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SOS 〜喪われた教室


第1話 喪われた時間


 目が覚めてみると、真っ暗だ。
『夜なのか?今は、いてて、ここはいったい……』
 俺は教室の床に寝ていたみたいだ。机も、あちこちで倒れてるみたいだし。
 いったいどうしたんだろ。
 痛たたた… なんだか、頭が痛い。
『たしか、地震があったんだよなあ』
そう、確か、くそ面白くもない数学で、これが、キツネちゃんだったらなぁ、と思ってたところまで覚えている。あ、キツネちゃん、ていうのは、俺が密かにそう呼んでいる新任の数学の先生なんだ。もっとも、名前そのままなんだけどさ。
 橘音と書いて「きつね」って言うんだ。
 キツネだよぉ、キツネ。
 そんなヘンな名前、親はよく付けたよなあ。
 まあ、確かにキツネに見えなくもない。なんといっても、目もとが、切れ長で、もともとは美人だけど、少々きつい顔立ち。
 だけど、それも、これも、ダサいメガネで台無し。
 おまけに、顔立ち以上に、性格の方はすこぶる付きのタカビー女で、毒舌。敵なし。
 てなわけで、男子の間では、キツネちゃん好きってのは、物好きの部類にはいるわけ。
 けど、あの、ダサい眼鏡の奥はけっこう美人なんだけどね。
 それに、密かに見たところ、けっこう巨乳ちゃんなんだ。
 いっつも、ダサい服着てるんで、あんまり、騒がれてないけどさ。
 ま、授業そっちのけで、そんなのばっか見てるから、成績もぱっとしないのかもだけど。
 わざわざ、国立対策の補習を受けてるのも、橘音ちゃんの授業だと思ってたからなんだけどなあ。始まってみたら、もごもご喋るおっさんの授業だったなんて詐欺もいいとこだ。
 おっと、こうしちゃいられない。
 まずは眼鏡っと。 
 眼鏡がないと日常生活もできない。おれは強度の近視なんだ。
「鹿取家の跡取りなのに」
 オヤジもじーちゃんも、嘆いてばかりだ。やっぱ、あれだよなぁ、中学時代にネトゲにはまり込んだのがいけないんだよなあ。
 教室の中は真っ暗だし。いくら夜目が利くとはいえ、眼鏡なしではどうにもならないよ。
 手探りでまわりを探すしかない。
 グニュ。
 え、な、なんだ?なんだ?
 すっごく柔らかいこの手触りは…
 顔を近づけるまでもなく、誰かが、俺のすぐ前に倒れていた。しかも、この手触りは…
『おっぱい』
 男の悲しさってやつかね、全てを忘れて、そっと触ってみたんだ。ぷにぷに。
 ああ、女の子のおっぱいって、こんなに柔らかいんだ!
ぷにぷに。けっこう大きいぞ。うちの学校の制服みたいだ。この手触りは、ブレザー、だな。
 このエンブレムの下に手を伸ばせば、ブラウスごしに、もっとよくわかる……よ、……な。
 そのまま、一気に匍匐前進しましたね。俺は。
 で、右手をそっと伸ばしてブレザーの合わせから手を入れてみたんだ。
『ああ、柔らかいよ〜。生きててよかった〜』
 どうやら仰向けに倒れているらしいけど、ここからでは、どキンの俺には、相手の顔が見えない。
 で、そ〜っと顔の方に移動したわけだ。
 ぐっと顔の側まで近づいてみる。繰り返して言うが、俺はど近なんだ。文庫本だって眼鏡無しでは10センチの距離じゃないと読めない。
 不便だぜ、何かと、近眼は。おまけに、暗けりゃなおさら見えないもんなんだ。
 だから、顔全体を一度に見るなんてまねはしない。まずは、目の方から順繰りにパーツを見て行くんだ。
 でも、本当は、最初からわかってたのかもしれない。
 だって、クラスで、こんなに長い、サラサラの黒髪で、しかも、化粧ッ気もないのに、こんないい匂いの女の子はひとりしかいない。
 有能なクラス委員長にして、真面目派代表。スポーツはからっきしみたいだけど、人望抜群、スタイル良し(「当社比」だけどさ、しかも、制服の上から見たことしかないのが情けないけど)、顔良し、頭良し、性格良し。
 なんで、他の奴らが騒がないのかって言えば、唯一、男嫌いって噂のせいかな。
 コクって、撃沈!
