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| SOS 〜喪われた教室〜 |
試してみると携帯がつながらなかった。正確に言えば、2人とも電源すら入らなかったんだ。確か、朝チャージしたばかりだったのに。
委員長のまでつかないんだから、ただの電池切れとも思えない。
もう一つ、不思議なことがあった。
そもそも部屋の電気がつかないのだ。外の細い月明かりだけが頼りだ。
夜の雰囲気は、本当にここが俺たちの学校なのかすら怪しい感じをさせる。
教室は同じだ。
机の中にも、見慣れた教科書がつっこんである。
机の落書きも確かに俺が描いたヤツだ。
確かに、いつもの教室のはずだ。
しかし、何かが違う気がする。
オレは、窓を見た。
町のド真ん中の学校なのに、くらい外には人家の明かりが見えない。車の音もしない。
影のような暗い何かに囲まれているだけだ。
どこか違うんだ。それは理屈を越えた、俺のカンだ。
なによりも、背中がチリチリする。
この場所は何かがヤバイ。
さっきまで、委員長の魅力に夢中になってたからわからなかったけどさ。
ともかくも、人生初のフェラ体験。おまけに、委員長は、オレのを飲んでくれたんだ。考えてみると、すごい体験だよな。
おかげで、すっごく落ち着けたみたいだ。
しかし、時間が経てば経つほどピリピリとするような危険な予感が迫ってくる。
ダテに三歳から剣を握っていないんだよ。それに、あの、じーちゃんの山で、たっぷりと修行させられた俺のカンは、絶対外れないはずだ。
ま、剣士としての(な〜んていうと格好いいけど、よーするに貧乏道場の跡継ぎね)勘というヤツだな。
だから、相変わらず月明かりしかない教室から出るときも、武器を探したんだ。
まず、サッカー部に入ってるヤツの鞄からストッキングを拝借。よしよし。汚い靴下だけど、ちゃんと洗ってあるぞ。持っただけでぷーんと臭うのはまっぴらだからなあ。
で、そこに、教室に置いてあった、文化祭で使った残りの釘を一握り詰め込んで、は〜い、インスタント・ブラック・ジャックの出来上がりぃ〜。
女の子でも、振り回して頭に当てれば、大のオトコが気絶すること請け合いだ。ただ、釘が突き刺さるだろうから『気絶』じゃすまないってのが欠点か。
あ、こんな豆知識も、ネットのサバゲー仲間が教えてくれたこと。持つべきものは、オトモダチだねえ、まったく。
「委員長は、これを持っていて。でも、使うのは逃げられないときだけ。後は俺の後ろにいること。いいね」
洗ってあるとは言え、委員長に汚い靴下を持たせるのはちょっぴり気が引けたけど、しかたない。
「逃げるって、何かいるんですか?」
「良くわからないんだ。でも、万一ってこともあるから。いい?逃げるのが先だよ。委員長、いいね。」
俺の勘は万に、どころか、千に一つも外れなく、何かがあると告げていた。そして、不幸なことに俺の勘は悪い方には良くあたるのだ。
ああ、この調子で女の子の気持ちも分かればなあ…
「はい、鹿取さん、逃げることを考えるわ。でも、あの〜」
委員長が言いにくそうにする。やっぱり、俺のこと信用できないんだろうなあ。
でも、委員長が言いたいことは、思っていたのと全然違ってた。
「あの、できれば、委員長っていうのやめてくれませんか、あの、ほら、せっかくこうなったんだし」
ようやく口を開いて行ったのが、このセリフ。
(多分)赤い顔をしてうつむきながらね。
『ああ、これ、フラグが3ヶ所もたったありじゃん』
あまりに、嬉しすぎると、なかなか理解できないモノらしい。ゲームに置き換えないと、オレは現実として認識できなかったんだ。
