《Takuya's Vision》
「茶番は終わったか?」
黒マントのうちの1人が言った。ああ、終わったよ。
「それなら、さっさと始めようじゃないか。待つのは嫌いだ」
そうだな。
「何はともあれ……」
オレは、20メートル程先に突っ立ってる黒マントの2人組を見据え、デュエルディスクを構えた。
「さっさと始めるぞ」
「うん」
オレの隣に居たアイツの妹――確か"ユウカ"とか言ったか――が頷いた。こいつ、強いのか?
「そういえば――」
と、突然黒マントの片割れ(喋ってる方)が口を挟んできた。
「お前等に名前を教えて無かったな。俺様の名前は"ジン"。当然偽名だがな」
「……ナギ……」
よく注意しなければ聞こえないほどの声で、さっきまで一言も喋っていなかったもう片方が口を開いた。
「ああ、分かったよ。始めよう」
オレが促し、デュエルは開始された。
「「デュエル!」」

〜タッグデュエルルール〜(まは〜どさん感謝!)
・ターンの回りはAチーム1→Bチーム1→Aチーム2→Bチーム2の順。
・ライフは各自8000ポイント。
・各プレイヤー共に1ターン目はバトルフェイズを行えない。
・パートナーが直接攻撃を受ける場合、自分の表側守備表示モンスターへ攻撃対象を変更可能。(直接攻撃能力がある場合無視可能)
・自分から見てパートナーの場は自分フィールド扱い(カードを置くことは不可)
→「団結の力」のモンスター数カウントにパートナーのモンスターも数える等
・フィールド以外(デッキ、手札、墓地、融合デッキ、プレイヤー自身)はカード効果において相手扱い
→「闇の指名者」「自立行動ユニット」等をパートナー側に使用可能。
・直接コントロール権はないが自分のカードのプレイにパートナーの場のカードを使用可能。
→「非常食」等のコストや融合、生け贄召喚にパートナーのカードを使用可能
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「オレのターン、ドロー」
とりあえず先攻を貰い、手札をパッと眺める。1ターン目は攻撃できない、とりあえず慎重にするべきだな。
「モンスターを1体セットしてターン終了」
「俺様のターン、モンスターをセットしてターンエンドだ」
オレの向かい側、丁度鏡のように映像が浮かび上がった。こいつ等は一体どんなデッキを使うんだ?
「わたしのターン、ドロー……。カードを1枚セットしてターンエンドです」
オレの隣の汐崎妹が、魔法・罠をセットするだけでターンを終了する。おいおい、大丈夫か?
「……ドロー……モンスターをセット……エンド」
全員が淡々とターンを終え、あっという間に2順目に入る。ここから攻撃可能だが……。
「オレのターン、ドロー。セットされた《黄泉ガエル》を生け贄に《モンスターゲート》を発動する」
いきなりアクションを起こさせて貰った。
「ほう」
オレの向かい側に居たジンが、興味なさげに感嘆した(矛盾あり)。ムカつく。
「1枚目、《D−HERO ダッシュガイ》を特殊召喚し、てめえに攻撃」
ジンを指差し、俺は攻撃宣言した。《D−HERO ダッシュガイ》がセットモンスターに突進し、撃破した。
「《ドラゴンフライ》の効果を発動し、《ドラゴンフライ》を特殊召喚する」
リクルーターか……厄介だな。
「《D−HERO ダッシュガイ》は守備表示になる。ターン終了」
「俺様のターン、《スピア・ドラゴン》を召喚し、《D−HERO ダッシュガイ》に攻撃だ」
地面から少し高い場所に、鼻先が異常に長い竜が出現した。鼻先をこちらへ向けた《スピア・ドラゴン》は、《D−HERO ダッシュガイ》へと猛進して来た。
「《聖なるバリア−ミラーフォース−》」
凛としたよく通る声で、発動を宣言したのは汐崎妹だ。多分、常時より長3度くらい低い(オレには良く分からん)。こんな序盤から使って良いのか?
「ちっ、ターンエンドだ」
相手フィールドにはモンスターが1体のみ。チャンスか?
