Across the space-time; and ... Chapter 2 4:his thought 結論から言えば、ギュンターは双黒のを感激して受け入れてくれて、 そしてグウェンダルは、一生懸命頭を下げて挨拶したに、目を細めた。 「人間、魔族のくくりはどうでもいいではないですか。御覧なさい、彼女の艶やかな黒髪、 そして濡羽のような深い色合いの瞳を」 そう頬を赤らめて、ギュンターはを大絶賛だった。 何を言われているのか分からないは、戸惑ったように微笑んでいる。 「それでコンラート、彼女をこれからどうするつもりだ」 グウェンダルは、静かに、だが大事なことを切り出した。 俺は、の隣に座っている。 ここは、会議室の円卓。 家族と、そしてギュンターが腰掛けている。 を紹介して、何とか彼女の立場を確立したくて。 皆に集まってもらっていた。 俺はの髪をそっと撫で、そしてグウェンに向き直った。 「とにかく、には言葉を覚えて貰わなくてはね。皆と意思が疎通出来ないのは、あまりに辛いと思うから」 「そんなことは分かりきって、無理矢理連れてきたんだろうが」 ・・・グウェンの言葉は、苦々しい。 俺は彼の態度に、何か違和感を感じた。 そして、彼のを見つめる目線にも。 「グウェン・・・?」 俺は思わず兄の名を呼びながらも、の手を握ってしまった。 不安・・・。そう、不安を感じてしまった。 何も分からないは、首を傾げて俺を見上げている。 「コンラート、どうしたの?やっぱり、皆さん私のことを疎ましく思ってるの?」 「違う、ごめん、そうじゃない」 俺は慌てて首を振り、の握っていた手を離し、椅子をさらに彼女に寄せた。 そして、その肩をぎゅっと抱き締めた。 「あらまあ、仲の良いこと」 そう母は微笑むけれど、俺の内心はそんなものじゃなかった。 不安で、心配で。 は、双黒。 そして、俺が一目惚れしてしまったくらい、美しい。 その美しさは、双黒という美しさだけじゃない。 穏やかな、落ち着いた微笑。地球で、客に向けていた、あの暖かい微笑みを今、俺の家族にも向けてくれている。 見せたくなかった。 どうしてか、グウェンには・・・見せて欲しくなかった。 俺は、自分の気持ちを悟られないように、に囁いた。 「大丈夫だよ、皆、を受け入れてくれているから」 「本当・・・?嬉しい」 そう笑うに頷いて、俺はギュンターに目線を向けた。 「ギュンター、頼まれてくれるか?出来るだけ、俺がに言葉を教えていくけれど。 目の届かないことがあったら・・・」 全てを言わずとも、ギュンターはしっかりと理解してくれた。 有り難い。 「、彼はギュンター。母の・・・魔王陛下の補佐をしている。彼は俺の教官でもあったんだよ」 「コンラートの・・・先生?」 「ああ、そうだ。にも、色々教えてくれるだろうから」 そう言うと、は立ち上がって、ギュンターに頭を下げた。 ギュンターはその行為に驚き、灰色の髪を振り乱し、「お止めください!!」と慌てている。 だがその言葉が分かるわけもなく、はにっこりと笑って、 「これから、どうぞよろしくお願いします、ギュンターさん。 それに、コンラートのお兄さん・・・えと、グウェンダルさん、よろしくお願いします」 そう言って、グウェンにも頭を下げた。 ぴくりと眉を動かしたグウェンとを、思わず見比べてしまった、俺。 が俺の兄としてのグウェンに挨拶したのなら、それは当然のことだろうけれど。 でも、何故かいちいち反応してしまう自分が何だか嫌になってきた・・・。 「、大丈夫だから。座って?」 俺の言葉に、はわずかに目を見開き、そして笑みを消して腰掛けた。 違う、ごめん、違うんだ。 ああ、どうしてあんなきつい口調で言ってしまったんだろう。 本当に、ごめん、。 