その6 産婦人科医・朝桐
妻が隠していた秘密は、二人の関係を悪くするどころか、全く正反対に働きました。
新婚時代にもなかった程、熱々になった私たちです。
家にいさえすれば、毎晩。翌日が休みなら、二度、三度と挑むことも当たり前になっています。
そのくせ、フィニッシュで奥深くに放出する瞬間も、私の内面に渦巻く「よどんだ欲望」は、黒い光で痛烈なまでに「この先」を照らすのです。
この黒い光が、私に「覚悟」を生み出させていました。
いよいよ、妻の身体を淫辱にまみれさせるのです。
そして、受け入れる妻は、今まででは考えられないほどセックスに従順になっていたことが、私の覚悟を現実につなげているのです。
確かに、肛穴を開発され、飲尿の一歩手前まで調教されていたのを知られてしまった以上、妻は、もはや「潔癖」の仮面はかぶれないのだと覚悟したはずです。
いえ、それ以上に、もし、潔癖な仮面を被ろうとしたら、それは私に対する裏切りとなってしまうのだと知っていたのです。
「何でも言うことを聞くんだよ。もう、拒否権はない、いいね? 」
そんな強気なコトを言い聞かせても、妻は、黙って頷くしかありませんでした。
しかし、本格的にやるなら、避妊は不可欠です。
医師から見て「外に出す」と言うが、いかに当てにならないか、よく分かっています。
それに、清楚で、生真面目な妻のそこが、私以外の精子で汚されるからこそ、そこに黒い快楽が生まれるのです。
本格的に踏み込むなら、コンドームを付けた挿入では意味がないのです。
となればピルかIUDと呼ばれるリング挿入が不可欠でした。
医師免許さえあれば、専門が何科であっても、麻薬を除いて、自在に処方箋が書けるというのは、事実です。
それは、医師としてクスリのリスクをキチンと理解しているが故にできることなのです。逆を言えば、リスクを軽く見る医師なんていません。
ピルやらIUDに踏み込むなら「専門家」が必要でした。
『とりあえず産婦か…… うん。朝桐先輩だよなぁ、やっぱり。開業してるんだし…… 』
大学の一年先輩で、本当に可愛がってくれた人は、名古屋の産婦人科病院の跡取り息子。
去年から親の後を継いだというか、分院のカタチで東京進出を果たしたのですが、忙しさに紛れて、挨拶にも行ってないのを思いだしたのです。
いえ「忙しさに紛れて」というのは、ウソになります。
結婚以来、疎遠になってしまったのは、ちゃんと理由がありました。
『先輩、なんて言うかなあ。考えてみたら、これ以上のチャンスってないわけだし』
結婚間もない頃に、そっと打ち明けられた先輩の趣味は「スワッピング」なのです。
当時の私は、美由紀のことが気に入って、理由を付けてちょっかいを出したいのだろうとしか思えず、本気で裏切られたと思っていました。
でも、先輩の話をもっと聞いておくべきだったというのが、今の気持ちでした。
「ともかく、一度、相談してみようか。うん、診察してもらわなきゃだもんな」
くよくよ考えていたら、よけいに動けなくなるのが、私の性格です。後先を考えず、勢いだけで電話していました。
「あ、どうも。金吾です。ご無沙汰してました」
「おおっ、金ちゃん、久しぶり〜 元気だった? 」
あの砕けた口調は、健在です。
「ええ。おかげさまで。ところで先輩ちょっとお時間いいですか? 」
「ん? どうしたのよ? 今、ちょうど回診終わったところだから、ぜんぜん、イーよ。あ、とうとうウチに来る気になった? 」
「いえ、大変ありがたいお話ですけど、今のところ、東京が気に入ってますので」
「ん〜 お前が来てくれりゃ、名古屋で、整形作るって話、まだ生きてるでよ〜 ん〜 味噌煮込みうどんもうみゃぁし、マジで考えてちょ」
ご機嫌な証拠でしょう。
無沙汰にしていたのを感じさせないほど、あの時のままで、怪しげな名古屋弁でまくし立ててきます。
「本当に、ありがたいんですけど、今日はちょっと美由紀のことで」
