It is you and two people sometime 7
圧倒的な差の兵力。
とても勝てるわけが無い。
でも、そう思ってはいけない。
俺は、隊長だから。
それに・・・ニナがいる。
俺の背後を守ってくれているような気がした。
「ご自分の仕事をなさってください」
ニナを心配した俺に、彼女はそう言い切った。
だから、もう止めない。帰れとは言わない。
きみのところまで、敵兵を進ませない。
ニナ、きみはあの瞬間、覚悟を更に固めたのだろう。
だけど、俺もだ。
必ず、きみと帰る。
そして、母上ときみの父上に土下座してでも、きみを迎えにいく。
俺の将来、この先ずっとニナに隣にいてほしいから。
きみを抱いたあの日から、俺の中ではニナの存在が大きくなり続け、そして今、俺はニナを守るために剣を振るっていた。
なぎ倒しても、蹴散らしても。
圧倒的な数の差は、なかなか縮まらない。
「きゃああ!」
そう叫んだ、女性の声。
ニナか!?
とっさに振り返って、そして俺の脇腹に、灼熱の痛みを感じた。
えぐられた。
そう思った時には、俺を刺した男はヨザックによって倒されていた。
「隊長、しっかりしろ!」
ああ、ヨザ。大丈夫だ。それより、ニナを・・・
俺は朦朧としている中で、叫び声をあげた女性を探した。
俺の部下が、助け上げた。
酷く、血まみれになっているけれど・・・ニナじゃない。
ほっとした。
そんな俺自身の心境に、俺は苦笑してしまった。
なんて酷い男なんだろうな、俺は。
ニナが怪我をしたんじゃない。それだけで、安心するなんて。
俺を抱えるヨザの姿が、段々薄れていく。
「目をちゃんと開けていろ、オレを見ろ、コンラッド!」
ああ、懐かしいな。その呼び名。
でも、もう駄目かもしれない。
ヨザ、お前になら、ニナを託せる。
悔しいけれど、恥ずかしがりやのくせに、負けず嫌いなニナを任せてもいいかと思うよ。
俺は全身で脈打つような感覚の中、ヨザに手を上げた。
ニナを、幸せにしてやるよう、頼むように。
それなのに。
ヨザは、一瞬目を盛大に開いたが、だが俺を地面に横たえ、そして一歩下がった。
ただ、何も出来ない俺が首を横に向けると、そこには、癒しの一族のギーゼラのような顔色のニナがいた。
這い蹲るように、ゆっくりと俺の元へとやってくるニナ。
体中、どこも怪我一つないのに。
何で、そんなに顔色が悪いんだ。
ニナは、俺の脇腹を見て、そして微笑を浮かべた。
優しい、暖かい微笑。
「大丈夫、治るから。治すから。だから、生きていて・・・」
ニナはそう呟き、俺に布を被せ、そして・・・
「やめろ、ニナ!俺はいい、もう逃げろ!」
俺は頭から被せられた布を剥ぎ取ろうともがいたが、腕を取られた。
僅かに見えたのは、ヨザと数人の部下。
俺を、羽交い絞めにしている。
「離せ、止めろ。ニナ、止めるんだ!きみが、きみの命が・・・!」
叫んだ俺に答えず、ニナは手を俺の脇腹に翳したまま呟いた。
蚊の鳴くような、小さな小さな呟きだった。
「隊長を、押さえつけていて下さい・・・」
消える。
ニナの、灯火が。
俺は全身の力を込めて、押さえつけられていた戒めを解こうともがいた。
だが、ヨザは俺の胸に顔を押し付けて、そして潤んだ声を・・・。
「隊長は、死んじゃいけないんだ。この先も、オレ達のような混血のためにも生きていかないきゃならないんだ。
すまない、すまない、隊長・・・」
何度も謝るヨザと、脇腹に当たる暖かい感触と、他の部下のすすり泣く声と。
全てが混ざって、全てが溶けていき、
気付いた俺の腕の中には、冷たくなったニナがいた。