俺は後で、二人きりになったときに必ず謝ろうと心で誓いながらも・・・ 今、この場で他の皆に言いたいことを優先させてしまった。 に、何も説明をしないで。他の家族が話をしていることを、ろくに通訳してあげないままに。 「聞いてくれ、皆。次代の魔王の魂は、無事に地球で『ユーリ』として誕生した。 俺はこれから、国内の各領地に廻って、彼の治世が安定するために力を尽くして行きたい」 そう言うと、母は口元に手を当てて首を傾げた。 「はどうするつもりなの、コンラート」 「ええ、もちろん一緒に連れて行きます」 「ちょっと待て、コンラート」 グウェンが静かに口を挟んできた。 俺はきっと、彼並みに眉間に皺を寄せてしまっただろう。どうして彼が、横から口出しをする? 「何だ、グウェン」 「彼女は・・・はまだ、眞魔国には馴染んでいないだろう。それを連れ廻すというのはどうなのだ」 その言葉に、俺はかっとしてしまい、テーブルを叩いて立ち上がった。 「充分、分かってるさ!だからこそ、眞魔国の各領地を見てもらいたいんじゃないか!」 「ウェラー卿、落ち着け!」 「どうしたんです、コンラート」 ヴォルフとギュンターに言われ、俺ははっと我に帰った。 そして咄嗟にを見下ろすと、彼女は黒瞳を揺らして・・・困ったような、何だか泣きそうな顔をしている。 「どうしたの?どうして怒ってるの、コンラート・・・私、分からない・・・」 「ごめん・・・ごめん、・・・」 何でだろう。どうして、こんなに感情がコントロール出来ないんだろう。 先ほどまでは、全くこんな気持ちを感じなかったのに。 俺は、気付いてしまった。 嫉妬していたんだ。 グウェンが、を見つめる視線に。 一度味わってしまった感情は、なかなか消えない。 4:her thought 丸いテーブルに、囲むように座った私とコンラート、それに彼のお母様とご兄弟。 それに、コンラートの先生だったという、ギュンターさん。 初めは、和やかな雰囲気で私を紹介してくれていたようだったのに。 急に、空気が変わった。 グウェンダルさんとコンラートが、何か言い争っている場面が何度かあった。 その度に、ヴォルフは私を見て、私も彼を見るけれど、首を振って肩を竦めるだけだった。 もっとも、何か教えてくれたとしても、言葉が分からない。 コンラートは、段々私に彼らの言葉を教えてくれなくなってしまった。 私には、言いづらい発言が飛び出しているのだろうか。 私は、この場にいてはいけないのだろうか。 居た堪れない気持ちで、でも勝手に部屋を退出するわけにもいかなくて。 また、コンラートがグウェンダルさんに、何か怒鳴った。 地球では、こんな彼の姿を見たことがなくて。 怖いとは思わなかったけれど。でも・・・どうして怒っているのかが分からない。 それが、悲しかった。 どうして、何も教えてくれないの。 ちゃんと、私が言葉を覚えるまでは、通訳してくれるって言っていたのに。 「どうしたの?どうして怒ってるの、コンラート・・・私、分からない・・・」 思わず、怒っているコンラートに、そう言ってしまった。 途端に、コンラートは後悔したような表情を浮かべて・・・私に謝った。 謝って欲しいんじゃないのに。 ただ、教えて欲しい。それだけなのに・・・。 その後、コンラートは少し冷静になったようで。 私の手をきゅっと握って、小さく深呼吸した。 何を、緊張しているの・・・? 「、少しこの城で休んだら、俺と一緒に眞魔国を廻ろう。 ユーリのために、領地を廻って地球のことを理解してもらって、そして彼を魔王として受け入れられる国にしたいんだ」 それは、私に対する提示じゃなかった。 確認、だった。 あなたの中では、決定されていたこと・・・なのね。 私は、あなたの傍にいたいと思っていた。 だけど、足手まといになりたくない、そうも思ってる。 