欲望の行末 〜愛しのアンドロイド〜 06
「私と祐二さんは?」
「主と使用人アンドロイドです」
祐二の的確な答え。
「そうよ。やったらダメでしょ?」
「そうですか。このDVDはお互い初対面の男女の様でしたが……なかなか難しいですね……」
「……っ!? た、たまにね! ……ごくたまにそういう時もあるの。なんていうの、お互いムラムラした時とか……」
絢は言いにくそうに口ごもる。
「ムラムラ……でございますか?」
大きな声でそう反復する祐二に、絢はまなじりを上げる。
「……っ! と、とにかく、私達には必要のない行為なんだから! 忘れるのよ、いい?」
人差し指で指さしてそう言い聞かせる絢に、祐二は納得がいかないようだが、やがてポンと手を一つ叩くと、心得た様に頷いた。
「なるほど……はい。わかりました」
と説得が上手くいった筈の日から、数日後。
絢は自室のベッドの上で驚愕していた。
「だから! なんでまた、夜這いしてくるのよ?」
そう叫んだ絢に、祐二は至極真面目に返事をする。
「月経前症候群です」
「は?」
聞いたことのない病名(?)に、絢は間抜けな声を返す。
「哺乳類である人間は、排卵があると子孫を作るために発情するようになっています。絢様もいま、そのような状態とお見受けします」
(は、発情――っ!?)
「つまり、絢様は今、ムラムラしていらっしゃるので、主と使用人でも、セックスをしてもよい状況かと思われます」
ぽかんとした絢は、なんだかすごいことを言われているなあと妙に冷静に考えていたが、ふと我に返る。
「い、いや……主と使用人はしちゃダメでしょ?」
「……そうですね。絢様が処女の場合は問題かと思いますが、幸い絢様は初めてではありません。ムラムラして身体を持て余して苦しがっていらっしゃるならば、それを解消して差し上げるのも、使用人の務めかと思います」
「ムラムラって言わないで!」
なんで絢が脱処女していることを知っているのかとか、突っ込むところは沢山あるはずなのに、絢はすこしずれたところに突っ込む。
「それに私はアンドロイドです。まかり間違っても絢様に妊娠の危険はありません。私は絢様に快楽だけしか与えないと保証できます」
「か、快楽だけ……?」
「はい、お約束いたします」
「………」
それはとても魅力的な誘いだった。
確かに認めたくないが、絢は今『ムラムラ』していた。
他の子達は自分で慰めたりすることもあるようだったが、絢は全然濡れないので、そうすることも出来ない。
もし、本当に快楽しか与えられないのであれば、絢にとっては願ってもない状況のはずだ。
アンドロイドなので妊娠の危険もなければ、セフレの様な煩わしさもないだろう。
(で、でも……)
「……私、こ……怖いの……初めての時、すんごく痛くて。それ以降も全然濡れなくて……」
絢は自分の掌が白くなるほど、ぎゅうと握りしめた。
一年前に与えられた恐怖に、心が悲鳴を上げる。
そんな絢を見て、ベッドにそっと腰かけた祐二がその頭を優しく撫でる。
「私を誰だとお思いですか? 絢様の為だけに作られたアンドロイドですよ。私が貴方の嫌がることをするとお思いですか?」
「……た、確かに、そうだろうけれど……でも……」
「でも……なんです?」
「………」
「察しますに、絢様は男性恐怖症なのではありませんか? もし、そうだとしましたら、それを克服するお手伝いには、私が一番適任だとお思いになられませんか?」
そう質問攻めにされ、絢は混乱した。
初めて付き合った彼氏にされた、ただ痛いだけのセックス。
独りよがりでいつも濡れていない絢に無理やり挿入し、避妊さえしてくれなかった。
絢の方にも「周りに取り残されない様、早く処女を捨ててしまいたい」という思いもあり、我慢していたが、結局彼氏には「体の相性が良くないから」という理由で捨てられてしまった。
「……怖いの……」
「私は怖くありませんよ」
零れた呟きに祐二はそう返すと、そっと絢をその胸の中に抱き寄せる。
その暖かさに、ほっとした絢の瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「……痛いの、いやぁ……」
「優しくいたします」
甘えた様な声を出す絢を、祐二はそっとベッドに横たえる。
「ああ……とてもお可愛らしい……」
上から降ってきた言葉に恐る恐る瞳を開くと、祐二の優しく細められた瞳と目が合った。
とくん。
絢の心臓が小さく跳ねる。
「可愛くなんか……」
絢は自分の痩せすぎて貧相な身体を思い出し、卑屈になる。
「いいえ、華奢なお身体も潤んだ瞳も可愛らしくて、守ってあげたくなります」
父親の好みのプログラミングがされているからだろうが、そう言われると悪い気はしなかった。
頬を染めた絢に、小さく口付けが落とされる。
何度かそれを繰り返した後、首筋に、耳に熱い口付けが落とされる。
それはたまに舌を使ってぺろりと舐め上げられ、そのたびに絢の身体がピクリと反応する。
キャミソールの上から優しく這わされる手は徐々に強さを増し、落とされる口付けは絢の身体に小さな炎を置いていくように、徐々に絢の快感を引きずり出していく。
気が付くとキャミソールをたくし上げられ、絢の白い胸が暗い部屋の中にさらけ出されていた。
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