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とりあえずは、デッキを組まないことには始まらないだろう。人を探すのは後でもいい。この島にいる限り、私は独りじゃない。 突如出現した――元からあったのかもしれないが――簡素な紙袋から、カードの束を取り出す。即興でデッキを組んだ経験は無いが、この場合はやはりスタンダード寄りに組んだ方が良いのだろうか。 カードを探しやすくするために、カードを1枚ずつめくり種類毎に分けていく。一応は、モンスター・魔法・罠がバラけるように選ばれているようで、私としては一安心だった。即興でドローゴーを組んでも勝てないだろうから。 カードを分けているうちに、ある1枚で手が止まった。 《カオス・ソルジャー −開闢の使者》 第4話 開局 -麗華-―Beginning #Reika―そう、かつて暗黒期と呼ばれる時代を作り出した、その一角である。よし、これを主軸に置いて行くとしよう。 まずはモンスターだ。総合計40枚丁度、これは仕様だろうか。それは良いとして、《カオス・ソルジャー −開闢の使者》があれど、出せなければ意味が無い。光と闇のモンスターを探すことにしよう。 結果、通常モンスター含め、光6枚・闇7枚。まあ上々だろう。中には《サイバー・ドラゴン》や《魔導戦士 ブレイカー》といった強力カードも混ざっていたため、私は運が良かったと言うべきか。まあ、比較対象が無いから分からないが。 次に魔法・罠だ。実は、私はこれらの選考に慣れていない。私自身のデッキがほぼモンスターのみであるのに加え、デッキ自体が特異であるため、スタンダードな採用が出来ないのである。とりあえず必要なのは除去カードだろうか。 ざっと眺めた所、《地砕き》や《地割れ》などが1,2枚はあった。罠の方でも、一応使える除去カードはあった。まずはそれらをかき集める。計7枚、魔法5枚・罠2枚であった。これらは全てモンスター除去カードだが、魔法・罠の除去魔法――《サイクロン》など――は全く無かった。これは少し残念である。 とりあえず必要なカードは揃ったが、最低でもあと19枚は埋めなければならない。ここまででモンスターは計14枚だから、バランスを取るためには通常あと4,5枚程度で足りるが、今回は所持カードに制約があるため、そこが問題となる。 普通、スタンダードとよばれるデッキにおいて、魔法・罠の比率がモンスターより高い理由は、それらに「必須カード」と呼ばれる採用枠があるからである。「必須カード」を余す事無く投入できれば、それだけで魔法・罠の2/3は埋まってしまうだろう。 しかし、今回はそれが出来ないから、必然的に魔法・罠の比率を下げなければならなく、即ちモンスター比率が高まるのである。とりあえず攻撃力の高いもの、アドバンテージの取れそうなもの……要はある程度使えそうなカードを11枚集め、モンスターを25枚にした。あと8枚。 残りの8枚はどう埋めてくれよう。ひとまず、魔法の必須枠である《光の護封剣》があったのでそれを投入し、あと7枚。後はドローカードが欲しい所だが、あいにく《強欲な壺》だの《天使の施し》だのは勿論の事、《成金ゴブリン》や《強欲な瓶》も無い。 魔法はもう当てにならないだろう。威力の弱い装備魔法や、相性の悪いフィールド魔法、後は専用カードぐらいしかない。こうなれば罠に頼るしかない。もう1度罠カードを見直すことにしよう。 罠の束を1枚ずつ熟慮しながら見ていったうち、使えそうだったのはカウンター罠である。カウンター罠と言うのは、総じて「ハズレ」が少ない。確実に特定のカードを止められることで目的が一致しているため、使えないカードは一部の専用カウンターを除いて殆ど無い。 王道である《神の宣告》は無かったが、《マジック・ジャマー》など計4枚を採用し、あと3枚。 あと3枚……か。モンスターを増やして事故を防ぐか、魔法・罠を増やして戦略の幅を広げるか……。ここは後者を選択しておこう。"使える"除去カードは尽きているが、"あまり使えない"除去カードならまだある。《無差別破壊》とか言う懐かしいカードを含め3枚を投入、これで一応は完成である。 完成したデッキをざっと眺め、問題点は無いか確認する。と言っても、カード枚数が少ないため3枚制限にも殆ど掛からない上、制限・禁止は元々無い。ということで特に問題は見つからなかったため、即座に次のことを考える。 問題は、これからどう動くか……だ。 ゲームの特性上、唯一強いワンマンプレイヤーは出てこないはずだ。よほどの幸運や不運が無い限り、初期のデッキでは格差などそうそう生まれない。誰かを退場させてカードを手に入れれば変わってくるが、序盤ではさして問題ないだろう。 何が言いたいのかというと、プレイヤーのデッキに差が無い、それはつまり所持ポイントにもあまり差が出ないと言うことなのだ。恐らく、序盤では大抵のプレイヤーが3ポイントしか持っていないはずだから、1回でも勝っておけば大分有利になる。デュエルの有無を自分で選べるのだから。 一先ずは、デュエルに1回でも勝っておいた方がいいだろう。そのために、とにかく相手を探す必要がある。 デュエルディスクのレーダーを利用することにしよう。画面にタッチしつつレーダーを呼び出し、赤い点を探す。……すぐに見つかった。ここから程近い、北東の位置だ。 私は立ち上がり、何となく紙袋に入っていた冊子――地図らしいが――を取り出した。表紙には「WORLD MAP」の文字……って――。 「世界地図じゃない……」 何の冗談だ、と思いつつ、暇潰しにはなるかと一応持っていくことにした。私は日が差し込む広大な森の奥へと視線を向け、目を細めた。私と目が合った人が居るならば、その人は確実に「睨まれた」と思うだろう。 私は歩き出した。 そして、私の闘いは――――始まる。 この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、建造物等とは一切関係有りません。 |