140 Communication Library
2012 ギイ HappyBirthDay♪
5つの指 令
2.9 思いがけないプレゼント
終業式のあと。教室の入り口に立ったのは意外な人物だった。
「崎。ちょっといいか。」
『・・・。三洲?』
三洲が訪ねてくるとは珍しい。
「HRが終わったら時間とれるか?10分くらいで済む話だがここではまずい」
『しかし、HR終わりで階段長会議があるんだ。30分ほど時間はあるが・・・』
「生徒会室まで行く時間はない・・・か。」
『まいったな』
「270でどうだ?葉山は直接食堂に行くと赤池と話していたから10分くらい余裕はあるだろう」
『そうだな。じゃあそれで』
了解すると三洲は何も言わずに自分の教室へ戻っていった。
しかし三洲のここでは話せない話ってなんだ。
自室を提供したうえ、託生の不在まで確認しているとは…
先日章三が言っていた「にやけ顔伝染説」はどうなったんだ?
いつもと変わらないように見えたが・・・。
まあまずにやけ顔の三洲なんて見たいかと言われれば・・・
『みたいな。』
そんなくだらないことを考えてしまうのもすべて
いつになく情熱的に俺の誕生日を考えてくれる託生がかわいすぎるのが悪い。
いや。悪くない。
270のドアをノックする。
「どうぞ」
『邪魔するぞ』
三洲は窓辺の机に腰を掛けて手にカレンダーを持っている。
「崎。もうじき誕生日なんだな。」
『唐突になんだ?』
「これを見ろ」
三洲によればそれは、託生のカレンダーらしい。
よくよく見ると俺の誕生日に小さな赤い点がついている。
何か書こうとしたか、丸を付けようとしたのか。
6月の末頃。託生はカレンダーを見てはため息をついていたらしい。
そして三洲は偶然落ちたのを拾ったカレンダーを見て気が付いた。
その点が俺の誕生日である事。
託生の目下の悩みはその日を一緒に過ごせるか自分から聞きたがっていたこと。
「葉山な、俺が風呂の間とかに結構な独り言を言うんだ。」
『独り言?』
「でも、聞くタイミングがなぁ〜。とか、いや!ここはやっぱり僕から言わなきゃ!とかな」
「葉山の同室。俺でよかっただろ?崎。」
ああ。そうだな。もう少し感の鈍い奴だったら、なおよかったんだがな。
それらから推測した三洲は、俺に誕生日プレゼントをくれることにしたらしい。
「これから先、あげることなんてないだろうからな。絶対。」
『で?プレゼントはなんだ?』
それが、最近の積極的託生の元らしいと聞いて、俺は驚いた。
「誤解するなよ崎。俺が提示したのはこの5つの指令のみだ。」
机からメモを取り出した。
「まあ崎のことだ。うすうすおかしいとは感じていただろうが・・・」
「指令が進むにつれ、崎は葉山を疑いだすだろう。こんなことをするはずない。ってな。」
確かに託生らしくないとは思っていた。が、黒幕は三洲か。
「これをもとにデートしろとは言ったが、たかがきっかけを与えたに過ぎない。」
「葉山はちゃんと自分の意志で立山連峰とやらを登ってるぞ」
ほう。あの立山連峰はこの指令のことだったか。
「せっかくの俺からの誕生日プレゼントだ。今のまま浮かれていてやれ。」
言われなくても。と・・・。
『最近三洲も浮かれ気味だと聞いたぞ?これと関係あるのか?』
メモを指で挟んでピッと掲げた。
三洲はそのメモを取り返しながら
「浮かれてなどない。葉山が不公平だというんでな。」
『なるほど。真行寺と実行するってことか。』
そういうと三洲はなぜか少しうつむいてから窓の外を見た。
「最後の夏だからな。」
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