欲望の行末 〜愛しのアンドロイド〜 03
「絢パパって超、絢のこと大好きじゃん? 少しでも絢の役に立ちたいって思って、新作作ってるんだよ」
「そうかなあ。それにしてもパパったら超ナルシストなんだもん。自分の二十歳の頃そっくりのアンドロイドなんだよ?」
絢は祐二の父親そっくりの顔を思い出して、溜め息をつく。
「え〜!? 絢パパの二十歳の頃? めっちゃ見たいんだけど」
「そう?」
「うん!」
イケメン好きの直美は満面の笑みで答える。
「私はあんまりにも似すぎてるから、たまに『パパ』って呼びそうになって、冷や汗もんだよ……」
「でもいいじゃん、私数回しかあったことないけど、めっちゃかっこいいじゃん、絢パパ」
「え〜。身内だからわかんない……」
「そういうもん? ねえ、今日の帰り、寄って行っていい?」
「いいよ。でもひとつお願いがあるんだけど……」
絢が言いにくそうに言う。
「何?」
「あんまり三号の前で変な事言わないでくれる? 三号、何でも学習して知識増やしちゃってくから、変な知識もたれても困るんだよね……」
「変なって?」
不思議そうに首を傾げる直美の耳元で、絢は先日の「エッチ」事件の事に付いて伝える。
「あはは、超うける!! 分かった。そういう系は言わない様、気を付けるよ」
直美はいつまでもお腹を押さえて笑っていた。
「頼むわ。もう、パパの顔でそんなことを言われる私の身にもなってほしいわ……」
放課後。
授業が終わると、絢の家に行く気満々の直美に手を引かれ、絢は帰宅した。
玄関のノブを回そうとする数秒前に、内側から扉が開かれる。
「お帰りなさいませ、絢様」
祐二はいつもそう言って、絢が開ける前に扉を開ける。
本人いわく、自分は超音波まで聞こえるので、絢の足跡を聞き分けることくらい、朝飯前なのだそうだ。
「わっ! 確かに絢パパそっくり!!」
出迎えた祐二に、直美が叫ぶようにそう言う。
「ご友人ですか?」
同じセーラーの制服でそう判断したのか、祐二が瞳を優しげに細めて直美を見る。
「はい! 絢の幼馴染の――」
「末次直美様ですね。初めまして。当家の使用人の岬祐二です。よろしくお願いいたします。」
元気よく答える直美に、祐二が丁重にそう割って入る。
「え……何で私の名前、知ってるんですか?」
「そうだよ、まだ直美の話はしたことなかったと思うけど?」
絢も不思議になって問いただす。
「絢様の卒業アルバムを拝見いたしまして、過去のクラスメートの方のお名前とお顔はインプットいたしております」
祐二は悪びれずそう言ってのける。
(あの〜卒アルって、私の部屋にあるんですけど……)
自分の許しなしに祐二が勝手に卒業アルバムを見たことに、絢はカチンとくる。
「へえ〜、さすがですね。私、喉渇いちゃった。ジュースとか頂けますか?」
眉間にぴくぴくと青筋を立てている絢に気づいた直美が、そうフォローに入る。
「失礼いたしました。絢様、お部屋でお飲みになりますか? リビングにお持ちしますか?」
「私の部屋!!」
絢はそうぶっきらぼうに言うと、直美の手を引いて自室へと引っ込んだ。
「あちゃ〜。超イケメンだけど、ちょっとめんどくさそうだね」
直美は後ろ手で絢の自室の扉を閉めた途端、そう慰める。
「分かってくれる〜? もう、いっつもこんな感じなの」
「でも、しょうがないんじゃない? 基本的な思考構造とかも、絢パパなんでしょ? 娘のものに興味がないわけがないから、どうしても見ちゃうんだって」
「直美ったらどっちの味方? あんた、自分の部屋のものを父親が勝手に見てたらどうする?」
「ぶっ殺す!!」
右手のこぶしを握り締め、直美は呟く。
「でしょ!」
絢がそう口にした時、コンコンとノックされ祐二が入ってきた。
「お待たせいたしました。グレープフルーツジュースで大丈夫でしたか?」
流れる様な所作で絢のお気に入りの猫足のテーブルにコップを置く祐二に、絢はそっぽを向いて口を尖らせる。
「はい。大好きです。ありがとうございます」
先ほどまで絢に同情してくれていた筈の直美の目が、もうハート型になっている。
直美はイケメンに弱いのだ。
(もう、直美ったら――!!)
「ありがと、もういいから出てってくれる?」
ちょっとつっけんどんな感じで言ってしまった絢に、祐二は少し困った表情になる。
「できれば、同席させていただきたいのですが」
「え? どうして?」と直美。
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