八月二日、合宿二日目の俺の目覚めは、最悪とは行かないまでも良いものではなかった。
 下腹部に衝撃を感じた俺は、痛みで目を覚ました。俺が目にしたのは、その持ち主によって無残にもぐちゃぐちゃになった掛け布団と、なぜか「ベッドと垂直に寝ている」その持ち主ことユカだった。
「寝相が悪い……ねぇ」
 眠気も飛んでしまったようだし、俺は起きることにした。向かいに回って、ベッドから落ちそうになっているユカをベッドの真ん中辺に戻してやった。意外と重かったのは、体に力を入れていなかったからだろう。
「何時だよ、今……」
 音を立てずに時を刻む寝室用の壁掛け時計を見ると、まだ深夜一時を回ったところだった。このまま夜を明かすわけにはいかないから、とりあえず外に出ることにした。廊下に出ると、月明かりだけが赤絨毯を照らしていた。俺は暗闇が怖いとか幽霊が怖いとかいうことは無いが、やはり夜の廊下は不気味な感じがする。
「……ん?」
 俺たちの部屋はバルコニーのすぐ隣にある。ふとバルコニーの方を見ると、何か人影のようなものが見えた。強盗……ではないだろうが、一応確かめるに越したことはない。俺はバルコニーに続く扉を開けた。
「やあ、こんばんは」
 そこにいたのは、茶髪の少年……アルフレッド・カーティスだった。ジーンズを履いているところからして、着替えていないのか、それともわざわざ着替えたのかどちらかだろう。
「こんな時間にどうされました? まあ、大方ユカに起こされたんでしょうが」
 見抜かれていた。さすが幼馴染だ。俺は苦笑を返し、ついでに質問を返した。
「こっちのセリフだよ。今頃は部屋でよろしくやってると思ったんだが?」
「はは……。それはありませんよ」
 俺に背を向けて月を見上げていたアルは、俺に振り返った。
「リズは非常に夜が苦手なんですよ。九時にはもう熟睡していましたね。ついでに朝にも弱いですね。休みともなると、リズの睡眠時間は十二時間超えてますよ」
「そうか……。ま、昼にでも頑張れよ」
 アルは苦笑し、同じ質問をぶつけてきた。
「あなたはどうなんですか? ユカとは」
「『プラトニックな恋愛』が良いんだってよ」
「へぇ……。それはそれは」
 アルは意味ありげに考えるそぶりを見せ、すぐにやめた。そして俺に近付いてきて、こう言った。
「暇でしょう? 少し遊びませんか」
「良いよ」
「それじゃあ、三階で待っていますよ」
 そう言って、アルは廊下に消えていった。俺は部屋に戻り、デッキを取り出して部屋を出た。暫く歩いてから階段を上り、ホールの扉を開けた。そこには、取り出しだ椅子に座ったアルがいた。既にもう一つの椅子とテーブルが出されていた。見える程度に照明が点けられている。
「どうぞ」
 俺はアルの対面にある椅子に座った。
「どうします? シングルかマッチか」
「あいにくサイドデッキを持ち合わせてない」
 分かりましたとアルは頷き、デッキを取り出した。軽くシャッフルし、お互いに交換してまたシャッフル。最後にカットして、五枚引いた。
「一つ確認しておきたいのですが」
「何だ?」
 アルはポケットから、一枚のコインを取り出した。
「デュエルに使用するコインはこれで構いませんか?」
 見たところ、コナミ製の公式コインだ。俺は問題ないと返した。
「それでは、ついでにこれで先攻後攻を決めましょうか」
 コイントスの結果、アルが先攻に決定した。ミッドナイトの決闘が、今開かれる。

「「デュエル」」

「僕のターン、ドロー。スタンバイ」
 アルのデッキは未だ知り得ない。何か仕掛けてくるか。
「メインフェイズ、《勝負師の理論》をキャストします」
 ……成る程な。コインを確認したのはそのためか。ギャンブルデッキとは……。
「投げますよ」
 アルはコインを2回弾いた。出たのは2回とも裏。にしても、綺麗なコイントスだ。やっぱ慣れてるな。