「わたしのターン。《D−HERO ダッシュガイ》を生け贄に――」
「なっ」
おいおい待て待て。
「《雷帝ザボルグ》を召喚、ナギさんのモンスターを破壊」
雷帝が放った電撃で、伏せてあった《ドラゴンフライ》が爆砕され――ってそんな場合じゃねえって。
「おい!」
「何ですか?」
普通に訊き返された。
「何勝手に生け贄にしてんだよ! 普通は相談してから――」
「生け贄にする為に残したんですから、生け贄にして何がいけないんですか?」
「う……」
なんだこの威圧感は。やっぱ姉妹だな。
「なんだ仲間割れか? 早くしろ」
ジンが口を挟んできた。しょうがない、続けてくれ。
「《雷帝ザボルグ》で――攻撃」
瞬間迷い、《雷帝ザボルグ》はナギへと攻撃を仕掛けた。
ジン:8000 ナギ:5600 タクヤ:8000 ユウカ:8000
「カードを2枚セットしてターンエンドです」
「……私のターン……カードを4枚セット……」
4枚……何を考えてるんだ。ナギは、さらに1枚のカードをプレイした。
「……《移ろう風向き》……」
突如、起きるはずのない向かい風が起こった。
《Reika's Vision》
「それにしても――」
ドーム状の一室を抜け、黙々と歩き続けていたが、イツキが口を開いた。
「黒いね」
何が。
「レイカちゃん。嘘で感情を煽るなんてサイテーだよ?」
イツキが私を指差しながら言った。何を言い出すかと思えば……。
「あんなに簡単に落ちるとは思わなかったわ」
「あれで落ちなかったら?」
目に涙――勿論演技だが――くらいは溜めたかもしれない。
「それでもダメだったら?」
しつこい。しかし、別に暇だから答えておく。
「抱き付く」
返答を聞いたイツキは、瞬間驚いた後、肩をすくめてついでに溜息を一つ。
「そこまでされたら、流石にボクも了承しちゃうなぁ」
そういえば男だった――なんて冗談は言っていない。私はもう慣れたが、イツキを常に男と認識して生活するのは難しいかもしれない。
「もう少しだよ」
急に彼の声が真剣になり、流石の私もそれなりに緊張し始めていた。
この先には、何が待っている?
《Takuya's Vision》
「なんだ!?」
そよ風ではないが、強風でもない向かい風が髪を靡かせる。ここは地下で、万が一にも自然に風が起きることはまず無い……と、思う。
「《移ろう風向き》の効果は――」
疑問符を浮かべているオレ達を他所に、ジンが説明を開始した。
「――フィールドのカードが少ない方に風が吹く。風上にあるフィールドは効果を受けない。それだけだ」
要するに、だ。
「今てめえらのフィールドに何をしても意味が無い、ってことか」
「そういうことだ」
フィールドのカードが多ければ有利になれる……か。ナギの行動の意味は分かった。
「……エンド……」
「オレのターン、ドロー」
《黄泉ガエル》は蘇生できない。とりあえず、フィールドのカードを数えとくか。まずオレのフィールドには何もない。汐崎妹――もう面倒だからユウカにする――のフィールドには《雷帝ザボルグ》と伏せカードが2枚。ジンのフィールドは何もなし、ナギは《移ろう風向き》と伏せカード4枚。つまり……だ。
「カードを2枚セットする」
これでお互いにフィールドは5枚。向かい風が止んだ。
「手札から《名推理》を発動するぜ。選べ」
ジンを指差しながら発動宣言した。
「"8"」
「よし……」
デッキをめくり始める。最初の数枚は墓地に落ち、ようやくめくられたオレンジを公開する。
「《可変機獣 ガンナードラゴン》だ。特殊召喚する」
風上はこっちだ。この状況なら攻撃は通る。
「ナギにダイレクトアタック」
「…………」
ジン:8000 ナギ:2800 タクヤ:8000 ユウカ:8000
もうピンチだってのにナギは眉一つ動かさない。
「ターン終了だ」
「俺様のターン、カードを1枚セットし、モンスターを1体セット」
風向きが逆になる。
「《大嵐》を発動する」
「んなっ!?」
《移ろう風向き》のせいで、嵐がこちら側だけに吹く。マジかよ。
「ターンエンドだ」
こちらのフィールドにはカードが2枚。ますますやべえ。
「わたしのターン、ドロー……」
ユウカの手札は4枚。全てフィールドに出しても風向きは変わらない。
「カードを2枚セットして、《カードトレーダー》を発動します」
事故緩和カードか……。あれでどうにかなればいいんだけどな……。
「タクヤさん」
「何だ」
名にさん付けされたのは初めてかもしれないな。
「攻撃しますか?」
