居場所
いつも私は、暗闇の中にいた。
身体を丸めて、膝を抱えて。
まっくらな暗闇で、叫んでた。
私を、一人にしないで。
地球に、祝福の女神がいると情報を得た私は、一人地球へと降り立った。
他国はまだ、気付いていない。
姉達も、気付いていない。
私がいなくなっても、誰も気にしない。
だから、いい。
手に入れてやる。祝福の女神を。
そしてティリシアを。アステリアを。
魔法は、自分よりも強いものには掛けられない。
私は自分の魔力に自信があるけれど、祝福の女神に敵うわけもない。
『特別』なんだ。祝福の女神は。
羨む様な、嫉妬に似た感情が私の胸をよぎる。
望まれて生まれ、皆から愛されて育った彼女。
アステリアでも、地球でも。
私と、違う。
暗闇が、また私を襲う。
地球で、ある会社に入った。
賭けだった。
彼女がこの会社に入社するとは分からない。
だから私は、彼女が通う短大の教授に、魔法を掛けた。
この会社を、薦めるように。
面接に、彼女が来た。
私は面接官に、魔法を掛けた。
彼女が、私のいる部署へ配属されるように。
まだ、彼女には会っていない。
会うのが、怖かったのかもしれない。
どうしてだろう。分からない。
入社式の日がやってきた。
そこに、彼女はいた。
同僚となる同じ新入社員と、微笑み合っている彼女は、とても眩しく見えた。
祝福の、女神。
その力を、我が手にいれるために。
ただ、それだけのためだったはずなのに。
「藤森彩花です。どうぞよろしくお願いします!」
緊張気味の彼女に、私はくすりと笑って言った。
「よろしくね、宮下由利です。なぁに、その顔!営業なんだから、にっこり笑うのよ!」
ばん、と背中を叩くと、彼女は咳き込みながらも、目じりに涙を浮かべて笑った。
綺麗な、笑顔。
見ていて、胸が熱くなった。
なぜだろう。
泣きたくなった。
護りたい・・・・・・・・・・そう思った。
この笑顔を、護ってやる。
来るべき、その日まで。
私が最後に手に入れるから。
だから、だから・・・・・・・・・
言い訳している私がいた。
この日から、私は夢を見なくなった。
暗闇で、膝を抱えて丸くなっている私自身の夢。
その代わり、彩花と楽しい時間を過ごす夢を見るようになった。
来るべき、その日が近い。
来なければいいのに。
永遠に、この時間を過ごして行きたい。
出来るわけもない願望。
ねえ、彩花。あの日、アステリアからあの男が来なかったら。
私たちの未来は、変わっていたのかな。
ううん、きっと変わらない。
私はやっぱり、あなたを望んだ。
それは、今でも。
時折、地球でのことを思い出す。
私に、光の世界を教えてくれた彩花との日々を。
また、戻りたいな・・・・・・・。
私の居場所に、戻りたい・・・・・・・
そして、彩花は教えてくれた。
私の居場所は、どこにでもあることを。
私が、気付かなかっただけだということを。
ありがとう、彩花。
私を救ってくれたあなたの為に、私は・・・・・・・。
閉じていた闇の部屋から、私は一歩進んだ。
眩しい。でも、やっていかなくちゃ。
誰よりも、あなたのために。
私の居場所を、教えてくれたあなたのために。
私の世界が、大きく開いた。