140 Communication Library

 


2012 ギイ HappyBirthDay♪


5つの指 令



4.ぜったいイタリアン

テラスでぼんやりとパークを眺めていると、ギイは
僕がパークへ行きたいと思っていると思ったのか、

『中に入るか〜?託生。』
と、声をかけてきた。

実は僕、行ったことがないんだよね。
まあ、それどころじゃなかったし、兄さんは心臓が弱かったし。

「ギイは入ったことある?」
『んー。ここのは1回だけかな。アメリカのは何度か。』

そうでした。あっちが本場だもんね。

「このホテルでも夕飯食べれる?」
『もちろん。夜、花火もあがるぞ。』
「えー!どの辺にあがるの!?」
『真正面のお城の裏あたりかな。』

なんと!真正面。ならこの部屋は絶景スポットじゃないか!

「部屋で見る。」
『ちょっと中行ってすぐ戻ってこれるぞ?』
「ううん。いい。せっかくいいお部屋だし、ここにいる。だめ?ギイ。」
『だめなわけないだろ!そんなかわいいこと言ってると襲うぞ!』

暗にギイと二人っきりでいたいといっているような僕の返事に
いつもは余裕で笑っているギイがなんだか慌ててる。

『託生。そろそろ中に入れよ。少し風が出てきた。』
「うん。そうだね。そうする。」

なんだかギイが目を細めて僕を見て、ふわりと笑う。
つられて僕も笑顔になって「なに?ぎい?」と、聞いた。

『いや。前にもこんなこと・・・。』
「え?」
『なんでもない。気のせいだ。』

もしかして、ギイ。

それは去年の文化祭。ギイを怒らせてしまった僕に
赤池君がそっとリークしてくれた、ギイの夢の話。

思い出したけど、口には出さなかった。
赤池君に怒られちゃうもんね。

「ギイ。花火までに夕飯食べちゃう?」
『そうだな。託生。何が食べたい?』

ここで僕は「ぜったいイタリアン!」と言わなくちゃいけないとこなんだけど。
あの指令、全部従うのはなんだか悔しい気がする。
だって三洲君たちは中華!なんだし。

テーブルにあったホテルのガイドを手に取る。
館内のレストランは、ラウンジとコース料理のお店。それからビュッフェスタイルの店。
あとはルームサービスか・・・。

「ビュッフェにしようか。ギイ。お腹すいたでしょ?」

なにせ食欲大魔王。ブラックホールの名をほしいままにするギイだもん。

『え?あ。ああ。そうするか。』

何でギイは意外そうな声を出したのかな。

「だってコース料理って苦手なものも出てくるじゃないか。堅苦しいし。」
ビュッフェなら苦手なものは取らなければいいのだ。にんじんとか、にんじんとか、にんじんとか。

『託生〜。今、ニンジンよけられるなっておもってたろ。』
ルームキーを持ってギイがドアへ向かいながらからかう。

夕暮れに染まるお城を名残惜しくもう一度眺めて僕たちは夕飯を食べに部屋を出た。

食事を終えてロビーを通ると、ギイの携帯が鳴りだした。
片手をあげて端っこに移動する。

あ。そうだ。最近のホテルって。いたいた。
フロントとは別に、大きなテーブルに座ってニコニコしているお兄さん。
コンシェルジュって書いてある。前にギイに聞いたんだ。いろいろ調べものとか、用事とかをしてくれるって。

トコトコと近づく。

「すみません。」
『はい。お客様。』
「今日、あの、一緒に来てる、あの・・・。誕生日なんです!」
『おめでとうございます。』
「で、何かお祝いができないかなって。その〜。部屋に飲み物とか。」
『お飲物。よろしければケーキもございますよ。小さな丸いケーキがございます。』
「あ。じゃあ、それ。部屋で電話だと、ばれちゃうから。」
『お飲物は・・・。失礼ですが。』
「未成年なので、アルコールはちょっと。」
『ジンジャエールはいかがでしょうか。グラスに入れますと、シャンパンのようですよ。』
「あ。じゃあそれで!あの、花火の10分前くらいにお願いしたいんですけど。」
『かしこまりました。』
「今、それだけ支払いってできますか?」

ギイがなにやら携帯で話している間に、僕は初めてギイに、サプライズを用意したのだ。
とっさの思い付きにしてはいい考え!

