140 Communication Library
2012 ギイ HappyBirthDay♪
5つの指 令
5.
キッチリ10分前に運ばれてきたルームサービス。
キャラクターをかたどった小さなショートケーキと、シャンパン色のジンジャエール。
ケーキを前にシャンパングラスを持って、写真を撮ってもらった。
ギイの携帯で。
ルームサービスのお兄さんが部屋を出ていくと、
ギイは部屋のチェーンをかけにいって、戻るなり僕を抱きしめた。
『託生・・・。』
「ギイ。驚いた?」
『ああ。もう託生には驚かされてばかりだよ。』
ぎゅうぎゅうと抱きしめながら、キスをする。
「明日だけどね。誕生日。」
『明日は俺の選んだ服を着てくれるんだろ?』
「うん。着るよ。」
『託生・・・。』
「ギイ。」
見つめあって、ゆっくりと唇が重なる。
ひゅるるるる。パーン。
ちょうど窓の外で花火が始まった。
離れないまま外を見る。
「綺麗・・・。」
ギイがそっと背中を押してテラスに出る。
次々と上がる花火。パーク内からは花火に合わせた音楽が聞こえてくる。
僕の肩を抱いたままのギイをそっと見上げると、ギイと目があった。
恥ずかしさにすぐに視線を花火に戻す。なんでこっち見てるんだよ!
「花火。綺麗だね。変わった形のもあるし」
視線に耐えきれず話しかけた。
『ああ。綺麗だな。』
ぼくの焦りに気が付いているのか笑いながらギイが答える。
『託生。顔赤いぞ?』
「花火のせいだよ!花火!」
『そうか。花火のせいか。』
「そ・・・。そうだよ。」
花火が止まる。
耳が痛くなるような静けさが一瞬訪れる。
なぜだか不安になってギイを見た。
ギイは優しく微笑んでお城のほうを指さす。
素直に視線をお城に戻す。
「うわぁ。」
連続でたくさんの花火が打ちあがる。
まるで花束のように色とりどりの花火が夜空に広がった。
最後に大きな花火が開き、長く金の尾を引いた。
パーク内の建物を縁取る照明は少し明るさを落としていたらしい。
花火が終わると明るくなって、ますますおもちゃ箱をひっくり返したようにきらきらと光った。
『綺麗だったな。』
「うん!すっごく!ありがとう。ギイ!」
はしゃぎながら室内に戻る。
「こんなに近くで花火見たことあったかなぁ。すごいね〜」
『ケーキ食べるか。』
「あ。ギイ。まって。」
『ん?』
とたとたと自分の荷物に近づいてバイオリンを取り出す。
少し調弦をして、きちんと構える。
ギイにろうそくに火をつけるように言って
「歌うの恥ずかしいから。」
HappyBirthdayを演奏した。
「ギイ。ふーってして!」
ギイがろうそくを吹き消す。バイオリンをケースにおいて僕一人の盛大な拍手。
僕はちょこっとだけケーキをもらって残りはギイが食べる。
「ねえ。ギイ。」
『どうした?』
「僕ね。実はね。この誕生日にギイを誘いたくて、ずっと悩んでいたんだ。」
三洲くんとのことを話さなくちゃ。
三洲くんが、どうして急にこんなことを言い出したか。その理由もちゃんとわかってる。
「僕ね。ずっと悩んでいたら三洲君がね、急に真行寺君と勝負しろっていいだしてね。」
ギイはケーキをぺろりと平らげて、ジンジャエールを飲みながら
黙って僕の話を聞いてくれている。
「勝負って言っても将棋だけど。でね。僕負けたんだ。」
ポケットから三洲君のメモを取り出した。
「三洲君がね。ギイをデートに誘って、これを実行しろって。」
「でもね!きっと三洲君。僕が誘えないでうじうじしてるのに気が付いてたと思うんだよ。」
「だからこの指令をくれたんだと思う。確かに、この指令に従ってギイを誘ったけど・・・。」
そこまでいって、ギイを見た。
メモを持って、なんだかちょっと笑ってる…?
『誘ったんだけど?』
「でも、僕はギイと、ギイの誕生日を二人っきりでお祝いしたかったから。」
「指令があったから誘ったんじゃないんだ。そうじゃなくて、」
ギイは優しく僕の話の続きを待ってくれているのに、
僕はなんだかうまく説明できないもどかしさにうつむいてしまう。
『託生・・・。』
「だから・・・。今日ギイと、一緒にいられてすごくうれしいんだよ。」
『託生。ごめんな。』
急にギイからでた謝罪に驚いて顔をあげる。
『指令のこと。終業式に三洲から聞いていたんだ。』
「三洲君に?」
『託生があんなに積極的なんて、と、俺が疑う前にネタばらしだとさ。』
「そっか・・・。」
『三洲から聞いた時な。俺はうれしかったよ。』
椅子に座っていた僕の手を引いてベッドに座る。
僕を抱きしめてからギイは話を続けた。
『三洲の魂胆も、それがわかってて託生が「のった」ことも、すぐにわかったよ』
『俺をくれって言われた時はあまりのことに頭が真っ白になったけどな。』
僕の顔を覗き込んで笑う。
『三洲に言われた時も、託生の愛はこれっぽっちも疑わなかったぜ?』
「ギイ。」
『なあ。託生。』
耳元で僕を呼んだギイの唇が首元へキスをする。
深いささやきのようなその声に僕はぞくりとして背筋を伸ばす。
『三洲が教えてくれなかった5番目の指令。教えてくれよ。』
★★★★★
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