Across the space-time; and ...   Chapter 2
            
            
            
            
            
            3:his thought
            
            
            
            
            
            はひとしきり泣き続け、そしてしばらくした後に、恥ずかしそうに顔を上げた。
            
            「ごめんね・・・子供みたい。呆れちゃったでしょ?」
            
            そんな訳ないよ、。
            
            きみが不安に思うのも、当たり前だ。
            
            だけど、俺は精一杯その不安を取り除いていきたい。
            
            「いいんだ。いつでも、泣きたいときは泣いて?でも一つだけお願いがある」
            
            俺の言葉に、は不思議そうに首を傾げた。
            まだ、その頬に雫が。それを指で拭って、俺は柔らかく微笑んだ。
            
            「泣いてしまいたくなったら、必ず俺の前で。決して、俺に隠れて泣かないで」
            
            俺の気持ちが伝わっただろうか。
            
            いつでも、、きみの気持ちを知っておきたい。
            
            俺に、隠し事をしないで。
            
            気を遣うだから。なお、そう思う。
            
            は僅かに目を開き、そして小さく頷いた。
            
            俺は両手での身体を抱き締めて、そして何度も髪に、頬に唇を落とした。
            
            「ごめん、勝手に連れてきてしまって。俺を許してくれる?」
            
            やっと、謝れた。
            
            はくすぐったそうに俺の唇を受け、そして頬を先ほどとは違う色で赤らめた。
            
            「許すだなんて・・・。私、本当は、あなたと一緒にいたかった。でも、それは無理だと思っていたから・・・
            だから、怖いけど、でも・・・嬉しいの・・・」
            
            ああ、。
            
            きみから、そんな言葉が聞けるなんて。
            
            本当は、俺も怖かった。
            
            きみに、罵倒されるんじゃないかと思ってた。
            
            こんな異世界に、強引に連れてきてしまったから。
            
            だけど、きみは俺を許してくれた。
            
            「ありがとう・・・愛してる、・・・」
            
            俺は胸が一杯になってしまって、それしか口に出すことが出来なかった。
            
            その代わり、たくさんの口付けを。
            
            きっと、俺の言葉よりもきみに伝えることが出来るだろうから。
            
            俺は、俺のこの先未来を全てきみに捧げることを誓う。
            
            「・・・幸せになろうな」
            
            そう言った俺を、驚いたように見上げたの瞳は、深い色合いの黒。
            
            とても美しい輝きで・・・俺を掴んで離さない。
            
            は優しい、穏やかな表情で、嬉しそうに頷いた。
            
            幸せに・・・必ずするから。
            
            だから、俺を信じて。何が、あっても。
            
            
            
