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妻の治療
お試し読みになります
第1話
その1 負傷
医者や、マッサージのたぐいというのは、やはり知り合いから紹介されるのが一番確実ですよね。特に、マッサージというのは、本当の名人から、モグリに近いようなものまでいろいろあるものです。
とはいえ、愛する妻が、いきなり電話口で「あなた、腰が…… 動けない!」と叫んだのを聞けば、動転するのも当たり前。
いつもは、人妻はいいもんだよぉ、を口癖に「週に何度、奥さんを可愛がってるの?」などと、人のプライバシーに平気で踏み込んでくるスケベ上司を軽蔑してはいます。けれども、こういう時に、休暇を認めると言うより「奥さんを優先しろ」と、半ば命令してくれた上司が仏の顔に見えるものです。
「腰がいきなり痛くて動けないって事は、ギックリ腰かもしれんぞ」
いつになく、真面目な顔をする江川課長です。
「え? だって、まだ二十九ですよ、ウチのヤツ」
「いやいや、今は若い人にも多いらしいよ。そうだ。知り合いに良い整体師さんがいるよ。紹介しようか」
とっさに、こんな男に紹介される整体師なんて、と口を濁したまま、私はいそいそと帰宅したのです。
確かに「腰を痛めて動けない」と聞いて帰ったとは言え、それは一種の衝撃でした。
「あなた…… ごめんなさい」
しきりに申しわけながる妻の格好は、なぜか、下着も穿いてない全裸。
それも、バスルームからリビングに向かう廊下のちょうどまかり角で、身体を角に合わせた「くの字」に曲げたまま、呻吟していたのです。
「ごめんなさい、は良いけど、いったい、どうしたの?」
妻に近寄ると、髪の毛も濡れたままでした。
シャワー中?
「あなた。お風呂の掃除をしててね。一瞬足を滑らせたと思ったら、腰に電気が走っちゃって。動けないのよ〜」
どうやら、ジョギングをして汗びっしょり。シャワーをしたついでに、どうせ一人きりのことだからと、めったにしない風呂の大掃除を、裸のままでして、そこで足を滑らせたようです。
かろうじて、脱いだジーンズのポケットに携帯電話があったのは、不幸中の幸い。緊急事態のSOSを、私に電話できたのは、お嬢様育ちの妻としては上出来だったとしなければなりません。
ともかくも、妻をリビングに、いや、ベッドはともかく、我が家に、ただ一つだけある、和室あたりに寝かせなければなりませんでした。じゃあ、まず、上半身を抱えて、と。
「痛い! あなた! 痛い! だめ!」
私が来る前に、何とかしてリビングに戻って、服を着ようと努力したのが、かえってアダになりました。
資産家でもある、妻の実家に買ってもらったマンションは、大きなバスルームも、ゆったりしたリビングも、そして、和室や、夫婦二人の暮らしには不必要な部屋数があります。
ただ、唯一の欠点が、バスルームからの廊下が狭いこと。
そこに、いくら百六十センチ、四十二キロの細身とは言え、大人の女性がはまり込むように倒れているのです。
もちろん、妻の体重なら、普段ならば抱えるのは簡単なこと。ところが、角に合わせて身体が曲がっているため、一人で抱えようとすると、どうしても、腰に負担がかかってしまうのです。妻の痛みは尋常じゃないようです。痛がる妻の悲鳴に、手が出せない状態になってしまったのです。少なくとも、二人で抱えない限り、にっちもさっちもゆかないことは明白でした。
「これは、救急車しかないか」
こんな姿を他人にさらけ出すのは、あんまりですが、ちょっと動かしても激痛が走るらしく、このままでは、パンティー一つ穿かせてやれそうもありません。本来なら、そんなみっともないことは、と言下に否定しそうな妻は、いくぶん青ざめた顔を、泣きそうに歪めただけでした。
「しょうがない。じゃあ、電話するよ」