そう言いながら、ユウカはずっとジンの目を見ている。――成る程、そういうことか。
「良いんじゃないのか?」
「分かりました。ターンエンド」
流石アイツの妹だと言うだけあって、洞察力は高い。今もジンの表情変化で罠の有無を見極めたのだろう。
「……私のターン……モンスターをセット……エンド……」
「オレのターン、ドロー」
とにかく、何としてでもフィールドアドバンテージを取らない限り、オレ達が勝つことは不可能に近い。
「カードを1枚セットし、《魔導戦士 ブレイカー》を召喚するぜ」
これで枚数は等しい。ついでに《魔導戦士 ブレイカー》で《移ろう風向き》を破壊できれば万々歳なんだが……。
「――《奈落の落とし穴》――」
それはナギが許さなかった。やっぱ止められるよな。
「くそっ、ターン終了」
「俺様のターン、セットモンスターを生け贄に捧げ――」
セットされていた《ニュート》が渦に巻き込まれ、消え去った。代わりに、別のモンスターが仁王立ちしていた。
「《風刃の殺戮者》を召喚する」
現れたのは、両手に返り血を浴びた両刃の長剣を持ち、同じく返り血を浴びたフード付きの黒マントを羽織った、端的に言えば"殺人鬼"の様な装いだ(本物の殺人鬼がどうかは知らん)。
「手札を2枚捨て、《風刃の殺戮者》の効果を発動する」
刹那、2つの鎌鼬が、オレ達のフィールドを襲った。鎌鼬は《可変機獣 ガンナードラゴン》と《雷帝ザボルグ》を的確に切り裂き、さらに本体はユウカへ斬りかかっていた。
「《メタル・リフレクト・スライム》……!」
液状化した物体が斬撃を遮る。巻き戻しが起こり、殺人鬼は退いた。
「ちっ、ターンエンドだ」
「わたしのターン、ドロー……」
《風刃の殺戮者》……か。これ以上フィールドをズタズタにされるとマズいな。
「《カードトレーダー》の効果を発動します。1枚ドロー」
今の所、ジンのフィールドにはカードが2枚、ナギのフィールドには4枚。オレ達のフィールドには合計5枚だ。このまま《メタル・リフレクト・スライム》を生け贄に捧げると、カードの枚数的に不利になるが……。
「カードを1枚セットし、《メタル・リフレクト・スライム》を生け贄に捧げ――」
これで"みかど"を召喚できれば、効果は有効だ。問題は帝の種類だが……。
「《氷帝メビウス》を召喚します」
よし。これで効果がしっかり通れば相当有利になる――が
「――《神の宣告》――」
ジン:8000 ナギ:1400 タクヤ:8000 ユウカ:8000
「くっ、ターンエンド――です」
ナギだけが一方的にライフポイントが減っているが、そろそろ攻撃を仕掛けてきそうだな。
「……私のターン……リバース……」
ナギが、セットモンスターをリバースした。古びた壺(の中にいる何か)が、こちらに1つしかない目を向けて。
「なっ、《メタモルポット》だと!?」
オレは思わず驚愕の声を上げた。隣でユウカも嘆いたような表情を向けている。
「ハハッ、次のターンが楽しみだ」
お互いが手札を5枚にする。やべぇ、さっさと殺人鬼をどうにかしねえと……。
「……2枚セット……エンド……」
「オレのターン、ドロー」
とりあえず、手札を全部出しゃあ向こうに風が吹くが、オレのデッキは上級モンスターの比率が多い。くそ。
「モンスターをセットし、ターン終了」
できるだけ手札を温存して被害を防ごうというわけだ。最大6枚破壊されるしな。
「俺様のターン、手札を2枚捨てる」
来たか……。鎌鼬は4枚のカードを切り裂いた。
「《ダンディライオン》の効果を発動し、《綿毛トークン》を2体特殊召喚するぜ」
「小賢しいな」
そう言ってジンは、さらに手札を2枚捨てた。するのかよ。
「消えろ」
綿毛が吹き飛び、さらにもう1体のモンスターがフィールドに出現する。
「《スピア・ドラゴン》を召喚し、貴様に攻撃」
2体のモンスターがユウカを襲う。
ジン:8000 ナギ:1400 タクヤ:8000 ユウカ:3700
「くっ……う」
ユウカがふら付いた。おいおい大丈夫かよ。
「――大丈夫です……続けてください」
「フ、ターンエンドだ」
「わたしのターン、ドロー……」
ユウカは少し汗をかいているらしい。倒れんなよ? アイツに責められるからな。
「いつまでも調子に――」
ユウカは、覇気のある声で1つのカードを抜き出し、発動した。
「乗らないで。魔法カード《スケープ・ゴート》」
《スケープ・ゴート》だと……? いや、そうか。成る程な。
「さらにカードを3枚セットし、モンスターをセット」
これでカード枚数は同等だ。何をするつもりだ?
