――この世には、不可解なことが多すぎると思うのは、私だけだろうか。
 例えば、この世に時を操る紙切れが存在したり、その所為で私が大々的な事件に巻き込まれてしまったり、会って一週間もしていないのに家に居候している奴が居たり、そいつが中性属性を持っていたりと、とにかく摩訶不思議である。もしかしたら私だけかもしれない。
 そして、またしても不可解なことを見つけたのが、"あの事件"から1ヶ月経ったころの梅雨の真っ只中、ある朝のこと。居間のテレビで情報番組をやや見つつ朝食を食べていたのだが、あるニュースが私の鋭利なる聴覚に引っ掛かり、私の思考は完全にテレビへとシフトした。
 それは、端的に表すならば誘拐事件のようなのだが、普通の誘拐事件とは規模が違いすぎる。誘拐範囲は、ほぼ日本全域に散らばっていて、さらには海外でも一部同様の事件が起きており、被害者は100人弱。犯行の手口、被害者の特徴がほぼ一致するため、集団の同一犯である可能性が高いという。犯行は全て、「睡眠薬」を用いているらしく、さらに被害者の特徴がこれまた奇異だ。


 要するに、誘拐されたのが"デュエリストだけ"という事件。


 不可解である。カード強盗なら分からないでもないのだが、何かが窃盗された形跡など無く、本当に"誘拐"しただけであるというのだ。何が目的なのかは依然分からず、警察も手を焼いていると言う。ほぼ解決の糸口が見つからず、かと言って大規模すぎて見逃すことも出来ず、一先ずは日本に次いで被害者の多かったアメリカの警察と協力し、何とか犯人を捕まえるべく奔走中だという。
 当然なのだが、この私、汐崎麗華にも被害が及ぶ可能性がある。いやそもそも、遊戯王OCGが浸透した今日こんにちで、対象にならない人間の方が少ないのではないか。そうでなくても、私の友人の殆どが対象となってしまうため、かなり戦慄を覚える。
 いや、そう言うと語弊があるかもしれない。誰の所為かは分からないが、またしても不可解なことに、この戦慄は実感として私を襲った。


 私は、これまでに不幸な人間だったのかと嘆息せざるを得ない。


第0話 プロローグ

―Prologue―



この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、建造物等とは一切関係有りません。


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