3






              俺の腕は、箱の鍵だと知っていた。


              だけど、それが何だ。俺には、関係ない。


              ただ、ユーリを護り、サクラの笑顔を守り・・・それだけを望んでいるのに。






              ユーリを、見つけることが出来た。


              彼は、大きな水の魔力を使い、そして大地のクレバスに落ちそうになって・・・

              間一髪で、ヴォルフラムに救い上げられているところだった。



              俺とヴォルフは、途中で偶然出会って、行動を共にしていた。


              思いは同じ。ユーリを探し出す。



              ユーリを引き上げようとしているヴォルフを手伝い、何とか彼を救い上げた。


              「陛下、ユーリ・・・よくぞご無事で」


              やっとの思いで俺がそう言うと、ヴォルフは深く溜息をつき、いつものようにユーリにへなちょこと責めている。

              だけど、その場にいた者が皆知っていた。


              どれほど、ヴォルフがユーリを心配していたかを。


              ユーリは肩で息をしていたが、やがてその動きが微妙な震えに変わる。


              俺はユーリを覗き込み、その背中をさすった。


              「ユーリ、もう大丈夫だ、大丈夫だから・・・」


              「・・・違う、コンラッド。ごめん、おれのせいで・・・」


              俺は最初、ユーリが何を言っているのか分からなかった。


              「絶対、死んでない。だから、探そう、コンラッド・・・桜さんは、絶対生きてる。

              ごめんな、コンラッド・・・」


              ああ、ユーリ。


              あなたが自分を責める必要などないのに。


              でも、優しいあなただから・・・俺の目を見ないで、自分を責め続けている。


              サクラは、幸せ者だ。こんなにも、思われている。



              今すぐ、伝えたいよ、サクラ。きみがこの国で、どれほど大きな存在になっているのかを。


              そして、俺がどれだけきみを愛しているのかを。


              抱き締めて、口付けて、艶やかな髪に顔を埋めて囁きたい。


              たくさん、たくさん・・・





              眞魔国から遠い、このカロリアの地で。


              俺は一人、ただ星空を眺めた。




              ユーリを見つけたよ、サクラ。



              褒めてくれる?サクラ。あの、優しい笑顔で。



              そして、俺に囁いて。



              愛してるって。





              まさか、きみにあんな場所で再会すると思わなかった。


              まさか・・・・。



              どうしてだ、サクラ。



              なぜ、きみがそこに立っている?


              表情を、驚きに包んだまま。俺を一瞬でも見ることがない。



              見せてくれ、あの暖かい笑顔を・・・。伸ばした俺の手に、触れてくれ・・・。





              天下一武道会に出ることになってしまった俺たちは、順調に勝ち進み。


              最後の決勝まで上り詰めた。



              知、速、技。



              今まで、この知と速は俺を省いてくれた。

              ユーリもヨザックも、俺に気遣って。



              だから、この最後の武道会場での戦いは、絶対に勝ちたかった。


              そして、サラレギーの見ている中、ヨザックは敗北し、俺は勝ち、最後ユーリの番になって。


              ユーリとアーダルベルトのいる場所だけが、俺の目の前で競りあがっていく。


              「ユーリ!!」


              「ユーリくん!?」


              俺の声に被せるように、響いたその懐かしい声。



              俺は弾かれたように、その声の先を探した。



              いつの間にか、一人で座っていたサラレギーの横に、双黒の女性が立っている。


              口元に手を当て、遠目でも、眉を潜めて心配げに。



              「サクラ!!」


              俺は声の限り叫んだ。


              その声が届いたのだろうか、サクラ。



              だが、彼女は身動きをしなかった。



              どうしてだ、サクラ。


              俺を見て。


              俺に気付いて・・・!








              どうして、ユーリくんがあんな舞台の上にいるの。


              あんな高い場所に・・・!



              思わず叫んだ私の声と、被ってあの人の叫び声が聞こえる。



              ああ、ここまで来たのね、コンラート・・・



              そしてあの人の声は、私の名を呼んだ。


              コンラート、あなたを見たい。


              あなたのその瞳を、間近で感じたい。


              だけど、私は下を向くことを許されない。



              「サクラ、あの男に返事をしてはいけないよ。契約だからね。お楽しみは、これからだ」



              そう、喉の奥で笑う男。


              私は、この男と契約を結んだ。


              私はどうなっても構わない。


              だけど、あの人の命は守りたかった。


              間違っているのかもしれない。


              だけど、だけど・・・。





              そして、その晩、私は契約を守るため・・・



              あの人の。


              コンラートの寝室に訪れた。