ああ、ホントこういうところが我ながら鈍いよなぁ。
「でも、なんて呼べばいいの、横山さん、じゃおかしいし」
「美久って呼んでください。」
即座に、委員長が答える。ううぅ、おお、いきなり、名前呼びかよ。
なんだかうれしそうだ。
「じゃ、いいん、じゃなかった、美久、さん。俺の後ろにぴったりと付いて来るんだよ」
「さんは、いりません」
「わかった。じゃ、美久」
「はい、鹿取さん」
「う、あの、えっと、でも、さ、あの〜さ、俺が美久っていうなら、美久も」
一瞬、迷ったけど、いいや、言っちまえ。
「美久も、祐太って呼んでくんなきゃ」
「ええ!でもぉ、あの、その〜」
俺が年上なのにって言うのと、それを言うと留年してるってことを気にすると思って、気を使ってくれたわけだ。
一瞬、戸惑ってから、顔を上げた美久はクリンとした瞳で俺を見上げたんだ。
「えっと、はい、ゆうた、さん」
鵜うぅ、オレ、もう、これで死んでも良い。
この声を録音しておきたいところだけど、そんなことも言ってられない。委員長も、いや、美久も、まだ、少々こだわりがありそうだったけど、このあたりが妥協点かも知れないと思ったんだろう。
第一、呼び方でいちゃついてる場合じゃなかったんだ。
あの山での修行のとき並に、いや、それ以上の「戦闘モード」に頭を切り換えたんだ。
手には、先端部分を外したモップの柄。本当は木刀くらい欲しいところだけど、贅沢は言ってられない。
『美久を守るんだ』
この闇の先にいる何かから。
悔しいけれど、小さいときから道場の跡継ぎとして鍛えられてきた戦闘勘が、何か、まがまがしいものの存在を告げていたんだ。
俺たちが最初に向かったのは、職員室だった。途中、いいんちょ、じゃなかった美久が「あっ」と言う顔をしたんだ。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないんです」
恥ずかしそうにしたんだ。で、良く聞いてみたら、
「ジャージ履いてくれば良かった」って、
おお!ノーパン!そうだっけ。
なんだか、うれしくなって、つい美久のスカートを見つめちゃうんだよ。ああ、このスカート、めくったら委員長、怒るだろうしなあ。風が吹くことを心から期待したね。
で、まあ、神風も吹くことなく、無事到着。
早々に、まず、明かりのスイッチを入れたが、ここもやっぱり付かない。で、懐中電灯を探したんだが、3本見つけて全部ダメ。
明かりのない中で、音を立てずに動くのは大変だった。
「美久、なんか、おかしいよ。ここ。電気製品が全部ダメんなってないか」
「そうですね、テレビは電気が来てないからっておもったけど、ほら」
美久が見つけたのは、英語の教師が持ち歩くラジカセだった。今日、授業で使っていたから、電池はあるはずなのに。やっぱり、スイッチは入らなかった。
その時、かすかに悲鳴のような声が聞こえた。女の人の声だ。
「美久、今、聞こえたよね」
美久が黙って肯いた後で、向こうをむいた。
「多分、隣…」
こわごわと顔を向けた美久の視線の先。そっちには保健室があった。
保健室は、廊下からの入り口と、職員室からの入り口がある。普段は、廊下側の入り口から入るしかない。
で、中にいる人間の意表を突くために、職員室からの入り口から様子を見ようとしたんだ。
扉に近寄る前に、家庭科の教師の机から、台所用の洗剤をひょいっと失敬しておくのも忘れない。それを見て美久が首を傾げる。
「ヒンジに垂らしてやると、扉を開ける音がしないんだ」
「へえ〜、すっごーい。何でも知ってるんですね」
こんなことで、尊敬されてもなあ。そう、古武術には、泥棒まがいの「ワザ」(まがい、じゃなくて、泥棒ワザそのものなんだけどさ)も多いんだ。で、これはその応用ってわけ。