「残念でした。僕は手札を2枚捨てます。モンスターをセット、カードを2枚セットしてターンエンド」
 いきなりアルの手札はゼロ。中々の滑り出しだ。
「ドロー」
「スタンバイフェイズにトラップをキャストします。《ギャンブル》
 いきなりアグレッシブだな……。
「僕は裏を指定します」
 アルはコインを弾いた。手の甲で抑えられた公式コインは、見事に裏を向いていた。
「それではカードを5枚ドローしますね」
「っ……。モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
 俺が伏せたのは《魂を削る死霊》。戦闘で破壊されない強力な壁だ。
「僕のターン、ドロー。スタンバイ」
 相手の場にはモンスターが1体いる。《魂を削る死霊》を伏せているとはいえ、ギャンブルデッキは除去手段が豊富だ。《ブローバック・ドラゴン》もあり得るし、《時の魔術師》が出てきてもおかしくない。
「セットモンスターを生け贄に捧げます」
 この場合は前者らしい。
《ブローバック・ドラゴン》を召喚。優先権を行使し、起動効果を発動します」
 対象はセット状態の《魂を削る死霊》だ。アルはコインを弾いた。
「表です」
 あと2回だ。次にアルは裏を出し、続けても裏。結局効果は不発だ。これが表側なら対象に取るだけで破壊できるが……まあそれはいいか。
「それではバトルフェイズ。《ブローバック・ドラゴン》で裏側モンスターに攻撃します」
《閃き》
 もちろん通しても破壊はされないが、どうせ次のターンで撃つつもりだったものだ。ドローしたカードをプレイされる可能性もあるとは言え、疑いの目をセットに向けるのもまた戦術だとユカは言っていた。まあ、結局決め手にはならない小技ではあるけどな。
「分かりました。僕はカードを1枚ドローし、メインフェイズ2に入ります」
 あくまでアルは淡々としている。ポーカーフェイス。勝負師の基本ではあるが、ここまで感情を出さない奴は見たことがない。アルはカードを2枚伏せてターンエンドを宣言した。
「ドロー」
 相手のフィールドにはセットが3枚。ギャンブルデッキの罠カードと言えば、《モンスターBOX》がメジャーだ。ただ、相手の場にはモンスターがいない。あまり警戒する必要はないか。
《暗黒界の狂王 ブロン》を召喚。さらにセットの《魂を削る死霊》を反転し、バトルフェイズに入る」
 俺の手札には《暗黒界の軍神 シルバ》がある。通ることは無いと見ていいが、もし通ったとすれば稼ぎ出せるアドバンテージは相当なもの。俺はまず、《魂を削る死霊》での攻撃を宣言した。
《モンスターBOX》を発動しますね」
 今日の俺は勘が冴えている。
「宣言は裏。ではいきます」
 再び響くコインの音。出たのは表だ。このデュエル初のダメージが入り、同時にアルの手札から《一撃必殺侍》が捨てられた。続く《暗黒界の狂王 ブロン》の攻撃は、アルが裏で当てたことで阻止された。メイン2でカードを1枚伏せて、ターンを終えた。
「僕のターン、ドロー。スタンバイ、500ライフポイントを支払います。メインフェイズで《地雷蜘蛛》を召喚」
 《地雷蜘蛛》か。リスキーなギャンブルアタッカーだ。ただ、昨今では立たせておくだけのいわば「壁」として使う場合もあるという。だが、アルはギャンブルデッキ。普通に攻撃してくるだろう。
「バトルフェイズ、《地雷蜘蛛》《暗黒界の狂王 ブロン》を攻撃します。宣言は裏」
 《地雷蜘蛛》の効果はバトルステップ中に発動する。つまり、除去が待ち構えていたりするとなんか損した気分になったりするわけだ。一時期俺も使っていたが、結局《閃き》や《収縮》を撃たれてユカに苦笑されるのがオチだった。
「当たりですね。何か発動しますか?」
 アルが弾いたコインは裏を向いていた。俺は頷き、あの日のユカのようにカードを翻すわけだった。
《炸裂装甲》を発動する。残念だな」
「了解しました」
