It is you and two people sometime 5
どんなに厳しい言葉を投げつけても、冷たい目線を放っても。
ニナは必死で俺たちに食い下がり、そして俺たちに追いつこうと頑張っていた。
諦めてくれ。
どこでもいい。
もう、これ以上付いていくことが出来ないと、そう決心してくれたなら。
俺は今すぐにでも、きみを抱き締めて・・・そして必ず安全に眞魔国に帰すのに。
髪をばっさりと短くし、美しい少年のような姿になってしまったニナだが、
男ばかりの部隊の中では、やはり危険は伴う。
何度も、ニナが危ない目にあっているのに気付いていた。
数度俺も見かけ、阻止したし、ヨザも注意を払ってくれているようだった。
だが、そろそろ限界を感じた。
隊の男達ばかりを責めることは出来ない。
女から引き離され、そしてまさに命を掛けて戦おうとしているこの時に、
ニナの美しさは残酷に・・・心を惹かれてしまうだろう。
俺はアルノルドにほど近いこの街で、一日ルッテンベルク師団の者達に休暇を与えることにした。
娼館が立ち並ぶこの街でなら、きっと欲望を満たし、ニナに対しての眼差しが和らぐだろうから。
ただ、それだけの思い・・・俺も酷い隊長だ。
一旦解散させ、俺は一人、宿へ引き取った。
ベッドにひっくり返り、薄汚い部屋の天井を見上げて思うのは、ニナのことばかりだった。
どうにかして、この街へ留まらせることは出来ないだろうか。
俺は未だに、ニナをアルノルドへ連れて行くつもりはなかった。
連れて行けるわけなど、ない。生きて帰れる保障のない・・・いや。生きて帰れないだろう。
そんな場所にニナを連れて行けるわけなど・・・ない。
俺がぼんやりと思案に暮れていると、部屋の扉が控えめにノックされた。
俺は何だか立ち上がるのも面倒で、そのまま放っておいた。
すると、ゆっくりと扉が開き、そこから顔を覗かせたのは、蜂蜜色の短い髪と、澄んだ色の紫の瞳だった。
「・・・ニナ・・・いや、ロイエンタール衛生兵。何の用だ」
俺は眉間に皺を寄せ、彼女に背中を向けた。
とても彼女を直視出来なかった。俺は・・・ニナに嫌われているはずだから。
この行軍で、あれだけ酷いことばかりを繰り返して・・・
自分で望んだことなのに、
「ニナに嫌われている」
そう思うだけで、胸が苦しくなる。
全く、どこまで自分勝手な男なんだろう、俺は。
ニナはそんな俺の思いなど気付くわけも無く、吐き捨てた俺にゆっくりと近づいてきた。
香水を振り掛けているわけでもないだろうに、甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
辛い、苦しい香り・・・。
「あの、隊長は・・・女性を買いに、行かれないんですか」
俺はその言葉に驚いて、半身を起こしてニナを見つめてしまった。
顔を真っ赤にしたニナが、俯いて、それでもベッドのすぐ横で立っている。
「何を・・・」
「あの、もし、女性を買われるおつもりなのでしたら・・・私に、お相手させてください・・・」
しばらく、ニナが何を言っているのかが分からなかった。
だが、俺の返事を待つように、ぎゅっと目を閉じたニナを見て、俺は・・・
「自分で、何を言っているのか分かっているのか」
そう言いながら、ニナの白い手を掴んでいた。
そして乱暴に引き寄せ、俺の胸に倒れこむニナを抱き締めた。
子供の頃から、何度も抱き締めたニナの身体。
最後に彼女を抱き寄せたのは、もういつのことだっただろうか。
ニナは俺の腕の中で、小さく震えて、そして深呼吸をし、俺を見上げた。
澄み渡った、紫水晶のような瞳。
汚いものを、その瞳には映さないでくれ。
ただ、純粋な思いだけを、きみは抱いていて欲しい。
それなのに・・・
俺はニナ、きみを欲しがっている。
「あなたが、他の女性を抱くところを見たくなかった・・・」
ニナは、美しい色合いの瞳を潤ませて、そして瞬きをするたびに、大粒の涙を零している。
あれだけ辛い行軍のなか、弱音一つ吐かなかったニナが、俺の胸で泣いている。
俺のために・・・。
「お願い、コンラート。今だけは、私を・・・」
ニナ、きみは気付いていないのか。
俺の、きみに対する思いを。
俺はただ、ニナの頬に手を当て、唇を寄せた。
柔らかく、緊張に震える唇を啄ばむように愛しみ、手はニナのまだ熟れきっていない身体を這い・・・
俺は夢中でニナの身体を貪った。
そこには、隊長としての俺も、衛生兵としてのニナもいなかった。
ただ、愛する・・・幼い日、初めて出逢った時から、ずっと想い続けていた少女をこの手に抱けた喜び。
その思いしか無かった。