ともかくも、妻の身体にバスタオルを掛けてから、携帯を持って妻に確認します。
小さくコクリと頷いた、卵形の顔は、私が駆けつけるまでの間の心細さを容易に感じさせるほど、引きつっています。ナチュラルメークでも、日本人離れしたパッチリとした瞳と長い睫毛は、ただでさえ吸い寄せるような魅力を持っているのです。それなのに、今は、怯えた子猫と例えたいような、そんな少女そのものの表情をしているんですから、夫の私でも、ついつい嗜虐心をそそられてしまいます。
後から考えれば、それが悪かったのかもしれません。
「じゃあ、救急隊の人の邪魔になるといけないからね」
その瞬間、つい、衝動的に動いていたのです。
「え? いやあ、あなた」
せっかくかけて上げたバスタオルをサッと剥がして生まれたままの姿。
痩せている身体から突き出している三角錐のバストは、重力に逆らうように、元のカタチのまま。
「へへへ。大丈夫。救急隊の人達は、医者と同じだよ。裸なんて見慣れてるからね」
妻が、控えめな抗議の言葉を口にしようとした、ちょうどその時、ピンポーンと鳴ったのです。
「え?」
妻のビックリした表情は、救急隊がもう来たのかと尋ねていました。
「いや、まだ呼んでないよ」
とっさに、救急隊をまだ呼んでないのに、という会話になったのも妙ですが、まあ、嗜虐心を煽られていたとは言え、やはり妻の緊急事態です。
「は〜い」
私もテンパッていたに違いありません。
いつもなら、カメラで相手を確認してから玄関に出るようにしていた私も、ついつい、昔のボロアパート住まいの習慣で、ガチャリとドアを開けてしまいました。
「こちらが、栗本さんのお宅で」
「は、はい、確かに、栗本ですけど」
目の前にいたのは、白衣を着た中年男性。
顔だけを見れば、風采の上がらない、という表現を使いたいところですが、そのアブラぎった顔には、妙に、押しの強さがあったのです。
「私、松原と申します。整体師です。えっと、江川さんからぎっくり腰だから急げ、と言われまして」
「あっ!」
その瞬間、事情が飲み込めました。どうやら、あのスケベ上司が、こんな時に手回しよく、整体師を呼んでくれたのでしょう。かつて、買ったばかりの我が家にご招待したことがあります。それ以来、どうにも、目をかけてもらったのは良いのですが、その時、妻の身体を舐め回すように見ていた上司を、それ以後、呼ぶことはありませんでした。
『確かに、我が家の場所は知っているけど、手回し良すぎでしょ』
いささか鼻白んでしまう私です、
「えっと、じゃあ、早速拝見しますね」
つかの間、上司の顔を思い浮かべてしまって、嫌悪の表情を浮かべまいと努力したそのスキを突くように、松原という整体師は、グッと、玄関に入り込んでいたのです。
「えっと、さっそくですが、奥様はどちらに? ヘタに動かすと、ぎっくり腰は手術が必要になったりしますよ」
自分が必要とされていることを確信している、そんな有無を言わせぬ動きに、とっさに、遮ることを忘れていました。いえ、普通の人間なら、どうぞ、とも言われぬうちによそ様に上がり込むことなんてあるはずがないのです。
あっと、気がついたときには、我が家の中央の廊下をつかつかと進んでいたのです。
右手は、バスルームへと続く短い廊下。
上がり込んだ松原整体師は、その廊下を見たのです。
「あ」
その声は、誰の声だったのかわかりません。
つまらぬイタズラ心から、私がタオルを取り去ってしまったばかりに、一糸まとわぬ裸を見られてしまった妻なのか。
はたまた、人妻のヌードを、思わぬところで目にしてしまった松原整体師の、驚きと、喜びの入り交じった声なのか。
それとも、妻のヌードを見られてしまった、それも自分のせいで一糸まとわぬ姿を見られてしまった、間抜けな夫である、私のものなのか。
その瞬間、我が家は凍り付いてしまったようでした。