 なんてヤツがごろごろいるらしいがな。ま、本人がそういう話をしたこと無いってことだから、ホントかどうだか分からないがね。
 ついでに、噂では東京の某国立大をうけるらしい。合格確実って話だ。
 だから、あの、その、あの、まあ、ああ、自分でも無理なのはわかってるよ。でも、それが俺のあこがれの君なわけだ。
 ただ、彼女はそれを知らないだろけどなあ。はあ。
 だいたいさ、ホントは、俺、去年、とっくに卒業して、今頃、大学かなんかで遊んでたハズなんだ。オヤジの跡を継がされるまでの、つかの間のバカンスのハズだったんだぜ。
 そこを、親父が、ムリヤリ「修行だっ!」って。
 名古屋からローカルバスを乗り継いで、あげくに、半日、山を歩いて越えなきゃイケナイじーちゃん家。ネットどころか、携帯もつながらないひどさだぜ。
 その山ん中の家に半年放り込まれている間に、気づいてみれば留年してたわけ。
 いや、ひどかったぁ、ホント。
 屋根付きの場所で寝られたのも何日あったことやら。その上、修行中は、浮世離れしたことばかりやらされたから、下山したら、見事に、おちこぼれ君になってたよ(泣)
 じいちゃんに言わせりゃ、鹿取家に伝わる予言に備えるんだって。今にきっと必要な時が来るっていうんだがね。
 何で、今時、予言って。口答えはできなかったけどさ、ひどいと思ったねえ。
 なんで、今時、山ん中で、修行なんだよ。それなら、ちょっとだけ待って、卒業してからでも良いじゃん。
 俺の、せめて、高校を卒業してから、という願いはあっさり無視された。
 どうやら、数えで十八になる年には、修行を終えていなければならないらしい。そして、それが去年だったんだ。
 そりゃさ、アニメの主人公は良いよ。学校行ってないしさ。ゲームなら、魔物を倒せば、あっという間にレベルアップだ。
 でも、現実の俺は受験生なんだぜ。
 気のため方を覚えた代わりに、単語と公式を800くらいは、どぶに捨てたと思うんだけどな。
 あ〜あ、卒業ぎりぎりの成績の留年生(つまり、本来、俺は彼女の一コ上なのさ)なんて、彼女から見ればゴミみたいなものだろうしなあ。
 でも、優しい彼女は、時々話しかけてくれたりするんだよ。こないだも、そっと話しかけてくれたもの。
 思い出すなあ。あの時の可愛い声。
 帰ろうと廊下に出た俺の前に、すっくと立って、あの真面目な目が、ちょっとウルウルしながら、きっと、緊張したんだろうね。声まで、可愛く震えちゃって。
 アニメの主人公に恋しながら、結局、結ばれない、なんて役どころの副主人公にピッタシって、感じの可愛い声だったんだよ。その声で言ったね。俺に向かってさ。
「あの、掃除は、さぼらない方がいいと思います」
 ……ふん。
 いいんだよ。どうせその程度なんだから。
 だがね、みんな怖がって話しかけたりしてくれないのに、彼女だけはちゃんと正面を見てしゃべってくれるんだから。うれしかったよ。
 ま、俺も、それ以来、さぼれなくなっちまったけどさ。
で、だ。目の前のオッパ… いや、委員長のこと。
 まあ、顔を見るのは、確認のようなモンだね。
 やっぱり、委員長だよ。
 そう、留年してたって聞いてがっくりしたけど、彼女と同じクラスになれたのだけは天に感謝したね(親父には絶対(ぜって)ぇ、感謝しないぜ)。
 この娘と同じクラスになれたんだもの。
 美人は、気を失っていても美人だよなあ、な〜んてのんきに見ている間も、手はしっかり、胸をなで回していたんだけどさ。
 だって、柔らかいんだよ、これが。
 おまけに、けっこう、大きいし。
 勉強できる子は、胸が小さいなんて、嘘だよなあ。
『ああ、俺は今、学年一の秀才であるところの、あの委員長の胸を触りまくってるんだ』
な〜んて、関係代名詞直訳風に、猛烈に叫びたい気分だったね。
 でも、唇に見とれていたら、その唇が、ヒクッと、動いたんだ。
 俺は、硬直したね。
 とっさに、そのまま手で揺らして声をかけたんだ。
「委員長、委員長、大丈夫?大丈夫?」
 ま、起こしているフリなわけだ。我ながら名案。名案。
「ふぅ〜」
 ビックリした。小さな声だけど、確かにため息みたいな声がした。
 これって、ビデオで聞いた「あの声」そっくりだよ。
 委員長、もしかして、あの、もしかして、まさか、感じてるのか?
