Across the space-time; and ...
              
              
              
              
              
              5:him thought
              
              
              
              と初めて身も心も一つになってから、俺は幸せ過ぎるほど幸せだった。
              
              相変わらず、彼女の店へ行き、と二人で夕食を食べて。
              たまに彼女が作ってくれる料理は、絶品で。
              
              を部屋まで送り届けて、おやすみのキスを毎晩しては、耐え切れなくて彼女を抱いてしまう毎日。
              こんなに俺は性欲が旺盛だったかな・・・?と思うほど、の身体で知らない場所はないというほど。
              彼女を慈しみ続けてしまった。
              
              今日も、夕方にの店に行った。
              
              「たまには、別のコーヒーを試してみて」
              
              と、差し出されたのは、いつもよりもずっと香り高い琥珀色の液体。
              は受け取った俺に、嬉しそうに笑って説明してくれた。
              
              「これはね、キリマンジャロ・キボーっていうの。キリマンジャロの中でも、最高品質に贈られる称号が、
              キボーなのよ。芳醇な香りが高くて、濃厚なの」
              
              たまたま手に入れられたという、珍しいコーヒーをご馳走になった俺は、
              そんな仕事熱心な彼女に、愛しい思いが湧き上がるのを止められなかった。
              
              帰り道、俺はすっかりと寒くなった季節を感じて、の肩を抱き寄せた。
              
              「寒いね。少しどこかで温まっていく?」
              
              「うん・・・あ、ちょっと待っていて?」
              
              そうは俺に告げ、明るい電灯が点るコンビニに入っていった。
              すぐに小さな袋をぶら下げて走ってくる。
              
              彼女は、その袋から湯気が立つ真っ白なものを取り出した。
              
              それを半分に割って、大きい方を俺に差し出す。
              
              「これは・・・?」
              
              初めて見るものにとまどう俺に、は黒髪を揺らして微笑んだ。
              
              「肉まんよ。あったまるの。食べてみて?」
              
              そう言って、自分もぱくりと頬張った。
              ちゃんと食べられるものだと、証明してくれたようだった。
              
              つられて、俺も頬張ると・・・暖かい。
              
              この肉まんも暖かいけど、違うよ。
              
              きみの笑顔が。きみの優しさが暖かいんだ。
              
              離れたくないよ、。
              
              
              もうすぐ、俺たちの将来の魔王が誕生する。
              
              臨月に、そろそろ入るはずだ。
              
              俺は、アメリカに戻らなくてはならない。
              
              別れのときが近づいている。
              
              こんなに、きみを愛してしまったのに。一瞬たりとも、離れたくないほど気持ちが強くなっているのに。
              
              「・・・」
              
              俺は愛おしい名を呟いて、彼女を抱き締めた。
              腕にすっぽり収まるほど、小柄な。だけど、俺に与えた影響はとても大きくて。
              
              もう、きみ以外を、一生愛さない。
              
              きみ以外を、この手に抱かない。
              
              その決意を、きみに伝えられないもどかしさが、辛い。
              
              だって、きみには幸せになってもらいたいから。
              俺がそう覚悟をしたと知ったら、きみもきっと、この先恋愛はしないだろう。
              
              一生一人で生きていく決意をしてしまう。そんなのは駄目だ。
              
              きみには、笑顔の似合う生活を送ってもらいたい。
              
              だけど、もう少し。もう少しだけ。
              
              眞王陛下、俺に時間を下さい・・・。
              
              
              
              「、俺とアメリカへ来てくれないか」
              
              はコーヒーが本当に好きで。店も愛していて。
              
              から、それを奪ってしまおうとしている、俺を許して。
              
              きみと、もう少しだけ、一緒にいたい。
              
              
              
              
              
              
              5:her thought
              
              
              コンラートの腕が、私を包み込んだ。
              
              そして、苦しそうに私を強く、抱き締めた。
              
              「、俺とアメリカへ来てくれないか」
              
              彼は、そう私に言った。
              
              アメリカへ・・・?どうして・・・。
              
              「王が・・・もうすぐ誕生する。それに立ち会って、しばらく見守って・・・
              そうしたら、俺は・・・」
              
              コンラートが口ごもった。
              
              そこで、私は全てを理解した。
              
              そっか・・・。
              
              アメリカで、彼の王様が無事に生まれたら、帰るのね。
              
              「しんまこく」へ。
              
              ・・・嫌だ。離れたくない。
              
              こんなに、あなたのことを愛してしまったのに。
              私の中には、もうあなたのいない世界なんて無いのに。
              
              でも・・・分かっていたこと。
              
              いずれ彼はこの地から去る人。
              
              だから、それまではコンラートのためにしていきたいと誓ったんだ。
              
              私は、きっとこの先、誰も愛さない。
              
              でも、それをコンラートには伝えない。
              いいの。
              
              死なないでくれれば、それで。
              
              彼の国で、幸せになってくれれば、私にはそれで充分。
              
              アメリカに一緒に行くことを、コンラートが望んでくれるなら。
              もう少し、彼といられるのなら。
              
              私は喜んで従おう。
              
              「分かったわ。着いて行く・・・」
              
              「本当に?1年くらいになるけど」
              
              期限が、決められてしまった。
              
              1年。
              
              来年の、この寒い時期にはあなたとお別れなのね・・・。
              
              でも、覚悟が出来る。だから、私は柔らかく見えるように祈りながら、微笑んだ。
              
              「分かった。だけど、少し日にちをちょうだい?叔母と妹に引継ぎをして。店を何とかしてからにしたいの」
              
              「・・・もちろん。が納得するまで、待ってるから。ごめんな、・・・」
              
              辛そうに、顔を歪めてるコンラート。
              
              どうして謝るの?
              
              私は、嬉しいのに。
              
              あなたに望まれて。あなたの傍にいられるのが、こんなに幸せなのよ。
              
              
              
              私は、次の日に妹と叔母を説得して、店の運営の方針を改めて定めて。
              
              
              
              コンラートとの生活が、アメリカで新しく始まる。
              
              だけどそれは、別れへのカウントダウンの始まりでもあった。