ひそひそ声すらもやめて、そっとノブに力を込める。すううっと扉が開く。
開き始めた扉から聞こえた声に、一瞬、モップを持つ手に力が入って、次の瞬間、脱力した。
開き掛けた扉からから聞こえてきたのは、どう考えも、アノ声だったんだ。
「ハア、ハア、おねがい、やめて、アン、もう、あああん、おねがい、あん」
「まだよ、もっと、楽しんで、ふふふ」
ドアの奥はカーテンが引かれいて直接見ることができない。そりゃそうだ。身体検査の時は女子が、ここで脱いだりするんだから。
美久の下着姿を教師なんかに、簡単に見られてたまるか。
おれは、春の身体検査で、美久が裸でいるところに男の教師どもが偶然を装って見に来るところを想像してしまった。
だが、現実にはカーテンが仕切りになっていて、直接保健室の中を見ることはできない。しかし、それは、こちらも見られないってことで好都合だった。
どのみち真っ暗だったので、少しくらいカーテンを開けても気づかれないだろう。俺は美久を胸の中に抱え込むようにして、二人でカーテンをのぞいてみた。
「あん、だめぇ、また、またよ、また来る、あん、おかしくなっちゃうう、あっんん!」
「ふふふ、可愛いわ、橘音、今度は二人で…」
「むぐうう、ぐう、、はぐう」
思わず美久と顔を合わせてしまった。どうやら、片方は橘音ちゃん。そう数学の橘音ちゃん、いや、橘音先生らしい。
しかも、どうやら「責められ」ている様子。
『レ、レズ…、キツネちゃん、そんな趣味があったんだ』
でも、橘音ちゃんはベッドの上で、両手と両足が思いっきり広がっている。白い身体が大の字に見えている以上、裸にされている(橘音ちゃんが裸になりたがるなんて想像できないもんな)のは、いくら暗くても、よくわかった。
もがいているところを見ると、縛られでもしているのかもしれない。
なんだか、ちょっとホッとしたような、うらやましいような…
そして、キツネちゃんを縛り付けた犯人。こんなうれしそうな、もとい、かわいそうな声を出させた犯人は、キツネちゃんの上にゆっくりと乗るところだった。
あれ、何か形がおかしい。
期待していた形と見えている形に違和感があった。
それは、キツネちゃんの足の間に黒い固まりが見えてようやく納得できた。
どうやら逆さまに乗っているんだ。
『うわ〜、シックスナインかよ。俺もやってみて〜、いや、委員長ともしてみたいけど、キツネちゃんの上にのったらどんな感じなんだろう』
そんな邪なたくらみを知ってか知らずか、俺の腕の中で、目を反らすこともできずに見つめている委員長。うわ〜委員長、シャンプーの匂いが、うわっ、たまんね〜よ。
思わず、抱きしめた手に力がこもったね。
「さあ、あなたも舐めるのよ」
「あん、あん、あうう、や、やめて…、こんな、ひど、あうう、やめ…」
「ホラ、早く舐めないと、このままあなたの処女を指で破っちゃうわよ。ふふふ、男を知らないままロストバージンしたいの?」
「やめて、ひどい。なんでこんなことするんですか」
「あら、ひどいことなんてしてないでしょ、男も知らずに二十二歳まで生きて、どうせ、毎日オナニー浸りなんでしょ」
「そんな、毎日、なんて、してない」
「あら、時々ならしているってことなの、ほほほ」
勝ち誇りながら、一度頭を上げた上に乗った人物。
保健室の主、マッド!こと貴田先生だった。
今年から、うちの学校に来た先生。
最初は、俺たちも喜んだよ。
俺も、保健室に若い先生が来たってんで、留年早々、遊びに行ったら、瞬殺だった。
話もできずに、あっという間にたたき出されて「二度と来るな」だと。
センセ、それはないんじゃないのって、思っちまったものなあ。