 アルはやっぱり無表情。《地雷蜘蛛》を墓地に置き、そのままメイン2でカードを1枚セット。これでセットが3枚。不気味すぎる。
「ドロー。まずは、セットから《大嵐》を発動する」
 俺は《大嵐》を伏せるクセがある。これがなぜかと言うと、何かにつけて策士の真似事をする俺の性格に起因する。
 プレイヤーはカードを伏せる時、必ず《大嵐》の可能性を考慮する。カウンターを使わない場合、大体のプレイヤーは相手の場のカードとこちらの場のカードを見て、損をしないように伏せる。例えば相手の場にカードが1枚伏せてあれば、こちらは2枚まで伏せれば損をしない。だが、これは《大嵐》を手札から発動する場合だ。
 もしそのセット1枚と言うのが《大嵐》なら、計算が狂うことになる。もしカードを2枚伏せていれば、カード・アドバンテージを取られることになる。だから俺は、その計算の違いを戦略に組み込んでいる。初心者らしくないとユカにはよく言われるが、元々こういう戦略ゲームは得意な方だった。
 ……さて。だが、この場合はどうか。アルは2枚どころか、3枚ものカードを伏せている上に《モンスターBOX》がある。これはもう計算がどうとかは関係ない。こんなにもカードを伏せることが出来る理由はただ1つ。
 カウンターを伏せている。
《気まぐれの託宣》を発動します。宣言は裏」
 これはまた……。
「顔に似合わず攻撃的だな」
「勝負師は積極的でなければいけませんからね」
 コインが弾かれる。これが通ると相当なカード・アドバンテージが得られるのだが……今日の俺はあまりついていないようだ。
「当たりですね。《大嵐》を無効にします」
「分かった。それじゃ、その右のカードを対象に《暗黒界の雷》を発動する」
「通します」
 俺はカードを墓地に置きつつ、手札から《暗黒界の軍神 シルバ》を捨てた。それをフィールドに出し、俺は続けてバトルフェイズへ移行する。
《魂を削る死霊》で直接攻撃」
 当然、《モンスターBOX》の効果が発動する。アルが指定したのは裏。そして出たのは裏で、続けての《暗黒界の狂王 ブロン》も表で阻まれた。とことん運の悪い日だ。今日の獅子座の運勢は最悪かもしれない。
《暗黒界の軍神 シルバ》で攻撃」
《モンスターBOX》の効果を発動しますね。指定は表」
 アルが弾いたコインは、今度は外して裏が出た。2300ダメージが通り、アルのライフは残り4900ポイントだ。俺のデッキの展開力なら、《モンスターBOX》があっても数で押し切れるか。俺はそのままターンエンドを宣言した。
「僕のターン、ドロー。スタンバイ。500ライフポイントを支払います。メインフェイズ1で、《暗黒界の軍神 シルバ》を対象に《強奪》をキャストします」
 《強奪》、か。壊されやすいデメリットを考えると、そのまま生け贄にするのが妥当だろう。実際、そうなった。
「そのまま生け贄に捧げ、《ブローバック・ドラゴン》を生け贄召喚――さらに優先権を行使し、そのセットカードを対象にして効果を発動します」
「なら、《奈落の落とし穴》だ。不発だが……一応コインは弾くんだよな」
「ええ、そうですね」
 アルは《ブローバック・ドラゴン》をゲーム外に押しやり、コインをすばやく3回弾いた。裏・表・表と出て、アルはコインをテーブルに置いてから、次に手札からカードを1枚セットした。続けて俺のターンに入る。
「ドロー。そのままバトルフェイズに入る。《魂を削る死霊》で攻撃」
「指定は表です」
 面倒になったのか、アルは発動宣言を飛ばして効果処理に入った。出たのは裏で、アルの手札から《モンスターBOX》が捨てられた。続けた《暗黒界の狂王 ブロン》は《炸裂装甲》で破壊され、結局ダメージは300にとどまった。
「モンスターをセット、さらにカードを1枚セットしてターンエンドだ」
「僕のターン、ドロー。スタンバイ」
