If wake; dreamland   1 ?
          
          
          
          
          
          
          昨日は飲みすぎたかもしれない。
          
          少し、頭が痛い。
          
          だけど、頑張って起きて朝ごはん作らないと。
          
          旦那と私の分のお弁当作って、子供達を送り出したら職場へ行って。
          
          今日は、サンプルが15個控えてた。うう・・・頑張ろう・・・。
          
          
          夢の中でも仕事している私。やだなあ、こんな仕事漬けな毎日。
          家の中でも、母親として、妻として。そんな日々。
          
          もっと燃えるようなときめきが欲しいなあ。
          
          ドキドキしたいよ。コンラートみたいな、素敵な男相手に。
          恋をするのに、年齢なんか関係ない。それにあの人100歳超えてるしね。
          
          うーん、こういう気持ちも、浮気になるのかな・・・。
          
          夢から覚めるときの、あのまどろんだ意識の真っ最中だった。
          
          私の頬を撫でる、大きな手。
          
          旦那かな。朝からどうしちゃったんだろう。
          
          すると、低い、囁く声が。
          
          「、起きて?朝だよ、・・・」
          
          その声は、明らかに旦那じゃない。
          
          優しく、私を撫でる手も。
          
          驚いて、目を開くと目前に、薄茶の瞳の中に、銀が煌く眼差しが私を見つめている。
          微笑んで、ああ、私の頬を撫でている。
          
          「おはよう、。よく眠れた?」
          
          私の中で、何かが痺れている。
          
          この声だ。
          
          この低く、甘い声に私はどきどきしている。
          
          意識を急上昇させて、飛び起きると・・・ああ、私の寝室。私と、旦那の。
          
          なのになぜ・・・。コンラートがいるの!
          
          あ、そうか。これは夢なんだ。
          
          何ていい夢を見れたんだ。ラッキー、私!
          
          ありがとう、神様!信じてないけど。
          
          「コココココ・・・コンラート?」
          
          私が緊張のあまり、上ずった声で呼ぶと、コンラートは何とも言えない蕩けるような笑顔を浮かべた。
          
          「何?」
          
          ・・・・・・・。
          
          どうしよう、どうすればいいんだ!襲う?いやいや。いくら何でも・・・。
          夢だったら、時間制限あるかもしれない。
          お願い、醒めないで!
          
          「えーと・・・ご飯食べる?」
          
          「が作ってくれるの?喜んで。でも、その前に。忘れているよ、?」
          
          そう言って、コンラートは半身を起こして、私の肩を掴んだ。
          そしてゆっくりと近づいてくる、端正な顔。
          
          思わず目を閉じるのを忘れて呆然としている私の唇に、そっと触れるものが。
          
          すぐに離れた唇の感触は、明らかにいつもしているものとは違って。
          
          少し硬質で、でも暖かくて甘くて。
          
          私の目の前で、コンラートはくすりと笑った。
          
          「おはよう、。今日も一日いい日でありますように」
          
          ・・・失神しそうになった。
          
          でも、ダメ!折角のチャンスを逃すな!!
          気をしっかりと持つんだ、私!!
          
