泡沫(うたかた)
きみといた時間。
あれは、遠い昔のこと。
幼い顔に、大人びた眼差しを浮かべていたきみ。
全てを見越して、全てを受け入れようとしていた。
だけど。
「あなたに、護ってもらいたいの。だから・・・」
だから?
「地球へ、来てくれる?」
きみを、この手で護れるなら。
全てを捨てて、きみに捧げよう。
弱虫で泣き虫だった俺を、変えてくれたきみに感謝して。
「ラディ、わたし、あなたが好きよ」
「俺も、レーリアが好きだよ」
そう答えた俺に、レーリアはくすりと笑って頷いた。
その時の俺は、まだまだ幼くて。
レーリアの言っていた『好き』という意味が分からなかった。
ただ、傍にいたい。大切な人。
それだけだった。
思い起こせば、後悔してもしきれないことばかり。
あの頃から、きみは・・・レーリアは、いくつもの信号を俺に送ってくれていた。
それに気付かなかったのは、俺の罪だ。
だから、じゃない。
この手から儚く消えてしまったきみを護るために、俺が出来ることは、ただ、あの日の約束を守るためだから。
「わたしを、護ってくれる?」
誰よりも強い魔力を誇ったレーリアの、あの日の言葉が、今も俺の心で生き続ける。
護るよ。
俺の全てをかけて、きみを護る。
愛してるから
今きみは、必死な顔でパソコンを打っていて。
新しい顧客を増やすために全力投球している。
きみの、ためならば。
俺はくすりと笑って、新しいレーリアの居場所にいることが出来る今に感謝して。
「さあ、行こう。俺に、任せて」
そう言える今が、本当に嬉しい。
あの日、俺の手から零れ落ちるように消えてしまったきみを、再び掴まえた。
もう、離さない。離れない。
俺ときみの間に、穏やかな風が吹き抜けた。
それは、あの日きみが微笑んだ瞬間、俺たちの間を吹きぬけた微風のような、穏やかな風だった。