今井幹晴訳『モノここに始まる』(小学館、1999年初版)の検証



                                 中島章利


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          小学館版抄訳「釣り鐘式潜水器」ダ イヤモンド 社版「つり鐘型潜水器」の類似度


≪凡例≫


赤色…岩波文庫版と同一

ピ ンク色…岩波文庫版に類似、同義

黒色…今井幹晴訳のオリジナル部 分

<欠>…欠落がある

<略>…意味に影響を与えない省 略がある

網 掛け…岩波文庫版と語順が入れ替えられている部分。入れ替えの 様相は//で示す。


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 潜水普通の人間の二倍も長く水中にとどまることができるが、通常、人が水中にいることのできる時間はせいぜい一分半か二分ぐらいだろう。五分とか六分という記録も残されているが、これは非常にめずらしい例で信頼のおける文献には記録されていない
 水中の潜水に空気を送りより長く水中にいられるようにする研究はずいぶん昔から行われてきた。釣り鐘潜水器もこのような目的で発明された逆さまにしたコップを水中に垂直に沈めても、コップのなかに水が入ることはない。釣り鐘式潜水器はこの原理を応用し ている。釣り鐘形の潜水器をつくり/そ のふ ちが潜 水士の膝 のところにま でく るようにか ぶせる。/潜 水士 は内部で踏 み台の上に立 つ/こうすれば、たとえ海の底だとしても、潜水士は釣り鐘に閉じこめられた空気呼吸することができる
 ヨーロッパにおいて/もっ とも古い/釣 り鐘潜 水器<欠>に ついての/<欠>資料は、<欠>ヨハン・テニエのものだ。彼は一五〇九年エノ生まれカルロス五世の<欠>アフリカ航海の旅に随行した人であるスペイントレドにおいて、彼は皇帝とともにある実験を目撃してびっくりした。数千の見物客の目前/た いまつを持っ た/二 人のギリシャ人が逆さ<略> にし た大<略>鍋 のなかに 入って/水中にもぐり、たいまつの火を消すことなく再び浮かび上がってきたである当時この技術は/ス ペイン人は もちろん/一皇 帝/にとって未知のものでギリシャ人この技術が実現可能であることを証明するために、あえて公開実験を行ったのであろう。

 十七世紀後半になると、釣り鐘潜水器はしばしば大規模な事業に利用されるようになった。一六八七年には、アメリカ生まれの/船 大工/ウィ リアム・フィリップ<欠>が、イスパニオラ島の沿岸/財 宝を積 んだまま/沈 没した/スペイン船引き揚げ計画した。この計画を認めたアルブマール公爵航海に必要な資金を出し、公爵以外にもこの航海へ出資する二十人の投資家が名乗り出たため、計画は事業としてなりたつ見込みがついた。フィリップは二百トン<略>の船でイギリスを出帆し、幸運にも/金 額にして二 十万ポンドに ものぼる/財 宝/持ち帰ったのである。

 その後、イギリスではいくつかの会社が設立され、沈没船から財宝を持ち帰る権利を独占し、同じような事業がさかんに行われた。一六八八年、マル島で潜水士が財宝を発見した。この航海は、アーガイル公爵が先導して事業を成立させたもので、潜水たちは深さ十八メートルのところ一時間ももぐったまま作業を続け、金の鎖や金銭を持ち帰った。しかし、この航海は収入と出費とがつりあわず、財政的には失敗に終わって いる。

 イギリス王立協会の書記官、エドモンド・ハーリー博士が作成したといわれる釣り鐘潜水器は、部の幅が九十一センチ下部の幅が一・五メートル、高さ二・四メートルの大きさだった。鉛でおおわれていたため、内部を<欠>からにした状態でも底まで沈むほど重かった。下ふちには/お もりが<略>つ けられ/つ ねに直立した状 態でもぐれるよ うに/なっていた。釣り鐘のてっぺんには光を採り入れるために強化ガラスが取り付けられ、内部の人が吐き出した空気を外へ逃がすためのバルブがついている。潜水器白体は船のマストに固定された腕木から釣り下げられており、いつでも水中におろすことができた。さらに、この潜水器は新鮮な空気を補給する容器がついていた。/こ の容 器部 には油を塗った革製のパイプが取 り付けられていて、/は 水を取り入れる開 口部 があった/。パイプを通じて/空 気を/潜 水器に/送り込み、空気がなくなると<欠>別の容器を船からおろて交換した。このような方法ハーレーと<略>四人の仲間水中に一時間半も安全にとどまることができたと記録されている。

 /釣 り鐘潜 水器を/水中へ下降する時は、/初 めは<欠>ゆっ くりとおろさ なければならない/。これは潜水が圧縮<略>空気<欠>に徐々に慣れていく必要があるためだ。さらに、/途 中で一時停止しながら/定期的に新 鮮な空気を取 り入 れ浸 入してく る水 を外 へ出した/。上部の窓からは<欠>光が入るので内部は読み書きができるほど明るく、船上の人たちとは鉄くぎで鉛板に書きつけた通信文でやりとりした。

 
ハーレーを悩ませた唯一の欠点は下降中に/耳 に/感 じる/鋭い痛 み/だった。ある潜水士は噛ん丸めた<略>を耳に入れて水圧から内耳を保護しようとしたが、丸めた紙は耳をふさぐ栓となってしまい、/深 くま で入ってし まったた めに/外 科医の 処置が必要となった/。

 一七七六年には、エディンバラに住むスポルディングがハーレーの<欠>潜水器改良した。スポルディングの潜水器は木製で重量がかったため浮力を打ち消すためにおもりが釣り鐘の中央からつるされた/こ のおもりを/潜 水器下 部の開 口部 で/引き上げたり、さらに深く落下させこと水深を変えることができた。潜水おもりが到達する深さを調整して、随意にもぐれるようになったのである。事故のには船上の助けを借りずに浮上することができ下降した地点からかなり離れた場所までも移動できるようになった

 潜水用の装置は潜水器だけではなく、空気と水をきっちりと密閉する潜水服も発明されたハーレー博士の考案による鉛製潜水用ヘルメットは、前面がガラスでできていて、見通しがきいた。鉛のヘルメットには管が取り付けられてい、先端は釣り鐘潜水器につながっている。その管を通してヘルメット内に新鮮な空気を送ることができた。

 また、/一 七九八年に ドイツ人の/ク リンゲルト発 明した/<欠>潜水服は錫板でできており円筒形をしていた/で できた/袖 の/短 い/上 着水密ズボン接続部は金属にボタン留めてあった。この部分はさらに黄銅製の輪を重ねて水の浸入を防ぐようになっている/ヘ ルメットに/軟 らかい管 が/二 本/接続してあり水面に浮かぶ船につながっている。一本象牙でできた吸からヘルメットに空気を送るため、もう一本は潜水士が吐いた<欠>空気を外へ逃がすためのものだ。一八〇四年に技術者のトンキンは、ふいご、もしくはポンプを使った装置をつくり、さらに潜水器に改良を加えた。これは空気の力が水圧と等しくなった時に、汚れた空気をバルブから水中へ出すあるいは管を通して上へ逃がす装置だった。釣り鐘式潜水器は、沈没船の財宝をさがすためだけに使われたので はなく、河川の土木工事や港の修理など公共の工事にも使われ、人々の生活を便利にするために貢献している。