その4
静かに時が流れています。
視線を床に落としたまま、顔を上げようとしません。
ただ、背筋だけはピンと伸ばして正座する妻は、うなだれているのです。
「ね、美由紀」
「ハイ」
わずかに起こした顔は紙のように真っ白です。
いかにも強気の、キリッとした目元が、まるで怯える子猫のように小さく震えています。
「約束通り、怒らないよ」
「ごめんなさい」
手を床に付けて、素直に謝ってきました。
「でも、さ、騙してたわけじゃん? 」
「ずっと、忘れようとしていたんです」
おでこを床にこすりつけんばかりに下げたまま、妻は声を絞り出します。
異様にも思える妻の様子に対して、ショックはあっても、私は極めて冷静に受け止めていたつもりです。
なにしろ、黒田クンは、卒業を待たずに、ドイツに行ってしまったのです。そして、私が貫いた妻の秘部は処女であったことも間違いないのです。
ただ、初めてキスをしたその日から、二ヶ月あまりの内に、日記を読む限りでは、二十回以上も彼の部屋に行っています。
もちろん、その度に、彼の精子を飲んだのでしょうし、何度イカされたのか、数えようもありません。
妻の肉体と心には「彼」の記憶が色濃く刻まれているはずでした。
これでは、たとえ処女膜が残っていても「処女だ」と言いきるのが難しく感じられるのも事実なのです。
『美由紀の中に、オレ以外の男の記憶があったなんて』
衝撃と、そして猛烈な嫉妬心を生み出すの同時に、目覚めつつある「ネトラレ」属性が刺激され、凶暴なまでの性欲があふれ出そうとしていました。
しかし、職業上の習い性と言うべきなのか、表面の冷静さを捨て去ることができません。むしろ、欲望が強くなるほどに、言葉は静かになりました。
ひょっとして、その姿は「怒り」に見えたかもしれません。
自分の「裏切り」で、夫が怒っていると言うことで、いつも強気な妻をこんなにも控えめで、淑やかにさせるのだ事実に、実は狂喜してもいたのです。
なにしろ、急遽ドイツに旅だった黒田クンからのエアメールが届いたとか、何とか会うことを模索しても「会いたいのに会えない」という記述が何度もありました。
おそらくは黒田クン側に何らかの事情があったのでしょう。彼が日本に戻ることもなく、妻は妻とて、ジャパンを目指して、新体操に明け暮れていたのです。
二人は、自然消滅の形を取らざるを得なかったのでした。
そして、怪我をして、私が現れて、となるわけですが、正直言って、自分を愛してしまった妻の心情が綴られていく日記に目を通すのは何とも面映ゆい物があったのです。
そして、その後、日記に彼が現れることがないまま、大学卒業の年で日記は終わっていました。
『それにしても、あの顔で、ハーフだったのかよ』
黒田クンが突然日本を離れた事情は分かりません。
しかし、彼がドイツ人の父親と日本人の母親の間に生まれたハーフだったということにも、その理由があったのかもしれません。
『あの顔でハーフって。美由紀が書いたことじゃなければ、信じないよな、普通』
もっとも、急に日本を離れる前に、黒田クンと気になる約束をしています。
しかし、それを聞く前に、私の黒々と燃えさかる性欲の炎は「事実」を確かめずにはいられなかったのです。
「ね、本当のことを喋るって約束だよね? 」
「はい」
コクッと頷く顔は、いかにも生真面目にこっちを見ています。
おそらくは、過去のことを恥じらって、さらなる疑惑を生むよりも、今まで騙してきたことに許しを請うてしまおうという、妻らしく、生真面目な決意なのでしょう。
こういう表情をしているときの妻は、信用できる、そう思いたいのは山々ですが、反面、付き合いだしてかれこれ五年の年月が流れながら、今日まで、黒田クンの「身体の記憶」を見破れなかったのも、また事実なのです。
それでも、妻のことを信じたい私がいました。
「聞くよ」
念を押すように尋ねると、妻の小さな顔は蒼白のまま、コクッと動きます。
キチンと正座して、生真面目に頷く妻に「黒田クンとは何をしたのか話して」と静かに尋ねました。
「あなた、本当は、もう、おわかりになっていらっしゃいますよね? えぇ。その通りです。私、バージンだけは守らなきゃって思ってたんです」
その目には憂いが浮かぶのかと思いきや、鋭い光を湛えて、私の目を正面から見つめていました。
「だから、バージンを守る代わりだよって言われて、断れませんでした。いいえ。正直にお話しする約束でしたよね。その時の気持ちを正直に言いますね」
妻の目には、真摯な光が宿っています。
「私、彼が好きだった。だから、好きな人に喜んでもらえるのが、嬉しかったんだと思います。でも、あなたに、バージンを捧げられたことも嬉しかった、それは信じてください」
「分かった。それは信じるよ。でも、ずっと、黒田クンとはキスだけだったと言っていたよね? 」
「もし、少しでも認めてしまうと…… 結局、全部を話さなくちゃならなくなるのが怖かったのです」
妻の気持ちを忖度すれば、確かに、そんなことはあるかもしれません。
