It is you and two people sometime 2
どんどんと進んでいくヴォルフ。
その歩き方を、後ろから見ていると・・・不機嫌さがよく分かる。
ヴォルフは、生まれた頃から知っている。
だから、本当に弟のように思ってる。
私が始めて、血盟城に登城した日を、ふと思い出した。
あれは、お母様が亡くなって間もないころ。
私は、まだまだ幼くて。
寂しくて、人見知りも激しくて。
毎日、泣いてばかりだった。
お父様は、そんな私を心配して、どこへ行くのにも私を連れて歩いてくれた。
そんなある日、血盟城にも初めて来たんだった。
お父様の後ろに隠れて、私がしくしくと泣いていると、
私よりも少し年長の男の子が、私に声をかけてくれた。
「どうしたの?どこか、痛いの?」
私はその優しい声の持ち主を見たけれど。
でも、涙が止まらなかった。
泣いているのが、恥ずかしくて、更に泣いてしまった。
そんな私を見て、茶色い髪のその男の子は、瞳に不思議な色を煌かせ、
私の手を取った。
「遊ぼう。泣いてばかりじゃ、可愛い顔が台無しだよ」
私はそんなことを言われたことがなくて、びっくりして泣き止んでしまった。
そうしたら、男の子は笑って、私の髪を撫でてくれた。
「ぼくの名前は、コンラート。きみは?」
「私・・・ニナ・・・」
「ニナか。友達になろうね!」
そう言ってくれた、あなたの笑顔。私、今でも覚えている。
友達・・・初めて私に出来た、友達。
でも、私は今、本当は・・・友達以上になりたい。
「ウェラー卿、入るぞ」
ぶっきら棒にそう言って、ヴォルフはコンラート様の部屋を開けた。
「ああ、ヴォルフか」
懐かしい、あの声。
幼い頃とは全然違うけど。
でも、落ち着いた、柔らかい声色。
私が入り口で固まってしまっていると、ヴォルフは私の手を引っ張った。
そして、部屋に連れ込むと、彼自身は部屋から出て行った。
「ヴォルフ・・・?」
「ぼくは外にいる。いいか、ニナ。不用意にあいつに近づくな。
お前は女で、あいつは男なんだ。忘れるな」
ヴォルフは、私を心配してくれている。
嬉しいけれど・・・でも、あの人をそんなに嫌う、あなたが悲しい・・・。
それでも私は、背後で扉が閉められたのを確認して、ゆっくりと部屋に入っていった。
見慣れた、コンラート様の部屋。
無駄なものが、何も無い。
華美を好まない、あの方らしかった。
「ヴォルフ?どうした、何か用か」
声の主は、もう私の目の前にいる。
私に、後姿を見せて。
机の前に立ちながら、何か物を書いているようだ。
私が返事に困っていると、ふと振り返り・・・
そして私を驚いたように見下ろした。
「ニナ、か・・・?」
「はい・・・。お帰りなさい、コンラート様・・・」
私の名前を、呼んでくれた。
嬉しかった。
それだけで、泣きそうになる。
「大きくなった・・・いや。大人になったな」
コンラート様は、私に向けた目線を柔らかくして、微笑んでくれた。
大人に、なったかしら。
そうだったら、嬉しいけど・・・。
「コンラート様は、逞しくなられました」
私は、やっとの思いでそれだけを言うと、彼はふと笑って、
そして私の髪を一房手に取った。
こういうところは、ヴォルフと同じなのに。
どうして、ヴォルフはあんなにも、コンラート様を嫌うんだろう。
「ニナ、俺に敬語?やめてくれ。くすぐったいよ」
「でも・・・」
「ニナ?」
そう繰り返し名前を呼ばれ、私は少し身を固くしてしまった。
コンラート・・・は、私のその様子を見て、苦笑を浮かべた。
「父上から、言われているんだな?」
「はい。陛下のご子息なのだから、節度をもって対応しなさい、と」
「そうか・・・なら、俺から父上に頼んでおこう。余計なことは言わないようにとね」
「コンラート・・・?」
「ああ、それでいい。言葉遣いも、今まで通りでね」
そう笑ったあなたの笑顔。
私は、顔がきっと真っ赤になっていただろう。
好き。大好き。
あなたが、他の誰を好きなのか、知ってる。
でも、私はあなたが好きで堪らない。
この思いは、伝えないから。
だからせめて・・・好きで、いさせて欲しい。
そう思うことは、私の我儘なのだろうか。