『お連れ様、お名前はなんと?プレートにお名前お入れしましょうか?』
「じゃあ・・・」

素直に「ギイ」と、言おうとして少し戸惑う。
もしも、これで、ギイの存在がホテルにばれたら・・・。
でも、信じよう。夢の国の夢のホテルだ!

だし、これでばれるようならとっくにばれてるだろうし。

「カタカナで『ギイ』と、いれてください。」
『かしこまりました。』

手続きも支払いも済んでほっと一息。
ロビーにはさりげなくキャラクターが描かれ、
コンシェルジュの方が『隠れキャラクターがいるんですよ!』と、
さりげない壁の絵やじゅうたんなどのキャラクターを教えてくれる。

そこへギイが戻ってきた。
さっきから電話をしつつ、僕とコンシェルジュさんの様子をうかがっていたギイ。
サプライズがばれたら大変。と、僕はギイに話しかけた。

「このロビー隠れキャラクターがいるんだって!コンシェルジュさんに教えてもらっちゃった!」
見事な隠れっぷりに本当に感心していたので、話は進む。
「ギイ!見つけられた?知りたい?」
『託生だってコンシェルジュに聞いたんだろ?』
「なんだよー。もう。教えてやらない!」

すたすたとエレベーターに向かう。
『ずっと隠れキャラの話してたのか?』

む?うたがってるな。
「そうだよ。パーク内にもいっぱいある。って、地図見せてもらったり。」
ほんのちょっとだけどその話もしたのだ。昔はあの地図の中にも隠れてたんだって。

『そうか?いいからどこに隠れてるか教えろよー!』
何とかギイの疑いの目はそれたようだ。僕も成長したってことかな!うんうん。

部屋に戻っても時間はまだ7時前だった。
空はオレンジから紺へ濃紺へと移り変わる途中で、
お城のその向こうに、きらきらと夕日を反射する海が見える。

角度が違うのか、夕日は見えないのだけど。

パーク内の屋根は縁取るようにライトアップされ
お城もほのかにブルーのライトがあてられている。

時折どーんと音がして、火山が噴火する。
僕は窓辺、テラスぎりぎりまで椅子を引っ張っていって、ずっと外を眺めていた、

と、いってもテラスにはもちろん柵があるからあまり外は見えないけれど。

『託生。』
呼ばれて振り向くと、ベッドの端に座っていたギイが手招きしている。
おとなしく近づいていくと、後ろから抱えるように抱きしめられた。

『こっちからのほうが見やすいだろ。外。』
確かに柵から離れた分、見やすい。でも。

「音が聞こえないんだ。」
『音?』
「たぶん。パークで流れてる音楽とか、笑い声とか。」
『俺のレインボーボイス聞かせてやるから、こっちにいろよ。』
「えぇ。ふふ。」

なんだかとんでもないことを言い出した。
今日くらい、おとなしくしていましょう。

「あ。ギイ。」
『ん〜?』

この返事はちょっとあまえたがりさんモードだな・・・。
今ならいけるかな。

「写真。撮りたいんだけど。だめかな。」
『写真?』
「うん。ギイが嫌いなのもわかってるし、その〜。いろいろあるのもわかってるんだけど。」
「ギイの携帯とかで撮ってくれたらいいから。」

全部、ミッションをクリアしたら、三洲君のこと、ギイに話すつもりなんだ。
ギイはきっとわかってくれる。だから、ギイが写真を持ってたら、
あとで三洲君に見せればいいだろ。

「一枚だけ。ね?」
『わかったよ。ここでいいのか?』
「あ。もうちょっとしたらでいい。」

後ろにいるギイがあからさまに不信感満点の空気を出している。
何とかこの場をごまかして、ケーキと一緒に写真をとろう。

えーっと。あ!

「もうちょっとだけ、このまま。ね?」

後ろにいるギイの方に頭を乗せたまま、ギイの顔を少し下から見上げる。
後ろから抱っこしながらリラックスムードで、とりとめのない会話をしていた僕たち。
効果てきめん。

『託生〜。あんまり喜ばせないでくれよ〜。花火。みたいだろ?』

もちろん。ルームサービスも来るし!! 






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