            俺は、グウェンにを認めてもらうことから始めることにした。
            
            彼女を連れて、グウェンの部屋へ行こうとしたその時。
            
            扉がノックも無しに開いて、その先に母と同じ金髪の少年が立っていた。
            
            ヴォルフラムだ。不機嫌そうな顔は、どうやら怒っているらしい。
            
            「おい、ウェラー卿!人間を連れてきたそうだな!どうしてこの城に入れた」
            
            人間嫌いのヴォルフらしい言い方だ。
            
            俺が反論するより早く、ヴォルフはずかずかと部屋に入り、そしての前に立った。
            
            少しばかり、ヴォルフの方が背が高い。
            
            遠慮なしにを見下ろし、そして鼻を鳴らした。
            
            「ふん、双黒か。だが、下賤な人間には違わない」
            
            「ヴォルフ、俺をいくら蔑もうが構わないが、彼女を侮辱することは許さない」
            
            俺は静かに言い、さりげなくとヴォルフの間に割り込んだ。
            
            言葉が分からないは、目を瞬いて俺とヴォルフを見比べた。
            
            「あの、コンラート。この人、すごくツェリ様に似てる」
            
            「ああ、彼はヴォルフラム。俺の弟だ」
            
            俺とヴォルフをもう一度見比べて、は頬を緩めた。
            
            「そう。ご挨拶してもいい?」
            
            それを彼が受け入れるか、分からないけど。
            でも、余計なことを言って、を悲しませたくない。
            
            俺がどうしようか悩んでいる間に、は俺の横に立ち、ヴォルフに向かって頭を下げた。
            
            「初めまして、ヴォルフラムくん。私は、といいます。よろしくね」
            
            名前を言われたことに気付いたヴォルフは、俺に向かって眉を潜めた。
            
            「おい、何と言っている」
            
            そこで俺はの言葉通り通訳すると、ヴォルフは盛大に眼を見開いて、キャンキャンと咆え始めた。
            ああ、全くうるさい。
            
            「『ヴォルフラムくん』だと!?人間、お前一体幾つだ!」
            
            「人間って呼ぶな。彼女には、『』という可愛らしい名前がある」
            
            そうぴしゃりと言ってから、俺はに説明の必要性を覚えた。
            
            そう言えば、俺の年齢をに伝えていない。
            
            隠すつもりはなかったけれど、何となく言いづらかった。
            しかし、覚悟をしなくては。
            
            「、ヴォルフはこう見えて、70歳を超えているんだ」
            
            「・・・冗談よね?」
            
            は少し固まって、一言。
            
            それはそうだろう、信じられないのも無理はない。
            
            だが、その先を俺は告げなくては。
            
            「実は、俺も年齢を言っていなかったんだけど・・・100歳過ぎてるんだ」
            
            その時のの反応を、どう言えばいいだろう。
            
            あの可愛らしい顔で、口を半開きにして。
            
            でも、それは一瞬のこと。
            
            すぐににっこりと笑って、ただ一言、「そう」とだけ。
            
            思ったよりも、簡単に受け入れてくれた。
            
            俺は意外に思ったけれど、安心してしまった。
            
            だけど、そこからが心の奥底で、地球と眞魔国のギャップに悩み続けるなど、
            その時の俺は気付かなかった。
            
            
            
            
            3:her thought
            
            
            
            目の前の、中学生くらいの金髪の男の子が、70歳を過ぎているそうだ。
            
            そして、私とそんなに年が変わらないかと思っていたコンラートが、100歳を過ぎているという。
            
            それを伝えられた私は、ただ呆然としてしまったが、でも困ったような表情を浮かべるコンラートを悲しませたくなくて。
            
            咄嗟に、「そう」とだけ応えた。
            
            前に聞いた、「魔族」だから?
            
