夢の中で
冒険もののDVDを見たせいかな。
布団に潜り込んで、すぐに眠ってしまったわたしの夢は、とっても怖かった。
白い、真っ白な建物の中で、わたしは一人で立ち尽くしてる。
向こうから、身体を揺らせて襲い来るのは、あのゾンビもどき。
「やだ、いや、やーーーーーーーーー!!」
叫びながら逃げても、ありとあらゆるところから沸いて出てくるゾンビもどき。
怖い、怖すぎる!!
やだ、助けて!!!!
ポワン、いないの!?
キューちゃん、出てきて、火を噴いてよ!
お願い、助けて!やだよ、やだぁ!
わたしがパニックに陥っていると、曲がり角から人影が。
びくっ!と身体を震わせて足を止めると、そこにはまるで、中世ヨーロッパのような鎧を身に纏い、
剣を手にした男の人がいた。
「姫、お困りか」
そう囁く声は、低く、耳に心地よく。
くいと掛けていたゴーグルを上げれば、紫の瞳がわたしを見つめている。
「お困りなの、助けて!」
「お望みならば、喜んで」
どっかのホストみたいなことを言い、その人はわたしの手を取り死角に隠すと、ゾンビもどきをバッサバッサと切り捨てた。
凄い、強い!!
汗一つ浮かべずに振り返った彼は、剣を振るって血を落とし、鞘にそれを収めた。
「姫・・・・・・」
囁き、近寄る彼。
怖い。
やだ。
やだぁー!
助けてもらっておいて失礼だけど、わたし男の人、苦手で怖くてしかなくて。
思わず絶叫してしまったら、ふと目が覚めた。
あれ。
ここは、わたしの部屋。
わたし、自分のベッドに頭を乗せて、眠ってしまっていたらしい。
そしてわたしの肩に重みがのしかかってる。
見下ろしたら、烏の塗れ羽のような深い色合いの、さらさらした髪。
起きてしまったわたしが、僅かに身体を動かすと、その頭がわたしの膝に倒れこんだ。
それでも、ぐーぐー寝てる。
わたしはくすりと笑って、髪を撫でて、止まってしまっていたDVDを消した。
今度見る夢では、あなたが助けに来てね。
わたしも、武器を装備して戦えるような女の子でいたいな。
護られるばかりじゃ、やだもの。
せめて、夢の中だけでは。
二人で力を合わせて、敵をやっつける。そんな夢を見れたらいいな。
幸せそうな寝顔の彼を見て、わたしはそんなことを思って。
もう少しだけ、こうしていたいな。
彼の身体に、わたしのガウンをそっとかけた。