流星群
部屋から出て、空を見上げた。
今日はとってもいい天気だった。
だから星空も、ほら。
数え切れないくらい、瞬いてる。
こんこん。
ノックの音が聞こえる。
「彩花?いいかな、入っても」
吉田くんだ。
「いいよ、どうぞ?」
かちゃり、そっとドアが開かれた。
「あれ、どうして真っ暗・・・・・・?」
戸惑う声に、わたしはくすりと笑って。
「ベランダにいるよ。こっち」
「ああ、外を見ていたのか」
吉田くんの手には、二つのグラス。それをトレーに載せていた。
その一つのグラスを手に取り、わたしに渡してくれた。
「天体観測?」
そう言いながら。
お礼を言いながら、ウィスキーの入ったグラスを受け取った。
両手でそれを包み、わたしは再び空を見上げた。
漆黒の闇。そこに光る星。
とても美しくて、心惹かれるの。
「見て、吉田くん。凄く、綺麗ね」
「ああ、本当だ。綺麗だね。でも、アステリアの方が、星はたくさん見えるかな」
「そうなの?」
「うん、地上の光が少ないからね、あっちの方が」
そうか、そうかもね。
ここは郊外とはいえ家が立ち並び、深夜営業の店もたくさんある。
いつか・・・・・・・いつか。
アステリアで、あなたと二人で、こうして並んで、夜空を見上げることができるかな。
そのときも、わたしをまだ、好きだって言ってくれるかな。
きらりと光った星が、右から左へと尾をつけて流れていく。
今日は、しし座流星群がよく見えるってテレビで言っていた。
本当に、見れた。
肉眼で流れ星。初めて見た。
「見た!?ねえ、今、流れ星、見た?」
興奮して吉田くんを見上げると、空に負けないくらい、綺麗な黒瞳を細め、わたしに微笑んだ。
「見えたよ。あ、ほら、また」
「本当だ!ねえ、知ってる?流れ星が流れている間に、お願いごとを3回心の中で言うの。
もし言えたら、願いが叶うんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「うん。でも早いね。言えるかな?」
「チャレンジしてみよう」
吉田くんとわたしは、じっと空を眺めた。
あ。光った。
どうしよう、簡単に、簡潔に。
流れる星に、願いを。
「・・・・・・消えちゃった」
「うん、消えちゃったね」
「吉田くん、願い事、言えた?」
そう聞くと、吉田くんはくすりと笑って、片手でわたしを抱き寄せた。
髪に唇を落として、そしてそのまま、端正な顔をわたしの髪に埋めた。
「言えたよ、彩花は?」
わたしも、言えたよ。
願いごと、じゃないけど。でも、その言葉に、たくさんの思いを込めて。
アイシテル。あいしてる。愛してる。
流れ星に、恥ずかしがりやの、わたしの思いを託した。
届いて。わたしの想い。