|
菜穂が劇団アジサイに入団して一週間が過ぎた頃。ののは、少し早めに家を出て劇団アジサイに向かった。と、劇団アジサイの前には哲人がいた。
「あれ?なにしてるの??」
ののは哲人に話し掛けてみた。哲人は、「しっ」と唇に指を立てて言った。わけがわからない、とののは思いながら静かにした。すると、哲人が口を開いた。
「美香のこと知ってるか?」
「え??美香ちゃん?しってるよ」
「そっか・・・美香の母さんって、美香のこと捨ててったんだよな。それが、美香の母さんが、美香を取り戻しに来たみたいなんだ。ほら、あそこにいるぜ?」
哲人の指を指す方向には、髪の長い女の人がいた。きょろきょろとあたりを見回していた。まるで、誰かを探しているようだ。
「えっ!?・・・あの女の人が、美香ちゃんのお母さん・・・?」
「そうみたいだ。って、もうオレ塾の時間だ。まっ、美香がくら〜い顔してたら、裕子と一緒に励ましてやれよ。じゃな!」
哲人は、さっさと走っていってしまった。
(美香ちゃんのお母さん・・・。美香ちゃんのことを捨てたお母さん・・・なのに、なんで今更、美香ちゃんを取り戻しに来たの?)
ののは、思わず駆け出していた。そう。女の人の元に。ののは、女の人に声をかけてみた。
「あ、あの!すみません。だ、誰かをお探しですか??」
「え?・・・あら、CMに出ていた子ね!本当、可愛いわね。誰かを探す?アア・・・。美香って言ってわかるかな。劇団アジサイに入ってるの。アナタも入ってる?」
「は、はい!美香ちゃんとは仲良くて・・・ええっと、あたしがこんな事聞くのはヘンなんだけど、美香ちゃんのお母さんなんですか?」
思いっきり声が裏返った。美香のお母さんは悲しそうに笑った。そして静かに話し始めた。
「私が悪いの。美香を育てて行く自信を無くして・・・・。仕事で知り合ったほかの男性に夢中になってた。そして、まだ幼稚園にもいかない幼い美香を捨てていったわ・・・。今更だけど、美香に戻って来てほしいだなんて、勝手すぎるわよね」
ののは、言葉をなくした。沈黙が二人を包む。すると、美香の声が聞こえてきた。
「何よ!!今更お母さんが帰ってきたなんて!!勝手すぎるよ。あたし、ひとりぼっちだったのに・・・・。ずっとずっとひとりぼっちだったのにさ!!」
「・・・美香。ごめん、ごめんね・・・・」
「謝んないでよ!!あんたなんか、お母さんじゃないもん!!」
美香は泣いていた。裕子が後ろから走ってきた。ののは、そのまま立ちつくしていた。
「・・・・美香。ごめんなさい・・・・ごめんなさいね・・・」 |