|
土曜日の朝。いつもは休日の始まりということで、多少はテンションが上がるはずだが、今日はあまり調子が上がらない。悪夢でも見たかのように重たい目覚め、呼吸も乱れている。というか、今の状況自体がナイトメアだ。 精神的に辛い。 このまま月曜日を迎えたとして、ユウリとタクヤ、そしてアキラさんが居なかったらどうする? いや、どうなってしまうのだ、私は。 連絡を取ろうとしても、待っているのは圏外を示す声だけ。私を支えてくれるのは、不安定な仮説と、中学時代に身に付いた強がりの理性だけ。ハッキリ言って勝てない。「大切な人を失う負の感情」に勝ることが出来るのは、「大切な人を失わない」という状況だけだ。 何とか着替え、よろよろと自室のドアを外に開き、やや幅広な廊下を壁に手を当てながら這うように伝う。リビングのドアを開き、ソファの方を向いたが、そこに居るはずの人がいない。 「――イツキ?」 思わず声が出る。――が、返事は無い。最悪のケースを想定しつつも、一先ずイツキを捜索することにした。 まず、物置と化している和室を見るが、居ない。バスルームの電気は切ってあるし、トイレも同様である。父の部屋にわざわざ入るわけが無いから、残されているのは―― 「あっ、レイカちゃん!」 ドアを開こうとしたら、いきなり内側から開いた。 「大変なんだ、ユウカちゃんが!」 そう、ここはユウカの部屋。しかし―― その主は、姿が見えない。 すとん、と力が抜けたように、私はその場に座り込んだ。喪失感からかは分からないが、意識がぼやけてくる。気付いた時には、私の意識は途切れていた。不自然なほど、安らかに。 第2話 計らずして―The Coincidence―目覚め直前の意識がハッキリとしない状態。五感がまだしっかりと働いておらず、曖昧な情報しか伝わってこない。分かるのは、潮の香りと頬に伝わる砂の熱さだけ…………いや、十分過ぎるか。 端的に言って、そこは浜辺だった。 そう気付いた瞬間、砂の熱で私の意識は完全に復活した。どのくらい眠っただろうか、いやそれよりも、私は何故こんな所にいるのだ。 そこで思い至った、ある可能性。 「あの事件……」 思わず声に出たが、やはりこれしか考えられない。「デュエリスト消失事件」。手口は確か「睡眠薬」の使用だったはずだから、さっきの眠りにも説明が付く。しかし、今はどうも出来ない。 ワンピースに付いた砂を払い落としつつ、周りを眺めてみる。 まず目に付いたのは、私が左手にはめているデュエルディスクである。そんなのしていなかった。しかも、そのディスクにはモニタのような黒い長方形があり、何かを映せるようになっているようだ。そして、私は何故かいつも履いている靴を身に着けている。さっきまでは室内だったはずだが。 空は快晴、雲一つ無い。海水に手を 海と反対方向を見ると、広々とした森が広がっていた。得体の知れない場所だが、一先ず日陰に入ろう。そう思った瞬間、私の身に着けているデュエルディスクから、声がした。驚きつつも、それに耳を澄ます。 『参加者が揃ったようですので、これからゲームの解説をしたいと思います』 完全に支離滅裂だった。 この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、建造物等とは一切関係有りません。 |