「《大嵐》を発動します。通りますか?」
ユウカが、その整った顔に小悪魔的微笑を湛え、尚且つ凛とした声で発動を宣言した。一瞬、ジンがナギに視線を向け、そして答えた。
「通してやるよ。どうせこのターン攻撃は受けない」
ドーム状の空間に、本日2度目となる嵐が吹き荒れた。互いのフィールドから伏せカードが消し飛び、モンスターだけが対峙する格好になった。ユウカの手札は既に無い。大きすぎる犠牲を払ったが、見返りは大きい。
「ターンエンド……です」
「……私のターン……モンスターをセット……」
横向きにセットカードが浮かび上がり、続いて縦向きにカードが出された。
「……3枚セット……エンド……」
「オレのターン、ドロー」
と、手札に手を掛けかけたが、突然ユウカがオレの方を向き、何やらアイコンタクトらしき目配せをした。悪いが、汐崎家の人間が考えてることは分からん。ユウカもそれを察したのか、口を開いた。
「《黄泉ガエル》、忘れてますよ」
「ん――ああ、すっかり忘れてた」
完璧に記憶の中から抹消されていたカードを、墓地ポケットから引きずり出し、横向きに出した。手札は6枚。まずやるべきことは……。
「《黄泉ガエル》を生け贄に、《人造人間−サイコ・ショッカー》を召喚するぜ」
背の高い、どっから見ても自然体じゃない人間が出現する。これで罠を封じる。
「さらに、《羊トークン》を生け贄に捧げ――」
これについてユウカは何も言わない。まあ、トークンだからな。
「《モンスターゲート》を発動する」
さあ、運試しだ。3枚ほどめくった所で、オレンジが姿を現した。
「《天空騎士パーシアス》。特殊召喚し、バトルフェイズ――」
地面に鼻先から突き刺さっている(ように見える)無防備状態の《スピア・ドラゴン》に、《天空騎士パーシアス》が槍を突き刺す。
ジン:6100 ナギ:1400 タクヤ:8000 ユウカ:3700
「1枚ドロー。さらに伏せモンスターへ攻撃」
人造人間の放ったレーザーにより、《ドラゴンフライ》が消し炭となる。
「……《ハーピィ・レディ1》……特殊召喚……」
ストレートロングのハーピィが、ナギの真上で腕を組みながら飛翔している。これで風属性モンスターが強化され――って……。
「まずいですね」
ユウカが冷静かつ端的に状況を報告し、殺人鬼を睨んだ。そうだ、奴も強化されちまってる。
「罠を封じてリクルーターに攻撃して……自分で墓穴を掘ったのか……くそ」
何はともあれ、オレはカードを1枚セットしてターンエンドした。
「俺様のターン――フフ、フハハハハ!」
ついに壊れたか? ジンは手札を1枚ディスカードし、緑をプレイした。
「《ライトニング・ボルテックス》っ! 消え去れ」
んなっ、《ライトニング・ボルテックス》だと!?
「《風刃の殺戮者》で貴様に攻撃だ」
殺人鬼が、オレに刃を向けて襲い掛かってきた。オレがさっき驚いたのは、脅威からじゃなく、呆れからだ。相手もまた、自ら墓穴を掘ってくれた。トラップ規制が解除され――
「《聖なるバリア−ミラーフォース−》っ!」
ナギがいるが、コンセプト上罠カードに対応するカードはあまり採用していないはず。オレの読みは当たり、《ハーピィ・レディ1》諸共殺人鬼が消し飛んだ。
「ちっ、ターンエンドだ」
大して悔しそうでも無く、エンド宣言。ムカつく。
「わたしのターン、ドロー……」
一瞬迷ってから、ユウカはセットモンスターを生け贄に捧げた。
「《風帝ライザー》を召喚します、通ります――か?」
《人造人間−サイコ・ショッカー》に対して発動しなかったこともあり、すんなりと通った。ユウカは真ん中の伏せカードを指定し、トップデックへ送った。
「ナギさんへ攻撃します」
「――《魔法の筒》――」
風帝の攻撃は筒へ吸収され、ユウカに返っていく。
ジン:6100 ナギ:1400 タクヤ:8000 ユウカ:1300
「くっ……はっ――」
ホント大丈夫か? 無実の罪を被るのはゴメンだぜ。
「ターンエンド」
「……私のターン……1枚セット……エンド」
ターンが短い。お互いが手を余り残していないことが伺える。最初に落ちるのは誰だ?
