猛烈な嫉妬というか、はっきりいってショックです。いや、イケメンだったら良いってことではないのですが、こんな奴に美由紀のファーストキスを奪われていたのかと思うとやるせなさばかりが襲ってくるのです。
『しかも、この男のチ○ポを、扱いてやったんだろ? フェラも、ひょっとしたら…… 』
 処女を喪ってはいないのは分かるのが、不幸中の幸いと言うべきかも知れません。
 ところが、その後の日記を読むと、私の心はさらに塞がれていきます。
 デートは、いつも彼の部屋になっていって、そこで言われるがままになっていた気配が濃厚なのです。
 そして、次の一文が引っかかりました。
《あんなことできるなんて思ってなかったけど、人間ってスゴイって思う。ちょっと苦しいけど喜んでくれて良かった。これで我慢してくれるなら嬉しい。黒ぴょんも我慢してくれてるんだもの。私も少しくらい我慢しなくちゃ。それにしても黒ぴょん優しい。ハート でも、私、このままで良いのかな?》
 あんなこと?
 黒ぴょんなどと呼んでいる妻の「初々しさ」というか、男慣れしてないところは好ましくても、やっぱり「押し」に弱い妻は、どうやら、処女を喪う代わりに、フェラをさせられたということでしょうか? 
 ん? 違う、これは、フェラじゃない! 
《お口での方はだいぶ慣れてきた。てか、なんか、段々あの味と匂いが好きになってるかも。でも、あっちは、やっぱりまだ抵抗がある。嫌なのに、気持ちよくなってる私って、変態なの? ホントに大丈夫なのかな? ちょっと心配。でも、これで喜んでくれてるんだから、良かったって思わなくっちゃ! バージン我慢してくれてるし。やっぱり優しいよ、ぴょん 》
 ハートマークが、五つも書いてあるのは、単に「好き」という気持ちを書いたのか、それとも五回もイカされたのか。
 好きって気持ちで書いたんだと思いたい私ですが、事実を冷静に受け止める職業故に、自分にウソをつけません。
 高校時代の妻が、そんなに何度もイク女だったというのは、それも、他の男に好き放題に弄ばれたのだということは、飲み下すには余りに苦い事実でした。
 しかし、なんと言ってもショックなのは「あっちは」というくだりです。
『フェラのことじゃないよな? 』
 その後に「あっちは、やっぱりまだ抵抗がある」と書いています。
『処女はそのままで、フェラじゃなくて、それで男が喜ぶと言えば…… 』
恐ろしい事実に、私の思考はたどり着こうとしていました。
 その時です。
「あなた…… 」
 リビングに顔だけ覗かせた妻が、不安そうに声をかけてきたのです。
「あっ…… 」
 声が出ません。
 よもや、妻が起きてくるなんて考えもしませんでした。
 チラッと見た時計の針は、三時を過ぎています。
 いったいいつから、私の方を見ていたのか。
「あっ あぁ、起きたのか」
「えぇ。さっき起きて、あの…… ちょっと準備をしていたんです。遅くなってしまって」
 遅くなって、と言っても別に待っているわけでもなかったのですが「いや、別に」と曖昧な返事を返します。
「まさか、私、あのまま寝てしまうだなんて」
 寝ていたのではなく、失神していただけだと、混ぜっかえす気分でもなく、私はソファに移動しながら「こっちにおいで」と冷たい声を出していました。
「はい」
 短く返事をした妻は、さっき着ていたパジャマ姿ではありません。
 形の良いオッパイが透けて見える、薄いネグリジェを着ています。
『こんなの持ってたのか? 』
 初めて見るネグリジェ姿に目を奪われている私の前に、ツツツと小さなステップでやってくる妻。
 ただ、一回だけ、チラッと私の股間を確かに見ていました。
 猛り狂った股間を見て、妻が何を考えたのかはわかりません。
 しかし「あなた」と、まるで独り言のように言葉を出した妻は、ひっそりと日陰に咲く花のように正座したのです。 




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