140 Communication Library
2012 ギイ HappyBirthDay♪
5つの指 令
0.0 プロローグ
開けたままの窓から思いがけず強い風が吹き込んで、後
ろの机から何かが落ちた音がした。
風に乗ってかすかに聞こえてくる音。その演奏者の机から落ちたのは何の変哲もない卓上カレンダーだった。
持っていたシャーペンを二回くるりと回して、三洲新は椅子から立ち上がった。
心地いい演奏が聞こえなくなるのは残念だが。
演奏しているはずの温室は、この部屋からかなり遠く、暑くなってきたこの季節
温室の天井の窓と、この部屋の窓があいていて、さらに風向きもよくなければ
この細く美しい旋律は耳には届かない。
つまりこの部屋ではめったに聞けないのだ。
演奏者である葉山託生と、同室でも。
まあ、頑丈で音が漏れないとはいえ、この部屋でバイオリンはちょっとな。
そんなことを考えながら、何気なく落ちたカレンダーを拾う。
めくれて8月になってしまったカレンダーを今月に戻す途中、7月の下旬につけられた
本当に小さな赤い点が目に留まる。
これは・・・。丸を付けようとして止めた。って感じだな。ふむ。
夏休みに入っているであろうその日。
そういえば、あいつは夏生まれだったか。いかにも暑苦しい奴だからな。
あと半年か・・・。たった2年半だが入学した当時は卒業なんて遥か未来。
途方もなく先の話だったが・・・。
2年になってからだ。邪険にしてもついてくるあいつが入学してきて、あとを追いかけまわし、
3年になり葉山と同室になって・・・。
急に時間が早く流れて行った気がするのはなぜだろう。
カレンダー片手に何を感傷に浸ってんだか・・・。
ふっと笑ってカレンダーを持主の机に戻した。
手を付けていた問題集に戻る気になれず、
引出しをあけて、こっそり所持している携帯を開き、電源を入れる。
最近迷惑メールというのが来て面倒だ。
案の定、全く身に覚えのないメールが来ている。
すべてを削除しようとして、たまたま目に留まったメールを開いた。
中のURLをクリックしなければ変なことにはならないだろう。
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たまには我儘につきあって!
1.まるまる一日君をちょうだい!
2.君が選んだ服を着るから。
3.海に連れてって!
4.ぜ〜ったいイタリアン!(あーんしてね!)
5.
こんな我儘な子と遊びませんか。
・・・
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ごめんだな。面倒。我儘な奴など、こちらが紹介したいほどだ。
まああれは我儘というより、なんだ。従順?
削除ボタンを押した。
と・・・。
ふむ。面白いことにはなりそうだな。
ちょうど誕生日のようだし。この先、奴にプレゼントをあげるなどありえないからな。
受験の息抜きにもよさそうだ。
事情を知らない人が見れば勘違いをしそうな、
(真行寺が目にしたら引きつってドアまで後ずさりそうな)
きれいな顔で微笑んで、三洲は先ほどの内容を手帳のメモ欄に書き込んだ。
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