「おう。美由紀ちゃんか? ん? どうした? 」
私の調子がいつもと違っているのを素早く察知して「本気の相談モード」に切り替えるのはさすがです。
優れた医者に共通して持っている観察力を、先輩もまた、ちゃんと持っているのです。
「端的に言います。ピルかIUDをお願いしたいんです」
「ほう。それは良いけれど、さ。一応念を押すけど、オレに頼むってコトは、それって意味は分かってるよね? 」
「はい。ちゃんと分かってるつもりです。私もようやく目覚めたみたいです」
「何い? お〜 でかした! 偉いぞ、金ちゃん、さすがオレの見こんだ男だ! 」
先輩の声が一転してほころんで、こっちまで、一瞬のうちに、リラックスさせられていました。
「よし、じゃあ、すぐにでもって言いたいところだが周期ってもんもあるからな。……って、そのくらいは分かってるってか」
声が弾んでいました。
「あの、先輩のご都合は」
「おいおい。見損なってくれね〜でちょ。可愛い後輩が頼ってくれりゃもんだ。患者の百人や二百人、ステらせても、OK、OK、オールOK! 」
ステる、というのは、医者の隠語で「患者さんが亡くなること」です。
整形も、産婦も患者さんが亡くなるのは非常に限定的なので、わりと簡単にブラックユーモアになります。
まあ、ここだけの話、外科医の場合は、手術前にも、手術中にも「ステる」って言葉を使うジョークが乱舞してますが。
ともあれ、先輩の機嫌はすこぶる上々ってコトです。
「いや、先輩、さすがにそれは。あの急で申し訳ないのですが、今週末のご予定は? 」
「ん? ああ、来週。うん、そこラッキーなことに、佳奈とテニスの約束だったからさ」
「あ、それなら来月にでも」
「おいおい。そんなことになったら佳奈はブンむくれだぜ? 佳奈は金ちゃんがお気に入りだし、美由紀ちゃんを見たときも、舌なめずりしてたからな」
「じゃあ、あの…… 」
「うん。その土曜日の昼が良いだろう。ウチの場所分かるよな? いや、自宅じゃなくてクリニックの方だけど」
「はい。以前、お手紙を頂いてそのままにしてまして、本当にすみません」
開業のお知らせを頂いていたのに、スワッピングのお誘い以来、先輩にはとんとご無沙汰でした。
「いやぁ、いいってことよ、金ちゃんがその気になってくれたなら、ウン、任せておけって。ところで、美由紀さんに、この話は? 」
「まだ話してませんけど。えぇ、でも、断れないようにしてありますので」
そこから細かい話になっていったのですが、そこは省きますね。ただし、妻に言ったのは、クリニックに行くということ。
まあ、それだけでも、妻は半ば、いえ、かなり確実に察していたのだと思います。
だから、当日は、何度もシャワーを浴びていましたし、密かにチェックしてみると、下着はラベンダーで、あちこち大胆なカットがしてある扇情的なセット。
病院に行くのだとは思えないほどキッチリとメークも決めました。
ただし、服装だけは私の意志が入ってます。
胸元に、同色のバラをあしらった白地の薄いフレアミニのワンピース。
脱ぎ着のしやすいようにと私が勧めたのですが、これは先輩の入れ知恵でした。
そして、向かう車中で告げた行き先に、黙って目を閉じて、コクリと頷いたのは「予測」が「覚悟」に変わった証拠でした。
もちろん、朝桐先輩のことはよく知っていますから「今日の意味を理解しました」と妻はその後の沈黙で答えていたのです。
クリニックには「休診日」の看板が掛かっていますが、どこかで見ていたのでしょう。私たちがドアの前に立つ前に、ガチャリと先輩がドアを開けて迎え入れてくれます。
「ようこそ。お二人さん」
「すみません、お休みなのに」
「いやいや。可愛い後輩のためだし、美由紀ちゃんのためだからね。お安いご用さ」
医局にいたときの数万倍の笑顔を振りまくのは、開業した影響なのでしょうか。それとも「この後」を想像してのことなのか。