いつも、保健室の中にマッド・サイエンティストのようにこもって、なにやらやっていて、本当に具合が悪くなってる生徒でも追い返すって評判で、あげくについたあだ名が「マッド」
おいおい、いくら何でも、そのものズバリは、まずいだろうって、俺もずいぶん驚いたっけ。
おっと、なんで今まで気づかなかったのか、わかった。トレードマークの黒縁眼鏡をかけていなかったんだよ。しかも、普段は髪をまとめてるのに、肩まで垂らした黒髪が、すっごいボリューム。ここから見ても白い身体に見事なコントラストだよ。
黒髪は、さすがにちょっと年のせいか、ちょっと、それも、ほんのちょっとだけど垂れたオッパイのすぐ上まで伸びていた。
どうやら、身体を起こして、自分のオ○○コを橘音ちゃんの顔の前に持っていこうとしているらしい。胸がプルンプルンと揺れている。
「さあ、どうしたの、それとも破かれたい?」
右手が橘音ちゃんの足の間に伸びた。
「あううん、はぐ、やめ、あぐ」
急に貴田先生が身体をピンとさせたんだ。
「あう、そうよ、その調子、いいわ、そう、あなたが気持ちよかったところを、ちゃんと、そう、いっぱい舐めてちょうだい、あん」
ぴちゃ、ぴちゃという、何かを舐めるような、湿った音だけが、しばらく響いたんだ。
気が付くと、俺の腕の中で、いいんちょ、あ、いや、美久が(まだ慣れないんだよ、しかたないだろ、ついさっきまでは高嶺の花だったんだからさ)震えていた。
俺がそっと震える頬を右手で撫でてやると、その手に顔を押しつけるようにするんだ。そして、そっと、本当にそっとだけど、ため息をついたんだ。
俺がどうしたのと言うつもりで、顔をのぞき込むと、目があったんだ。
そして、そっと目を閉じるとそっと顎をあげてくる。これで、何をしなくちゃいけないのかわからないほど、俺だって鈍くないモンね。
そっと唇を重ねると、さっきの甘い、美久の匂いがこれ以上ないくらい間近にんっちゃってさ、思わず唇にも力が入っちゃうってもんだろ。
で、驚いたことに美久は、見上げる形のまま、舌を入れてきたんだ。恥ずかしそうにそっとだけど。
俺は、口の中に入ってきた美久の舌をグチュグチュと舐回したね。もちろん、音がしないように気をつけてね。
十分、美久の甘い舌を味わったけど、俺の口の中に、また唾が溜まってきたから、一度、離れて飲み込もうとしたんだ。
でも、美久は許さなかった。
俺の頭の後ろにしがみつくようにして、離させないんだ。それどころか、俺の舌を自分の口の中に導くように自分の中に誘ってきた。
もちろん、美久の口の中を味わったけど、俺の唾は大量に美久が飲み込むことになった。薄目を開けて美久を見ると、うっとりした顔をしている。ああ、かわいいよ〜。
で、今度は俺の番ってわけ。しばらく美久の口の中を、きれいな歯並び一本ずつ舐め回すようにしてから、しゃがむようにして、美久を見上げる姿勢に(けっこうきついんだけど)なって、美久に、舌を入れてもらうように促す。
口を付けたまま、目を見開いて、とんでもない、というようにかぶりを振る美久に、むりやり舌を入れさせて。
『あ、あまい!ああ、女の子のものって何でこんなに甘いんだ』
俺は目一杯幸せな気持ちになってさ、ふと、ギュウって抱きしめたんだ。
「そろそろ、いいわね、みてらっしゃい」
おれは、ドキッとした。見つかったか?いや、それにしては変だ。
そっと、また、カーテンの間から覗くと、貴田先生が橘音ちゃんから降りたところだった。
「ふ、なんだかんだ、言ってても、また、イっちゃったじゃない。さ、そろそろ本番よ」
そう言いながら、ベルトのようなものを手に持ったんだ。なんだか出っ張りが付いているベルト。
何だ?あれ?
