背徳の楔 〜番外編〜
 

★番外編です★ 

 時系列的には創立記念パーティーの前日。

 信じるか、信じないかは――。

★本編★



  創立記念パーティーの前日。
 七瀬は明日の事を思って塞ぎこんでいた。


 菱沼嬢と一臣が手に手を取って公式の場に出席する。
 一臣の隣は菱沼嬢の居場所なのだと思うたびに、七瀬は叫び出しそうになる。


(そこは……お兄様の隣は、いつだって私のものなのに――!!)

 その鬱屈した思いを昇華する為に一臣に受け止めてもらい、せめて抱いてもらいたい。
 そう思っていたのに、当の一臣は明日着用するドレスを秘書に送り届けさせただけで、会場となるホテルに前日泊していた。


(お兄様の……バカ……)

 面と向かっては絶対言えないであろう事を、七瀬は心の中で呟いた。
 その時、七瀬の部屋の置時計が二時の時を刻んだ。
 もういい加減に寝なければならない。
 もしクマを作って明日のパーティーに出席でもしたら、きっと一臣は悲しむだろう。


 ベッドの中に潜り込んで何度も寝返りを打ってみるが、目は冴えわたって一向に眠れる気配がなかった。
 三十分程そうしていた七瀬は嘆息すると、ベッドから起き上がった。
 ホットミルクでも飲めば少しは眠れるかもしれない。
 そう思って静かに自室からキッチンへと向かった。


 階下のダイニングには明かりが灯っていた。
 六番目の兄の睦人が起きているのだろうかと、七瀬はダイニングに入る。
 しかしそこにいたのは睦人ではなかった。


「……京兄……」

 七瀬は予想外の京次の出現に驚いたが、相手も驚いたようで少し目を見張っていた。

「ああ、着替えを取りに来たんだ……眠れないのか?」

 久しぶりに見た京次は少しやつれていた。
 病院での激務がそうさせているのか、七瀬の手酷い裏切りのせいか――。
 七瀬は手近にあったダイニングの椅子を、両手でぎゅうと握った。


「う、うん……」

 七瀬のどもった返事に、京次が苦笑する。

「そう警戒するな。もう、お前を無理やり抱いたりはしない……」

「………」

 困惑した七瀬に小さく嘆息した京次は、アイランドキッチンの中に入っていった。
 そして何を思ったのかミルクパンの中に赤ワインをドボドボ注ぎ、次いでオレンジ、シナモン、蜂蜜等を加えていく。
 コップに注いだそれを持ってダイニングに戻ると、七瀬が立ったままのダイニングテーブルの前にそっと置いた。


「ホットワインだ。身体も温まるし、少しアルコールが効いているから直ぐに寝られる」

 京次はそう言うと自分の分のホットワインを手に、二階へと上がって行った。 

  「………」

   京次の部屋の扉がパタンと閉められると、七瀬は無意識に詰めていた息を吐き出した。
 京次に無理やり抱かれて以来、次兄は家に寄りつかなかったのであれ以降は今日が初対面だったのだ。
 置かれたままのカップを取り一口口に含むと、蜂蜜の甘さと赤ワインの芳醇な香りが口内に広がった。


(美味しい……)

「ごめんね、京兄……」

 シナモンスティックと吸い込まないよう少しずつホットワインをすすりながら、七瀬は涙を零し続けた。
 カップが空になった頃には、薄らとした眠気が七瀬を襲ってきた。
 お酒は飲んだことが無いわけじゃないが、実はあまり強くはなかった。
 七瀬はキッチンの流しにカップを置くと、くらくらする視界で転げ落ちないようゆっくりと階段を上って自室へと戻った。






 七瀬が床に就いてから一時間後。
 寝室の扉が静かに開かれ、その暗闇の中に人が紛れ込む。
 七瀬はお酒の力で熟睡していたが、頭を撫でられて薄らと瞳を開いた。
 視界に映るのは漆黒の闇、それでも鼻孔を擽る、一臣の香水の香り。
 その嗅ぎ慣れた香りに、七瀬の表情がふわりと綻ぶ。
 まだ開き切っていない瞳をギュッと瞑ると、七瀬は目の前の一臣の首に縋りついた。


