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すぐにでも、助けに行きたかった。
きみに寂しい思いをさせている、俺を許してくれ・・・
愛してる、サクラ・・・・・・。
サクラを探しに出立しようとしたのを、ギュンターもグウェンも許さなかった。
「どこを探すつもりだ、コンラート」
グウェンダルは、小刻みに指を動かしながら俺に聞いてくるけれど。
「全てだ。サクラを探すのに、残されたのは全てを探すしかない」
「愚かなことを。そんなことは、すでに捜索隊を編成してある。お前は今、やるべきことがあるだろう。
それを考えろ」
考えろ?
サクラがいないのに?俺の目の前で、・・・・・・俺を庇って切られ、そして連れ去られたのに?
俺の表情を見て、ギュンターが辛そうな眼差しで小さく呟いた。
「サクラ様が今、ここにいらしたら・・・何とあなたに言うのでしょうね、コンラート」
サクラが、ここにいたら・・・
きっと、あの柔らかい笑顔で、俺の頬をそっと撫でて、そして・・・
「コンラート、あなたにしか出来ないことがあるはずよ。それを全うしてもらいたいな」
そう、言うだろうか・・・
サクラ、あの日から、俺は一日、いや、一瞬たりともきみを忘れたことなどない。
いつも、胸を締め付けられるような、そんな辛い日々が続く。
ユーリは、地球に戻ったかと思っていたのに。
ヴォルフラムが、ウルリーケからユーリの居場所を大体ではあるけれど、
聞き出すことに成功した。
シマロン。
世界の四半を占めるほど、広大な領地を誇っている。
探し出せるだろうか、ユーリを。
いや、探し出す。俺にしか、出来ないこと。
きっと、サクラもそれを望むはずだから。
待っていて、サクラ。
必ず、ユーリを見つけ出す。
そして、きみも、俺がこの手で救うから。だから、希望を捨てないで。
俺は、口の中で小さく眞王に祈り、そして深夜、誰にも気付かれず、城を抜け出した。
目が覚めた時、私は真っ暗な部屋の中にいた。
両手を縛られ・・・足も縛られている。
ただ、冷たい床に転がされているのではなく、柔らかなベッドの上にいることは、分かった。
声を出そうとしたけれど、声が出ない。
猿轡を噛まされているのかと思ったけど、違う。
喉が、焼けるように痛い。
首を動かして、周りを伺おうとしたけれど、闇に包まれていて、何も見えない。
・・・ああ、そういえば、私切られたんじゃなかったっけ・・・
コンラートが一人で戦って、私とユーリくんとグレタを守ってくれた。
そのコンラートの背後から、仮面を被った敵の剣が振り下ろされて、私何にも出来ないくせに、
頭が真っ白になって、飛び出してしまって。
胸からお腹が熱く燃えるような感覚を覚えて・・・
でも、痛くない。どうしてなの・・・。
そんなことを思い出していると、ふいに暗闇に、一筋の光が差し込んだ。
眩しくて、まともに目を開けられない。
すぐに、私の傍に人の気配を感じた。
優しい気配じゃない。
殺意を持った気配でもない。
誰なの・・・
声を出したくても、出ない。どうしようもない・・・
「・・・目が覚めた、サクラ?」
・・・聞いたことのある声。
その、纏わり付くような毒気。
私はその声を知っている。
一度、眞魔国に来て、私を所望した男。あの時は、何とか逃れたけれど・・・
「久しぶりだね、会いたかった。わたしを覚えている?大事なことをしたのは、残念ながら、わたしは覚えていないんだ。
酔ってしまったからね、あなたは本当にお酒が強かった」
・・・そう。私はこの・・・小シマロン王を酔い潰した。そこで、終わりだと思っていたのに。
「だけど、これからいくらでも時間がある。たっぷりと、サクラ、あなたを可愛がれるよ。
ユーリでも良かったし、ウェラー卿という『鍵』でも良かった、手に入れるのは。
いや、あなたでなかったら、無理をして大シマロンから捕虜を奪うことも無かった。あなただから、欲しかった」
待って、大シマロン?ユーリくんを狙ったのは、小シマロンじゃなくて、大シマロンなの?
私は頭が混乱して・・・
私の頬に触れる手を振りほどきたかったのに。
身動き出来ない私は、舌を噛みたくても思うように口すら動かせない。
「さて、この場であなたを奪うのは簡単だけど・・・どうしようかな・・・?」
首筋に、何かが這う。
吐き気がする。
助けて、コンラート・・・
ごめんなさい、ごめんなさい。コンラート。
穢れてしまう、私を許して・・・・・・