It is you and two people sometime 1
お父様は、反対した。
私が衛生兵に立候補したことを。
でも、どうしても・・・あの人と一緒に行きたかった。
報われない思いだと、分かっている。
それでも。
当代魔王陛下、ツェツィーリエ様は、恋多き女性だけど。
残念ながら、女の子を授かることが出来なかった。
だからだろう、十貴族でもない、中流貴族の私を可愛がってくださるのは。
「ニナ、あなたのために、新しいドレスを用意させたのよ?ぜひ着てみて」
嬉しそうに笑うツェリ様の人形のように、私はいつも綺麗なドレスを着せられる。
「いつも・・・ありがとうございます・・・」
慣れた手つきで私の衣服を脱がせていく、ツェリ様の侍女。
それを見つめて、新しく着せられたドレスに満足そうに笑うツェリ様。
私には、あなたのその笑顔があれば。
恥ずかしくても、満足できるのです。
扉がノックされたと思ったら、性急に開かれた。
「母上・・・おっと。失礼!」
慌てて出て行こうとしたのは、ヴォルフ様だった。
ツェリ様にそっくりなその美しい顔が、真っ赤になっていた。
私はそこで、私の背中がまだ丸出しなのに気付いた。
「あ、気になさらないで。ヴォルフ様に見られても、私恥ずかしくないもの」
そう言うと、侍女がくすくすと笑いながら、私の後ろを留めてくれた。
ヴォルフ様は、顔半分を手で隠しながらこちらに歩いてくる。
「気にしろ、少しは。これでもぼくは、男なんだからな!」
「でも・・・ヴォルフ様は、弟のようなものですから」
そう私が言うと、ヴォルフ様は少し傷ついたような表情を浮かべた。
そして、私の髪を一房掴んだ。
「何度も言っているだろう、ぼくに『様』をつけるな」
「ええ・・・分かってますけど」
でも、やっぱり殿下だもの。魔王陛下の三男で。
いくら私が、ツェリ様のお子様たちと幼馴染だからと言って、もう無闇にじゃれ合える年齢じゃない。
ツェリ様は、そんな私達を微笑みながら見つめてらした。
優しい、ツェリ様。
母を幼くして亡くした私にとっては、失礼だけどお母様のような存在。
この方のためならば、何でもしたいと思っていた。
「まあ、ヴォルフよりもニナのほうが、ずっと大人になってきているようね」
「どこが!全然子供です、こいつなんか!」
そうヴォルフ様・・・ううん。怒られるから、ヴォルフと言っておこう。
本当は、私よりも10歳も年下なのに。
最近は、私を見る目が変わってきている。
駄目、私なんか。
中流貴族で、こんなくせっ毛で。
見目も中途半端で、いいところなんか全然無い。
あなたには、もっと見合う女性がいるはずだから、他にも目を向けて欲しい。
それに・・・私には、もう心に住んでいる人がいる。
報われなくても・・・片思いでも、いいの。
「ところでヴォルフ、何か急用があったのではなくて?」
そうツェリ様が首を傾げると、ヴォルフは面白く無さそうな顔で、ソファに乱暴に座った。
「ああ、そうでした。一応、ご報告を。コンラートが、戻ってきました」
心臓が、すごい勢いで高鳴った。
コンラート様が・・・戻ってらした・・・。
私はどれくらいの間、その場で硬直していたのだろう。
連日繰り広げられる戦乱の中、ずっと前線で戦ってらっしゃるコンラート様。
私は・・・幼い日から、あの方だけをずっと想って来た。
最近は、少し疲れていらっしゃるようで、戻って来られても会いに行くことなどしなかったけれど。
でも、・・・・会いたい・・・。
ツェリ様の視線を感じて、私は顔を上げた。
お美しい、ツェリ様。意味深な笑みを浮かべている。
「行ってらっしゃい、ニナ」
「いえ・・・お疲れでしょうから、遠慮します」
そう私が首を振ると、その言葉を聞かなかったかのように、ツェリ様は私の肩を押した。
「ヴォルフ、ニナをコンラートの部屋までお連れして」
「ええー?どうしてぼくが・・・」
「ヴォルフ?」
ツェリ様の笑みが深くなると、ヴォルフは渋々と立ち上がり、そしてさっさと歩き出してしまった。
ごめんなさい。面倒なことをさせて。
でも、嬉しい。やっと、会える。
私は、胸の高鳴りを止められなかった。