俺には恋人がいる。
 自慢じゃないが、凄く可愛い。これは主観だが、恐らく客観的にも平均以上ではないか、と本人が言っているんだからそうなんだろう。はっきり言って、俺なんかの恋人には勿体無い。それに、彼女から俺に告白して来たのだから、世の中捨てたものじゃないと思う。
 彼女と俺は同じ私立高校に通い、同じ部活……というか同好会に属している。俺たちは同じく高校二年生で、学校にも慣れ、かつまだ受験の心配などしていない、気楽な時期だった。
 彼女についてもう少し語るが、彼女はハーフであり帰国子女だ。母がアメリカ人で、彼女が小学校にいる間はアメリカに住んでいたらしい。そのため英語が達者で、英語が大の苦手な俺はいつも圧倒される。また母の影響を受けたか、彼女の髪と瞳は薄い茶色である。それが俺には物珍しく、よりいっそう彼女を綺麗に見せているのだと思う。

 さて、彼女と俺は同じ同好会だと言った。その同好会というのが、俗に言う「トレーディング・カード・ゲーム」の同好会だ。マジック:ザ・ギャザリングを始めとするあらゆるTCGがプレイされていて、人数は結構多い。俺は中学までTCGなんてプレイしたことが無く、彼女に触発されて高校入学直後から始めた。
 俺たちは中学で知り合い、親しい仲を続けながら高校入学直前に恋愛関係になった。その前からTCGの誘いはあったが、その当時俺は野球部に所属していて、時間が無いことを理由に断り続けていた。野球部引退後も、何とか高校に入るために受験勉強漬けの毎日で、やはり時間が無かった。無事高校へ上がれたのと同時に、彼女から告白があった。
 彼女は「これで一緒に遊べるね」と言って、俺にカードの束――俗に言うデッキ――を渡した。とりあえずと俺が受け取った瞬間、彼女は俺に抱きついて来たのだ。大胆だとか感じる前に、俺の頭の中は真っ白になった。確かに俺と彼女は親しかったが、まさかいきなり抱きつかれるとは思わなかった。俺が抵抗しないことを肯定と受け取ったのか、彼女は顔を上げてこちらを見つめ、瞳を閉じた。
 ――その後のことは敢えて伏せるが、何はともあれ俺は彼女と恋愛関係になったのだ。

 その時彼女に渡されたカードの束。最初はそれしか無かったが、だんだんとのめり込んで行く内に膨大な量に増えていって、現在進行でまだまだ増量中である。彼女に教えられるまで、これの楽しさに気付かなかった自分が馬鹿みたいになってくる。彼女だけでなく他の生徒とも闘うが、やはり彼女が一番強い。
 彼女は強い。俺と彼女には、単なるプレイングのテクニックとかカード資産の差ではなく、それ以前に経験の差があった。でも、たまに勝つこともある。その時は凄く嬉しい。そういう時、彼女は決まって「今度は負けないから」と笑いながら言う。

 そのカードゲームこそ、俺と彼女を結ぶ物。「遊戯王オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ」だ。