          私はふらふらと立ち上がり、そして階段を下りてキッチンへ向かった。
          
          もう何が何だかよく分からない!でも、コンラートと夢の中で過ごせる時間。
          大事にしよう。
          落ち着け、私。
          
          
          朝ごはんは、うちはいつもご飯と味噌汁。それにお新香と焼き魚。定番メニュー。
          
          コンラートは、意外にも器用に箸を使ってる。
          
          美味しそうに水菜と油揚げの味噌汁をすすり、時折ニュースを眺めていた。
          
          私はその彼の姿をぼーっと眺めて、不思議な違和感を覚えていた。
          
          何で、コンラートがいるのに、我が家のまんまなんだろう・・・。
          
          家具も間取りも、住んでる家のまま。だけど、私とコンラートしかいない。
          
          いつも騒がしい子供もいないし、母親もいない。
          
          旦那も、もちろんいない。
          
          私とコンラートだけの、二人の世界。
          
          「・・・どうしたの、。食べないの?」
          
          その声に、意識を急上昇させた私は、慌てて首を振った。
          
          「あ、ううん、いい!食欲ないから。えっと・・・コンラートは、今日はどうするの」
          
          私は仕事には行かなくてもいいのだろうか。
          
          いいんだろうな、これは夢なんだから。
          
          コンラートは困ったように首を傾げている。
          
          「どうしようか。そうだ、。中華街に行かないか?ほら」
          
          そう指差す先に映るテレビで、リポーターが食べ放題のランチを紹介している。
          
          中華街か、久しぶりだな。
          
          「そうだね、いいね。行こうか」
          
          ここからだと、電車を1本乗り換えて。
          華やかな街をコンラートと歩いたら、目立つだろうな・・・
          
          ってか、何を着ていけばいいんだ、私は。
          
          私の気持ちなんて分からないコンラートは、嬉しそうに焼き魚(今日はシャケ)を突きながら笑った。
          
          「元町をぶらついて、その後ランチを食べよう。楽しみだな」
          
          そうだね、楽しみだね。
          
          いいのか、こんな夢を見て、私。ある意味犯罪?でも妄想はさらに続く・・・幸せな時間。
          
          
          
          着替えに手間取っている私にも、コンラートは急かすこともなく。
          
          ダイニングテーブルで新聞を広げている。
          
          日本語読めるのかな、この人。
          
          タンスをひっくり返して、私の持っている洋服で、一番まともなのって・・・
          
          黒いカットソーに、同じ黒の裾にレースが付いているスカート。
          
          ストッキングを久々に履いて、化粧もばっちりして。
          
          しまった、素顔をコンラートに見られてた。寝起きのキスをされたとき、涎垂らしてなかっただろうなあ。
          
          そんなことを考えながら、急いで身支度を整えた。
          
          「お待たせ、コンラート」
          
          階段を下りながら、頬杖を付いて新聞を読んでいたコンラートに声を掛けると、
          彼は視線を私に向けて、そして柔らかく微笑んだ。
          
          立ち上がり、両手を私に差し伸べて。
          
          ふわりと私を抱き締めた。
          
          「可愛い、。一生懸命、選んでくれたの、その服?」
          
          「・・・うん。私、あんまりいい洋服持ってないから」
          
          「十分可愛いよ。きみは、きみでいるだけで輝いているから。素顔も可愛いけど、俺のためにしてくれた化粧も嬉しい」
          
          ・・・大丈夫、私?汁、出てない?
          
          何でこの人って、さらっとそういうことが言えるんだろう。
          
          もう、堪らん・・・。
          
          「コ、コンラートは支度出来てるの?」
          
          「ああ。じゃあ、出掛けようか。戸締りはもう済んでいるから」
          
          ・・・妄想の割にはリアルだな。
          
          そうか、全部やってくれたのね。じゃあ、出発ー!
          
          
          駅までの道すがら、何となく隣を歩いちゃいけないような気がして。
          
          私はコンラートから少し離れて歩いた。
          だって・・・この人と歩くには、結構勇気いる・・・。カッコよすぎ!
          
          なのに、コンラートは歩くスピードを調整して、私の隣に常にいようとして。
          
          そして私を覗き込んだ。
          
          「どうして、離れようとするの?」
          
          「・・・だって」
          
          それ以上、何を言えばいいのか分からない私に、コンラートが目を細めて、そして手を差し出した。
          
          剣だこがある、少しごつごつとした手。
          
          「、手を繋いで歩こう?」
          
          鼻血出てない?大丈夫?
          
          「うん・・・」
          
          やっとの思いで、その手を握った。
          
          暖かい。
          
          私の手を、きゅっと握り締めた。
          
          そしてコンラートは、更に私に近づいて。
          
          「の手、柔らかい。いつも家事、頑張ってくれているのにね。可愛い手・・・」
          
          誰か!誰か助けて!!
          
