140 Communication Library

 


2012 ギイ HappyBirthDay♪


5つの指 令





2. 君が選んだ服を着るから。

「その日のギイを、僕に、く・・・。くれない・・・?かな。」

ギイの視線を感じながら、やっぱりギイを見れずに、でも。
確かに三洲君とのこともあるけど、それ以前に。

ぼくは、その日。ギイに会いたい。贅沢な望みだけど。
独占欲。うまくこの気持ちを言葉にできなくて、なかなか話せずにいたけど。
三洲君の「指令」に乗じて、でも心はちゃんと本心だよ。って。

顔を見て伝えられないけど。
せめて顔をあげて、正面を向いて呟いた。


それは何週間か前の話。


そのあと、ちらりとギイの顔を見ると、困ったような、びっくりしたような

「ふふ。」

今思い出してもちょっと笑ってしまうほど、真っ赤だった。
いやいや。負けず劣らず僕も真っ赤だったと思うけど。
いつもなら、『じゃあその日は託生のために明けとくよ』とか言うかなって思ってたのに、

『ありがとう。ありがとう。託生・・・』

そういってキスをしていつまでも抱きしめていた。
何度も。ありがとうって小さな声で言いながら。

『おまえもか!葉山!!』
「え?」
『まったく、ニヤニヤニヤニヤなんだんだ!!』

急な怒鳴り声に軽く飛び上がって顔をあげた。
いつの間にか前の席に座って、赤池君がおもむろに頭をくしゃりとする

「おまえもって。」
『葉山とセットで機嫌いいなんて一人しかいないだろ!』
「あ・・・。」

思い出して勝手に顔が笑う。

『まあそんな顔してるなら、別にいいけどな。伝染病だな。気を付けよう。』
「え?あ・・・赤池君?」
『そんな笑顔してるなら、保護者として安心ってことだ!』
「ああ。ありがと・・・。じゃなくって。伝染病?」

教室の入り口から「赤池ー」と呼ばれて赤池君は席を立つ。

『三洲もなんだか機嫌よさそうだろ?葉山のにやけ顔が伝染してんるんじゃないか?』

三洲君も・・・?
チラリと前方の席に座る三洲の背中を見る。
窓枠に肘をついて校庭を眺めている。

三洲君も楽しみにしてるのかな。デート・・・。
なんだかんだ言って大事にしてるんだもんね。真行寺君のこと。

「優しさが伝わらないんだよなぁ。」

そこへ廊下に出てた赤池君が戻ってきた。
『なんだと?』
「いやいや。赤池君じゃなくて。」
『ま。いいか。葉山。今日夕飯食べたら8時ごろ部屋にいてくれ。』
「うん。いいけど・・・?」
『約束な。』

そういうと同時にチャイムが鳴り赤池君は席に戻る。
意味深な笑みを残して。


8時。夕飯は赤池君と一緒だった。
食堂を出ると、赤池君はなぜか「じゃ」と言って部屋へ帰ってしまった。
出直してくるのかな…?

思いながら部屋へ戻る。
ドアを開けるとそこに三洲はいない。また消灯ギリギリかな。
なんて考えていると、後ろからトンと押される。まさか。

ふわりと届いた大好きな香り。

「ギイ・・・?」
『ご名答。託生。中入って。』

何歩か足を進めてから振り返る。鍵のしまる音。
ギイに手を引かれてベッドにならんで座る。

「ギイ。」

そうか。赤池君。ギイに頼まれて。座るとほぼ同じ高さになるギイの顔を見る。
ふわりと笑ってギイは頬に手をかける。くすぐったくて少し目を伏せるとギイは僕にキスをした。

『託生。この間はお誘いありがとう。』

キスにうっとりしていた僕。ギイの手が添えられたままの頬がポンッと赤くなるのを自覚した。

『あんなに情熱的に誘われると思ってなかったから、気の利いた返事もできなかったな。』
「あ・・・。いやっ。その・・・。」
『その日は託生のために一日あけるよ。次の日の朝まで、俺を独占してくれるのかな?託生くん?』

想像よりギイは上手だった・・・。と思いつつ。
僕は真っ赤になった顔を見られまいと、ギイの肩におでこを付ける。

『ん?それとも前の日の夜から?出かけられなくなるぞ?託生?』

肩におでこを付けている僕の頭を優しくなでて。
いつもだったら、からかうように顔を覗き込んでくるのに

『どうしようか。託生。』
なんていいながら、僕ごと左右に、スイングしている。

わかった。

ギイの気持ちを僕が感じ取る・・・。
とれるなんてめったにないことだけど。
珍しくわかった(それは赤池君には一目瞭然なくらい)
ギイは「浮かれている」んだ・・・。

予定の相談をしたくて、僕の部屋を訪ねてきてしまうほど。

かわいい。かわいい。
いつかのお正月に会いに来てくれた時のように。
僕はギイに手をまわしてギイを抱きしめた。(もちろん今回はだまってね!)

『託生?どうするんだ?』
だから僕は、勇気を出して二つ目の山を登る。

「その日は・・・。」
『その日は?』
「ギイが選んだ服を着るから。」
『は・・・?』

ギイの肩口に顔をうずめたまま、そう言う。

「ギイの選んだ服を着るから。だから。」

ぎゅうときつく抱きしめられる。

『わかった。前の日から誕生日の翌日まで。ご予約承りました。』

んん?そういうことになるの?
ギイのコロンに包まれて、強く抱きしめられて、何も考えられなくなる。

夏休みの予定なんて真っ白だから、いいんだけど・・・。

『なんだか最近。託生は積極的だな。どこで覚えたんだ?』

何度か小さいキスを繰り返しながらギイが聞く。
時計のクォーツが9時を告げる。

はっと我に返ってギイから少し離れる。
あまり急に現実に戻ったから、僕はつかんでいたギイの腕だけ手を離せなかった。

もっとギイと一緒にいたいのに。ここは、僕と三洲君の部屋だ。
そうっと指をほどいて手を引く。

ギイは王子様のように僕の手を取って指先にキスをした。

『じゃあ、詳しいことはまた直前にな。』

ギイがドアまで歩いて行って鍵を外す。廊下の喧騒が部屋に入ってきた。

『お。邪魔したな。』
ギイが廊下を向いたままそういった。どうやら僕に向かっての言葉ではなさそうだ。
一度振り返って『おやすみ』というと、入れ違いに三洲君が戻ってきた。

「お。おかえり。もしかして廊下で待っててくれた?」
『そんなわけないだろ。ちょうど戻ってきたとこなんだよ』
「だよね・・・。」
『ふーん。どこまで進んだ?』
「・・・2番。」
『ほう。がんばってるな。葉山。』
「三洲君は?」
『がんばるも何も、日にちさえ決まれば当日までとくにないだろ。』

あとは当日。か。ってさっき。ギイなんていってた?
前日から、誕生日の翌日まで・・・?

『ああなると、崎もただの男だな。あのにやけ顔。』
「うん・・・。」

浮かれてるギイって・・・。
ううん。浮かれててもギイって・・・。

『恋は盲目。』
三洲君がドアを見たまま動けない僕の背中につぶやいた。






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