 アルは《モンスターBOX》を維持し、残りライフは3600。俺がセットしたのは、フィニッシャーの1つである《メタモルポット》だ。アルほどの奴なら、大体これが何なのかは予想をつけているだろう。俺みたいなデッキは基本的に表側攻撃表示で展開するから、セットとなると選択肢が狭まるからな。
「まずは《強欲な壺》でカードを2枚ドローし、カードを1枚セット」
 わざわざメイン1でカードをセットしてくると言うことは、やはりセットを見抜いているということか。次にアルがプレイしたのは、攻撃力2200を持つアタッカー、《地雷蜘蛛》だ。もうライフは半分を切っていると言うのに、やっぱりアグレッシブだ。
「バトルフェイズに入ります。《地雷蜘蛛》でセットモンスターに攻撃」
 アルは裏を指定し、コインを弾いた。コインは裏を向いていて、ライフは減ることなくダメージステップへ移行した。俺は《メタモルポット》を表に返し、効果を処理する。とは言っても、俺の手札にダークサイドモンスターはゼロ。互いに手札を補充しただけだ。
「僕はこのままターンエンドです」
 手札5枚を残したまま、アルは手のひらを返した。俺はカードを引く。やるべきことは、もう決まっている。
「メインフェイズ1。カードを1枚セットし、《魂を削る死霊》を生け贄に捧げる」
 アルの表情が、僅かに変化した。見える感情は――悲しみ。
《魔王ルシファー》を、攻撃表示」
 手札は4枚。そして、その全てが剣と変わる。
《暗黒界の軍神 シルバ》《暗黒界の武神 ゴルド》を2体ずつ特殊召喚する。バトルフェイズ――」
 《モンスターBOX》が当たる確率は50%。理論上は、2体のモンスターがいれば、確実に《地雷蜘蛛》を倒すことが出来る。そして、残る3体のうち、1〜2体の攻撃は通ることになる。アルのライフを全て削りきれる確率は、かなり高い。
「――《暗黒界の武神 ゴルド》《地雷蜘蛛》に攻撃する」
「指定は裏です」
 《モンスターBOX》の前に攻撃表示でモンスターが立っている……。普通なら攻撃を躊躇う場面だが、あいにくと今俺に謙虚さと言うものは存在していなかった。
「……表ですね。《地雷蜘蛛》は破壊します」
 前言は撤回しよう。俺は、今日意外と運が良い。
「続いて《暗黒界の軍神 シルバ》で攻撃だ」
 いや、前言をさらに撤回しよう。運はそう続かなかった。《暗黒界の軍神 シルバ》が表で防がれると、2体目の《暗黒界の軍神 シルバ》《暗黒界の武神 ゴルド》も裏裏と防がれた。ルシファーだけは裏指定の表で通ったが、なんとなく危ない感じがしてきた。運は向こうに傾いているのかもしれない。
「ターンエンド」
 俺には4体のダークサイドとルシファー。手札はなし。セットが1枚のみ。マス・デストラクションが飛んできた瞬間投了するしかない。
「僕のターン、ドロー。スタンバイ、《モンスターBOX》を破壊します」
 アルのライフは1000だから、一応このターンだけは維持できたハズだが……。何か策でもあるのか。
「さて、まずは《大嵐》を発動します。通りますか?」
「ああ」
 わざわざ掃除してくるか。嫌な予感がする。
《勝負師の理論》を発動します」
 ここでドローカードか。アルは裏表と順番に出し、1枚引いた後1枚捨てた。さてと、とアルは椅子に深く腰掛けた。前言はもう一度撤回しよう。今日の俺の運勢は、最悪だ。
《表裏の天秤》をキャストします。効果は、ご存知ですね?」
「あ、ああ……」
 嫌な予感は的中した。アルはここで、決めにくるらしい。
「僕はこのデュエル中、コイントスを何度も行いましたが、何度裏を出したかご存知です?」
「いや」
「丁度16回です」
 知ってるか。一般的に8000÷500=16らしいぞ。
「僕はこれから、16回のコイントスを行います。それで全て表が出ますと……僕の勝ちになるわけです」
 そもそも、おかしいとは思っていた。
「そんなの、確率的にありえないと思うけどな」