ようやく、私が初めてのエッチをしたのは婚約後です。
バージンであったことに喜んだ私に、まさか「お尻は高校時代の彼に捧げてしまいました」とは、確かに言えるはずもないのです。
「ずっと騙してたお詫びにもなりませんけど、もしあなたさえ良かったら、これから、あなたが奪ってくださってもいいんです」
「え? 」
「今、準備してきました」
「準備って? 」
「あの…… お腹のモノを綺麗にしないと、汚いモノが付いてしまうから」
「ええ? お腹を綺麗にしてきたって、いったいどうやって? 」
思わず口に出して聞きながらも、もちろん、どうするかなんてコトは決まってるよな、と頭に浮かんでいます。
「お願いだから、何をしたか、あまり聞かないでください。でも、あなたが望んでくださるなら」
そこで言葉を切った妻は、初めて目を伏せて「今度こそ、美由紀の全てを奪ってください」と言ったのです。
「それは、いったい、どういうことをするってコト? 」
あくまでも残酷に、美由紀の口から言わせようとする私。
しかし、それに答えることなく、ただ「あなた。こうなってくれたのは、許してくれるからですか? 」と言いながら、いきなり怒張に手を伸ばしてきます。
『うっ』
妻が自ら手を伸ばしてくるなんて初めてでした。
「ああぁ、これが、こうなってくれていて、嬉しいです」
そう言いながら、何の躊躇もなく、形の良い唇は、ネットリと開かれて、先走りでヌルヌルになった怒張を呑み込んでいきます。
「うっ」
口の中の空気を吸い込んで、腔内に陰圧をかけながらのフェラ。
ぺたっとへこんだ頬の内側にこすりつけるようにしながら、大きく口を開け、舌で覆い尽くすように包み込んで、根本まで往復してくる、ダイナミックなフェラです。
ジュブ、ジュブ、ジュブ
先走りと唾液が妻の腔内で絡み合い、ヌルヌルとした粘膜の圧力は絶妙に、カリを刺激してきます。
真正面から、喉の奥まで呑み込むと、妻の唇は私の身体に密着する程深く呑み込んでいました。
いくら私のサイズが人並みだとは言え、先端は確実に喉の奥に届いています。
しかし、それを避けるどころかむしろ、咽頭に亀頭を押してるようにしてくるフェラに快感、とそして猛烈な嫉妬を感じていました。
「このフェラは、黒ぴょんにしてあげたフェラ? 」
コクッと頷きながら、もう一度喉の奥に入れようとします。
その時、ふと妻の仕草に気が付きました。
『美由紀は、もっともっと深く呑み込もうとしてる! 』
それはとりもなおさず、彼のモノが、私よりも相当にビッグだったことを思い起こさせます。
「彼のも、こんなに根本まで入れてたの? 」
とっさに姑息なトリックを仕掛けます。
小さくかぶりを振る妻に、「じゃあ、どのくらいまで入れて上げてたのかな? 」
途端にストロークが浅くなり、半ばまでで折り返す妻。
『半分も入ってなかったのかよ。ってコトは単純に考えてオレの倍? 』
「ね、その時も、ちゃんと彼の先端を喉に入れて上げてたの? 」
小さくコクッと頷くと、またもや咽頭に押し当てるまで呑み込みます。
間違いありません。
妻のフェラは、私の倍サイズのチ○ポに合わせて開発されていたのです。
『そんなデカイヤツを、尻に入れてたのかよ』
「ね、美由紀」
ズブズブと呑み込む動きを繰り返しながら、上目遣いで見上げてきます。
その姿はAV女優のするフェラと同じです。
『こんなことも仕込まれてたのかよ』
初めて見る、妻の「フェラ目線」を仕込んだ黒田クンに猛烈な嫉妬をしながらも、私は、さらに「黒田クン、太かった? 痛かったでしょ? 」とさりげなく言葉にします。
ジュブッと抜き出して「慣れるまでは、ちょっと」と言うと再び私の腰を抱くようにして、喉まで呑み込みます。
「唇は、彼の太さを覚えてるだろ? その太さまで開けてみて。本当に開けられる? 」
一瞬戸惑うような表情をした後で、密着していた唇は、少しずつ接触を喪いました。
「ふぉのふらいです」
彼のサイズに唇を合わせると、余裕で、喋ることができるのです。
妻の形の良い小さな顎は、外れそうなまでに目一杯開いています。
「へぇえ、オレのより二回りくらい太いね」
その時になって初めて、慌てた表情になった妻は、慌てて唇を閉じてギュッと怒張を扱きました。
まるで「太さは変わりません」と言い訳しているかのような表情です。
「それだけデカイのを入れてたなら、オレのは簡単に入りそうだね」
その言葉に、あえて反応しないのは妻なりに、気を遣ってのこと。
薄い肩に手を当てて、腰に密着するまで呑み込む唇を引き離します。
「凄くデカかったんだ? 」
一瞬、目を迷わせた妻は、コクッと素直に頷きました。
「よし。ウソをつかなかったね。褒めて上げよう」
「あなた…… あの…… 許してくださるなら、嬉しいです」
唾液まみれの怒張をグッと握りにながら「美由紀に ……してください」と小さな声で、言ったのです。
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