2






              すぐにでも、助けに行きたかった。


              きみに寂しい思いをさせている、俺を許してくれ・・・


              愛してる、サクラ・・・・・・。





              サクラを探しに出立しようとしたのを、ギュンターもグウェンも許さなかった。


              「どこを探すつもりだ、コンラート」


              グウェンダルは、小刻みに指を動かしながら俺に聞いてくるけれど。


              「全てだ。サクラを探すのに、残されたのは全てを探すしかない」


              「愚かなことを。そんなことは、すでに捜索隊を編成してある。お前は今、やるべきことがあるだろう。

              それを考えろ」


              考えろ?


              サクラがいないのに?俺の目の前で、・・・・・・俺を庇って切られ、そして連れ去られたのに?


              俺の表情を見て、ギュンターが辛そうな眼差しで小さく呟いた。


              「サクラ様が今、ここにいらしたら・・・何とあなたに言うのでしょうね、コンラート」


              サクラが、ここにいたら・・・


              きっと、あの柔らかい笑顔で、俺の頬をそっと撫でて、そして・・・





              「コンラート、あなたにしか出来ないことがあるはずよ。それを全うしてもらいたいな」




              そう、言うだろうか・・・



              サクラ、あの日から、俺は一日、いや、一瞬たりともきみを忘れたことなどない。


              いつも、胸を締め付けられるような、そんな辛い日々が続く。



              ユーリは、地球に戻ったかと思っていたのに。



              ヴォルフラムが、ウルリーケからユーリの居場所を大体ではあるけれど、

              聞き出すことに成功した。



              シマロン。


              世界の四半を占めるほど、広大な領地を誇っている。


              探し出せるだろうか、ユーリを。


              いや、探し出す。俺にしか、出来ないこと。


              きっと、サクラもそれを望むはずだから。



              待っていて、サクラ。


              必ず、ユーリを見つけ出す。



              そして、きみも、俺がこの手で救うから。だから、希望を捨てないで。



              俺は、口の中で小さく眞王に祈り、そして深夜、誰にも気付かれず、城を抜け出した。









              目が覚めた時、私は真っ暗な部屋の中にいた。


              両手を縛られ・・・足も縛られている。



              ただ、冷たい床に転がされているのではなく、柔らかなベッドの上にいることは、分かった。


              声を出そうとしたけれど、声が出ない。


              猿轡を噛まされているのかと思ったけど、違う。


              喉が、焼けるように痛い。


              首を動かして、周りを伺おうとしたけれど、闇に包まれていて、何も見えない。


              ・・・ああ、そういえば、私切られたんじゃなかったっけ・・・


              コンラートが一人で戦って、私とユーリくんとグレタを守ってくれた。


              そのコンラートの背後から、仮面を被った敵の剣が振り下ろされて、私何にも出来ないくせに、

              頭が真っ白になって、飛び出してしまって。


              胸からお腹が熱く燃えるような感覚を覚えて・・・


              でも、痛くない。どうしてなの・・・。



              そんなことを思い出していると、ふいに暗闇に、一筋の光が差し込んだ。


              眩しくて、まともに目を開けられない。


              すぐに、私の傍に人の気配を感じた。


              優しい気配じゃない。


              殺意を持った気配でもない。


              誰なの・・・


              声を出したくても、出ない。どうしようもない・・・


              「・・・目が覚めた、サクラ?」


              ・・・聞いたことのある声。


              その、纏わり付くような毒気。


              私はその声を知っている。


              一度、眞魔国に来て、私を所望した男。あの時は、何とか逃れたけれど・・・


              「久しぶりだね、会いたかった。わたしを覚えている?大事なことをしたのは、残念ながら、わたしは覚えていないんだ。

              酔ってしまったからね、あなたは本当にお酒が強かった」


              ・・・そう。私はこの・・・小シマロン王を酔い潰した。そこで、終わりだと思っていたのに。


              「だけど、これからいくらでも時間がある。たっぷりと、サクラ、あなたを可愛がれるよ。

              ユーリでも良かったし、ウェラー卿という『鍵』でも良かった、手に入れるのは。

              いや、あなたでなかったら、無理をして大シマロンから捕虜を奪うことも無かった。あなただから、欲しかった」


              待って、大シマロン?ユーリくんを狙ったのは、小シマロンじゃなくて、大シマロンなの?


              私は頭が混乱して・・・


              私の頬に触れる手を振りほどきたかったのに。


              身動き出来ない私は、舌を噛みたくても思うように口すら動かせない。


              「さて、この場であなたを奪うのは簡単だけど・・・どうしようかな・・・?」


              首筋に、何かが這う。


              吐き気がする。







              助けて、コンラート・・・






              ごめんなさい、ごめんなさい。コンラート。






              穢れてしまう、私を許して・・・・・・