「ああ、可哀想に痛いでしょ、奥さん」
アイス・ブレイクしたのは。松原整体師、いや、松原先生とお呼びした方が良いかもしれません。
痛いでしょ、と、驚きを隠しながら、つかつかと断固とした態度で近寄ったその姿に、妻は、医師の姿を重ねてしまったとしか思えません。
「どうしたの? ああ、お風呂場で? う〜ん、奥さんよくここまでがんばったね、うん、よく頑張った」
私があわてて、後を追ってバスルームへの角を曲がった瞬間、そこで目にしたのは、恥ずかしそうにしながらも、信頼する眼差しで受け答えをする妻の姿でした。いえ、私が見ていたのは、処女で結婚した妻が、初めて私以外の男に、じろじろと見られている姿だったのかもしれません。
顔の所にしゃがみ込んだ松原先生は、妻の顔を覗き込んだ間、宣言します。
「よし、診断は後にしましょう。旦那さん、あなたが頭の方を持って。さ、奥さん、なるべく痛くないようにしますからね。力を抜いて。ほら、リラックス、リラックス」
白衣を着た人間のきびきびした指示には、魔力がある気がします。
私が妻の頭側に移動する間、妻の手を持って、リラックスリラックスと優しく声をかけながら、手をとって、ぶらぶらと振っている松原先生。
しかし、それはとりもなおさず、胸を隠している手を、外されてしまっていると言うこと。
三角錐の見事なDカップは、妻の横にしゃがみ込む松原先生の目の前で、隠しようがなくなっていたのです。
『あれ? なんで、立ってる?』
妻の乳首の色どころか、なぜか、ピンと立っている乳首を見られているのを確認しながら、なぜか、松原先生の視線を遮らないようにして、妻の頭側に回っていました。
「さ、ご主人、いち、に、のさん、で、ゆっくりと持ち上げますよ。大丈夫、私の指示通りにやれば、痛くありませんから」
「はい」
厳しい視線で私に向けられたその言葉は、逆に「へまをすれば、奥さんは痛いんだよ」と言われている気がして、私は緊張を高めてしまいます。そのくせ、妻には優しい言葉をかけ続け、大丈夫、大丈夫、痛くしないからね、とにこやかな笑みばかりを見せていました。
持ち上げるとき、松原先生の左手は、妻の尻を支え、右手は、しっかりと、膝の裏に入って抱えていました。妻のクリンと丸い尻肉の柔らかさを、楽しんだかどうかはわかりませんが、すくなくとも、妻が痛みにうめくことはなかったのです。
ようやく妻を運んだ和室。
「さて、ご主人、ここからは、いくら旦那様でも、患者さんが恥ずかしがります。ちょっと向こうの部屋で、お待ちください」
え? っと、思ったのは、全裸の妻を残して、いくら先生とはいえ、二人きりにして良いのかどうか、ということ。
しかし、痛みもなく運ばれたことで、妻は、完全に先生を信頼してしまったのが、その目でわかります。
『ごめんなさい。あなた、しばらく見ないで』
妻の申し訳なさそうな目が語っていました。
私は、敗残兵のごとくすごすごと引き下がることしかなかったのです。
しかし、ここは私の家。私の城です。黙って引き下がるわけにはいきません。
といいつつも、私が選択できたのは、妻を運び込んだ和室に続くベランダへ、リビングから忍び込んだだけでしたけれども。そっと忍び寄った私の目に、いきなり飛び込んできたのが、ワンちゃんスタイルで腰を上げている妻の後ろに膝立ちしている、松原先生の姿でした。
リビングから和室へ続くベランダは、身体をかがめていれば、パンチングメタルに覆われた目隠しのおかげで、通りからは見えません。
中は、と言えば、二人とも、向こうをむいています。
ワンちゃんスタイルで向こうをむいている以上、妻が簡単にこちらを振り返ることができるはずもなく、先生は、と言えば、妻に夢中、いや、診察に熱中のご様子です。
