嫉妬
毎日毎時間、女の子から声を掛けられる吉田くん。
隣にいるわたしなんか、存在が目に入っていないような女の子達。
というか、わざと無視してるんだろうな、わたしを。
何だか、やだな。
こういう時は、そっと離れるに限る。
だからわたしは、トイレに行く振りをして抜け出した。
はぁ・・・
溜息なんか、付きたくないけど。
でも、出ちゃうのは、何でかな。
窓際に設置された椅子に座って、綺麗に見える富士山を眺めて。
一人で、営業出ちゃおうかな・・・?
そう思ったわたしの頬に、冷たいものが!!
「ひゃあ!?」
驚いて飛び上がると、可笑しそうに笑う端正な顔があった。
涼しげな目元を細め、手には缶コーヒーが。
「吉田くん・・・あの子たちは?」
吉田くんはそれに応えず、コーヒーのプルタブを上げてわたしに渡し、自身はオレンジジュースのペットボトルを煽ってる。
わたしは戸惑ってしまって、貰ったコーヒーを飲まずに両手で包み込んでいた。
その様子を見ていた吉田くんが、急に頬を緩めてわたしを覗き込んだ。
「藤森さん・・・いや、誰もいないからいいか。彩花」
「はい・・・?」
改めて呼ばれると、恥ずかしいし緊張するよ。
「今から、俺の言うことをまねして言ってくれる?」
「・・・え?」
「じゃあ、スタート。『吉田くん』」
え、何、何のゲーム?
首を傾げながらも、まねして「吉田くん」と呼んだ。
「『外回りに行って、お昼食べよう』さあ、彩花」
「えと・・・外回りに行って・・・お昼、食べよう・・・」
「うん、行こう。さあ、強敵を倒して、美味い昼飯食べような」
そう笑った吉田くんの笑顔は、凄くあったかくて。
わたしの心にあった、よく分からないモヤモヤが消えてなくなっていった。
やきもち・・・・妬いちゃったのかな・・・・。
自分の気持ちですら、よく分かってないのに。
でも、それに気付いて言ってくれた吉田くんの優しさが、わたし・・・。
また一つ、吉田くんのいいところ、見つけた。