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――《封印されしエクゾディア》 遊戯王OCGにおいて古来から存在するエキストラ・ウィン……すなわち、特殊勝利を可能とするカードである。 その条件は、通称「エクゾディアパーツ」と呼ばれる、5枚のカードを手札に揃える事。非常に単純明快であり、同時に困難な条件でもある。それ故、数々のデッキビルダー達がこれの専用デッキを組み、しかし成功と呼べるものは殆ど無かった。《暗黒のマンティコア》と《生還の宝札》であるとか、《凡骨の意地》であるとか、様々なドローギミックと組み合わされることが多いが、制限カードであることも手伝って、未だ大会レベルまでのし上がったエクゾディアデッキは無い。 イツキが提示したヒント。「遊戯王において勝利とは何か」「ルールには1つだけ偽りがある」 とりあえず前者だけを考えることにする。これは恐らく、遊戯王での勝利がScramble Game――便宜上、以下"このゲーム"とする――での勝利に直結すると言うことだろう。遊戯王の勝利――方法は4つある。「相手のライフポイントを0にする」「相手がデッキからカードを引けなくなる」「相手が投了する」、そして「エキストラ・ウィン」。ここで私は最後の可能性を考えた。 エキストラ・ウィン。メジャーどころでは《封印されしエクゾディア》、《ウィジャ盤》、《終焉のカウントダウン》などがそれに当たる。消去法で行こう。 まず、《終焉のカウントダウン》の可能性は否定できる。意味が分からないからだ。これとこのゲームとの接点は皆無といってよい。これは発動後20ターン経過すれば勝利できるが、それは全くこのゲームと繋がるところが無い。 他の2枚には共通する点がある。それは即ち、「揃えれば勝ち」ということだ。これは使えそうである。単純に、これらを「揃えれば勝ち」というルールにすればよい。では、どちらを揃えればいいか。 このゲームの勝者は1人になるはずだ。賞品が掛かっている勝負だから、複数の勝者が出ることは望ましくない。このことから言えば、《ウィジャ盤》の可能性が否定できる。なぜならば、私は《ウィジャ盤》を2セット持っているのだ。逆に、私はエクゾディアパーツを1セットどころか、1パーツしか持っていない。 絶対に無いとは言い切れないが、《ウィジャ盤》は正解ではないはずだ。《ウィジャ盤》が2セット以上存在するのなら、そしてそれを揃える事が勝利条件ならば、勝者が2人以上存在できることになるし、それなら私はもう勝者になっているはずだ。ならば、正解は《封印されしエクゾディア》。決まりだ。 ――と、穴だらけで論理性に欠ける自己満足的な推論を立てた後、私は宣言した。 「この中で『エクゾディア』のパーツを持っている者、挙手しなさい」 第11話 解放へ―To Completion―全員がはっとした様な顔を作った。気付いたらしい。いや、気付いてくれないと困る。 「挙手、しなさい」 誰も手を挙げないのを確認して、私はもう1度言った。数秒後、1人が手を挙げた。それに続いて、3人が挙手する。どうやら、私を含めて丁度5人、丁度1セットのエクゾディアがある……はずだ。被っていなければ。 「ねぇ、そのカードが欲しいんだけど、譲ってくれない?」 笑顔で言い放った私に対し、その4人の内の1人――須藤拓也が、怪訝そうな顔で言葉を返した。 「譲れるかよ。どうせ、これが勝利に直結するからどうこうとか言うんだろ」 タクヤは《封印されし者の左腕》を見せながら、否定の言葉を吐く。他の3人も同じ意見のようで、首を横に振っている。このままでは埒が明かない。どうしようかと考えていたとき、そこにレンが割り込んだ。 「僕から1つ提案があります。デュエルで、決めてはどうですか。これはそういうゲームでしょう」 デュエルで……つまり、アンティルールにすると言うことか。確かに「奪い合い」を掲げるゲームの趣旨に合致している。 「確かにゲームとしては合致しているけど、面倒そうね」 「そうですね」 レンは簡単に肯定しながら、次なる案を出した。 「では、こうしましょう。この場にいる全員で、『バトルロイヤル形式』のデュエルを行うんです。最後に残った1人だけが、全てのエクゾディアパーツを手に入れる、ということです」 なるほど、実に面白い。 「私は賛成。他の皆は?」 「面白そうだ。オレは乗る」 「あたしもいいよ。どーせ暇だしね」 「わたしもやるよ、お姉ちゃん」 「それじゃあ空気を読んで……俺もやる」 タクヤ、ユウリ、ユウカ、アキラさんと、パーツを持つ4人が肯定した。私としてはこれで十分だが、そう言えばまだもう1人いる。先程から何も喋らない、見知らぬ女性――イツキと何かしていた女性――は、やっと口を開いた。 「なんかトントン拍子で決まっちゃったけど、わたしは賛成よ。だけど、1つ訊いていい?」 私が首肯すると、女性は本当に1つだけ訊いて来た。 「あなた達の名前は? どうやら、わたしだけ知らないみたいだけど」 「私は汐崎麗華。レイカでいいです」 「僕は神宮寺蓮。適当に呼んでください」 「須藤拓也。どう呼んでもいい」 「あたしは中里悠李。ユウリって呼んでくださいね」 「わたしは汐崎優華。お姉ちゃんと間違えるので下で呼んでください」 「俺は佐藤彰。呼び方は何でも良いよ」 それぞれ自己紹介を終え、女性がそれぞれを指差しながら名前を呟いている。恐らく名前を覚えているのだろう。全員覚え終わったのか、今度は自分自身の名前を言った。 「わたしは高橋奈那。ナナで良いわ」 そのナナさんは、それじゃあ始めましょうかと言いながら距離を取った。全員がそれに倣い、円の形に並ぶ。側ではイツキが木にもたれ掛かって――いなかった。イツキは立ち上がり、こう進言してきた。 「ジャッジはボクがする。不正があった場合は、強制的に負けだからね。ね?」 言いながら、私の方を凝視している。しないから。 「んじゃあ始めようか」 イツキは、声高らかに宣言した。 「デュエル!」
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