「どう、これ?内側を私に、うっ、あん、さすがに効くわぁ、30センチですもの。大丈夫、こっちは処女用のにしてあるから。といっても、男性の平均サイズだけど」
『あ、あれは、双頭ディルド・ベルト!」
まさか、あんなのが本当にあるとは思わなかった。ベルトの内側には、自分用のディルドが、そして、ベルトをそのまま締めると、外側には「ペニス」がついている。レズ女性が、女性を犯すために使う物だろ?
え、童貞の俺が、何でそんなの知っているのかって?そりゃ、最近はネットってぇ便利なもんがあるからね、毎日H小説ざんまいしてりゃあ…… あ、いや、ものしりの友だちからちょっと聞いただけだ。ほんとだよ。
で、とにかく、そのベルトをつけると、貴田先生の股間からにょっきりと黒い角が生えたように見えた。
『おいおい、あれが平均、かよ。俺なんてくらべものになんないじゃん』
デカかった。長さが20センチ、太さは俺でも握りきれないくらいだ。えぇ〜自信なくすなあ、美久はどう思ってみてるんだろ。
チラリと美久を見ると、唖然としてる。
あの…… 美久、後で俺のと比べないでくれよ。
「意外に小さかったんですね」なんて、優しく言われたら、俺は二度と立ち上がれないと思うぞ。
ああ、でも、目が離せなかった。
キツネちゃんが、そんなものを知っていたかどうか知らないけど(多分知っているとは思うよ、だって、確か、キツネちゃんは中高一貫の女子校出身だっていってたもん。女子校はレズの巣窟、なんだろ。ま、女子校への偏見かなあ)その巨大なものを見て、急に、身体が硬直したみたいだった。
「やめてえ、それだけは、お願い、やめて、素直にしてればそれだけはしないって」
「あ〜ら、あれだけ楽しんでおいて。ほほほ、何回気をやったのかしら、こんな所を生徒に見せてやりたいわ」
ハイ、ちゃんと見させていただいておりますです。
俺が心中で返事をしている間にも、貴田先生は、腰に付けたのをキツネちゃんに近づけていく。
ほほほ、と怪鳥のような笑い声を上げて、思った通りの巨乳をギュっとつかんだのが見える。
きっと、いよいよなんだろう。
「はぐうっ〜、やめて、お願い」
「ふふ、ここはビショビショよ。こっちは欲しいって言ってるみたいね」
「そんな、あふう、こと、ありませ、ん」
ゆっくりと貴田先生はキツネちゃんの足の間に身体を進めた。
「そうね、教えておいてあげる、あのね、ここは私の空間なの。あなた達が忘れてしまった『黒の力』を使った場所。知ってるかしら?だから、あなたは私の思うままなのよ。誰も助けにはこないの。ふふ、恨むなら、あなたの身体に流れてる血を恨むのね」
「な、なんのことですか、私は恨まれるような、そんな、知りません、何にも知らないの」
「あ〜ら、あなたが知る必要はないの。永遠にね。ここで力を奪ってしまえば、2度と力は発揮できないんですもの、不便なものね、女神の血筋も。処女で目覚めなければ2度と目覚めない、なんて」
「そんな、あん、やめ、めがみ、あんん、なんて、し、しら、あんん」
「ふふ、いやがってる割には、これで撫でてあげただけで可愛い反応じゃないの。もう、びしょびしょよ」
そう言いながら、キツネちゃんの両方のおっぱいをぎゅうっと握りしめたんだ。 そこまで見て、俺はとうとう心を決めたんだ。なんだか、今、俺達の状況は、マッド(やっぱりこっちの方がふさわしいと思ったんだ)のせいらしい。
それに、いやがっていることを無理矢理っていうのは良くない(もちろん、うらやましいってのもちょっぴりあるんだけどさ)
よくわからないながらも、美久を後ろに押しやって、カーテンを開けようとしたその時だった。
ガシャーン!