先生の表情は見えなくても、妻の尻から何一つ見落とすまいと言う熱心さで、見つめながら、今度は、どっかりと妻の後ろに座り込んで、尻に顔を近づけていました。
ひょっとしたら、息がかかるのを感じて、無意識のうちに逃げようとしているんでしょうか。白い尻が微妙にうねりかけては、腰の痛みを思い出して電撃を受けたようなショックを感じたように、ピタリと止まる。
全裸のワンちゃんスタイルを、後ろから覗き込まれている、というあまりにも衝撃的な姿でした。昼の日が差し込むばかりか、煌々とついている灯りの下で、全てが丸見えなのです。
私しか見てはならない秘部は、先生の頭でちょうど隠れてしまっています。つまりは、それだけ至近距離なのです。
『匂いまで分かるんじゃないのか? いや、シャワーした後だって言ってたから、大丈夫か、って、いや、そんな話はいいんだ。なんで、こんなに近くで見てるんだよ』
ドキドキ感が、たまりませんでした。ベランダは、猛烈な暑さのはずですが、照りつける日差しも、忘れて、私は眼前の光景に見入っていたのです。
あまりの光景を見たショックが、かろうじて飲み込めると、ようやく私の耳が働き出したのでしょう。ガラス越しに、中の声がかろうじて聞こえてきました。
「大丈夫。ちょっと恥ずかしいでしょうけど、この形なら、痛みはないはずですからね」
白くて、丸い尻を、目の前に抱えるようにしながら喋っている先生の声は、改めて、こうやって聞くと、脂ぎった顔からは想像できないような低音のよく響く声でした。
『成美の好きそうな低音だよな』
どちらかと言えば、声の高い私に対して、冗談交じりとは言え、常々、ぼやくのが、「男は低音よね」ということ。もちろん、仲の良い夫婦のじゃれあいです。今まで気にしたこともありませんが、その良く通る低音であることが、妙に気になってしまいました。
その低音が、裸のお尻のすぐ側で、響くのです。
妻の心境を想像するのは不可能ですが、恥ずかしがってはいるはずです。でも、夫以外には、見せてはならない場所を、後ろから覗き込まれている嫌悪は、感じませんでした。
『見せてしまった。成美の大事な所を見られてる……』
あ、いや、もちろん、痛みが、全てに優先されているのでしょうけれど、妻が、ちっとも隠さずに、秘部を見せてしまっていることに、私は何とも、マゾヒスティックな感情を持たずにいられないのです。
覗いている私の心臓が、ドキドキと高まっているのとは対照的に、中では、ッゆったりとした時間が流れているようです。
「ぎっくり腰と言いましてもね」
低い声が響いています。
白衣と、その上に乗っている、うっすらと頭頂部の地肌が見える頭の影になっていても、その厚ぼったい手が、妻の丸い尻を撫でまわしているのが、はっきりと分かります。
妻は尻を差し出したワンちゃんスタイルのまま、じっとしていました。
向こうをむいている妻の表情が、どうなのか。
恥ずかしそうなのだけは確かですが、それ以上は分かりません。
「ほらね、ここ仙腸関節。ここが損傷している場合。まあ、平たく言えば、ここのネンザだと思ってください」
先生の手が、腰というより尻えくぼのあたりをさらさらと撫でています。
その瞬間、妻の張りのある尻肉が、ヒクヒクヒクと蠢いたのにはドキリとさせられました。
『まるで感じてるみたいじゃないか』
そんなはずはない、痛いだけなんだ、と自分に言い聞かせる私がいました。
ゴクリとツバを飲み込んでいる自分が、いったい何をしているんだろうとふと思わないでもありません。
しかし「治療を覗いているんだ」と思えば、いくら相手が妻であっても、一抹のやましさが入ってしまうのも当然です。
目の前の光景の衝撃と、覗き見している罪悪感。それは、妻の全てが男に見られてしまっているという現実なのです。頭の中で、その現実を処理できず、見ている私までも、身体が硬直して、動けませんでした。