「帰ってきてくれたの……お兄様?」

 一臣は何も言わなかったが、こくりと小さく頷いたのが首に回した腕で感じられた。
 縋りついたままの七瀬の腕を解くと、一臣は首筋に舌を這わしその下の膨らみを優しく揉み始める。
 七瀬は時折小さく喘ぎながら、一臣の髪をその細い指で夢うつつの中で梳いていた。
 ネグリジェの上から乳首を重点的に虐められ、時々爪先でピンとはじかれる。


「はぁん……」

 まるで甘える様なその鳴き声に、一臣がくすりと笑う。
 もっともっととねだる様に揺れる腰をかりっと甘噛みされ、七瀬の腰が浮きその中心から少しずつ蜜が溢れ始めた。
 それに気付いた一臣がネグリジェを腹までたくし上げ、秘所に顔を埋める。
 待ちわびていた刺激に七瀬のそこはさらにしどとに濡れる。
 ぴちゃぴちゃと音を立てて蜜壺を舐める一臣の頭を、七瀬は抱きしめた。


「あん……あ、ああ……そんなに舐めちゃ……!!」 

    膣の中まで舌で蹂躙され、七瀬は自分の全てを一臣に食べられた気分になり、すこし恐怖を感じる。
 しかしそんな七瀬の思考とは裏腹に、秘所はこれ以上ないくらい濡れて次の新たな刺激を求めひくつき始めていた。


「あ……もっと、お兄様……」

 そうねだる七瀬の頭を軽く撫でると、一臣は七瀬の待ちわびたものを膣口にあてがう。
 ぐっとやや強引に捻じ込まれたそれは少しきつい七瀬の中で立ち止まったが、味わうように浅いところで抽挿を繰り返すと、やがてずにゅんと根元まで差し込まれた。


「ああんっ……お兄様ぁ……!」

 やっと与えられた快楽に満足そうに瞳を細めた七瀬は、目の前の一臣の頭を掻き抱く。
 深いキスが落とされ、舌が絡め捕られるたびに七瀬の中がきゅっと一臣をしごきあげる。


「く……っ」

 唇の端からもれた一臣のその呻きに唇を離すと、七瀬は呟いた。

「お兄様の好きなようにして……七瀬の事、いっぱい大好きだって証明して見せて……」

 そううっとりと囁かれ、一臣の中の物がぐんと質量を増し、七瀬が嬉しそうに腰を震えさせる。

「なんか、いつもよりおっきい……」

「そうか? ……兄貴のより……?」

 返された返事に七瀬は咄嗟に反応できなかった。
 一臣は長男だ、当たり前だが一臣に兄はいない――。


「何……言って……?」

 戸惑った七瀬が手さぐりでサイドテーブルのランプを付けようとした時、さっとその手が取られ七瀬は抱え上げられた。
 繋がったまま対面になり、七瀬の中はさらに奥に雄を受け入れる。


「ひゃあ……あ、あ……」

 最奥を貫かれて目がチカチカしながらも、七瀬は震える手で目の前の顔を掌で触り注意深く見つめる。

「京兄っ……!?」

 目の前の一臣だと思っていた男は、次兄の京次だった。

(どうして……? だって香水は臣兄の……!?)

 パニックに陥った七瀬は、顔から離した両手を京次の胸に突っ張って逃げようとする。

「やあ……駄目、抜いて!!」

「本当に? 七瀬のここは嬉しそうに俺の事を締め付けてるのに?」

 意地悪な京次の責めに、七瀬は息を呑む。
 言葉では否定していても、七瀬の中はきゅんきゅんと京次のものを咀嚼していた。


「ちがっ!? それは……臣兄のだと……あんっ……」

「七瀬はここを触ると、凄く淫らに乱れるんだよな」

 秘芯と繋がったままの入り口を入念に辿られ、七瀬の腰がびくびくと痙攣する。

「だ、駄目それ……!」

 強すぎる刺激に七瀬の腰が浮く。
 それはもっと京次の雄を欲しがるように淫らにじょぼじょぼと音を立てて、出し入れされる。


「ほら、こんなにも俺のことを欲しがって……」

 満足そうな京次の言葉に、七瀬はかぶりを振る。

「ち……がうの……腰が勝手に……ああんっ!」

 今にもはちきれんばかりの京次のそれに、七瀬の感じる入り口を何度もいたぶられ七瀬の華奢な腰は動きを止められなかった。

  「いくらでも乱れればいい、なな……俺はお前を抱けるなら、兄貴の代わりだっていい……」

 絞り出されるようにそう囁かれた言葉に、七瀬の理性が焼き切れた。
 身体はさらなる高みに登ろうと、必死に腰を振り降ろす。
 京次の腹筋でむき出しになった秘芯が擦られ、信じられないほど気持ちが良かった。