「さ、ともかく先に診察しちゃわないとね、じゃ、こっちで準備してくださいね」
無人の待合室は、窓から柔らかな日差しが降り注いでいます。青みがかった光になっているのは紫外線カットのガラスでも使っているからでしょう。
女性の好みのを知り尽くした、雰囲気の良い待合室。
もちろん、大きな窓も、外の植栽のお陰で内側は見えにくくなっていますが、中からは、街の雰囲気を適度に見せてくれて、いかにも居心地の良さを演出しています。
ゆったりした作りの待合室をサッと通って、診察室に通されます。
傍らのカーテンの向こうにチラッと見える内診台。
妻は何も言いませんが、緊張が一気にマックスになったのが伝わってきます。
「あ、私がいたら準備しにくいですよね。あっちに行ってますから、あとはナースが付きますので」
そう言って後ろのドアを出て行くと、入れ替わりに大判のマスクで、顔の大半を覆ったナースが入ってきます。
『佳奈さんだよね? 』
予定通り、先輩の奥さんがナース役なのですが、私の知っている佳奈さんの雰囲気とは打って変わって「怖い」雰囲気を醸し出しています。
一瞬、え?っとなった私に、素早く目配せ。
『黙ってて』
妻は、佳奈さんとは結婚式で会っただけですから、いくら人の顔を覚えるのが得意でも、思い出すのは難しいはず。
まして、顔の半分を覆うマスクをかけて、キビキビした他人行儀な声で「下履きをこちらのカゴに入れてください」と命じてくるんですから、妻が気付くはずはありません。
「あら? ね、ちゃんと説明を聞いてなかったのかしら? 」
妻のワンピースの腰の辺りを、そっと掴んで、いかにも「不本意だ」という雰囲気。
「ちゃんとスカート姿にしていただきたいと説明にありませんでしたか? 」
その態度は、まさに、休日出勤を急遽命じられて、怒りの対応をしているナースそのものですから、妻は反論もできずに「すみません」と謝るしかありませんでした。
「すみません。これでいいかと思っていたのですが」
私が横から謝って見せます。
「あ〜 あのですね。こういうことは男性だとなかなかわからないのも当然ですが、乳ガンのチェックから入りますので、脱ぎ着に時間がかかって、これだと困るのです」
「あっ、そういうことだったのか。あ〜 困ったな」
ともかく、佳奈さんに合わせて、間抜けな夫を演じるしかありません。
「今日は、本来、休診日なんですよ。先生が特別だと仰るから対応しておりますのに。こんな様子では困ります」
「すみません」
迫真の「厳しいナース」の演技でした。
思わず、深々と頭を下げる私に「じゃあ、今日は、他の患者様もいらっしゃらないので、特別な対応でいいですね? 」と冷たい声。
言葉は丁寧な疑問文ですが、微塵も好意を感じさせない命令形でした。
「よろしくお願いします」
頭を下げる私に「分かりました」と答えると妻の方に向き直ります。
「じゃあ、ご主人の許可は取りましたから、奥様もそれでよろしいですね? 」
「あっ、ハイ。お願いします」
「それでは、ご主人にお手伝いいただいて、ここで、お召し物を全部、脱いで頂くのでいいかしら? 」
「え? ここでですか? 」
「そうですよ。その方がすぐ診察ができますし、第一、他の患者様もいらっしゃらないんだから。どこで脱いでも同じでしょ? ね、ご主人、こちらでよろしいですよね? 」
「ええ! もう、それで結構です。すみません、休日に、本当にお手を煩わせて。おい、美由紀、ほら、聞いてだろ? 早く脱ぐんだ」
「え? でも、あなた、あの…… 」
「ご主人は、ご納得して頂いたのですから、奥様も、早くお支度をなさってください」
ザッツ強面と名付けたいほどの勢いに、妻は、それ以上抗うことをあきらめます。
チラッとこっちを見た妻の顔には「どうしよ? 」と書いてありましたが、私はあえて無視します。
「じゃあ、背中のチャック下ろすね」
「え? あ、はい」