突然、窓から何かが投げ込まれたんだ。あ、いや、なんだかわからないけど、2階の窓から、ガラスを割って入ってくるなら「投げ込まれた」って考えるのが普通だろ。
しかし、それは普通じゃなかったんだ。
犬だった。
いや、正確に言えば「犬のようなもの」というべきか。ゴールデン・レトリーバーほどの大きさの犬。暗すぎて色もわからない。毛皮の絵卯からでもわかる「筋肉質」の体。
ただし、頭が「2つ付き」だ。
飛び込んできた犬は着地した体勢から、そのまま、マッドに飛びかかっていった。
しかし、今日は本当のよく驚く日だ。さっきまで、たんなる保健室の先生、それも、とってもスケベなレズ趣味のおばさん(確か30になってないはずだけどさ、ま、単なる表現だ、気にするなよ)だったはずの人が、その瞬間、ぽーんと飛び退いたんだ。飛び退いただけじゃあない。ハッっという裂帛の気合いをこめて気を投げつけたんだ。
常人には、単に声を出しただけに見えるだろうけど、古武術の流れを汲む遷座流(せんざりゅうと読むんだよ)の不肖の跡取りとしては、ハッキリ「見えた」んだ。
こんなすごい気は見たことがなかった。テレビに出てくる見せかけの何かじゃない。
こんなのを喰らったら、おれだって気絶するか、というレベルだ。わお、先に見てて良かった〜、なんて、おれの思惑と関係なく対決は続いた。
かわいそうなのは、キツネちゃんだった。訳も分からず、犬(ってことにしておく)に踏みつけられ、自分のベッドのまわりで、犬と人間が飛び回って戦っているを、縛り付けられたまま、首を動かしてきょろきょろするしかできないんだから。
おれは、固まっちゃった美久をそ〜っと背中で職員室へのドアから出した。何か言いたそうに肩を掴んできたんだけど、目を離せない。
その手をそっと握ったんだ。
柔らかかったなあ。
『待ってて』
グッと握ったら、俺の言いたいことを分かってくれたみたいだ。
コクって頷いてくれたのが背中越しに分かったんだ。
よし、とにかく、どんな酷いやつでも、人間と獣が争ってるなら、どっちに味方するかは決まってる。
で、おれは、モップをスッと上段に構えて臍下丹田に力を込めたんだ。
次の瞬間、カーテンのすぐそこに降り立った犬に向けて、必殺の剣(モップだけど)を放ったんだ。
そう、戦国期には兜の上から斬りつけて、兜をそのままに、その下の『頭』だけを叩き割るという落岩斬という技があった。もちろん、それは剣を通じて自分の気を集中してぶつけるからできる技なんだけどさ。俺がこのとき使ったのもそれってわけ。
だって、普通のモップでぶん殴れば、柄が折れるだけだからね。
しかし、闇とカーテン、そして相手が人間サイズじゃないと言うことで何かがズレてしまったようだ。
「きゃいん!」
意外に可愛い悲鳴を上げて、飛び退く犬。手応えはあったが、致命傷じゃないはずだ。でも、これで逃げてくれればそれでも良かった。
しかし、俺の登場に犬以上に驚いたのは、マッドだった。
「お、おまえは何者だ、なぜ、いる」
なぜいるって言われてもなぁ。何者って、3年2組41番鹿取祐太だ!っていっても納得しないだろうしなあ。(あ、留年生は、出席番号が最後になるんだ。ほんとイヤミな学校だよ「かとり」で41番じゃ、留年、もろバレじゃん)
ベッドの向こう側から、マッドは呆然とした様子で、こっちを見て、悲鳴のような声で叫んだんだ。
「そうか、おまえ達、そうか、だからか…」
あれ?なんだか妙に悲痛な、絶望的な感じがしたような気もしたんだけど。
いや、でも、勝手に納得しないでくれるかなあ。
俺が何を言ったものかと、そして、キツネちゃんのことを思いだしてちらっと見た瞬間だった。
「ガフゥ」