「あ、ああ……おかしく、おかしくなちゃう……っ!!」

   今自分の中にいるのは京次じゃなくて一臣。  そう思おうとしている自分と、そうじゃないと警告を出す自分とのはざまで七瀬は気が狂いそうだった。

「なな……なな……!」

 切なそうに自分を呼ぶ声は、明らかに京次の声。
 そして七瀬のなかで荒れ狂っている大きなものも――。


「京兄……だめぇ……っ!!」

 そう叫んだ七瀬は最奥をごつごつと突かれ、あっけなく果てた。
 いった直後の七瀬の中がきゅうきゅうと京次の雄を締め上げる。
 さらに大きさを増した京次のそれに、七瀬はため息を漏らす。


「はあん……おっきすぎるの……でも、駄目……」

「駄目じゃない、なな……大丈夫だ。ちゃんとコンドームを付けている」

「でも……駄目……こんなの、臣兄を裏切って……あんっ!」

 七瀬が必死に理性でそう言い募ったのに、京次は七瀬に考える時間を与えないように七瀬を下から突き上げる。

「だめ……だめぇ……」

 そう言いながら喘ぐ七瀬をあやしながら、京次はその体をベッドに横たえさせた。
 くの字に折り曲げられた七瀬は後ろから京次のものを受け入れ、またその快楽に呻く。


「やあ……こすれるの……後ろ……」

 入り口を撫でられながら寝ころんだ状態で後ろから突かれると、七瀬の背中の方のいいところが京次の切っ先で擦り上げられ、果てしなく良かった。
 また両足を閉じている為により閉まった蜜壺はしっかりと京次を咥えこみ、その大きさがより鮮明に感じ取られる。 
 さらに後ろから利き手の右胸を揉みしだかれ、七瀬は訳が分から無くなってくる。


「あ……はあん……ダメぇ……」

「なな……これはオナニーだ」

「オナニー?」

「そうだ、ここは真っ暗で誰の顔も見えない。ななが一人で快楽を貪っているんだ」

 泣きそうな七瀬に、京次は強引に言って聞かせる。

「そんなの……」

「考えるな……自分の好きなように快楽を楽しめばいい……」

 耳元で後ろからそう囁かれ、また突き始めた京次の言葉に、七瀬は催眠術に掛けられた様にうっとりと喘ぎ始めた。

「あん……あ、あぁ……きもちいいの……」

「ああ、いいぞ、なな……」

 そう褒められて、ななはなぜかホッとした。  もっと気持ち良くなりたくて、せがんでみる。

「上になりたい……」

「ああ、いいよ、なな」

 京次はそう言うと己を抜き去り、寝転がった。
 膝立ちになった七瀬は早く自分の中を貫いて欲しくて、手さぐりで京次の雄を探り当てる。
 京次にも手伝ってもらい深々と受け入れた雄に、七瀬はあまりの刺激でまた達してしまった。


「ひゃあっん……!! おっきいの、おっきすぎて……!」

 がくがくと京次の腹の上で震える七瀬に、京次が尋ねる。

「おっきくて、なんだ?」

「腰……止まんない……」

 七瀬はのの字を書くように、自分の秘所を京次の腹にこすり付ける。
 いろんな角度から最奥と気持ちいい個所を突かれ、クリも一緒に擦られ、頭がくらくらする。


「ああ、いいぞなな……、すごい」

 京次からため息が漏れる。

  「イく……っ!!」

 そう苦しそうに呟いた京次は、七瀬の中で痙攣して達してしまった。  その瞬間、七瀬が切なそうに泣く。

「駄目なの……まだ、いっちゃ駄目……! うぅ……」

「大丈夫だ……ほら……」

 信じられないことに一度欲望を吐き出して引きずり出されたそれは、コンドームを付け直し再び七瀬の中を貫いた。

「すご……いい、奥……当たる……!」

 七瀬はもう自我など手放したかのように何度も京次の上で跳ねる。
 その全身は感じすぎて汗まみれだったが、もっともっとと快楽を貪り、とどまることを知らなかった。


 その後何度もイって死んだように眠ってしまった七瀬の身体を清め、シーツを取り換えた京次は、七瀬の耳元で囁いた。











「これは、全部夢だ――なな」   

 

 


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