 気が付くと、手のひらの下、ちょうど一番高い位置。なんだかコリコリするものがあたるような…
 これって、やっぱ、あれだよなあ。…乳首。
 何度も確かめてみる。ますます、こりこりしてくるような気がするんだけど、やっぱりそうだよなあ。
 その度に、ほんのちょっとだけど、ヒクってする感じがあるんだ。
 女の子っていうのは、気を失っていても感じたりするのかなあ。
「いいんちょう、だいじょうぶ?」
 現金なもので、俺は声をミニマムにしたね。最小限の起こし方で、最大限の時間触ってしまおうという、欲望丸出し状態なわけだけど。
 委員長は目を覚まさない。
 で、調子に乗って、そのコリコリしてきたものを手のひらで転がすようにしてみると、ますます、ヒクッとなって、委員長の悩ましい声が出てきちゃうんだよなぁ。
「あふ、あう、うっく、あふ、ふぅ〜」
 声がさ、女の子のこんな声って、とっても、うれしいもんなんだよねぇ。でも、委員長「感度」がいいよな。気を失ってて、こんなに声が出るんだもんなあ。
 女の子ってのは胸がそんなに気持ちのいいものかねえ。
 で、さ、思いついちゃったんだ。このコリコリしたものに直接触りたいって。
 もう、そう思いついたとたん、頭の中が暴走しちゃって、起きたらどうしようなんて考えられなくなっちまった。
 指、ちゃんと動け!
 なんだか、緊張しちゃってさ、俺としたことがうまく動かないんだ。第一、他人のボタンを外すなんてこと、普通、やったことあっか?
 でも、なんとか、ブラウスの胸のところのボタンが、一つ、二つと外れてくれた。
 なんだか、温かい。柔らかい生地の下に手を入れてみたんだ。
『ブ、ブラジャーだあ〜』
 さわさわと柔らかい手触りは、きっとフリルとか言うものだろうな。
 委員長らしい、オッパイ全体を包み込む形のブラジャーだった。けっこう、でかいぞ。
 で、俺はすそ野の方からゆっくりと指を入れてみる。
 意外にヒンヤリしてるんだな、オッパイって。そのくせ、ブラジャーの中は暖かくって。
そうなんだよ。どうせ初めてだよ。女の子に触れるなんてさ。
 ああ、生きてて良かったあ。
 女の子のおっぱいって、なんて表現したらいいんだろ。頼りないくらい柔らかくって、そのくせ弾力性があって。
 で、そのつきたての餅みたいな肌をたどっていくと、あった。
「あんん、あん、あん、ああ〜」
 ビックリ。
 おっぱいに直接触れたときから、なんだか声が大きくなった気がしたけど、乳首にたどり着いた瞬間の、せっぱ詰まったような声。あぁ、たまらないよぉ。
 俺は、そのまま手が凍っちゃって。恐る恐る、委員長の耳に顔を近づけたんだ。
「委員長、いいんちょう?』
 俺は、そっ〜と、委員長を呼んだ。もちろん、手を離すことなんてこれぽっちも思いつかなかったけど。
「いいんちょう、起きてるの?」
 その瞬間、出ていた声が一瞬弱まった気がした。 
『やばい、起きてるよ。ああ、とんでもない男だと思われちゃうよなあ、きっと二度と口利いてくんないだろうなあ。悪くするとヘンタイ扱いかなあ』
いや、気絶しているところを触りまくったんだから、悪くしなくてもヘンタイか。しょぼん。
 だけど、こんなに気持ちいいのに、手を離すなんてできないよなあ。
 そう思って、次の瞬間に上がるであろう悲鳴を覚悟していたら、何も起きなかった。委員長は、悲鳴どころか、はあはあ喘ぐばかりだったんだ。
 そこで、試しに、乳首を二本の指の間で軽くはさんでみる。コリコリって感じでね。
「あ、ああん、あん、あ〜」
 激しい反応。
 こ、これは絶対、起きてるよなあ。でも、一度触っちゃうと、自分では止まらないんだ。童貞の悲しさってやつかね。
 委員長の声が、止まらなくなるのと同じように、オレの暴走は止まらなくなっていた。
 

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