          いや、助けないで!
          
          どうする、私!!
          
          ここは微笑んでおくべきか?何で夢の中でも悩むんだ、おばかな私。
          
          「えっと・・・ありがとう」
          
          そうやっと答えると、コンラートはふと笑って、私の髪にキスを落とした。
          道のど真ん中で!!
          いや、田舎だから、あんまり通行人いないけど。
          
          そそそそ、それにしても!!
          
          精神が持たないかもしれない・・・。
          
          
          普通だったら平日だけに、やっぱり混雑している電車の中。
          
          コンラートは、背が高くていい男だから、注目を浴びている。
          だけど、本人は全く気にしていない様子で。
          
          「、そっちの扉に寄りかかって?」
          
          駅に着くたびに押し寄せる人から私を守るように、コンラートは私をドアの端に寄せて、私の前に立った。
          その腕は、私の両側にあって。
          
          私はまるで、コンラートの腕の中で守られているようで。
          
          「凄い混みようだな。大丈夫、?」
          
          「う、うん・・・私は全然大丈夫」
          
          「そう、よかった。もうすぐだね、少しだけ我慢して?」
          
          ああ、大丈夫だったのに。その笑顔を見たら、大丈夫じゃなくなっていく。
          
          どうしよう、どうしよう・・・。
          
          
          コンラートが好きな気持ちは今までも充分過ぎるほどあったけれど。
          
          ますますこの人に惹かれていく。
          
          
          
          
          平日の中華街は、空いている。
          
          でも、ランチタイムになると、近隣のサラリーマンが殺到してしまうのを知っている私。
          
          「早めか遅めに店に行った方がいいかもよ?」
          
          そう提案すると、コンラートは私の手を繋いだまま、首を傾げた。
          
          「そうか・・・は朝食食べていないから、早めにしようか」
          
          「あ、私はいい。いつも大抵朝ごはんは食べないから」
          
          私は空いている手を振った。するとコンラートは、少し眉を寄せて・・・。
          
          「駄目だよ、。ちゃんと食事はして?きみの身体が心配になる」
          
          「でも・・・さっきご飯食べたばっかだし、コンラートがお腹空いてないんじゃないの?」
          
          「俺のことを気にしてくれるの?」
          
          表情を一変させて、コンラートは嬉しそうに笑った。
          
          だって、だって。しっかりご飯お代わりしてたんだもん。
          絶対お腹空いてないはず。
          
          「じゃあ、あそこの店に入ろうか。軽く、何か食べて?それで、そうだな、14時くらいに昼食を食べよう」
          
          そう言って指差した先は、マック。
          
          ううーん、結構お腹たまっちゃうから、軽いものにしておこう。
          
          私は、お気に入りのマックポークのセットを。サイドメニューはサラダで。ドリンクはアイスコーヒー。
          
          コンラートは、ブレンドだけを注文して。
          
          二人で向かい合って座り、町並みのことや、お互いの話しなど他愛ない会話を。
          
          それなのに、何でドキドキが止まらないの。
          
          コンラートの目線が、私の齧っていたマックポークを見ている。
          
          「・・・なに?」
          
          「それ、美味しい?」
          
          「・・・美味しいよ、私、テリヤキもテリヤキソース抜きで注文するの」
          
          「はは、それじゃテリヤキとして成り立たないな。一口、味見させて?」
          
          そう言って、私が頷く前に、コンラートの手が私の両手を引き寄せて。
          
          ぱくりと一口齧ってしまった。
          
          ああ・・・まじですか。間接キスなんて、こんなときめくなんて・・・女子高生でも、今時ないはず!
          
          もぐもぐと口を動かしていたコンラートは、飲み込んでにっこりと笑った。
          それはもう、嬉しそうに。
          
          「ああ、さっぱりして美味いな。は、甘いの苦手だから、これが好きなの分かるよ」
          
          ・・・誰か、誰か。
          
          この夢を醒めさせないで。
          
          コンラート、大好きだよ。どうしよう、どうしよう・・・・。