「オレのターン、ドロー」
今度は間違いなく《黄泉ガエル》を蘇生し、4枚の手札を見定める。1枚は上級、残りの3枚は魔法カード。ここで、モンスターを見てみる。《冥界の魔王ハ・デス》だ。攻撃力は2450。攻撃が通ればナギのライフポイントをゼロに出来るが、1つ問題がある。
ナギは、"まだ《聖なるバリア−ミラーフォース−》及び《激流葬》を発動していない"。
万が一ここで発動されれば、こちらの場は壊滅状態となり、次のジンのターンでユウカに攻撃されるかもしれない。ここはあまり攻め手に出ない方が良い。
「そのままターン終了だ」
「俺様のターン」
流石にトップデックのみとあって、望みのカードは引けなかったようだ。ジンは何もせずターンを移した。
「わたしのターン、ドロー……」
ユウカも同じ。こちらも何もせず、ドローゴー。
「……私のターン……1枚セット……エンド……」
また伏せカードが増えた。困る。
――そして、オレのターン――
「ドロー」
引いた瞬間、即座に記憶を掘り起こす。既に2回発動されている、あのカードを――。
「《スケープ・ゴート》をコストに、《二重魔法》を発動する。対象は勿論――」
3回目だ。
「《大嵐》。吹き飛べ」
伏せカードは跡形も無く消え去った。これで邪魔するものは何も無い。
「《黄泉ガエル》を生け贄に、《冥界の魔王ハ・デス》を召喚。ナギへ――」
頭に太い角を生やしたいかにも"悪魔"が、フィールドに姿を現す。
「とどめだ。あばよ」
ナギのライフポイントはゼロになり、俄然有利となる。
「ターン終了。そろそろ諦めたらどうだ?」
「俺様のターン。諦めるだと? 寝言は寝て言え」
何か策でもあるというのか。
「切り札を見せてやる。墓地の風属性モンスターを全て除外し――」
除外? 嫌な予感がする。ジンの墓地は勿論の事、ナギの墓地からも除外されていく。負けても残るんだっけか。
「《嵐刃の殺戮神》を特殊召喚する」
何か、《風刃の殺戮者》に良く似たモンスターだが、来ている衣が返り血で真っ赤に染まっている。その手には2本の剣。
「攻撃力は除外した枚数×500ポイント。8枚除外したから4000ポイントだ」
4000ポイント……ってこたぁ――。
「《風帝ライザー》に攻撃する。じゃあな」
4000−2400だ。小学生でも出来る。2本の剣は《風帝ライザー》を切り刻み、そして――
「くっ……ぁ」
ユウカのライフポイントもゼロになった。その途端、ユウカが地面にへたり込んだ。
「はぁ……疲れました。後はお願いします――ね」
まかせとけ。どうなるか知らんが。
「《嵐刃の殺戮神》の効果を発動する」
確か効果は「除外した相手モンスターの枚数だけカードを破壊」だったか。ナギの墓地から2枚除外されたから2枚までだ。鎌鼬が《冥界の魔王ハ・デス》を切り裂き、そしてターンがオレに移る。
「オレのターン、ドロー」
《黄泉ガエル》は蘇生しておくが、あまり意味は無い。手札には魔法が3枚。とりあえず2枚伏せてブラフとしておく。
「ターン終了だ」
「俺様のターン。《サイクロン》で片方を破壊する」
ぐあっ、意味ねぇ。
「さらに効果を発動し、残りの2枚も破壊」
ジンはさらに《スピア・ドラゴン》(3枚目だ)を召喚し、オレに攻撃してきた。
ジン:6100 ナギ:0 タクヤ:2100 ユウカ:0
「ターンエンドだ。次で終わらせてやる」
くっ。マジでヤバい。次のドローに全てが掛かっている。オレは神なんて信じていなかったが、今回だけは頼む。神様。
「オレのターン、ドロー――」
――待ってたぜ
この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、建設物等とは一切関係ありません。
《移ろう風向き》 永続魔法カード
効果:カードの合計枚数が相手より多いフィールド上に存在するカードは《移ろう風向き》以外の効果を受けない。
《風刃の殺戮者》 ☆6 風属性 戦士族 2400/1600
効果:手札を2枚捨てる。自分の手札の枚数だけ相手フィールド上のカードを選択して破壊する。
《嵐刃の殺戮神》 ☆10 風属性 戦士族 ?/?
効果:このカードは通常召喚出来ない。お互いの墓地に存在する《風刃の殺戮者》を含む風属性モンスターを全て除外して特殊召喚する。このカードの攻撃力は、特殊召喚時に除外したモンスターの枚数×500ポイントになる。1ターンに1度だけ、特殊召喚時に除外した相手モンスターの枚数だけ相手フィールド上のカードを破壊することが出来る。
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