            じゃあ、あのツェリ様って一体幾つなんだろう。聞くのが少し怖い。
            
            コンラートは、私のことを凄く子供っぽく見ていたのかもしれない。
            だって、あまりの年齢差。
            
            信じられないけれど、彼が嘘をつくとも思えない。
            
            100歳と27歳・・・。
            
            今まで、色んなことを彼に我慢させていたかも。
            
            私は気付かないうちに、我儘を言って彼を困らせていたかもしれない。
            
            そう思うと、私の困惑など表に出してはいけないような気がした。
            
            これから、もっと驚くことがたくさんあるだろう。
            だけど、それを彼に気付かせないようにしなくては。
            
            私は、頑張って彼に見合うような大人にならなくてはいけない。
            
            その時の私は、なぜかそう思い込んでしまった。
            
            
            その場の空気を変えたくて、私はコンラートの袖を引いた。
            
            「あのね、ヴォルフラム・・・さんに、お茶をお出ししたいの。ここはコーヒー無いのよね?」
            
            どうやら不機嫌そうなコンラートの弟さんに、ちゃんとおもてなしをしたかった。
            私の、得意分野で。
            
            コンラートは嬉しそうに頷いて、私の頬に手を当てた。
            
            そのぬくもりがあれば、私はきっと頑張っていける。
            
            暖かい、コンラートが私を大切に思ってくれる気持ちが伝わってくる。
            
            だから・・・私も頑張ろう。
            
            コンラートは、私とヴォルフラムさんを連れて、サロンのような場所へ案内してくれた。
            
            小さなキッチンがあり、吊り戸棚を開けると、何種類かの茶葉が仕舞ってあった。
            
            「どれでもいいの?」
            
            「ああ、の好きなものがあればいいけど」
            
            「ヴォルフラムさんは好みはどうかしら」
            
            「どれでも大丈夫だと思うよ」
            
            そう苦笑して、不機嫌な表情のままでソファに座るヴォルフラムさんを見たコンラートの背中を、
            私はそっと押しやった。
            
            「座ってて?用意するから」
            
            コンラートはカップや薬缶の場所を教えてくれて、そして弟さんの隣に座った。
            
            そして、私の知らない言葉で話し掛ける。
            
            ・・・何を話しているのか、分からない。
            時々、と聞こえるから、私のことを話しているんだろう。
            
            気にしちゃ、駄目。
            
            私は、今出来ることから始めよう。
            
            少し深呼吸をして、私は薬缶にお水を汲んで火に掛けた。
            
            茶葉の缶を開けて、香りを確認する。
            
            どれも大体地球の紅茶と似ているけれど、一番アールグレイに近いものを選んだ。
            
            ここの水は、舐めても軟水か硬水か分からなかった。
            だから、お湯が沸騰してもしばらくはそのまま置いておいた。こうすれば、硬水でも美味しくお茶を淹れられる。
            
            ティーサーバーに、ティーメジャーで計った茶葉を2杯。大きめな茶葉だったから、大盛りで。
            
            お湯は300ccに一割増しだけど・・・身体で慣れた感覚で。
            熱湯を一気に注いだ。
            
            ティーサーバーに蓋をして、蒸らしに入ると、ちゃんと茶葉が対流に合わせて上下に動いた。
            
            よかった、ジャンピングも上手くいった。
            
            蒸らしている間に、2つのカップに熱湯を注いで、暖めておいて。
            
            紅茶が沈んだのを見計らって、暖めたカップに茶漉しで半量ずつ、全ての紅茶を注ぎいれた。
            
            お砂糖とレモンやミルクは・・・分からないから、このまま飲んでもらおう。
            
            私はあまりよく似ていない兄弟二人の前に、カップを差し出した。
            
            「美味しく淹れられたならいいけど」
            
            そう言いながらも、すごくどきどきしている。
            
            毎日、仕事でしていたことなのに。
            
            私の店のお客様は、圧倒的にコーヒー党が多かったけれど。
            もちろん、喫茶店だから紅茶もお出ししてた。
            
            「の紅茶は、初めてだな」
            
            コンラートはそう嬉しそうに笑って、目を細めて香りを嗅いで、さらに嬉しそうに微笑んだ。
            よかった、気に入ってくれたみたい。
            
            そしてヴォルフラムさんに何か話し掛けると、彼は驚いたように私を見て、
            鼻を鳴らしたけれど、カップを手にしてくれた。
            
            私の淹れた紅茶を、一口すすり・・・その綺麗な碧色の瞳が見開いた。
            
            「ヴォルフに、は喫茶店の店長だったんだと伝えたんだ。ああ、気に入ったらしいね」
            
            コンラートは、美味しそうに紅茶を飲みながら教えてくれた。
            
            ヴォルフラムさんは、じっと紅茶を見つめて、唇をぎゅっとかみ締めて・・・
            
            そして私に目を向けた。
            
            何か私に話しかけてくれるけど、分からなくてコンラートに助けを求めてしまった。
            
            「ねえ、ヴォルフラムさんは何て言ってるの?」
            
            コンラートは、ふと微笑んで、私の手をぎゅっと握った。
            どうしたんだろう、美味しくなかったのかしら・・・。
            
            「ヴォルフがね、早く眞魔国語を覚えろって。そして、淹れ方を教えろって」
            
            「本当に・・・?」
            
            よかった。すごく、嬉しい。
            
            「ああ。それから、これは俺の意見だけど。ヴォルフラムさんなんて、呼ばないでいいよ。
            ヴォルフで構わない」
            
            いいの、だって・・・80歳過ぎてる人に向かって呼び捨てなんて。
            
            ああ、でも気にしないことにしたんだった。
            
            気にしたら・・・きりが無い。
            
            ヴォルフラムさん・・・じゃなくて、ヴォルフは相変わらず不機嫌そうだったけれど、
            でもその頬が少し赤くなっていた。
            
            ちょっとだけ、眞魔国に溶け込めた気がした瞬間だった。