「そうですね。65536分の1ですよ。普通ならね」
 慣れたように話すアル。慣れたように……か。
「行きますよ。1回目――」
 アルは数々の大会で好成績を収める有名プレイヤーだ。そんな奴が、ギャンブルデッキなんという、不安定なデッキを使っている時点で気付くべきだった。「何か仕掛けがある」、と。
「――表ですね。2回目――」
 ギャンブルデッキを安定させるには、方法は2つある。1つは、ギャンブル要素を薄くし、スタンダードに近づけることだ。例えば、《風帝ライザー》などが採用されるべき上級枠に、ギャンブルカードでありながらデメリットのない、《ブローバック・ドラゴン》を採用するなどだ。
「――……表です。6回目――」
 もう1つは、そもそもの前提を覆してしまうことだ。「ギャンブルをギャンブルでなくする」という行為、即ちイカサマの類がこれに当たる。1/2が1/1になれば、不安定要素など1つも無くなる。アルが使ったのは、紛れもなくこちらの手段だ。
「――……表ですね。9回目――」
 おかしい点は多少あった。1つは、なぜか裏の出る場合が多かったことだ。このデュエル中、アルがコインを弾いたのは計24回、その内16回が裏だったということは、裏が出たのは2/3だから、明らかに多いことになる。
「――……表です。12回目――」
 しかも、ライフはあと1000しかないとはいえ、都合が良すぎる試合運びだった。1回や2回ならまだしも、アルはピンチにこそコイントスを当てている。中でも特徴的なのがさっきのターンで、3連続で《モンスターBOX》を当てるなんて、ただ事じゃない。
「――……表ですよ。15回目――」
 そして、アルがわざわざこの場所を指定したのも1つある。デュエルディスクを使うなら、多少風があるバルコニーでもデュエルは出来る。それでも、わざわざ3階のこの場所にしたのは、風がコイントスを邪魔するからなのだろう。
「――16回目です。ところで……僕のことを、卑怯だと思いますか?」
 唐突な質問だ。俺は卑怯だとは全く思っていない。コインを自由に操れるとすれば、それはかなり多大なアドバンテージになる。だが、それがどうした。《モンスターBOX》が邪魔なら《サイクロン》を使えばいいし、《地雷蜘蛛》には《炸裂装甲》で対処すれば良い。いくらでも戦う方法は用意されている。
「1つだけ訊いていいか?」
「なんです?」
 俺が訊きたいこと。それは、至極真っ当なことだ。
「なんでわざわざ、時々外したりしたんだ。全部当てればいいだろう」
 コイン操作能力……そんな能力を持っていながら、アルは時に自分が不利になる方を出した。それは、勝利に執着するならばありえない話だ。
「確かに、勝利を一番として考えるなら、それもアリですね。ですがそれでは……楽しくないでしょう?」
 これが決闘者デュエリスト勝負師ギャンブラーの違い……か。だが、自作自演ほどつまらないものは無いと思うがな。
「行います」
 アルはコインを弾いた。照明に反射して煌くコインは、優雅に宙を舞った。この5センチにも満たないコインは、一度頂点に達した後、回りながらアルの手の甲に収まった。アルは押さえた右手を、ゆっくりと外した。

「表ですね。お疲れ様でした」





《勝負師の理論》(しょうぶしのりろん) 通常魔法カード
効果:コイントスを2回行う。表が出た回数だけカードをドローし、裏が出た回数だけ手札を捨てる。

《気まぐれの託宣》(きまぐれのたくせん) カウンター罠カード
効果:魔法・罠カードが発動した時に発動できる。コイントスで裏表を当て、当たった場合それを無効にして破壊する。

《表裏の天秤》(ひょうりのてんびん) 通常魔法カード
効果:このデュエル中このカードを発動する前に、カードのテキストによって自分が行ったコイントスのうち、裏が出た回数だけコイントスを行う。表が出た回数×500ポイントのダメージを相手に与える。