だから、ごめんなさい。ごめんね、コンラート・・・。 「私は、着いて行かない」 そう、短く応えた。 コンラートは、まさかそんな返事が来ると思わなかったのだろう。 一瞬言葉を失って、それから私の肩を掴んだ。 「何を・・・、待って、ちゃんと俺の話を聞いて。俺は、と離れない、そう言ったよね」 「痛い、痛いコンラート・・・」 慌てたコンラートの手が、私の肩に食い込んで。 私は顔を顰めてしまった。 それに気付いたグウェンダルさんが、私とコンラートの間に割り込んだ。 何か一言小さく言って、私を背後に庇うのは、グウェンダルさんの方だった。 それを見て、コンラートはまたきつい口調で、彼に怒ってる。 グウェンダルさんは、私を庇ってくれたまま、動かない。 嫌だった。 ずっと怒ってばかりのコンラート・・・原因を、どうして私に言ってくれないの。 何も、分からない。 それが、どれだけ辛いのか、きっとあなたには分からない。 そう思ってしまう、私自身が嫌だった。 だから、私はグウェンダルさんの背中に手を当てて、彼の前に回りこんだ。 「ありがとうございます、でも大丈夫です」 そう私はグウェンダルさんに言ったけれど、でも通じてないだろう。 困ったように一瞬眉を寄せたから、少しは通じたのかもしれない。 コンラートに向き直った私は、私を見て表情を和らげようと努力しているその彼に向かって、 出来る限り柔らかくなるよう祈りながら、微笑みかけた。 「私、待ってるわ。眞魔国の言葉を勉強しながら、待ってる。だから・・・」 コンラートが帰って来た時には、あなたの力になれるように、頑張るから。 そう言おうと思っていたのに。 コンラートは私の腕を強く引き、ご家族をそのままに、部屋を出た。 そして無言で、私とコンラートの部屋に戻ってきた。 扉を閉め、そして私の肩に手を置いて、コンラートはじっと私を見つめた。 「・・・俺と離れても、平気なの・・・?」 「それは、私がこの国で生きていく上で、という意味なの?」 言葉が分からない私を、一人で置いていくというのは辛いだろう。 だって、彼は私を無理矢理この世界に連れてきてしまったと、後悔しているみたいだったから。 だけどね、コンラート。 私は、そのあなたの思いも辛い。 私は、嬉しかったのに。 そんな思いをさせたくないから、頑張っていきたいの。 「違う・・・、俺は、きみと一瞬でも離れたくない。きみも、そういう気持ちじゃないのかと・・・ そう聞きたいんだ」 「私も・・・離れたくない。ずっと一緒にいたい。でも、それはあなたに全て負わせるということと、違うわ」 「・・・」 「コンラート、私はあなたと対等で生きていきたいの・・・」 何も分からない。コンラートがいないと、右も左も分からない。 それじゃ、嫌なの。 そんな私の気持ちを、やっと理解してくれたらしいコンラートは、私をぎゅっと抱き締めた。 力強い抱擁。だけど、痛くない・・・心は、少しだけ痛い。 「ごめん・・・。俺は・・・自分のことばかりだった。くだらない嫉妬をして・・・辛かったよな、ごめん」 嫉妬・・・? 何のことか分からなかったけれど、でも、もう少し、話をしたいな。 慌しく時間だけが過ぎてしまって、肝心な私とコンラートの未来のことを、ちゃんと話していなかった。 でも、コンラートは、その嫉妬のせいなのか。 私の顎を捉え、上に向かせて私の唇を塞いで。 何度も何度も角度を変えて、私が息が絶え絶えになってしまうまで、唇を重ねた。 ベッドに横たわらされた私の首筋に、顔を埋めて。 「愛してる・・・」 そう呟き続けて。 今までで一番激しく、でも優しく私を抱いてくれた。 今晩は、あなたの腕の中で不安を全て消し去って、眠りたい。 でも、明日は話をたくさんしようね。 覚悟を決めた、私の話も、たくさん聞いてね・・・。