愛しい者の腕の中
愛してる。
そう、吉田くんはわたしに何度も囁いた。
そして、ぎゅっと抱き締められる。
恥ずかしい。
こんなこと、初めて。
だって、今まで男の人が、怖かったから。
怖くて怖くて、仕方が無かった。
なのに、どうして?
どうして、こんなにこの腕の中が、心地いいんだろう。
吉田くんから香ってくるのは、スパイシーシトラス系。
この間、ふと彼に聞いてみた。
「何か、コロンとかつけているの?」
吉田くんは、不思議そうに首を傾げた。
そしてふと思い出したかのように、鞄から一つの小瓶を取り出した。
「これ、この間道を歩いていたら、『サンプルです』って貰ったんだ。彩花が嫌いな香りだった?」
ううん。逆。
とっても好きな香り。
でもね、きっとこのコロンをつけていなくても、吉田くんからはいい香りがするよ。
わたしを包み込んでくれる、暖かいあなたからは。
だから、ずっとわたしを抱き締めていて。
そう思えるようになった自分の変化に驚いて、感情についていくのがやっとだけど。
でも、今なら言える。
「吉田くん、大好きよ・・・・・・」
そっと呟くと、わたしを包み込む腕に力が篭った。
俺も。
愛してる。
言葉にしなくても、伝わる気持ち。
ずっと、このままこうしていたい。
そして、囁いて。
あなたの口から、あなたの言葉で。
耳に流れる、わたしだけが聞ける、あなたの想い。
それがわたしにとって、何よりの救いになるの。気付いているのかな?
わたしの一番、大好きな時間。
それは、あなたの腕に包まれている時間。
あなたの、腕の中の時間。