部屋の中は、和紙のシェードを通した柔らかな光に、ドキリとするほど白い尻が、パッと光っているかのようです。
どっかりと座り込み、その尻を抱え込むように触っている先生。
身体を折り曲げて、妻の股間をのぞき込みでもするように、いや、実際、覗き込んでいるとしか思えない姿勢のまま、その手が、尻えくぼの部分をサラサラと撫でています。
「どうです。痛みます?」
「いえ、あ……」
「どうかしましたか?」
「いえ、あの、いえっ、なんでも、あっ」
痛むにしてはなんとも色っぽい声に聞こえてしまうのは、裸のワンワンスタイルで男と二人っきりというシチュエーションだと意識しているせいでしょうか。
まして、妻の股間が、あんな姿勢で覗き込まれているのです。秘部が丸見えになっているのは、私も、そして、なによりも妻自身もよく分かっているはずでした。それなのに、妻は「患者」として言われるがまま、大人しくしているしかないのです。
「あの、あの、まだ、あの、あまりそこは痛くは……」
ガラス越しとはいえ、ソプラノの妻の声は、囁くような大きさでも良く聞こえました。
「いや、ここだけでも、微妙なポイントが、数十ヶ所あると言われているんですよ。一応そこを確認していきますから。もうちょっと我慢して」
「は、はい」
明らかに、妻は、もうやめてほしいというトーンを交えていましたが、必要なことなのだからと、あっさりと続ける宣言をされてしまいました。断定口調の先生に、患者の立場では大人しくするしかありません。
「ホントは、微妙にずらすと、数百ヶ所も見分ける名人もいるらしいんですけどね、残念ながら私のような凡人だと、こうやって」
「あ……」
「ごめんなさいね。撫でまわしているみたいでしょ? でも、こうやって、微妙な場所、って、ホントに微妙にくぼんでいるツボを、全部確かめるしかないんですよ」
「え、あっ、い、いえ、あの、でもっ、あの、何か、あの、ちょっと、こんな風になんて。あの、なんかヘンな感じですね」
さすがに、どう見てもいやらしい動きにしか見えない手のうごめきに、冗談めかしてはいても、ようやくイエローカードを出したのです。こうなれば、これ以上いやらしい手つきで触るとも思えません、
ホッと安心しそうなったのもつかの間でした。
「ごめんなさいね。でも、初めての患者さんだと、いろいろと勘違いされることがあってですね、ここまでていねいには診察しないんですよ」
相変わらず、低い声を響かせて、少しも悪びれず、むしろ、心から心外だ、と言いたげなトーンをにじませています。
「えっ、うっ、そ、あぁ、そうなんですか」
イエローカードを出したはずの妻の声には微妙な湿り気が混ざっていました。夫として、他人に治療されている妻が出す声に混ざるのに、認めてはいけない類の湿り気でした。
「ええ、だって、ほら、まるで、エッチに撫でているみたいでしょ? ダンナ様の上司の方がたまたま、私のお得意様でしてね。それなら、こうやっても、ほら、誤解はないですよね?」
「え?」
「いや、ほら、こうやって」
「え、あ、ああぁ」
「大丈夫ですね? ちゃんと、分かっていただけてます? ていねいに診察してますからね。なにしろ、ダンナ様の上司から頼まれちゃったんですからねえ」
「あの、でも、あ、あっ、あの」
「だって、もし、私が治療を越えてイヤらしい事をしたりしたら、せっかくの上司の、えっと江川さんの顔を潰してしまいますものね」
「江川さん……」
「ええ、なんでも、ダンナ様は、江川課長の片腕だそうですよね。くれぐれも、大事に、ていねいな診察をしろと言われたんですよ〜」
急に妻が黙り込んでしまいます。
妻なりに、私の直接の上司が江川課長であることを、プレッシャーに感じていたのかも知れません。
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