低いうなり声を聞いた瞬間だった。
「ぐけぇ」
なんだか、聞きようによっては、酷く間抜けな、それでいて、恐怖を感じさせる悲鳴が。
マッドの呆然とした瞬間をついた攻撃だった。とっさに組み付いてきた片方の首に気を当てるのが精一杯だったようだ。
「ぎゃん!」
気を当てられた首は、文字通り吹き飛んだ。しかし、マッドは、そのまま、犬にのしかかられるように崩れ落ちていた。
俺はベッドを回り込んで、マッドの側に飛んでいった。首にかじりついている犬はまだ、動きを止めなかった。間髪を入れず、そのまま地擦り正眼からの振り落としの一閃を入れる。
「でぇい!」
もちろん、単なるモップの打撃というよりも、気をたたきつけているわけだ。
「ぎゃんっ」
小さな悲鳴を上げて、そのまま崩れるように犬から力が抜ける。今度の手応えなら大丈夫。少なくとも普通の生き物なら、頭がくだけているはずだ。
しかし。マッドが。
一目で、ダメだとわかった。虚空を睨むように上を向いた虚ろな目が、全てを語っていた。あまりにも異常な出来事の連続で俺の感覚も麻痺していたのかもしれない。目の前の死者を見ても、なんとなく納得してしまったんだ。
そうだ、キツネちゃん。
俺は振り返った。
「だめ!見ないで!」
「すみません」
おれは、再び振り返った。しかし、それではキツネちゃんを助けられない。
「あのう、このままじゃ、まずいと思うんですけど」
「あ、そ、そうね、あの、で、でも、お願い、見ないでね」
「なるべく努力します。そっち、向きますよ」
返事がなかった。俺は勝手に、了解を得たことにして、ゆっくりと振り向いた。
今度は何も言われなかった。
目の前に横たわる、大人のハダカに、ドキッとした。
先生は、恥ずかしいのか、首を向こうに向けている。だから、遠慮なく、かねがね見たいと思っていた、巨乳を遠慮なく見ることができたんだ。
初めてみる、本物のハダカは、迫力がある。さっきの闘いで一度小さくなっていた俺のモノが大きくなるのに十分だった。
目の前の、大きくって、形の良いおっぱい。さっき美久のおっぱいを触った感じとはまた、全然違っていた。こうしてみると、美久の方が硬そうだった。大きさは、断然、こっちだろう。
はっと気づいて、手を伸ばす。で、俺も何をとち狂ったのか、反対側の手をほどこうとしてしまった。足下がヌルッと滑って、その拍子に手を突いたのが、キツネちゃんの巨乳だった。ものすごい弾力だ。
「あん、な、何!」
「あ、ごめんなさい、わざとじゃな」
そこまで言ったとき、手が自然にその感触を楽しんでいたことに気づいた。あ〜あ、俺ってつくづくスケベだよなぁ。
「あんん」
とっさに、手を離して、でも、十分楽しんでいた。
で、今度こそ、落ち着いてこっち側の手をほどく。
「あの、これで。後は自分でほどいておいてください。今、委員長連れてきますから」
返事も聞かず、そのまま、職員室へのドアを開ける。
「美久、もう大丈夫だよ。こっちに来て」
返事がなかった。真っ暗な職員室に俺の声だけが吸い込まれていく。まるで、闇に俺の声が食べられてしまうような感触だ。
「美久?みく?どこ?」
俺はとっさに窓を見た。三日月の頃くらいの明かりでは、確実ではないけど、破れた窓はなかった。少し安心する。さっきの化け物がもう一匹来たわけではないようだ。
周りを見回しても、争った跡はない。
『では、なぜ?』
俺は足下に落ちていた、ズシリとした靴下を拾い上げる。美久に渡したブラックジャックだ。
職員室の中の闇は、全てを飲み込んだかのようだった。
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