Across the space-time; and ...
              
              
              
              
              
              7:her thought
              
              
              
              
              コンラートの国の王様が、無事に生まれた。
              
              その後に聞いた話では、「有利」くんと名付けられたそうだ。
              
              コンラートが、タクシーの中で有利くんのお母様に、彼の国では7月生まれは祝福されて、
              そしてその月を「ユーリ」だと教えたらしい。
              
              「まさか、採用されるとは思わなかったんだ」
              
              そう苦笑しているのは、私の一番大切なひと。
              
              茶色い柔らかい髪で、薄い茶色い瞳の中に、銀色の煌きが散らばってる。
              
              その瞳は、私を見る時には優しく輝き、そして私を抱く時には、情熱的に熱く輝く。
              
              この瞳に惹かれてしまってから、どれくらいの時が過ぎたんだろう。
              
              
              もう、時間がない。
              
              有利くんは、生まれてしまった。
              
              おめでたいことだけど、彼が生まれてからしばらく見守って、それからコンラートは国に帰ると言っていた。
              
              いつ言い出されるのだろう。
              
              別れのときを。
              
              毎日、怖くて怯えてしまうけれど。
              でも、絶対にコンラートに悟られてはいけない。
              
              笑顔で帰国してもらうために、私はここにいるんだから。
              
              だから・・・。
              
              最近、彼に抱かれていると、泣きそうになる。
              彼のぬくもりを、忘れないように必死で覚えようとしている自分に気付くから。
              
              愛してる。
              
              愛しているの、コンラート。
              
              いつかまた、会えるよね。
              その時、あなたの隣に、私じゃない女性がいても。
              
              後悔しないように、私は心の準備をしておくから。
              
              だから、今だけは。
              
              私だけのコンラートでいて欲しいの。
              
              私の我儘を、許してね。
              
              そして今日も、コンラートは私を求めて・・・私も彼を求めて。
              
              繰り返される、毎夜の熱い抱擁。
              
              でも、私にはそれが全てだった。
              
              
              
              
              8:his thought
              
              
              
              その時は、突然にやってきた。
              
              
              まだ、早い。
              
              もう少し、ユーリが大きくなるまで。
              そう思っていたのに。
              
              ボブから伝えられたのは、今晩。
              
              今、俺とはボストンにあるアパートメントを借りて、そこに住んでいた。
              
              二人きりの、甘い生活。
              夢のような生活。
              
              その場所からほど近いところにある公園から、眞魔国へ戻ることになった。
              
              報告を受け、俺はアパートメントに戻ってを抱き締めた。
              驚いたは、俺を見上げて・・・そして柔らかく、暖かな笑みを浮かべた。
              
              「帰るのね、コンラート」
              
              どうして、気付いたんだろう。
              俺は、今どんな表情を浮かべているのだろう。
              
              
              離れたくない。
              
              こんなに、傍にいるのに。
              
              この手の中に・・・きみはいるのに。
              
              は、俺の頬に手を当てて、首を傾げるようにして髪を揺らした。
              
              「コンラート・・・支度、手伝うわ。ううん・・・手伝わせて欲しいの」
              
              「・・・」
              
              「さあ、教えて。どれが必要で、どれが必要じゃないの?」
              
              そう言って、俺の数少ない荷物を手際よく鞄に詰めていく。
              
              そして、ふと俺がいつも持ち歩いていた、長い鞄をそっと撫でた。
              
              「この中身だけは、絶対に教えてくれなかったわね・・・」
              
              そうだね、。
              
              きみには見られたくなかったから。
              
              でも、もう・・・きみに隠し事はしたくない。
              
              俺は黙ってその鞄を手に取り、中身を取り出した。
              
              何人もの人間の血を吸った、俺の愛剣。
              
              今も、俺の手に馴染んで・・・獲物を求めているかのように鈍い光を放っている。
              
              息を飲むに、俺は微笑を浮かべてそれを再び仕舞った。
              
              「こういうものが、必要な国なんだ、俺の国は」
              
              「・・・そうなの・・・」
              
              「は、知らなくてもいいことだった。でも・・・少しだけ、俺の話を聞いてくれる?」
              
              あの夜と。
              
              に愛を告白した夜と同じ発言だと気付き、俺は一人苦笑した。
              
              もあの夜と同じ、僅かに身を正して。
              そして、くすりと笑った。
              
              
              
