欲望の行末 〜愛しのアンドロイド〜 05


 帰宅後。
 絢の後ろを付いて回り世話を焼きたがる祐二に、絢は嬉しさ半分、面倒くささ半分だった。
「背中を流させてください」とまで言われて、あたふたしたが、ようやく就寝させてもらえる。
 絢は肩の下までの長さの髪を念入りにブラッシングした後、百五十五センチの彼女には高めのベッドによじ登ると、ほくほくと布団をかぶる。


(なんか、本当にパパが返ってきたみたい……)

 目を閉じると、愛娘を構いたくてしょうがない、すこしうざい父親の笑顔が瞼の裏に浮かんだ。
 すぐ眠れそうだったので、電気を消そうとサイドテーブルに手を伸ばした時、ガチャリとドアが開かれる。
 祐二はいつもとは違い、絢に断りもせず中に入るとベッドの傍による。


「な、何してるの? こんなところで」

「何とは、無粋ですね……夜伽(よとぎ)に参りました」

 心外だという表情の祐二が、恥ずかしげもなくそう言う。

「………はあ?」

「夜伽……女が男と共に寝て相手をすること。……今回の場合は男と女が逆ですが」

「ど、どっからそんな情報仕入れているのよ? 前はエッチって意味も知らなかったでしょう――っ!?」

 絢は顔を赤くしてそう突っ込む。

「実は……先ほどテレビを見ておりましたら、若い男女が裸で何やらしておりまして。調べてみましたら、セックスなるものをしていたのです」

(年頃の娘の前で、セックスとか真顔で言うなよ……)

「そ、それで……?」

「はい。その映像を見ておりましたら、胸のあたりが興奮してきまして、何やら私のここが反応を……」

 祐二はお仕着せのズボンのファスナーに手を掛ける。

「きゃあっ!?」

 中の物が出されるより早く、絢は悲鳴を上げて顔を背ける。

「どうされましたか?」

「どうって……そんなの見せないでよ!!」

「おかしいですね。先ほどのテレビの女性は、それはとても嬉しそうにされていましたが」

「………っ!!」

 絶句する絢に、祐二が不思議そうに声を掛ける。

「絢様?」

「……ちょっと待って。祐二さん、本当にテレビ見ただけなの?」

「はい。旦那様のお部屋のテレビに繋がれている、DVDの映像を見ました」

「それって……!!」

 絢はベッドの上から飛び降りると、階段を下り父の書斎に入る。
 テレビのリモコンを付け、DVDの映像を流すと、とたんに画面いっぱいに肌色のものが映った。
 それは肌の色が違う二人が合わさっているところで、モザイクが掛かっていて……。


『あぁん……いいっ……いい……』

『ここか……? ここがいいんだな』

『はぁん……すごい、すごいのぉ……ゆいか、いっちゃう!!』

「ほら、喜んでいらっしゃるでしょう?」

 すぐ後ろから祐二の声が聞こえる。
 ぱっと振り向こうとすると、肩に手を置かれた。
 大きな掌に、絢の華奢な肩はすっぽりと収まってしまう。


「ほら、あんなふうに胸をもまれて」

 祐二はそう言うと、そっと後ろから絢の胸に手を伸ばす。

「え……」

 その手はとても優しく、胸の輪郭を辿る様に服の上から触れる。
 最初はたどたどしく、次は少し強めに指を這わされる。


「………っ」

『あぁ……いい……すごいの……』

 息を呑んだ絢の心を代弁するように、AV女優が大げさに喘ぐ。

「とても柔らかい……まるでマシュマロのようです」

 首筋に祐二の熱い息が掛かる。
 驚いたことにロボットも興奮すると体温が上がるらしい。


(ってそうじゃなくって……!!)

「だ、だめ!!」

『だめぇ〜』

『何が駄目なんだよ、こんなエロい声出しやがって』

 とっさに拒絶した絢に答える様に、AVから声が漏れる。

「そうなんですか?」

「そうじゃないっ――!! とにかく止めて!」

「はい」

 祐二はそう返事をすると、するりと絢の身体から手を離し、テレビの電源を切った。

「あ、あのねえ……こういう行為は」

「セックスですね?」

 言葉を濁した絢とは対照的に、祐二が濁さず口にする。

「そ、そう、せ……セックス。セックスはね、愛し合っている男女がやるものなの。付き合ってるカップルとか、夫婦とか……分かる?」

 何でこんなことを私が教えなければならないんだと思いながら、絢はこんこんと説明する。

「はい」










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