容赦なくチャックを下ろして、お気に入りのワンピースを脱がせる私。
困惑顔ではあっても、受け身に徹する美由紀は抵抗はしません。
ごく普通の診察室で、ラベンダーの上下だけの姿で立つ妻の姿。
細身のしなやかな身体は、場違いなセミヌードを痛々しいものに変えています。
それだけでも勃起してしまう私ですが、そこに容赦のない声。
「早くしてくださいね。全部ですから」
苛立たしげな雰囲気を、そのままぶつけて、せかされます。
ノってるなあぁと、内心苦笑しながら「急ごうか」と右手を差し出します。
「はい」
ホックを外したブラを押さえつつも、背中を丸めるようにして外してから、その手に渡してきます。
「あっ、だめっ」
クンクンと匂いを嗅ぐ私に、小さな声で制止しますが、チラッと「ナース」を見てから、あきらめたように、大胆にカットされた小さな下着をシゴキ下ろすのです。
脱いだワンピの下に小さな布地を押し込んでから、今度は妻が私に差し出す手。
もう一度だけ、妻のブラの匂いに浸ってから手渡すと、素早くそれも、押し込んでしまいます。
その動きも、しっかりと佳奈さんは見ているはずでした。
一糸まとわぬ姿になった妻は、まるで救いを求めるかのような表情でナースの方に目を向けます。
「あっ。ごめんなさ〜い」
一転して明るい、柔らかな声に「え? 」っという表情の妻。
「カンチガイしてました。先生、第二処置室の方で診るって仰ってたんです。こっちからどうぞ」
目を丸くして見つめるのは佳奈さんが開け放ったドア。
向こうには、さっき通ってきた明るい日差しの差し込む待合室が見えています。
思わず、視線が、ドアの外と私、そしてナースの顔を往復します。
「ほら、今日は、他の患者様もいらっしゃらないし。このままで良いわよね、あ、服、私がお持ちしますね」
「あ、あの…… 」
休日で患者さんは誰もいないと分かっていても、一糸まとわぬ姿で歩くというのは、ひどく勇気が必要です。
しかも、ワンピースを入れたカゴを持ってドアを開け放ったナースは、早くこっちに来いという仕草をしています。
一瞬、ためらったのですが「さあ、こちらに」と再び促されれれば、ツルツルの場所と胸を隠すようにして歩くしかありません。
奇妙な光景でした。
紫外線カットの大きな窓を通して、柔らかな午後の日差し。
チラチラと見える外の世界が、裸の妻をいっそう頼りない気持ちにさせるに違いありません。
こういう時、広々とした空間は、いっそう、残酷に羞恥心を刺激してしまいます。
つまりは、おっかなびっくり腰を引きながら、オールヌードの頼りない姿で歩くしかないのです。
そして、待合室の半ばまで来ると突然、振り返って「じゃ、ちょっとお待ちくださいね。今、先生のご都合を伺いますから」と言って、無情にもドアを閉めてしまいます。
取り残された妻は、わずかに腰を引いた格好のまま、無毛の秘部と胸を両手で覆うしかありません。
遠くで子どもたちが騒ぐ声が微かに聞こえていました。
もちろん、クリニックの中は見えないようになっているはずですが、理屈と現実は、また違うものなのです。
まるで、外で露出プレイでもさせているような、そんな時間になってしまったのは、先輩の計略なのかどうか。
私は、気付いていたのです。
『やっぱり、先輩の言った通りなのか? 』
私は、次の瞬間、妻の側にツカツカツカっと近づくと、いきなり妻を抱きしめます。
「あっ、あなた…… んっ、んぐっ、ぐっ」
ギュッと抱きしめてキスすると、最初は抵抗しましたが、すぐにすがるようにして吸い付いてきます。
そのスキを付いて、左手を秘部に差し入れたのです。
「んぐぅうう んっ、だ、だめぇ〜 」
「なんで、こんなになってるんだよ」
「いやぁ、違うの、違うのぉ」
クナクナと顔を振る妻の秘部は、びっしょりと濡れそぼっていたのです。
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