              俺は、に俺の全てを話した。
              
              
              俺の世界は、地球ではないこと。
              
              その世界には、魔族と人間がいて。俺はハーフだということ。
              俺の母親は、現魔王で、ユーリは次期魔王だということ。
              
              
              話終えた頃には、夕日が町並みに落ちていた。
              
              もう、もう・・・時間が無い。
              
              は、全てを受け入れてくれるような、そんな優しい微笑を浮かべていた。
              
              「そうなの・・・」
              
              「信じられない?」
              
              そう思われても当たり前な話。
              
              平和な日本で、平凡な毎日を送っていた彼女だから。
              
              しかし、は首を振った。
              
              「信じるわ。コンラートの言葉だから。話してくれて、ありがとう」
              
              そう笑った彼女の笑みを、俺は一生忘れないだろう。
              綺麗だった。輝くような笑みだった。
              
              きっと、この笑みを俺に見せてくれるために、はアメリカまで来てくれたんだと思った。
              
              俺は、無言でを抱き寄せた。
              そして、何度も顔に唇を落として・・・そして桃色の唇を塞いだ。
              
              啄ばむように。そして、深く彼女を犯すように。
              
              喘ぐを抱き締めて、その黒髪に顔を埋めた。
              
              「・・・離れたくないよ・・・」
              
              苦しい。
              
              こんな思いをさせるために、俺に魂を運ばせたのか、ジュリア。
              
              苦しくて、辛い・・・。
              
              しばらく俺たちは抱き合って時を過ごした。
              
              「コンラート・・・」
              
              俺を呼ぶ、愛しい声。
              
              僅かに身を離すと、の細い指が、外を指した。
              
              
              月が、出ている。
              
              
              時間が、来た。
              
              
              
              
              
              公園の噴水の前で、俺とは惜しむように抱き合っていた。
              何度も唇を重ねて。
              唇が離れると、また求め合って。
              
              だが、は俺の胸をそっと押した。
              
              そして、痛々しいほどの輝く微笑を浮かべた。
              
              「元気でね、コンラート。死なないで・・・長生きしてね」
              
              「・・・」
              
              どうして、そんな笑顔を浮かべられるの?
              俺には、努力しても・・・口元がもう動かない。
              
              きみの名前を呟くことしか、出来ない。
              
              「さようなら、コンラート」
              
              その後に、呟かれた言葉は。
              
              愛してるわ。これからも、ずっと。
              
              そう、小さく小さく呟いて。
              
              そしては耐えかねたかのように、両手で顔を覆った。
              
              大きく肩を揺らして、子供のように泣きじゃくっている。
              
              俺の手が、を包もうとすると、それを泣きながら拒絶した。
              
              「や・・・もう、行って・・・」
              
              その姿を見て・・・俺は小さく眞王に呟いた。
              
              
              
              
              俺の罪を、許してください。
              
              
              
              
              俺はの身体を両手で抱え上げ、驚く黒瞳に、確かに俺が映っていることに安心した。
              
              「ごめん、」
              
              そう短く言って、の身体を抱いたまま、俺は噴水に身を躍らせた。
              
              膝までしかないはずの水の中は、深く渦巻いていた。
              
              悲鳴を上げたくても上げれず、目を見開いたの唇を、そっと塞いで。
              
              俺は眞魔国に着くまで、の唇を貪リ続けた。
              
              
              この手の中に、確かにがいる。
              
              それだけで、どんな罰でも受ける覚悟が出来る。
              
              
              
              
              きっと眞魔国を見て、電気もガスもない世界に驚くだろう。
              
              剣と魔法の世界に馴染むまで、時間も掛かるかもしれない。
              
              
              それでも、。
              
              俺は、きみを手放す選択肢は選べなかった。
              
              許してくれ。
              一生、きみを愛し続けるから。
              
              俺は、きみを置いて死なないから。
              
              きみの笑顔を守るためだけに、生き続けると、誓うから。
              
              
              
              それから長く紡がれる俺との物語は、ユーリが眞魔国に来たころに、第一章が終わる。
              
              まだまだ、先が長い物語。
              
              の笑顔が、いつまでも俺の傍にあって。
              その微笑を受けられる俺がいて。
              
              
              ずっとずっと、二人で微笑みあって。
              
              
              この先も、幸せな物語を築き上げていこう。
              
              
              
              
              
              
              
              
               END